時代を作る、新・動画コミュニケーションとは

インタビュイー
石田 貢
  • 株式会社フレイ・スリー 代表取締役CEO 

1977年金沢市生まれ。 (株)フレイ・スリー代表取締役CEO。デジタル広告黎明期にキャリアをスタートし、大手企業サイトを多数立ち上げた後、ピラミッドフィルムグループにて映像・3DCGを活用したブランディング、デジタル広告キャンペーンのクリエイティブを展開。国内外の広告賞を多数受賞し、2012年にフレイ・スリーを設立。スマートデバイスとソーシャル領域を中心に、クリエイティブバックボーンを生かしたデジタル広告ソリューション、サービスの企画開発を行っている。

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2012年に創業し、2016年にテレビCMなど広告を手がけるピラミッドフィルムからスピンアウトしたフレイ・スリー。代表を務める石田貢氏は、映像や3DCGを活用したブランディング、デジタル広告で国内外の広告賞を多数受賞している。

そんな同社が展開するのが、全国の中小企業が自ら簡単に動画広告を作って配信できるソリューション「1ROLL(ワンロール)」。

新しい時代の新しい動画広告を確立させようとしている。具体的にどのようなサービスなのか、石田氏に話を聞いた。

  • TEXT BY TOMOMI TAMURA
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加速度的に変化した、広告業界の10年

石田私は、インターネット広告初期の2000年からWeb制作に携わり、ブロードバンドの誕生によって映像やCGを使った動画広告が作れるようになった2004年からは、テレビCMの制作会社・ピラミッドフィルムでキャリアを積みました。

プロデューサーとして、大手企業のテレビCMとインターネットを組み合わせた新しい試みの広告を作り、分社化した会社の取締役に就任。映像と3DCGを使ったインターネット広告を得意としていました。

しかし、2007年頃からSNSとスマホが浸透し始めたことで、広告の流れは徐々に変わり始めます。

スマホで誰でも情報発信できるようになった社会では、大手企業が莫大な資金を投下して、一方的に情報を発信する広告が適さなくなってきたのです。そこで、ユーザー参加型の広告など、新しい時代に求められる広告を模索し始めました。

石田たとえば、2009年はスバルのスポンサーで「マイミクGP」というプロモーションを展開。ミクシィ(当時国内利用者最大数のSNS)の友達同士が協力しあうイベントで、マウスで自由に描いた線(コース)を友達につなげていき、一番多くコースをつなげると優勝するというもの。「動画モード」で再生すると、描いた線の曲線にあわせて仮想の道がCGで再現され、都会の夜の道を車が駆け抜けます。アクロバティックな走行が人気を呼び、約35万人もの人が遊んでくれました。

マイミクGP

また、九州電力グループのスポンサーで「THE BROAD BAND VOCAL AUDITION」を実施。これは、「あなたの歌声が、CMデビューする」をコンセプトに、WebサイトもしくはカラオケDAMステーションから、ボーカルオーディションに参加できるというプロモーションです。顔写真をエントリーすると、自分が歌う仮想のPV映像を見られました。

THE BROAD BAND VOCAL AUDITION

新たな広告のあり方を模索したことで、これらを含め、2007年から国内外で合計19の広告賞をいただいたのですが、その間、より一層SNSとスマホの勢いは増していきました。そして、一方的に見せられる広告は、徐々に嫌われる存在に。

「本当に受け手が喜ぶコンテンツを作るために、まったく新しいことをやらなくてはいけない」と危機感を抱くようになり、2012年にフレイ・スリーを創業しました。

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動画制作プロの頭の中を分解し、システム化した「1ROLL」

石田個人が情報発信できるようになったことで、新たな可能性を見出したのは、日本全国の中小企業の情報発信です。今までCMなどの動画広告は、数千万円から数億円の予算をかける必要があったので、一部の大企業しか作れませんでした。

でも、動画を活用できる場は広がっているので、商品やサービスの購買意欲のある人に対して、最適化された動画コミュニケーションで接点を持てたら、もっとビジネスは広がるはず。テクノロジーを使えば、企業自らが簡単にプロのクオリティで低コストの動画を作り、情報発信できるようになると考えました。

そこで開発したのが、これまでの映像制作ノウハウを詰め込んだ「1ROLL」というソリューションです。

これは、プロが動画制作をする際に行う、企画・構成・演出・音楽・編集をテンプレ化し、誰でも簡単にスマホで動画広告を作れるというもの。数万円からの月額で利用するサブスクリプションモデルのクラウドサービスです。

1Roll for Business - ようこそ、動画作成の未来へ。

たとえば、Amazonさんがおもちゃの商品ページで導入したときのこと。今までは音が出る、光る、動くといった商品は写真やレビューだけでは判断しづらく、結果的に商品ページを離れてしまうユーザーが多かったんですね。でも1ROLLで作った動画を入れたところ、売り上げは倍増しました。

