デジタルエキスパート集団こそ、多様性が不可欠だ──東急不動産ホールディングスのDX組織・TFHD digitalが現場で進める創意工夫のダイナミックさを探る
Sponsored総合デベロッパーの東急不動産ホールディングス(以下、東急不動産HD)を、新たな変革に導くデジタルエキスパート集団、TFHD digital。前回の記事では、牽引役となっている経営陣二人の対談で、そのビジョンや戦略を紐解いた。
今回は、個性あふれるメンバーを代表して、鳥巣氏と岸野氏を招き、現場の工夫ややりがいを存分に聞いた。その中で出てきたのは「DXの真の可能性」と、この組織に根付く「挑戦のカルチャー」だ。
既成概念に捉われない発想を尊重し、地道な現場観察を通じてDX課題を言語化し、伴走する姿勢。そして、まちづくりの課題解決に挑む新規事業『Machi-wai』。多様性を活かした化学反応が生まれ、不動産業界に新たな風を吹かせようとする挑戦がここにある。
大企業のDXに携わる方だけでなく、スタートアップで挑戦している方にも刺激を与える内容になっているはずだ。世の中を変えるイノベーションは、どこから生まれるのか?そんなことを考えながら、読んでほしい。
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
東急不動産HDのDXを担う「らしさ」とは
鳥巣何よりも大事なのが、既成概念に捉われない発想力ですね。不動産業界の慣習に縛られることなく、ユーザー目線で自由に企画を立案する。そうした個性や主体性が必要ですし、常に尊重される組織風土がここにはあります。
デジタルエキスパート集団・TFHD digitalの現場を牽引する鳥巣氏。実は不動産業界の出自ではない。IT企業での勤務経験を経て、2020年に東急不動産へ中途入社し、TFHD digital立ち上げに携わった。
鳥巣不動産業界のことは入社当初ほとんど知りませんでしたが、むしろ外の視点を持つことが強みになると感じています。事業会社のメンバーと協働する中で、私なりの問題提起をしようとしています。
一方の岸野氏は、建築士の資格を持ちつつ、東急不動産には2017年に中途入社。東急不動産での事業経験を経て、TFHD digitalに参画した。
岸野私は不動産事業での経験を重ねてきた一方で、DXについてはあまり経験がありませんでした。それでも、まちづくりの視点からDXを捉える上で、現場感覚はとても強い武器になると感じています。
社歴も経験も異なる個性が交じり合うことで、TFHD digitalには新しい発想が生まれる土壌がある。
岸野ベンチャーのようなスピード感と、大企業ならではの社会的影響力。その両方を兼ね備えていると思います。
鳥巣メンバー同士で意見をぶつけ合いながら、あるべき姿を追求できる。チャレンジ精神旺盛な人が集まっているので、組織としての成長スピードは本当に早い。
岸野新しいことにチャレンジする際も、メンバー間の信頼関係があるから安心して踏み込める。失敗を恐れず、学びを得られるのもこの組織の魅力ですね。アイディアを出し合い、時にはぶつかり合いながら、みんなで成長を実感できる。そうした組織文化が根付いています。
そんな魅力的な組織カルチャーがあるTFHD digital。その独自性が今、東急不動産HDという大きな企業におけるDXを着実に進める力となっている。具体的に見ていこう。
現場に寄り添い、DXの言語化を支援
TFHD digitalがグループ各社のDX推進をサポートする上で重視するのが、現場に寄り添う姿勢だ。
鳥巣ホールディングス内の各事業会社は、不動産事業のプロフェッショナルです。一方で、DXプロジェクトの進め方については必ずしも詳しくない。そこで私たちが、システム開発チームとの間に立ち、事業会社の意向をヒアリングした上で最適なDXの形を提案する。現場の声に真摯に耳を傾けることが何よりも重要ですね。
例えば、事業会社からの「こういうことがやりたい」という漠然とした要望を、デジタルの専門的な知見で言語化を支援することがTFHD digitalの役割だ。そうすることで、事業会社の期待を超えるような価値を提供していく。
鳥巣現場の担当者は、やりたいことのイメージはあってもそれをどう言語化したら良いか戸惑うことがある。私たちは、その思いを適切な言葉に変換し、システム要件の形で可視化する。このような、現場の考えを言語化するプロセス自体が、DXの価値を生む上で重要なんです。
