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NUMBER
05

入社直後の新人を戦力化する上で重要な「標準モデル」

スタートアップに限らず、売上目標を考える上で「採用」が無視できない要素であることは言うまでもない。しかし、採用した人材がどのくらいで戦力化するのか、またそれを精密に逆算した採用計画を考えられる組織は少ない。

今回は、組織の中で戦力化していくフローまで考慮した採用・育成の考え方について解説する。

執筆者

高橋 浩一 (たかはし・こういち)

TORiX株式会社 代表取締役CEO

高橋 浩一

たかはし・こういち

TORiX株式会社 代表取締役CEO

東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(その後ブーズ・アンド・カンパニーに)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。新卒を戦力化して業界平均よりパフォーマンスの高い受注を獲得する営業組織を構築。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。 自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%(現在も8年以上継続中)。その経験を基にしたメソッドが好評で、年間200件以上の研修登壇、800件以上のコンサルティングを実施。『ワールドビジネスサテライト』『日本経済新聞』『日経BP』など取材実績多数。

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新メンバーが戦力化するまでの「標準モデル」を作る

前回の記事で、ルート型・アカウント型それぞれについて、受注計画の立て方を解説しました。

特にスタートアップでは、いま組織にいない(採用予定の)メンバーによる活動からあがる売上をどう織り込んでいくか、という要素が必要になります。 例えば営業経験者を中途で採用したら、入社して1ヶ月経ったらお客様を担当してもらおう、そして売上はこのぐらいやってほしい・・・こういった想定で、未来の計画に対して、「これから入る予定の人材」が稼ぐ予定の数字が織り込まれていきます。

また、新卒採用をやっている会社であれば、新卒メンバーがどのぐらいの時期から戦力化し、一人あたり平均してどのぐらいの数字を売上として期待できるかというのがあると、新卒採用によって増やせる売上インパクトが見えてきます。

中途か新卒かを問わず、新しく加わったメンバーがどのぐらいで1人前になっていくかについて「標準モデル」があると非常に便利ですので、サンプルとしてご紹介しておきます。

たとえば、入社して間もないメンバーが「1人前になるまで」を、ざっくりと言語化してみます。配属後から、ある程度1人前になるまで2年かかるとしたときに、それはどのような段階を経ていくのか、そして、そのレベルのメンバーは営業活動をどのぐらいのペースで進めていくのか。さらには、1人前になっていると、どのぐらいのレベルのお客様や案件を担当していることになるのかといったことまで、大まかな標準モデルがあると、計画を立てるのに便利ですし、特に新しくメンバーが増えていく局面では、戦力化までの見通しが立ちやすくなります。

このとき、案件の進捗ペースについては、それぞれのステップに関するリードタイム(どのぐらいの時間がかかるか)やコンバージョン(何%が次に進むのか)に関する目安があると望ましいです。

必ずしもこの目安どおりに進行させることが目的ではなく、「この案件のペースは順調なのか、それともビハインドなのか」といったことを判断するのに、基準が定まっていた方が便利です。

また、どのぐらいの規模のお客様を何社担当して・・・といったことについても、規模感のイメージがあると、本人や上司が「自分の成長ペースは順調なのかどうか」を把握しやすくなります。

この標準モデルをどんどんバージョンアップしていくことで、「新しくメンバーを増やしたときに、数字の見込みが立ちやすい」状態になります。

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新メンバーの成長イメージを「ルート型→アカウント型」で考える

メンバーの成長ステージが上がっていくと、より大きなお客様を担当できるようになり、難易度の高い案件を遂行できるようになっていきます。

即戦力レベルでなければ、入社したメンバーは「ルート型→アカウント型」の世界観で成長していくことになることが多いです。

入社初期の段階は、いきなり大規模で難易度の高いお客様をメインで担当することは珍しく、先輩のフォローに回りながら仕事を覚えていくでしょう。

その後は、既存顧客のメンテナンス中心になる場合もありますが、スタートアップの場合、新規開拓が重要ですから、「入社して間もないメンバーが新規を担当する」ことが多いかと思います。

そうすると、最初の方は、「とにかく行動量→次に行動の質」というルート型の成長パターンを目指していくことになりますが、徐々に顧客基盤が育っていくと、取引規模の大きいお客様が出てきます。

取引規模が大きくなったお客様では、複数の関係者へアプローチしながら大きな予算に対してチャレンジしていくことになるので、アカウント型の世界観に近くなっていきます。

この段階までくると、「既存の大規模顧客をしっかり守るのか、新規開拓の行動量を増やすのか」のバランスが難しくなってくるので、マネジャーは、顧客の引き継ぎを采配したり、優先順位に関するディレクションをしたりする必要があります。

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メンバーの状況を「ルート型」「アカウント型」でモデル化する

先ほど申し上げたように、ルート型とアカウント型の世界観が両方混在した状況になると、「既存の大規模顧客をしっかり守るのか、新規開拓の行動量を増やすのか」のバランスが難しくなります。

ルート型:行動の量を増やし、次に行動の質
アカウント型:情報戦を制して、提案の説得力を上げる

上記がそれぞれ鍵になりますが、新規開拓の行動量を増やしながら1社のアカウントについてじっくり活動するのは難しいですし、大口顧客を抱えながら新規の開拓活動をするのも困難です。

どうしても中堅メンバーはルート型とアカウント型の両方、という状態になってきてしまうことが多いと思いますが、なるべく、混在状態にあるメンバーを増やさず、ルート型もしくはアカウント型に集中できるようにして、顧客リストを配分していくのがよいでしょう。

このように、

  • 一人のメンバーが成長するまでをモデル化する
  • 営業のKSFを「ルート型」「アカウント型」のフレームワークで考える

ことによって、受注計画の際の力点を踏まえてどう組織運営していくかが考えやすくなります。

次回は、どうやって日々の営業活動をウォッチしていき、予実管理につなげていくかを解説します。

執筆者

高橋 浩一 (たかはし・こういち)

TORiX株式会社 代表取締役CEO

高橋 浩一

たかはし・こういち

TORiX株式会社 代表取締役CEO

東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティング(その後ブーズ・アンド・カンパニーに)で勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。新卒を戦力化して業界平均よりパフォーマンスの高い受注を獲得する営業組織を構築。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。 自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%(現在も8年以上継続中)。その経験を基にしたメソッドが好評で、年間200件以上の研修登壇、800件以上のコンサルティングを実施。『ワールドビジネスサテライト』『日本経済新聞』『日経BP』など取材実績多数。

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こちらの記事は2019年06月19日に公開しており、記載されている情報が異なる場合がございます。