創業45年、従業員数5,000人でもスタートアップだ!
「社員の誰も大企業とは思っていない」アフラックからイノベーションが興る理由
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アフラックと聞き、「大企業」「レガシーな保険業界」といったイメージを想起するかもしれない。それとは裏腹に、アフラックはスタートアップのようなスピードと大胆さで、新たな市場を切り拓こうとしている。
先陣を切るのは、アフラック・イノベーション・ラボ。新規事業の推進を目的に、新規事業推進部、デジタルイノベーション推進部、アフラック・イノベーション・パートナーズ合同会社が入居する拠点だ。「Fail fast, Fail often」──シリコンバレーさながらのスタートアップライクな思想を旗印に、自社のみならず業界の変革を図る事業を生み出し続けている。
本記事では、アフラック・イノベーション・ラボの中核を担う若手社員にインタビューし、事業創出のリアルを聞いた。アフラックの社員は、自社を「大企業」だと考えない。若手の主体性を尊重し、時に事業の舵取りを委ねる。従業員5,000人のスタートアップ──新事業に懸ける想いと、若手が活躍する組織づくりの秘訣に迫る。
- TEXT BY RYOTARO WASHIO
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY MASAKI KOIKE
全社員が「自分の言葉」で想いを語れる
かつてのシリコンバレーになぞらえて「ビット・バレー」と呼ばれた、スタートアップ密集地域・渋谷。アフラック・イノベーション・ラボも、ここにある。
まるでコワーキングスペース『WeWork』を思わせる開放的なスペースで、獅子奮迅の活躍を見せる、期待の若手社員にインタビューした。
アフラック・イノベーション・ラボから生み出された「アフラックの健康応援医療保険」の営業推進戦略の立案を担当する斉藤友治氏は、就職活動を振り返り「会社と自身の未来像を、いきいきと語るアフラックの若手社員の姿が印象的だった」と語る。2007年、新卒でアフラックに入社。想いに共感でき、成長環境がある会社を求めていた。
斉藤他の会社とは明らかに違ったんです。全員が当たり前のように、自らの言葉で「『生きる』を創る。」という想いを語っていた。「上司に言われたから」ではなく「自らの裁量でこんなことをした」と話す姿に惹かれ、入社を決めました。
入社後は、2018年までの12年間は、代理店営業に従事。大企業を顧客に持つ「企業系列代理店」、アフラックの商品のみを取り扱う「専属代理店」、競合の商品も取り扱う「乗合代理店」など、3年から4年のスパンであらゆる代理店営業に従事した。
1年目に担当したのは、旧官公庁系列の大企業をクライアントに持つ代理店。顧客企業の従業員へ保険加入を促す企画立案を行った。
斉藤20万人もの従業員を抱えるクライアント向けの企画を、自ら考え、実行する環境に「新入社員にこんなに大きい仕事を任せるんだ」と驚きました。「この部署に一生いたい!」と思うほど、やりがいを感じていましたね。
営業畑で実績を積んでいた斉藤氏に、転機が訪れたのは2015年。事業創造プロジェクトの社内公募に手を挙げたのだ。持続的な成長に向けたチャレンジを続ける会社の姿勢と、新たな事業創造の機会に魅力を感じた。
2018年に実施されたジョブ・ポスティング制度(社内公募)を利用し、新規事業推進部へ異動。この制度も、社員の主体的な挑戦を支援し、能力・意欲を有した社員の適材適所を実現する、アフラックのチャレンジングな組織風土をよく表している。上司へ事前の報告なしで申請できるため、気兼ねなく応募できる。
斉藤氏と共に「アフラックの健康応援医療保険」のローンチに携わり、現在はシステム企画とデータ分析を担当する工藤杜人氏も、アフラックの若手社員の姿に惹かれて入社を決めた1人だ。就職活動では「会社の想いと自分の想いが一致すること」と「若手が活躍できる環境」を求め、金融系とメーカーを中心に受けた。
