スタートアップの成長は、決済システム活用で加速できる。著名企業のグロース立役者、GMOペイメントゲートウェイの実態に迫る

インタビュイー
田口 一成

2008年GMOペイメントゲートウェイ入社。ソーシャルゲームやSNS系のスタートアップ営業を担当し、その成長を決済システム面からサポート。現在は同社常務執行役員として従事。2019 年より、同社グループ会社でスタートアップや個人のお客様に適した決済サービスを提供するGMOイプシロンの代表取締役社長に就任。2020 年には日本初となる「昨日までの売上を今日使えるVISA ビジネスカード 『Cycle byGMO』」をリリース。2022 年5月にはスタートアップが成功するために設計された新しいオンライン決済サービス『fincode byGMO』をローンチ。

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2019年末、Andreessen Horowitzの著名投資家Angela Strange氏が「Every Company Will Be a Fintech Company(すべてのスタートアップがフィンテック企業になる)」と題したプレゼンを行った。スタートアップが自社プロダクトに金融の要素を付加するのは容易なことではない、と言うのが少し前までの常識だった。だが今や、構想するくらいなら当たり前、そんな時代が来ているといっても過言ではない。

グロースするにつれ、自社発の経済圏構築を求めるようになるスタートアップは珍しくない。自社の経済圏構築とは、フィンテック企業になり得ることと同義であるといえる。日本でも新たな潮流として「SaaS×Fintech」という分野が盛り上がりを見せている(LayerX福島良典氏のnoteなど参照)。

この現状を、時代に先駆けて支えてきた「知る人ぞ知る存在」が日本にもいる。総合的な決済関連・金融関連サービスを展開するGMOペイメントゲートウェイ(以下、GMO-PG)が、いわば“黒子”として、大企業からスタートアップまでさまざまな企業へのサービス提供に力を入れてきたのだ。そこで今回は、同社で長年スタートアップの決済に携わってきた田口一成氏を招き、スタートアップエコシステムへの貢献に力を入れている理由や描く未来像を聞いた。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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たかが決済、されど決済。
安易に選ぶと取り返しのつかないことに

冒頭で触れたように、どのスタートアップもフィンテック化を目指すのが普通になっていく時代になるかもしれない。ところが、フィンテック会社になるどころか、その前段になる「決済システムの導入」で課題を抱える企業が実際には多いというのが田口氏の見解だ。これは他企業の経営を否定しているのではなく、実態としてそうなってしまうくらい、スタートアップが的確に導入検討をするのが難しい、ということを意味している。

田口PMFを達成して、さあグロースさせるぞ!というタイミングで、決済に関するUXが大きなボトルネックになる可能性があるんです。しかも残念ながら、そのことを現場で予見するのは非常に難しい。

伸び悩みを感じ、それをきっかけに調査を進めていってようやく気づくことができるくらいのものなんです。

田口氏の表情は深刻だ。決済システムが成長を止める事態とは、一体どのようなものなのだろうか。中小企業やスタートアップの実情に触れながら、次のように指摘する。

田口決済システムというのはそもそも、開発現場で重要視されにくい。中小企業やスタートアップといったリソースが潤沢でない現場ではなおさらです。自分達の利用シーンだけを念頭において「クレジットカードが使えればそれでいい」といった感じで進めてしまうところもあるのです。

しかし、企業の成長に伴ってプロダクトやビジネスモデルが多角化していくと、決済関連の課題が多く出てきます。

例えば、決済手段の拡充は最たる例ですが、サブスクリプションサービスを展開するなら多様な課金体系を設定・管理できるか、プラットフォームビジネスを行うのであれば増加する販売者(店子)をいかにマネージするかなどの、対応が必要です。

こうした細かい点において、的確な対応ができなければ、UXを毀損する大きな原因となります。その結果として、ユーザーが離れ、成長が止まってしまう。将来を考えずに決済システムに関する意思決定を行うと、このような事態を招く可能性があるんです。

もちろん、課題に気づいたタイミングで決済システムを刷新したり、契約していた決済代行会社を変更することも不可能ではない。だがそれを進めるのは、意外と難しい。

田口決済システムの変更は、実は多方面に影響を及ぼします。プロダクト開発面で大きな負荷になるんです。

会員サービス系の事業を行っているスタートアップの場合は、登録会員の継続利用に迷惑がかからないよう、UX観点でのさまざまなリスクを検討しなければならなくなるでしょう。再登録が必要となる場合もあります。

