arrow_back JOURNALApril 2018 arrow_forward
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
22
23
24
25
26
27
28
29
30
01
02
03
04
05
closeCLOSE
INTERVIEW
橋本 賢二
18-04-16-Mon

来たる「人生100年時代」
就活生が押さえるべきポイントは?

TEXT BY HITOMI NAKAMURA
PHOTO BY YUKI IKEDA

2016年に出版されたリンダ・グラットン著「ライフ・シフト」。

ベストセラーにもなった本書では、
2007年に日本に生まれた子どもの50%は107歳まで生きると書かれているように、
「100年生きる時代」はもう目の前に迫っている。

政府も「人生100年時代構想会議」を設置し、
人生100年時代を見据えた政策のグランドデザインを始めた。

100年時代に活躍できる人材。

どんなスキルを身につけていけばよいのか。

経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐の橋本賢二は
「興味のあるものに本気で取り組み、世界を閉じずに、いろいろな人とつながること。

それが将来のキャリアに生きてくる」と言い切る。

橋本 賢二 (はしもと・けんじ)
経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐(取材時点)
橋本 賢二 (はしもと・けんじ)
2007年人事院採用。人材局企画課において国家公務員の任用制度や採用試験の見直し、給与局給与第一課において国家公務員の給与を改定する人事院勧告のとりまとめを担当。2015年から経済産業省経済産業政策局産業人材政策室室長補佐として出向し、産業界の成長に資する人材育成に関する施策を担当。各地で教育関係者や企業人事担当者に向けて、「これからの時代に求められる人材像」や、キャリア教育の重要性を説く講演もしている。
経済産業省
経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐(取材時点)
閉じる

100年時代に向けた国の人材政策とは

橋本さんが所属する産業政策局 産業人材政策室はどんなことを行っている部署なのでしょう。

橋本産業界に資する人材に関する施策を見ている部署です。教育改革、大学改革、雇用環境、人材育成のあり方など、教育から企業の人材育成までと幅広く“人材”について議論しています。

今、雇用環境に大きな影響を与えているのが、人口減少、第四次産業革命、働き方改革です。特に働き方改革については長時間労働が規制されたことで、限られた時間で価値を出す働き方に変えていかなければならなくなりました。

つまり、活動できる時間が限られた分、生産性を上げていかないといけないということです。そのため、どうすればそれが可能になるのか、雇用システムだけでなく、企業の視点、個人の視点の双方でも議論しています。

その中で重要施策の一つがリカレント教育。これからは、生涯にわたり学び続けていくことが重要で、その学びの環境を含めてどのような環境があるべきかを検討しています。

リンダ・グラットン著「ライフ・シフト」では、2007年に生まれた人の50%は107歳まで生きると書かれています。100年時代は本当にやってくるのでしょうか。

橋本言えることは、寿命は確実に延びているということ。健康寿命も伸びており、現在でも60歳で大人しく引退して過ごしている人はいません。

一方で、少子高齢化や人口減少で働き手も不足しているので、これからの時代はシニアや女性など、これまで活躍が限られていた人たちも活躍できる社会に変えていかねばなりません。

そのために企業サイドも従来のようなフルタイムに限定した働き方を変えていく必要があります。また、自分の人生が長くなるので、自分の人生をもっと充実して生きられるようにする必要があります。

そこで重要になるのが、学び続けられる場所。社会の変化が激しい中で、学び続けられなければ、働く場所もキャリアの選択肢も狭まっていきます。

学び続けることが当たり前の時代に

学び続けられる場を国も企業も用意して行くということですか。

橋本内閣官房では「人生100年時代構想会議」を設置し、これからの社会を見据えた人づくりについて議論しています。テーマの一つがリカレント教育の充実です。

OECDの調査によれば、日本の25歳以上の大学院進学率は各国と比べても本当に低い。一方、欧米では学び続けることがキャリア形成の一環として考えられているので、社会人が大学や大学院に入るという例は珍しいものではないです。

学び続けることで、次へのキャリアを切り開いていきます。一方、日本では社会に出てからの主な学びの場は、企業主体のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング。実地訓練)しかありません。