また、京都でオフィス用品や防災用品を販売している7名の小さな企業カスタネットさんは、社員皆さんで毎日動画を作って配信したことで黒字化し、今年度は最高益を更新しました。ちなみに、平均エンゲージメント率は7%で、最大は14%とかなり高い数値です。

【動画No.0017】光ってお知らせ!蓄光ラベルがテプラで作れるんです!!KING JIM 「テプラ」PRO 蓄光ラベル SY24YD をご紹介します。

これは、大きな広告予算を持たない中小企業も、1ROLLで簡単に効果のある情報発信ができることの証明。最近では、青森県庁が発信する観光向け動画でも約8%のエンゲージメント率を出すなど、高い効果が見られるようになっています。

受け手が欲しい情報を適した形で配信すれば、嫌われる広告にはならない。日本に埋もれている素晴らしいモノや情報は、欲しい人に適切に届けられると実感しています。

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「スキップ」や「×」を探さない動画広告をつくり、届ける

石田ただ、動画が身近な存在になったのはここ数年の話です。だから動画広告は「制作会社に作ってもらうもの」という固定観念が、どうしてもあるんですね。そこで、長年プロとして作ってきた私たちが、制作から配信までをワンストップで手がける、インターネット動画広告事業も展開しています。

これは、ハイエンドな動画広告を配信したい企業向けの事業で、1商材につき複数ターゲットに向けた動画を制作し、効果検証までワンストップサービスとして提供したり、企業からの一方通行な発信ではなく、インフルエンサーからターゲットに向けて発信するなど、さまざまな手法を考えています。

株式会社LIXIL様 事例

今、世の中に出回っているインターネット動画広告の多くが「テレビCM的」で、なかにはテレビCMをそのままインターネットで使いまわしているケースも見られます。

私はそれでは意味がないと思うんですね。動画が流れ始めた瞬間に「スキップ」や「×」を探すようでは、誰も幸せにできていません。インターネットに適した新しい動画広告の確立に、挑戦したいと考えています。

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時代は変わる。現状は常に疑いながら新しいチャレンジを

石田私は2012年にフレイ・スリーを創業するまで10年以上、CMや動画広告など最先端のクリエイティブに携わってきました。でも、流行りというものは光の速さで変わっていくのが広告の常。過去の成功体験にすがっていたのでは、ある日突然、不要な存在になってしまいます。

実際、スマホが浸透し始めた頃、パソコンで見ることを前提としたFlashを使ったスペシャルサイトが否定されたタイミングがあったんですね。「スマホで見られないから意味ないよね」と。

時代は変わっていくので、自分たちが過去に作ったものは否定的に見て、別の可能性を追求しないといけない。常に現状を疑いながら、いいクリエイティブは何か、いい発信方法は何かを考えて、自分たちで時代を作っていく必要があると考えています。

特に今は、情報量と情報消費量に大きな乖離がある、情報過多の世の中ですから、より一層、生活者が本当に欲しい情報を適した方法で伝える必要があるのです。

これから5G時代が到来すれば、スピードと配信コストの制約が緩和され動画コミュニケーションはもっと身近になるでしょう。

そうなったときに注目したいのが、メディアのマネタイズの仕組みが変わるかどうか。従来の広告でのマネタイズではなく、個人が配信する良質なコンテンツに課金できるような文化になれば、良いコンテンツを持つ人が活躍できる世界になる。そのとき、1ROLLはもっと貢献できると思っています。

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新しい動画コミュニケーションで次世代を作る

石田現在、1ROLLの導入社数は100社未満ですが、動画本数は1万5000本を超えており、とてもヘビーに使っていただいています。機能拡張や効果測定を強化してより良いサービスへと進化させ、2021年には1000社が使ってくれるサービスにしたいと考えています。

今後、動画配信アプリやライブコマースなどで、当たり前のように自己表現をしている若い世代が社会に出てくると、動画広告の世界はもっと変わるでしょう。

私たちにも想像できなかったような方法で、受け手が喜ぶコミュニケーションを生み出せる可能性がとても高いので、この領域は若い人ほどチャンスがあると思います。

そうした、動画ネイティブな若い人はもちろん、サブスクリプション型の動画サービスや、広告を制作から配信・効果検証・改善提案までワンストップで手がけたい広告業界の人など、いろんな経験を持つ人でチームをつくりたいと考えています。

いろんなことができる時代だからこそ、常識にとらわれないチャレンジをし続ける、フレイ・スリー。共感する方はぜひ一緒に、次の動画コミュニケーション時代を創造しませんか。

こちらの記事は2018年11月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

田村 朋美

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