また、当然貴重な開発リソースを投下する必要があり、切替前のシステムとの二重運用も一定期間は必要となってきてしまいます。

このように、対応の難しさという高いハードルがあるので、ローンチ前くらいのできるだけ早い時期にプロダクトの中長期的なフィンテック化も念頭に置いて検討できるといい。それが難しいんですけどね(笑)。

スタートアップエコシステム発展のために、決済システムが重要な役割を担うことが、少しでも伝わってきただろうか。FastGrowが起業家の取材を続ける中でも「黒子といえばGMO-PG」という評価を聞く機会が増えてきている。

だが、その重要性を理解している人はまだ多くない。そこで、この課題にいち早く取り組み、一部の急成長スタートアップとの協業でさまざまな成果を創出してきた影のトップランナー、GMO-PGの思想から、あるべきスタートアップ支援の哲学を学んでいきたい。

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3事業で伴走するエコシステム構想。
スタートアップの持続的な成長を一手に支援する

そもそも、GMO-PGは、なぜスタートアップに着目しているのだろう。田口氏は10年以上、決済システムの開発と提供に携わってきた。その中で特に意識しているのが、「成長速度の加速」だ。

田口10年以上スタートアップの決済関連支援をしてきたなかで感じるのは、やはり大企業や中堅企業より成長スピードが速い分、支援内容の伸びしろも大きいということ。しかもそのスピードは、この10年の間にどんどん速くなっていますね。

以前はゼロからフルスクラッチで検討し、1年以上かけて仕込みを行っていたようなプロダクトでも、今ではPoC的な作り方が主流になっており、3~6カ月ほどで立ち上げに至るケースがみられます。

事業スピードが速まる分、先ほど述べたグロース期の伸び悩みに直面する時期も前倒しになっていると言えるでしょう。開発リソースの逼迫度合いも高まっているはず。

そんな時代背景がある中で、GMO-PGでは、決済代行事業・金融関連事業・決済活性化事業の3つを展開している。主力事業である決済代行を起点に、新たなクライアントニーズをつかみ、事業・プロダクト立ち上げの意思決定を繰り返し派生させてきた。

中でも、企業ビジョンとして目指したいこととマッチするニーズに事業領域を絞り、金融関連と決済活性化の二つの領域で深耕していくことにしたのだ。まずは金融関連の事業について聞いてみたい。

2022年9月期第3四半期 IRイントロダクションから抜粋

田口もう何年も前ですが、EC事業を展開するクライアントさんにまずは決済システムを導入していただき、支援を始めた頃。グロースに伴い、売り手と買い手の送金をシームレスにできるようにしたいというご要望をお聞きしました。

ですが、たいていの決済代行会社さんはこの要望をお断りしてしまうんです。なぜなら、送金は銀行などの金融機関が担っている仕事であり、自分達の仕事ではないと考えてしまうから。

しかし、私達はそのように考えることをせず、挑戦しようと決断し、送金サービスを実際に立ち上げました。私達がお金を一時的に預かる仕組みを構築したんです。資格が要るので、法律に則って進めました。資金移動業者の資格も持っているGMO-PGだからこそできるサポートの方法ですね。

金融関連事業は、送金サービス以外にも広がりを見せる。給与を前払いする『即給 byGMO』や、債権回収コストなどを削減する『GMO後払い』『GMO掛け払い』、ファイナンスやキャッシュフローを安定させる早期入金サービスやBtoBファクタリング、成長資金を融資する海外レンディングなどをグループで提供している。

そして決済活性化事業は、ホリゾンタルに利用が可能な広告運用代行などのマーケティング支援や、業界特化型でプロダクト化させた診療予約システム『メディカル革命 byGMO』などを展開中だ。

では、これらの事業は、スタートアップ企業の成長にどのように絡んでいくのか。田口氏はそれを、段階を踏んで説明する。

田口ファーストフェーズは決済代行です。企業の開発サイドは事業に集中していただきたいので、決済のところは最小限で対応できる仕組みをしよう。そう考えて開発し、2022年に新プロダクトとしてローンチしたのが、GMOイプシロンが提供する『fincode byGMO』です。

先ほど説明したように、グロースするにつれてビジネスモデルが増え、課金モデルなどが加わってくると、決済の部分で提供すべきUXの在り方に変化が起こる。そんなタイミングでも、この『fincode byGMO』が導入されていれば、簡単に対応が可能です。

グロースを順調に実現できれば、次なる成長のための種まきが必要になり、ファイナンス関連のニーズが高まる。そこで、金融関連と決済活性化の事業で本格的な支援を始める。そうして新たな事業が起これば、『fincode byGMO』などでまた支援を拡大する。こんな流れで、継続的な企業成長を支援させていただく絵図を描いています。