だからこそ、所属している企業の外で学ぶリカレント教育を強化していかねばならないと思っています。

ビジネススクールやロースクールなどの社会人向けスクールが一時期流行りましたが。

橋本それも一つですが、もっと手軽に学べるものがあるといいと考えています。欧米の社会人の進学率が高いのは、専門性が細分化されて1年で学位が取れるなど、社会人が学びやすいい環境が整っているからです。

なので、日本でも例えば会計だけ、マーケティングだけというようにもっと細切れにして学びやすい環境を作っていくことが大切です。

大学院などの教育機関だけでなく、民間の教育サービスなども活用しながら、柔軟な学びの場を今後、作っていかねばなりません。

学べる制度だけ用意されたとしても、企業の側も学びを推進するような機会を提供する、または柔軟な働き方を支援するように変わらなければ利用は進まない気がします。

橋本働いた時間や会社にいる期間で評価するのではなく、個人が生み出したアウトプット、つまり成果で評価するようになると、これまでのように9時17時で働く必要はありません。

例えば今日は午後から大学に行くので、勤務は午前中のみ。その代わり、翌日は昨日の分を取り戻すため少し長めに働くというような、柔軟な働き方ができる方向に変わっていくことが大切です。

キャリアのレールはない。「ありたい自分」を見つける

学び続けることが必要になるなど、人生100年時代では、これまでのキャリアの考え方では上手くいかないということですね。これからのキャリア構築で重視すべきことについて教えてください。

橋本確かなことは、どうなるのかわからないということです。例えば創業して間もない会社が提供するサービスが数年で世の中に浸透して生活スタイルを大きく変える例もあります。

変化が激しい時代なので、5年後、10年後でさえも、どうなっているかはわかりません。

つまり、これまでのように大学を卒業して企業に就職して40年働き、その後はゆっくりと老後を生きていくというようなキャリアのレールはないと考えるべきなんです。

自分でレールを敷いていくということでしょうか。

橋本自分で道を切り開くマインドを持つことが重要になります。若いときからそういうマインドを持っていれば就活や転職も、「どんな会社に就職したい」「どれぐらい稼ぎたい」ではなく、まずは「自分がどうありたいか」を考え、次にそのありたい自分と仕事を結びつけて、どんな働き方をして、どういうところで、どういう人と働きたいのかを考えていけるようになると思います。

まずは「自分がどうありたいか」を見つけるということですね。それが人生100年時代を生き抜くキャリア構築の一歩になると。ですが、ありたい自分を見つけるのは至難の業だと思うのですが…

橋本それが普通だと思います。なので、見つからない人には、とにかく興味関心のあるものを勉強したり、面白そうな活動に参加してみたりすることをお勧めします。

経産省では人材力強化研究会を設置し、産官学が協力し人生100年時代における人材力強化のための議論を行いました。経産省では2006年に「社会人の基礎力」として「3つの能力(「前に踏み出す力」「チームで働く力」「考え抜く力」)/12の能力要素」を提唱してきました。

橋本しかしこれまで以上に長くなる人生の中で、ライフステージの各段階で活躍しつづけるために求められるものは「3つの能力/12の能力要素」だけではなく、「どう活躍するか(目的)」「どのように学ぶか(統合)」「何を学ぶか(学び)」という「3つの視点」のバランスを図ることが必要なことだと位置づけています。

この3つの視点はのスタートはどこでも良く、学びから始めても良いし、組み合わせから初めても良い。例えば学びから始めて面白ければ、どんどんのめり込んでいく。学ぶと疑問が深まり、自分が社会や他の人々とどう関わりたいか?といった姿がリアルに見えて、どう活躍するのかにつながると思います。

どう活躍したい、どうありたいというイメージがすでにある人は、それを実現するための学びと組み合わせを充実させていけば良いのです。

「本気で取り組む」「世界を閉じない」ことが重要

その3つの視点を意識して行動し続けることが、将来のキャリアにつながっていくということですね。

橋本この3つの視点を実践する上で、大事なポイントが2つあります。

まずは「①本気で取り組む」こと。何でも良いので、面白いと感じることをとにかくやってみる。たとえ仕事に結びつかなくても必ず糧になるからです。

次に「②世界を閉じない」こと。他大学の人や社会人など、今いる自分の世界とは異なる人たちと共に活動をすることで視野を広げることができる。学生時代にアルバイトだけでなく、「ボランティア」や「長期インターン」などにも参加して色々な年代の社会人と触れ合うこともオススメします。

