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10

【保存版】常勝セールスチーム構築の方程式、全10回総集編

創業社長や役員陣、トップセールスの力量に大きく左右されてしまう、スタートアップにおけるセールス。本連載ではこれまで9回に渡り、セールスチームの数値管理方法からメンバーの育成まで、プロセスマネジメントを軸にお伝えしてきた。

総集編である今回は、全体を振り返りつつ、スタートアップにおけるプロセスマネジメントを成功させるためのポイントを押さえていこう。

執筆者

高橋 浩一 (たかはし・こういち)

TORiX株式会社 代表取締役CEO

高橋 浩一

たかはし・こういち

TORiX株式会社 代表取締役CEO

東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(その後ブーズ・アンド・カンパニーに)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。新卒を戦力化して業界平均よりパフォーマンスの高い受注を獲得する営業組織を構築。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。 自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%(現在も8年以上継続中)。その経験を基にしたメソッドが好評で、年間200件以上の研修登壇、800件以上のコンサルティングを実施。『ワールドビジネスサテライト』『日本経済新聞』『日経BP』など取材実績多数。

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脱・属人化、スタートアップにおけるプロセスマネジメント

さて、ここまで9回にわたって、BtoBスタートアップにおける営業組織の仕組み化(脱・属人化)について解説してきました。

10回目となる今回の記事は、これまでの総集編となります。

多くのスタートアップ営業組織では、第1回でもお話したように、「社長や創業メンバーなど、一部のスーパー営業マンによる影響力」が非常に大きく、それゆえに営業が属人的になってしまいがちです。

しかし、組織が大きくなってくると、こういった属人化による3K(勘・経験・気合い)が、深刻な反作用になってしまいます。ここで、「経営者が現場を離れるほど業績が伸びる」ための重要なキーワードがプロセスマネジメント」です。

第2回の冒頭でプロセスマネジメントの5W1Hについてご紹介し、第3回と合わせて、プロセスマネジメントの土台となる考え方を解説してきました。どんなに便利なツールがあっても、背景にある考え方が組織でしっかりと理解されていなければ、威力が半減してしまいます。

①Why/When/Who:何のために/いつ/誰が行うか?
②What:何の指標や情報をウォッチするか?
③Where:どの画面を見るか?
④How:画面を見た後、どうやりとりするか?

また、第4回第5回では、設定された目標を計画へと落とし込むところについてお話しました。

営業マネジメントの現場では、「目標」と「計画」が混在して使われがちですが、「目標」と「計画」の言葉については、切り分けて使うことをお勧めします。

計画策定においては、ルート型・アカウント型それぞれのタイプに応じて、数字をどう計画に落とし込むかのやり方が異なってきます。

ルート型では新規/開拓型の行動量およびコンバージョンを受注計画に落とし込んでいき、「月に何件」「週に何件」のように、具体的に行動がどのぐらい必要かといったブレイクダウンを行っていきますが、アカウント型の場合は、既に顔が見えている顧客に対して、どの顧客(あるいは案件)に対して、いつどんな活動をするのかということを具体化していきます。

また、数字を計画に落とし込む際、特にスタートアップでは「まだ組織にいないメンバー」の戦力を織り込んで計画に落とし込むことがありますので、入社したメンバーがどのぐらいの時間軸で戦力化されていくか、一人あたりどのぐらいの数字を見込めるかの標準モデルを作っておくことについてお勧めしました。

一方、計画をどんなに緻密に立てたとしても、いざ活動が始まってみると、想定外のできごとや、各種課題への対策が毎日のように求められてきます。

そこで、第6回の記事では、予実管理の基本的な考え方についてコメントしました。

KPIに対して計画との乖離が発生したら、単に「足りない数字を増やすように」といった指示ではなく、その数字がなぜ伸びていないのか、具体的にどうすればいいのかに関する仮説をマネジャー側が持っていなければなりません。

そして、数字と数字のつながりを見ながら、優先順位をつけて、メンバーに対して介入を行っていくことになります。

一方、「計画通りKPIが伸びないのに対して後から介入する」だけやっていると、マネジメントが後手に回りがちですし、メンバーからの報告に対して反射的に反応しているだけでは、問題の根っこを改善できません。

そこで、第7回の記事では、メンバーからの報告のみをトリガーとせず、成果を上げるために必要なポイント4点について解説しました。

  1. 目先の案件のみならず、予実のギャップをモニタリングする
  2. 「マークすべき」要注意の商談を一覧化し、常時ウォッチする
  3. 商談の履歴に情報が入力されている状態を作る
  4. 前に進んでいるべき商談が停滞したときのアラートや通知を設定しておく

このレベルでマネジャーがSFAを使い込んでいると、「情報が正しく入力されていないとマネジメントが回らない」ようになりますので、自然と隠し玉は減っていきますし、入力漏れもなくなっていきます。

ただ、ここまでで終わってしまうと、SFAなどの便利なツールは「マネジャーにとっては便利だが、メンバーにとっては細かく管理されるだけ」になってしまいがちです。

そこで、第8回の記事では、組織単位で勝ちパターンを学習していくための営業会議について5つのポイントからお話しました。

特に、決着案件の分析については、情報が正しく入っていることで、メンバーにとっても成果を上げるためのヒントを他の人から学ぶことが可能になります。

  1. フォーキャスト:数字の着地見込みや、目標達成に向けた課題及びアクションをすり合わせる
  2. KPI進捗:方針や戦略に対する状況を俯瞰し、営業組織の「健康状態」を把握する
  3. パイプライン:受注を控えた案件に対して、無駄な取りこぼしを防ぐ
  4. 決着案件:成果を上げるためのポイントに対する認識を揃え、皆で学習する
  5. アクション:やると決めたことが実行に移されているかをモニタリングし、結果を検証する