まさに「スタートアップの事業成長を、確実に支援し続ける仕組み」が構築されているように感じられる。田口氏をはじめとしたメンバーが、スタートアップに対する理解を深め、本気で支援をしていきたいと考えているからこそ、こうしたビジネスモデルを構築してこれたというわけなのだ。

田口ここ数年で印象的なのは、若い起業家さんから「自社の経済圏を創りたい」という声を聞くようになったこと。“フィンテック化”への道をたどろうとする思想が広がってきているわけです。そうすると、様々なプロダクトにおいて新しいお金の動きが生まれていきますから、我々の活躍できるシーンが増えていくかもしれません。楽しみですね。

経済圏といえば、楽天、ソフトバンク、docomoなどが代表的だろう。統一アカウントの導入やポイント付与を複数のサービス間で可能にすることで、ユーザーが「便利だ」「お得」と感じやすくなる。こうして消費者を囲い込み、複数のサービス間で資金を循環させる新たなビジネスモデルとして、数年で急速に広がった。

田口こうした新しいニーズを満たすためにも、会社運営の中で強く意識していることがあります。それは“営業力”です。

ここまでプロダクトやソリューションについて、緻密な戦略に基づいて展開されてきたという点に迫ってきた。だが意外にも、田口氏らは技術力や開発力に加え、営業力も意識しているという。これはどういうことなのだろうか。

田口目指すべき将来の姿まで見通したシステム開発を進めるのなら、SIerと呼ばれる企業さんに相談しようという考えかたがこれまでは多かったでしょう。最近はこの事業領域で勝負を仕掛け、価値を提供できるようになってきています。

当社では、システムを納品して終わりというかたちには絶対になりません。むしろ、ご導入いただいたところからお付き合いがスタートする、そう思っているんです。だから、顧客企業の事業領域や抱える課題に対し、業種業態別で営業チームを分け、その業界の決済のプロとして対応していくわけです。これが大きな特徴と言えるでしょう。

ここでまさに、先ほど説明した3つの事業領域が活きてきます。ある物販系スタートアップさんに対して、決済サービスで処理された売上の推移を見ながら短い日数で、次の投資を実行するための資金融資を実現できた例などがあります。そこからさらにマーケティング支援などにつなぐことができます。

営業チーム内で顧客情報を取得し、社内で共有し、新たなプロダクトやソリューションの提供を通じてさらなる課題解決に導くこともできる。そんな営業力を磨いています。

巧みな提案力を武器に、決済システム導入だけでなく、関係性を強化してフィンテック化につながるさまざまな支援を実現している。このことが、スタートアップのさらなる成長や、その先に実現される社会変革の基盤となっていくのだ。

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3か月でリリースした機能も。
爆速の開発でタイムリーに課題を解決

名だたるベンチャー企業に対し、創業期から伴走してきたGMO-PG。顧客のベンチャー企業から寄せられる声として特に多いのが今後の『fincode byGMO』への期待だと、田口氏は言う。

これは拡張性への期待と言い換えられる。田口氏は、プロによるハウスクリーニングや修理サービスを展開する急成長スタートアップ、ユアマイスターにおける先行導入期間のディスカッションについて振り返った。

田口『fincode byGMO』というプロダクトの提供価値は、まず「質の高い決済手段を簡単に取り入れることができる」という点で考えています。それができれば、その先の拡張も期待ができる。この部分を、ユアマイスターさんといろいろ話してきました。

具体的には、決済周辺サービスをより簡単に取り入れられるようにしていくということですね。私たちがすでに提供している金融関連サービスなどを念頭に置いています。すでに支援実績のアセットやノウハウはありますから、『fincode byGMO』に適切なタイミングで載せていければいい。

ユアマイスターさんが今後、事業やプロダクトを多角化していく場面では、確実に力になれるでしょう。また、同じように支援できるスタートアップさんも少なくないと思います。

中長期的な視点を忘れず、柔軟かつ本質的な開発を目指すと強調する田口氏。ここで初めて強調されたのが、開発力だ。決済というセンシティブな事業領域で、かつ上場企業として大きなエンジニアリング組織を持つ組織としては、かなりのスピード感を維持している。

顧客のニーズに応え続けるため、アジャイル開発を徹底している。工数とリリース枠は“3カ月単位”とし、新たに把握できたユーザーニーズを迅速に抽象化して開発を検討するのだ。

