連載【TORiX 高橋浩一直伝】 勝てる営業組織の戦略的な作り方

【保存版】全13回総まとめ。
“7年間コンペ無敗”TORiX流──勝てる営業組織の戦略的な作り方

高橋 浩一

東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(その後ブーズ・アンド・カンパニーに)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。新卒を戦力化して業界平均よりパフォーマンスの高い受注を獲得する営業組織を構築。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。 自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%(現在も8年以上継続中)。その経験を基にしたメソッドが好評で、年間200件以上の研修登壇、800件以上のコンサルティングを実施。『ワールドビジネスサテライト』『日本経済新聞』『日経BP』など取材実績多数。

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強い営業組織とは「接戦案件を誰でも受注できるチーム」

この連載では、一貫して「勝てる営業組織の戦略的な作り方」について解説してきました。

今回は、総まとめをしたいと思います。

特に成長段階にあるスタートアップ企業では、BtoBの場合、創業者をはじめとしたハイパフォーマー営業が業績を支えているケースが大半でしょう。

しかし、後から入社してくるメンバーが、創業者や一握りのハイパフォーマーをそのまま真似ることは容易ではありません。

そこで、私が提唱するのは、「やり方次第で受注にも失注にもなる接戦ゾーンの案件を、確率高く受注に導けるようにする力」を、いかにして「組織的に」「再現性が伴うよう」高めていくか?(第1回記事参照)ということです。

接戦ゾーンの案件を確率高く受注できるようになると、どんな良いことが起こるのでしょうか?私が考える一番大きなメリットの一つは、「予算規模の大きい顧客を新規開拓する力」が上がることです。

図は、顧客の予算規模と自社シェアをマトリクスで図解したものですが、どの企業にとってもセグメント①がいわずもがなの最重要顧客です。

セグメント②は、言い換えると競合他社にとってのロイヤル顧客ですから、営業の難易度は高いでしょう。セグメント②の受注をできる人材が創業者や一握りのハイパフォーマーに限られていると、組織の売上拡大を牽引するのは「一握りの人材」になってしまいます。これら一握りの実力者のみがセグメント②案件を受注し、さらに営業力がアップし、他の人材と差が開いていき、営業組織が「属人化」していく…これが、多くの組織において陥りがちな状態です。

セグメント②の顧客は、自社のシェアが上がってくれば、徐々にセグメント①へと育っていきます。このシェアを維持するのも簡単なことではありませんから、多くの営業組織では、セグメント②を開拓できる力を持つ人材が、次第に既存顧客のセグメント①を担当する割合が多くなってくるようになります。そうすると、「セグメント②へアプローチできる力を持つ人材が組織内にいなくなってくる」現象が起こります。

しかし、これは大きな落とし穴です。このままいくと、セグメント②に対する開拓力が組織として低下してしまいます。一握りのハイパフォーマーが(かつてはセグメント②だった)セグメント①顧客を、プレイングマネジャーとして担当しながら組織をマネジメントする状態です。そうすると、他のメンバーがセグメント②へ挑戦しようとしても、リアルタイムでお手本としたいプレイヤーは社内にいない、ということになりかねません。

ちなみに、リクルートやキーエンスなど、営業力が強いことで有名な組織では、このようなことが起こらないよう、異動や担当替えが工夫されています。

異動や配置換えによってハイパフォーマー人材を組織内で循環・有効活用させていく流れができれば理想的ですが、多くの組織では「そこまで人材が潤沢に揃っていない」という悩みがその手前にあるでしょう。

では、今いる人材を活かしつつ、セグメント②攻略に求められる「接戦における強さ」をどうやって組織的に高めていくかについて、これまでの記事を振り返っていきたいと思います。

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どこがボトルネック?組織的営業力を高めるためのロードマップ

接戦を再現性高く勝ち続けるために必要なのは、「お客様はどうやって発注先を選ぶのか?」というプロセスや心理状況に対する理解でした(第2回記事参照)。

接戦案件でお客様に選んで頂くためには、「他にも良い商品・サービスはあるのになぜ当社か?」「外注せずに内部でやるという選択もあるのになぜ当社か?」「先延ばしにしてもいいはずなのに、なぜ今なのか?」という3つの問いのいずれかをクリアする必要がありましたね。

