PLGの伸びをさらに高める、PdMの思考法──上場後のSaaSで、非連続成長を続けるためのチャレンジを具体的に知る

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インタビュイー
大野木 達也

フリーランスのデザイナーやウェブディレクター、りらいあコミュニケーションズでの「バーチャルエージェント®」事業立ち上げを経て、メルカリに転職。CS Product マネージャー、サービス管理およびマーケット監視領域のPM/POを担当し、2021年4月にChatworkに入社。現在はプロダクトマネジメント部のマネージャーとしてプロダクト戦略を指揮している。

針北 陽平

ヤフーでエンジニアを経験したのち、ベンチャー複数社で広報・事業アライアンス・新規事業の立ち上げを担当し、フリーランスに。2015年にオープンエイトの執行役員として参画する。動画メディア事業「ルトロン」、SaaS事業「VideoBRAIN」の事業責任者として従事。2021年2月にChatworkへ入社。プロダクトマネージャーとして、グロース領域全般を指揮している。

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日本国内のPLG(Product-Led Growth)実践企業といえば、Chatworkが浮かぶという読者もかなり増えてきたことだろう。少し前までは、「ビジネスチャットという業界は、海外の競合が強すぎる。どのように戦っていくのだろうか?」という疑問を持つ人も多かったようだが、最近は違う。大きな投資も厭わず、国内屈指のプロダクトカンパニーになっていこうという気概に満ちているのがこの企業だ。そんなイメージが、起業家・事業家界隈に広がっている。

大きな連続成長を遂げ続けているだけではない。さらなる急成長・非連続成長のため、何ができるかを徹底して考え、実行に移す。それも、セールスやマーケティングで、ではない。プロダクトマネジメントで、だ。

「PLGは、成長の結果論でしかない。より大きな成長モデルを今、つくろうとしている」と力を込めるのが、プロダクトマネージャー(PdM)を務める大野木達也氏と針北陽平氏の2人だ。メルカリやヤフーといった、日本を代表するテックカンパニーでの経験を引っ提げて参画しながら、「難しすぎる」と何度も苦笑いを見せたインタビューの模様を記録した。

力強い成長モデルを確立する、唯一無二のプロダクトマネジメントが、ここにある。

  • TEXT BY SATORU UENO
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Chatworkを支えるPLGとは

2019年に東証マザーズ(現グロース)に上場を果たしたChatwork。驚くなかれ、さらなる成長を目指してアクセルを強く踏み込んでいる。中期経営計画では2024年の国内シェア40%、全社売上高100億円、中小企業のビジネスチャットNo.1という高い目標を掲げた。

同社を象徴するのが、PLGという成長モデル。経営戦略・事業戦略としては取締役COO福田氏の記事に詳しいため今回は深入りしないが、国内屈指の実践現場であることに疑いの余地はない。

敢えてプロダクト戦略に寄せてわかりやすく表現してみるなら、こうだろうか。「ビジネスチャットであるがゆえに持つネットワーク効果を、さらなるプロダクト開発によって最大化させ、新規顧客の獲得ペースを複利的に加速していく」と。

針北陽平氏(提供:Chatwork株式会社)

針北入社して約1年半が経ちましたが、やっとPLGの土台が整ってきた感じがします。おかげで新規登録ユーザー数は順調に増え続けています。

もちろん、まだまだ道半ばですけど。

大野木中期経営計画の達成に向けては、年平均成長率(CAGR)40%を2021年から2024年まで達成し続ける必要があります。実際に1年目は47.9%と、計画を大きく上回る実績を残せました。

従来のプロダクト基盤やマーケティングによってなし得る連続成長も、もちろん大きいです。でもそれと同じかそれ以上に、プロダクトマネジメントの面で新しい仕組みを入れ、検証し、さらなる非連続成長を生み出そうとしているんです。

針北これまでも結構大変だったんですが、さらに強めなければならない。こんなに難しい事業課題は、そうないと思います(笑)。

大野木達也氏(撮影:藤田慎一郎)

さて、この2人は、PLGにおけるプロダクトマネジメントのどういった部分を難しいと感じているのか?どのようにその難しさを乗り越えようとしているのか?どの部分に面白みを感じているのか?