アフラックに決めたのは、「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という創業の想いが魅力だったからだ。工藤氏の言葉からは、アフラック社員が自社の事業に想いを持ち、大きな責任とともに事業を推進している姿が伺い知れる。
工藤「なんて素直で希望に溢れた言葉なんだ!」と思ったんです。命に関わることなので、大きな責任が伴う言葉です。それをこんなにもシンプルに言い切る会社ってすごいなと。当時は母ががんに罹患したタイミングでもあり、その想いがすんなり腹落ちしました。
お会いしたアフラックの社員はみんな、いきいきと自らの言葉で会社の想いを伝えていたんです。誇り高く夢を語る姿に憧れました。
2014年に入社した工藤氏が配属されたのは、お客様からお預かりする保険料の請求・収納等を担当する料金部だった。料金部へはお客様や代理店などのビジネスパートナーからさまざまな問い合わせが入る。
ひたすら電話を取り続ける日々のなかで、「この業務でNo.1になろう」と徹底的にコミットすることを決め、ときに1日80件もの対応を行った。受電対応に加えて、事務処理にも忙殺され、ミスも増え始めたが、その時に工藤氏は「アフラックらしさ」を垣間見た。
工藤頑張っている若手をサポートする文化が根づいているんです。当然、ミスをすれば怒られます。しかし、私が誰よりも多くの電話を受けようと努力しているのを、周囲は見てくれている。
「これだけ多く電話対応をしてくれてありがとう」と声をかけてくれ、後続処理を先輩たちが引き取ってくれました。その存在が救いとなり、頑張り続けることができたと思います。
料金部での成果が認められ、3年目にはグループ会社へ出向。当時の上司から伝えられたミッションは、業務の効率化とコストダウン、そしてマネジメントだった。出向先ではプロジェクトリーダーとして、40代後半の課長や、年齢が一回りも違う先輩社員にも指示を出し、頻繁に議論を交わした。
プロジェクトが完遂に近づいたころ、ジョブ・ポスティング(社内公募)を目にする。マネジメントの経験や、これまで培ってきた契約に関する知見を次のステージで活かしたいと考え、迷わず新規事業推進部に応募した。
工藤自分自身を試したかったんです。新たな経験をすることで、さらに成長したいというモチベーションで応募を決めました。
Fail fast, Fail often──
シリコンバレーさながらの「失敗歓迎」カルチャー
アフラック・イノベーション・ラボでのミッションは、「保険と保険“以外”を組み合わせ、ビジネスフロンティアを切り拓くこと」にある。斉藤氏と工藤氏が所属する新規事業推進第二課は、生命保険業界初(※)のオンライン申込み専用の健康増進型保険を担当している。
「アフラックの健康応援医療保険」と銘打たれた商品のシステム開発やマーケティング、営業推進に至るまで、すべての業務を6人のチームで行う。
(※)2018年9月19日時点アフラック調べ
営業推進を担当する斉藤氏は「会社の未来を創っている実感」が湧いているという。
斉藤若年層にリーチすることが重要なんです。従来の保険商品は、50代以上の加入者がほとんど。でも、オンライン専用保険は、ウェブマーケティングを活用することで、従来の販売チャネルではリーチできていなかった若年層に加えていわゆる非対面での契約を好まれるお客様を獲得できています。
まだまだ課題はたくさんありますが、アフラックの企業理念のひとつである「新たな価値の創造」ができていると手応えを感じています。
工藤氏は、同サービスのシステム構築とデータ分析を担い、IT部門と連携しながら企画・運用を主導している。
工藤システム開発の知見はなかったのですが、「任せる」とアサインされました。無論、ひとりではシステムをつくり上げられません。そこで、IT部門を巻き込み、チームを組成することにしたんです。開発リソースが足りない分は、外部から4名ほど雇いました。
アジャイル型(※)の働き方などを取り入れながら、月単位でデータを分析し、企画に落とし込み、形にして世の中に出す。そのサイクルを回して、新機能や改善を毎月リリースしています。
(※)お客様のニーズを満たすために、短期間のサイクルで最低限必要な成果物を創出し、お客様からのフィードバックをもとに、継続して改善していく働き方。