人間にとって閉じた世界は楽に生きられるので、新しい環境に飛び込むのはストレスですから、避けたい気持ちもわかります。しかしそれに慣れてしまうと、キャリアの可能性を狭めることになります。

活躍したい姿、ありたい姿のイメージがある人は、特に注意が必要です。

「①本気で取り組むこと」にあまりにものめり込んでしまうと、世界を閉じてしまいがちになるからです。自分の価値(自分が取り組んでいるものの価値)を知るには比較が必要です。

比較するためには自分とは違う軸を持たないと見えてこない。だから②が大事になる。世界を閉じていると自分の価値を伝えようにも、外に発信できません。また外の人が自分の価値をどう思っているかもわかりませんからね。

これは社会人になっても、欠かしてはならない重要なポイントですね。

橋本そうなんです。就職しても、「我が社のために」とそのことだけを頑張っていてもダメ。それは①を満たすだけですからね。

とにかく「何を学び」、「どのように学ぶか」から始めてみる。そして世界を閉ざすことなく、それらに本気で取り組んでみる。

そうするうちに、自分の強み・弱み、長所・短所がわかってくるはずです。それらを理解してから自分を強化していけばいいのです。

全部を克服して平均点を目指すのではなく、自分の得意分野を満点に近づけ、不得手の分野は得意な人に任せる、つまり組み合わせれば良い。だから世界を閉じないことが重要なんです。組み合わせはイノベーションの種とも言われています。

世界を閉じないということは、組み合わせて統合するための何かを取りにいくことにつながります。

会社を見る前に社会を見よ

就職活動が本格化する時期ですが、企業選びでの注意点や就職活動時に持つべきマインドについて教えてください。

橋本人気企業ランキングの上位を占めているのは、ほとんどがBtoC(法人ではなく個人向けのビジネス)の企業です。自分の目に映る狭い世界の中でしか企業を見ていないのだと思います。

まずは会社を見る前に、社会を見ることです。目の前のパソコンや机がどのように作られているのかを考えてみたことありますか。例えばパソコンの中を開けたら、さまざまな部品が入っています。

その部品を作っているメーカーや部品を作るための素材メーカーなど、複数の企業、技術が組み合わさって1台のパソコンができているのです。

そういう、世の中の関わりを理解した上で、会社を見ていきます。そうすると流行や規模を追うこと以外にもいろいろな会社を見る軸ができます。

いろいろな視点で社会や世の中の企業を見直してみることで、企業選びの納得感が高まると思います。行きたい会社があるなら、その会社の市場環境や外部環境を含めた構造的な問題を理解し、それを踏まえた上で「入社したいと思う理由は何か」、「5年後・10年後にその会社で、自分は何がしたいのか」。

それを可能な限りリアルにイメージして考えることが大事だと思います。

最後に就活生を含めた、学生へのメッセージをお願いします。

橋本スキルを磨くことは即戦力につながるので否定はしませんが、今後、AIなどテクノロジーの進歩により、いま重要と言われているスキルさえ要らなくなる可能性もあります。

より世の中を広く見て、自分の強み・長所が世の中に対してどういう価値を提供できるのか。そしてその価値を脅かす脅威はなんなのか。それらを見極められるよう、学生のうちからいろいろ社会人や専門家とコミュニケーションができる情報網を持つことです。

それが100年時代に活躍できる人材に欠かせない条件ではないでしょうか。

アルバイトではなく、社会人と同じ目線で働いてみたい学生へ

[文]中村 仁美
[撮影]池田 有輝
関連記事

働き方より「働きがい」を改革。セールスフォースが社員エンゲージメントに投資する理由とは

株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 セールスフォース・ベンチャーズ Japan Head 浅田慎二株式会社セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアマネジャー 伊藤哲志株式会社セールスフォース・ドットコム 人事本部ディレクター(戦略・オペレーション担当) 浅田靖隆
働き方 採用 社内制度
10日前
注目の連載
記事一覧にもどる