しかもリリース予定数日前のタイミングでも、ニーズを細かく確認する中で開発内容の変更を決めることがあるという。

柔軟な方針転換の中で次々と新機能がリリースされていくスピードは、連携相手のスタートアップが驚くほどだという。

田口スピードにはかなりこだわっています。ただ、やはり難しいのはバランスですね。当たり前のことですが、『fincode byGMO』が本来目指すべき姿を見据えながら、お客様のニーズを迅速に満たす開発を両立させなければなりません。

私も開発チームに入っていて、ディスカッションすることも少なくありません。最終決定についても、権限委譲している部分はもちろんありますが、どうしても迷うような難しい判断は、私自ら責任をもって下すようにしています。

「たった数社が言っているだけのニーズであっても、そのお客様を目の前にすると、やはり悩む」と田口氏。「ですから、そのニーズを数社から数十社に広げられるアクションを考え、取り組んでいます」と、スタートアップの“ひとりプロダクトマネジャー”かのようにそのやりがいを語る。

田口繰り返しになりますが、やはり開発力であり、営業力。決済のプロとして、開発と提案の質は、絶対に他社に負けないと自負しています。

そしてこの高い質を支えているのは、国内屈指のお客様ですね。『fincode byGMO』のプレスリリースではユアマイスターさんやLayerXさんに先行採用いただいたと公表しましたが、他にも以前からご協力いただいているスタートアップさんはたくさんいます。そしてこちらのインタビュー記事では、開発過程においてWebPay創業者の久保渓さんやメルカリ創業メンバーの石塚亮さんのアドバイスもいただいたと話しました。

さまざまな領域のデータやビジネスモデル、スキーム、運用の事例や知見を蓄積してきたことが、私たちの持つ大きな強みだと思います。

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あらゆる産業をFintech化に導き、日本社会を変革する

さて最後に、これから、『fincode byGMO』をどのようなサービスにしていきたいと考えているのか、聞いていきたい。

田口氏の回答は、「スタートアップが成長したときに困らないサービスにしたい」だ。それは何も、スタートアップに限定したサービスにしたいというわけではない。スタートアップが成長したときに困らないサービスは、イコール「すでに成熟期にある企業の人たちも不自由なく使えるサービスになる」のだ。

田口決済代行から始まり、金融関連サービスを提供し、さらに決済活性化サービスを提供する。こうした流れで、フィンテック企業になる上でトータルサポートできるのが、当社にしかできない関わり方だと思っています。

ただ単に決済手段を提供するだけではなく、新たな決済手段も含め、寄り添えるサービスを一緒に作っていく。それができる唯一無二のプロダクトに、『fincode byGMO』を進化させていきたいですね。

実は田口氏の胸にも、危機意識はある。10年ほど前と比較して、さまざまな企業が金融関連サービスの市場に参入しやすくなっていると指摘。トップランナーとしての地位を確立しているようにも感じられるが、まだまだ難しいチャレンジを続ける必要があると気を緩めずに語る。

田口「IT業界において決済や金融が気になったら、まずはGMO-PGに聞けばいいよね」という世界観を、絶対的なものにしていきたい。これが最終的な目標です。

今も徐々に近づいているとは思いますが、世の中すべての企業さんから思っていただけるまではまだまだ長い道のりがあります。気を抜いてる暇はありませんね。

3つの事業領域で新たなプロダクトや支援事例を生み出し続け、実直に取り組むのみ。これが田口氏のブレない思いだ。

田口私たちが支援できる相手は、スタートアップだけでなく、中小企業から大企業にまで広がりますし、業界や業種・業態も多様です。デジタル化が遅れているところでは、今すぐアクセルを踏んでやっていきたいですね。例えば、医療や不動産など、紙を扱うことが多い業界でしょうか。大企業にアプローチしながら、『fincode byGMO』の親和性が特に高いスタートアップにも同時に価値提供し、変革を起こしていきたい。

ただ、例えば医療業界の場合、決済や金融に関する規制などがありますから、当社だけで入り込もうとしても難しいでしょう。だから、業界で特に重要な業務領域のソリューションを持っている会社とタッグを組んで取り組むようなシナリオを作っています。

こうしたシナリオは、スタートアップにとっても魅力的なものだろう。医療や不動産といったDXの可能性の大きな業界にチャレンジしようと考える起業家や事業家も少なくない。そんなチャレンジの基盤となり、力強く支え続ける存在に、GMO-PGはなっていくわけだ。

あらゆる業界で、これから大きな変革が起こっていく。その主体は、あくまで従来からのプレイヤーであったり、新進気鋭のスタートアップであったりするかもしれない。だが、その黒子となっているのは常にGMO-PGだった、そんな世界を実現しようと、田口氏らは実直に取り組むのみなのだ。

こちらの記事は2022年09月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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