このように、定期的なPDCAが回っていくことによって、順調に成長していくメンバーもいますが、一方で、どうしても育成に苦労するということもあるかと思います。そのような場合、特定のメンバーに対してどうやって関わっていくかの方針を第9回の記事で解説しました。

  • 行動の量も質も足りないDゾーンは、原因を見極めてスモールステップ
  • 「行動の質は高いが量が課題」のCゾーンには、行動量やアプローチ先に介入
  • 「行動量はがんばっているが質に課題」なBゾーンへの指導は、接戦の勝ちパターンをもとに指導
  • 行動の量も質も高く、頼れるロールモデルのAゾーンにはロープレで力を借りる

ここまでくると、SFAなどのツールを使いこなし、組織的にメンバーを育成して成果を上げることが可能になり、メンバーとしても、マネジャーから適切な指導を受けられるなどのメリットを享受できますが、最後に注意点をいくつかコメントさせて頂きます。

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プロセスマネジメントの成否を左右する、“条件付き絶対”

メンバーの状態を正しく把握し、行動の質や量に合わせた育成ができれば、時系列でKPIの動きを追いかけることによって、やっていることが正しいかどうかを検証できますが、そのためには、行動の質や量に関する基準が必要です。

例えば、行動量については、どのぐらいやっていれば「行動量は充分」と見なせるのか。そういった基準について、「このラインを超えていたらOK」という基準値をメンバーに示さなければなりません。

また、行動の質は、一見すると定性的に見ていく類のものに見えますが、割り算で「●●率」のような形で表現すれば、ある程度の定量的な判断ができます。

案件課率、受注率、平均単価いずれも高いようなメンバーであれば、稚拙な営業活動をしていることは考えづらいでしょう。

しかし、メンバーの状態をこのように定量的に把握していこうとすると、SFAなどに正しく情報が入力されていなければ、特に「行動の質」については正しい把握ができません。

特に、スタートアップの忙しい営業現場では、一刻を争う顧客対応が必要な中で、情報の入力に対する優先順位は落ちがちです。

せっかくの便利なツールも、肝心のデータが入っていなければ活用できません。そのため、プロセスマネジメントをやっていこうとするならば、メンバーに対して情報の入力を促していくことになりますが、多くの営業組織では「基本的に全部入力して」あるいは「入れられる人はできるだけ入力しよう」というような指示が飛びがちです。

しかし、「基本的に全部入力して」と言われると、メンバーとしては「この忙しいのに、細かい項目に全部入力しなければいけないのか・・・」となってしまいますし、「入れられる人はできるだけ入力しよう」では、重要な情報がコンスタントに入りません。

そこで、情報入力の促し方については、「基本的に全部入力して」でも「入れられる人はできるだけ入力しよう」でもなく、例えば「半年以内に検討が行われる情報を聞いた案件は全部、BANT情報とネクストステップを入れて」のように、“条件付き絶対”で、かつ項目を指定するディレクションが必要です。

逆に、“条件付き絶対”に当てはまらない商談や活動については、入力を厳格に管理しすぎず、バランス感をもったコミュニケーションをしないと、メンバーが疲弊してしまいます。

こういったディレクションが徹底されることによって、適切に情報が入り、それをもとにしたプロセスマネジメントがやりやすくなります。

さて、10回にわたって、BtoBスタートアップにおける営業組織のプロセスマネジメントを解説してきました。

目標を着地見込みのフォーキャストで追いかけ、見込みに対してどう進捗しているのかをなるべく手前段階でKPI管理する。そして、受注・失注の要因をカテゴリ化して、受注の成功事例を組織に横展開しつつ、同じパターンの失注を繰り返さないようにする。そして、こういったPDCAを、経営者が関わらなくても回るようにする。

これによって、「経営者が現場を離れるほど業績が伸びる」状態が実現できます。メンバーに任せるほど会社が成長する展望が見えてくれば、もはや「脱・属人化」の域に入ったと言えるでしょう。

この連載記事が、熱い志と想いをもって活動されているスタートアップ営業組織の関係者皆様に届けば、こんなに嬉しいことはありません。

最後までお付き合いを頂き、どうもありがとうございました。

執筆者

高橋 浩一 (たかはし・こういち)

TORiX株式会社 代表取締役CEO

高橋 浩一

たかはし・こういち

TORiX株式会社 代表取締役CEO

東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(その後ブーズ・アンド・カンパニーに)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。新卒を戦力化して業界平均よりパフォーマンスの高い受注を獲得する営業組織を構築。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。 自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%(現在も8年以上継続中)。その経験を基にしたメソッドが好評で、年間200件以上の研修登壇、800件以上のコンサルティングを実施。『ワールドビジネスサテライト』『日本経済新聞』『日経BP』など取材実績多数。

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こちらの記事は2019年06月26日に公開しており、記載されている情報が異なる場合がございます。