接戦案件では、複数の選択肢をにらみながら、どちらにしようかなとお客様は悩んでいます。

ここでしっかりと選ばれる理由が作れるかどうかが、勝敗の命運を握ることになります。

自社がお客様から選ばれるためには、自社の提案の中で気になっているネガティブなポイントを払拭したり、対立する案の魅力に対抗する提案を行うことが必要です。

そこで鍵となる力が、「提案ロジック構築力」「質問力」「価値訴求力」「提案行動力」の4つです(第3回記事参照)。

4つの力が発揮されると、「お客様に対する効果的な質問によりどんどん情報を頂いて、そこでお役立ちの要素(価値)を提供し、さらに情報を頂いて、材料がより豊かになったところで、緻密な提案ロジックを作る」という行動を、「お客様が変わっても応用を利かせて、どんな会社に対しても実行できる」ようになることで、高いパフォーマンスの再現性が上がっていきます。

ただし、ここで注意すべきは、「ルート型営業」「アカウント型営業」のように、扱う商材のタイプによって勝ちパターンが異なるということです(第4回記事参照)。

ルート型営業というのは、1人の営業マンが数百件ほどのリストを持って、電話営業や飛び込みなどを駆使して数多くの顧客リストを抱えて営業するモデル。

一方でアカウント型営業というのは、1人の営業が数社、多くても30社程度のリストを持ち、1社1社に対して深堀りアプローチをする営業モデル、ということで定義をしていました。

ルート型営業では、行動の「量」を増やしてから「質」を上げていく、というのが勝ちパターンです(第5回記事参照)。

そのためには、行動の量を増やし、行動の質を上げていく上でのボトルネックを解消していくマネジメントが必要です(第6回記事第7回記事参照)。

一方、アカウント型営業では、お客様の情報を深く広く収集し、こちらの提案に圧倒的な説得力を持たせることによって、お客様に選ばれるロジックを構築するという勝ちパターンになります(第8回記事参照)。

アカウント型営業において受注を勝ち取る際には、お客様の課題や組織構造を的確に理解した上で(第9回記事参照)、「お客様の評価軸×選択肢でマトリックスを整理し、そこに対してネックを解消することが重要である」(第10回記事参照)、という話をしました。

アカウント型営業の中でも、特に典型的な接戦案件のパターンとして、コンペ型・稟議型それぞれに応じた戦い方を押さえておく必要があります(第11回記事参照)。

しかし、これらの勝ちパターンをマネジメント層だけが認識していても、なかなか成果に結びつきません。肝心なのは、現場のメンバーにどう浸透させていくのかです。

営業の数字やプロセスをどのようにマネジメントするかについて、まずは、営業会議や会議に使用される資料を考察しました。

営業会議の資料においては大きく4つの要素が必要です(第12回記事参照)。

①結果としての目標達成状況、②プロセスのKPI進捗、③フォーカスして注視すべき案件リスト、④組織単位でやるべきことが一覧化されたタスクリスト。

これらについて、誰もが視覚的に理解できる・見える状況になっているのが理想的です。

これらの「見える化」が整備されたら、大きな流れとしては、期初に目標設定したときに「戦略レベルでやるべきことを定める」「方針を決定する」といったことを行い、その後は期中におけるPDCAサイクルを回していきます。このサイクルの回し方は、ルート型とアカウント型とで、力点の置き方が異なっています。

ルート型営業において、まず見ていくべき指標は、行動の「量」と行動の「質」です。一方、アカウント型営業においては、まずは見込み(ヨミ)の金額や件数が増え続けているかどうか、そして、失注の原因内訳を見ていく必要があります(第13回記事参照)。

さて、ここまでの考え方を整理すると図のようになります。

営業組織において、「一握りのスーパー営業マンだけが売れる」という属人化現象はよく起こりがちなことですが、どうやってそこを脱して組織のステージを上げていくか。

皆さんの組織にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

長期に渡り、お読み頂きましてありがとうございました。

こちらの記事は2018年01月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

FastGrow編集部

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