アフラックでは、若手が主体的に学び、新たな取り組みを行うことを推奨している。アジャイルチームの組成を進めていた際も、上司は「おもしろいからどんどんやれ」と背中を押してくれた。「Fail fast, Fail often」を旗に掲げ、組織全体に「失敗を歓迎する文化」が根付いているのだ。
工藤多少粗い部分があっても、まずはリリースすることを大切にしています。マーケットに出してみなければ、どんな反応があるかも分かりません。失敗もたくさんしました。使いにくいという声をいただいたり、想定していた通りにページが遷移しないこともしばしば。マーケットからのフィードバックを受けて高速で改善し、フィットさせていくのがアフラック・イノベーション・ラボでのやり方です。
工藤氏だけではなく、他の若手社員も自発的にマーケットを開拓し、失敗を繰り返しながら事業を推進している。
斉藤アフラックのビジョンやカルチャーを理解した上で、会社の成長にコミットできる人財が必要です。もちろん中途社員も重要ですが、プロフェッショナル人財だけで事業を推進しても、社内に育成ナレッジが残りません。
ただ事業を創ればいいわけではないんです。会社の想いを理解し、魂の入った事業を創らなくてはならない。だからこそ、新卒入社メンバーをはじめとした会社のコアバリューに共感する若手の存在が重要だと考えています。
工藤氏も「会社のビジョン・コアバリューを大切にし、社会に貢献できる人財を育てようとする風土がある」と語る。充実した研修制度にも、その考えが反映されている。工藤氏はシステム企画の業務を行うにあたり、Pythonを習得するためにスクールへ通っていたが、その受講費用は「教育研修費」として会社が全額負担。充実した育成環境が、若手の成長を促進しているのだ。
「大企業」とは思っていない。
全社に通底する“パイオニア意識”
アフラックの社員は誰一人として、自らの仕事を「タスク」だとは捉えない。「社員一人ひとりが自らの仕事を、会社の業績や未来を創るものだと納得していると思います」と斉藤氏。
斉藤世間からの見え方がどうであれ、社員はアフラックを「大企業」だと思っていません。ガバナンス面は「大企業」のように遵守しますが、サポーティブな組織風土があるからこそ、末端までスムーズな権限移譲が可能になり、一人ひとりが仕事に主体性を持てているのです。
「アフラックの健康応援医療保険」における工藤氏への権限移譲は、その典型例といえるだろう。新領域であるがゆえに、社内に知見を持つ者はいない。だからこそ、大きな決定権が与えられ、組織の組成から運用まで推進できたのだ。
未踏の領域にチャレンジするからこそ、若手に裁量が与えられ、主体性が生まれる。アフラックの管理職は、積極的に若手を支援する。
しかし、アフラックは約5,000人もの従業員を擁する。既得権益を守る傾向が強くなっても不思議ではない。いまなお挑戦を続けられる理由は、どこにあるのか。
工藤現状を「ビジョン実現の過程」と捉えているんです。「Aflac VISION 2024」で掲げた「生きる」を創るリーディングカンパニーへの飛躍というビジョンを実現するためには、まだまだやらなければならないことがある。アフラックは、一からがん保険市場を創ってきたパイオニア。これからも挑戦者であり続けたいと思っています。
また、工藤氏は組織の特徴として「夢を語る人が多いこと」を挙げる。とくに、お客様の声に触れる機会が多いことが社員が夢を描くことにつながっている。毎週月曜日に社員向けに配信されるビデオニュース「Aflac Weekly News」は、ユーザーの声を届ける仕組みのひとつだ。
工藤積極的な権限移譲も「夢を語る組織」の基盤だと思います。小さなことから任せられ成功体験を積み重ねられるからこそ、自己肯定感が高まり、夢を語れるのでしょう。
斉藤氏は「プライドを持っている社員が多いこと」も特徴と捉えている。特に、「がん保険」に対しては並々ならない意思がある。
斉藤商品にかける想いや、開発経緯を語ることができる社員ばかりだと感じています。がん保険のシェアでは、圧倒的なNo.1。しかし、現状に甘んじる社員はいません。さらなる価値を創造すべく、プライドを持って奢らず、会社や業界に向き合っている人ばかりです。