岸野DXを進める上では、現場の業務プロセスを可視化することが大切。表面的な課題認識だけでは、真の効率化は実現できません。現場の隅々まで目を配り、業務のボトルネックを探り当てる。そうした地道な現場観察の積み重ねが、DX成功の秘訣になっていくのだと思います。
DXは一朝一夕には根付きません。伴走型の支援によって、事業会社のメンバーにもDX推進のナレッジが残るよう、息の長いサポートを心がけています。そうすれば、私たちだけでなく、ホールディングス全体にDX人材が少しずつ増えていくはず。
事業とITの両面に精通したTFHD digitalのメンバーだからこそ、現場目線でDXを言語化し、推進できる。それが、同社の大きな強みと言えそうだ。
大企業におけるDXの難しさの一つが、属人化したオペレーションや暗黙知の存在だ。業務の属人化が進むと、デジタル化の壁になる。だからこそ、現場のリアルな実態を言語化し、ナレッジを形式知化するDXの取り組みが重要だ。地道な作業の積み重ねが、DX成功の土台になっていく。
鳥巣属人的な業務をいかにデジタル活用によって属人性を排除するか。そこに、我々TFHD digitalの腕の見せ所があります。現場の声に耳を澄まし、言語化できないもやもやした課題をすくい上げる。DXは技術の問題以上に、現場との対話が鍵を握ると実感しています。
リアルとデジタルの融合が生むインパクト
TFHD digitalによるグループ支援事業についてここまで触れてきたが、サービス(プロダクト)のかたちとして確立している事業もすでにある。ここにも、同社の強みや特徴が表れている。
岸野氏が推進を担っているのが、竹芝やニセコなどのエリアで活用が進んできたデジタルエリアマネジメントツール『Machi-wai』だ。
岸野『Machi-wai』ではクーポンやスタンプラリーを機能として提供でき、いくつかの自治体さんに活用いただいています。ですが、この機能がすべてではありません。
創出していきたい価値は「利用状況のデータ分析から、エリアの課題抽出や魅力向上のヒントが得られる」ということ。すなわち、リアルなまちづくりとデジタルのかけ合わせによって、データドリブンなエリアマネジメントが可能になるわけなんです。
「デジタルエリアマネジメント」といっても、大がかりな仕掛けが必要なわけではない。最も手軽な例では、自治体などのまちづくり事業者側がエリア内にNFCタグを設置するだけで準備完了だ。訪れた人たちがアプリのダウンロードは不要で、QRコードやNFCタグをスマートフォンで読み込んでいくだけで狙ったデータが集まる仕組みを構築している。
この『Machi-wai』の企画や推進には、「これまでの自治体向けツールにはない発想を盛り込みたい」(岸野氏)という思いが込められている。サービスを通じて地域の魅力を引き出し、最終的には東急不動産HDの本業にもつなげていく。グループの総合力を生かした、他にはないユニークなツールを目指しているのだ。
岸野現地の方と協議をしてどのように設置するのが良いか意見交換しながら展開することもあります。
「まちづくり事業者さんたちの動き」と「まちを訪れる人たちの動き」を具体的に把握し、最適なシステム構築を考え、実際の運用にまで落とし込む。この一連のプロジェクトを滞りなく進める必要があり、簡単ではありません。でも、東急不動産HDのこれまでの蓄積があるからこそできることでもあります。
鳥巣誤解を恐れずに言えば、この『Machi-wai』のシステム、構造自体はそこまで複雑なものではないんです。それでも、私たちが蓄積してきたまちづくりやエリアマネジメントの知見をフル活用し、現場の課題にピンポイントで刺せている。この点は重要だと思います。
岸野予算が限られる自治体さんもいますから、まちづくりも小さく始めたいというニーズは一定あるんです。すべてのまちが、いきなり「スマートシティ化」を進められるわけではありません。その前に、まずはできる範囲でデータを集め、示唆を得ようとする。そんなニーズを捉えられているのではないかと感じます(この事業についてさらに知りたい方は、過去の岸野氏のインタビューへ)。
クラウドBIツールを活用したデータ利活用支援サービス『BeesConeect』と『Machi-wai』とは毛色がまったく異なるが、「データ」という観点は共通している。この二つの事業を駆使し、リアルな現場に深く入り込むことで、不動産業界のDXを推し進める。これが、TFHD digital独自の事業戦略というわけだ。
デジタルの力だけで全く新しい価値を生み出せるわけではないだろう。重要なのはやはり、リアルとの有機的な融合だ。現実の感動をデータの力で最大化していく、そのための地道な挑戦にまずは注力する。そんな、地に足の着いた展開を、泥臭く続けているのがTFHD digitalの特徴でもあるのだろう。
既成概念を超える「化学反応」を
事業現場でのやりがいやエピソードを活き活きと語り続ける二人。その中で岸野氏が改めて強調したのが、「一人ひとりのチャレンジ(挑戦)」についてだ。
岸野私のように、ITやデジタルにそこまで詳しくないメンバーも、ビジネス現場の感覚を持ち込んで融合を考えることで、DXをよりリアルなものにできるのだとわかってきました。
いろいろなバックグラウンドのメンバーがいるからこそ、多様な視点から議論を重ねられるんじゃないかと思うんです。
既成概念とは異なる発想が、良いDXにつながる「化学反応」を引き起こすのかもしれない。そのための場として、TFHD digitalがうまく機能し始めているのだろう。
そんなことを話してみると、そもそも東急不動産HDにはそうした土壌があったと言えるかもしれない、と二人も語り始めた。
岸野もともと、社員みんなが「もっとこういうのがあったら面白いんじゃない?楽しんで使ってもらえるんじゃない?」と、新たな挑戦について考える雰囲気はあったかもしれないですね。
鳥巣東急不動産が、不動産会社の中で明らかに違うところを明確に表現するのは難しいんですけど、でも、一人ひとりが思いを持ってチャレンジしようとする土壌はあったんじゃないかと思います。
では今後のTFHD digitalがどのようなチャレンジをしていくのか?について、最後に聞いていきたい。二人は、「より多くのプロジェクトに携わっていきたい」と大まかな展望を共有したうえで、具体的な想いを口にする。
鳥巣ホールディングス全体でDXを啓蒙してきて、意識醸成はかなり進みました。私たちのところにも、多くの相談が来るようになってきました。
ですがリソースには限りがあるので、全部の案件に入れるわけではありません。
これからはより多くのプロジェクトや案件に伴走し、成功につながるように支援していきたいと思っていますし、それができる体制をつくっていきたいと考えています。
岸野全部に入り込む必要性はないとも言えるんですけど、やっぱり大きな橋渡しになるものとか、そういったものには入れるようにしたい。でもその情報集約が一気にできるわけじゃないんで、細かくいろいろとコミュニケーションを取りながら、見極めていくのかなと思います。
鳥巣リソース面でいえば、たとえばデジタルマーケティングやプロジェクトマネジメントの知見と経験を持つ人が一人でも増えれば、できることが一気に広がるような感覚が今はあります。もちろん、他の経験も大歓迎です。事業領域は非常に広いので、さまざまなスキルが活かせます。
ただ、兼久と武重が前の記事で語ったように、スキルだけでなく「スタンス」や「想い」こそが重要だと思っています。なので、スキルを存分に活かしたいと感じつつ、本質的な価値を追求するこの現場で汗を流したいと思う方の参画を心待ちにしたいと思います。
岸野スキルや経験を持つ人が増えていくと、私も新たにいろいろなことを学べるので、ぜひ心待ちにしたいと思います。この記事を読んで興味を持ってくれたら、もっと具体的なところまで話してみたいですね。
挑戦の先に、不動産ビジネスの常識を超える未来が拓ける。既成の枠に収まらない「化学反応」を起こし続けるTFHD digital。独自の挑戦が輝く同社の歩みは、まだ始まったばかりだ。
こちらの記事は2024年03月29日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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藤田 慎一郎
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DXに必要なのはビジョン・戦略、そして「人に妥協しないこと」だ──壮大なリアル事業を変革し始めた東急不動産ホールディングスのデジタルエキスパート集団TFHD digitalとは
- TFHD digital株式会社 取締役執行役員
- 東急不動産ホールディングス株式会社 グループDX推進部統括部長
- 東急不動産株式会社 DX推進部統括部長
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