新たな市場を切り拓いてきた「がん保険のパイオニア」としてのプライドは、こうして若手社員にも受け継がれている。会社と業界の未来を変える夢を語り、実現するための挑戦を続ける──アフラックが進むのは、「『生きる』を創るパイオニア」への道だ。
新規事業に携わりたいなら、
「語れること」を増やそう
両氏は現状に満足することなく、さらなる展望を語る。アフラック・イノベーション・ラボを「特殊な場所」に留めることを良しとせず、「これまで創り上げてきた環境を全社に広げていきたい」と斉藤氏は語る。
斉藤アフラック・イノベーション・ラボにある部門には「Aflac VISION 2024」が根付いていますが、全社を見渡すと、その浸透度合いには濃淡があります。全社にビジョンがさらに浸透し、実現に向けて一丸となれば、業界の未来すら変えられることは確実。そのためにも、まずはアフラック・イノベーション・ラボから、成功・失敗に関わらず、事例をどんどん生み出していきたいです。
この部署に来て以来、保険はもちろん、他業界の知見も多く得られました。若手がアフラック・イノベーション・ラボで業務を行う機会を増やし、彼らがその経験を全社に広げていくための仕組みづくりを進めたいんです。
「私もアフラックに来たからこそ大きく成長できている」と同意する工藤氏は、経営層から変えていく決意を語る。
工藤ここで得た経験を、経営に反映させていきたい。本社とアフラック・イノベーション・ラボは、物理的にも精神的にも、少し距離感がある。スタートアップライクなマインドや、保険以外のビジネスモデルを模索し続ける視野の広さ、そして事業へのオーナーシップを全社に普及させたいです。
最後に学生や若手ビジネスパーソンへのメッセージを聞くと、「Fail fast, Fail often」を掲げる彼ららしい、「経験」を重視した言葉が返ってきた。
斉藤若いうちに、幅広い経験をしてほしいです。例えば、ウェブマーケティングの領域では、おじさんよりも若い人の意見が正しいことが多い。それは若手の方が、実生活の中でウェブの世界に触れ、ウェブのリアルを知っているからですよね。
思わぬ経験が、ビジネスに活きることがあるんです。特に学生の間は、興味の赴くままにさまざまなことにチャレンジしてほしい。新規事業開発においては、そうした経験が活きます。
工藤私は常に「経験を面白く語ること」を意識してきました。学生時代にはタイに留学するなど、とにかくたくさん体験した。就職活動時はそれを面白く伝えることを心がけました。
仕事にも、同じ意識を持ち取り組んでいます。自分が経験した仕事を、どう面白く語るか。常にそう意識することで、仕事への取り組み方も変わります。大学生や後輩たちには、面白く語れる経験を積んでほしいですね。
アフラック・イノベーション・ラボの姿は、「スタートアップマインドは創業間もない会社でなくても持てる」ことを教えてくれる。新たな価値を社会に提供するために、大胆なチャレンジを行うことは、スタートアップの特権ではない。
アフラックのような老舗企業であっても、プライドと夢を抱き、日々進化する組織をつくることは可能なのだ。もしかするとこの場所であれば、スタートアップよりも大きなチャレンジさえできるのかもしれない。
創業45年、従業員5,000人のスタートアップを体感。アフラックインターンシップ
こちらの記事は2019年12月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
写真
藤田 慎一郎
編集
小池 真幸
編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
校閲
佐々木 将史
1983年生まれ。保育・幼児教育の出版社に10年勤め、’17に滋賀へ移住。フリーの編集者、Webマーケターとして活動を開始。保育・福祉をベースにしつつ、さまざまな領域での情報発信や、社会の課題を解決するためのテクノロジーの導入に取り組んでいる。関心のあるキーワードは、PR(Public Relations)、ストーリーテリング、家族。
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