Chatworkのプロダクト開発現場からしか聞けないような具体の思想と取り組み例を、ここから詳しく聞いていく。

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歴戦のエンジニアたちが集結しているChatwork

ところで、Chatworkの中期経営計画をあなたはじっくりとお読みになっただろうか?先ほど触れた通り、2024年12月期まで4年連続で40%以上の年平均成長率(CAGR)を達成し、全社売上を100億円にまで増加させるという、野心的な計画だ。その頃には国内の中小企業においてビジネスチャットの普及率は50%に達するという見通しで、うち40%のシェアを獲得することで明らかなNo.1となり、翌年からのスーパーアプリ構想本格化につなげていく。

そのために今、未上場時代も含めて最大規模の事業投資を行っているのだ。売上成長率も営業赤字も、過去最大となっている。経営陣の強い意志は、代表取締役CEO山本正喜氏のこのnoteなどからぜひ感じてほしい。

中期経営計画から抜粋。毎年40%以上の成長をして初めて、目標とする2024年度全社売上100億円が達成できるという計画が、棒グラフ(左下)でわかりやすく掲載されている(提供:Chatwork株式会社)

その山本氏曰く「組織能力を考えると、その目標もそうですし戦略の実行難易度も高い、野心的すぎる計画となっていました」という中で、大野木氏と針北氏は前職までの経験を活かしつつ、貪欲に新たな挑戦を続け、さらなる成長に貢献しようと奔走している。

大野木これまで、ビジネスチャットというプロダクトの良さによって自然に伸びてきた部分も大きかったChatworkを、さらに力強く伸ばす戦略に本腰を入れる。山本からそう聞いて、「こんなに面白いプロダクト開発の環境はない」と感じました。

でもプロダクトマネジメントの現場でやること自体は変わりません。ユーザーの行動データの定量分析やフィードバックを読み解いて施策を思案し、優先度を決めて、成長に資する開発を効率的に進める。ただ、「どうやったら新しいユーザーに来てもらえるのか」を、マーケティング観点だけではなくプロダクト観点でも徹底的に施行する、という点が難易度の高いテーマです。

前職のメルカリはtoCサービスなので、新規ユーザー獲得はCMを通したキャンペーンや紹介クーポンの組み合わせ施策などでも伸ばしていく手が取れたのですが、ChatworkはBtoBtoCに近く、そういった手法が効きにくいサービスです。その中で、プロダクトから新規ユーザーの獲得を向上させていくためには、招待の仕組みや招待行動の導線、組織利用促進によるユーザー追加の改善などを考える必要があり、とても難易度の高い取り組みだと感じています。

その中で僕が入社した2021年では、課金ID数は19.8%増、ARPUは28.9%増を達成。この規模でも順調に伸ばせている状況なので悪くないと思います。この先2年のハードルはさらに高いのですが……。

針北正直な話を言うと、求職中にChatworkのお話を聞くまでは、古いプロダクトという印象を持っていました。

だけど実際にChatworkと向き合ってみると、明確で分かりやすい戦略と国内でも数少ないPLGを現場で体感することができる環境など、「古いプロダクトなんて言って本当にごめんなさい」と思える、チャレンジができる魅力的なプロダクトが目の前にありました。

毎日100万人以上のユーザーに、ビジネスで超アクティブに活用されているチャットプロダクトって、そんなに伸びしろあるのかな?って普通思うじゃないですか。でもIR資料を見ていただくと分かると思いますが、国内のビジネスチャットの普及率ってまだたったの24.6%*なんですよね。成長できるポテンシャルがとても大きいマーケットであることも、Chatworkに魅力を感じた点でもありますね。

エンジニア、広報、新規事業、ベンチャー企業の役員といった雑多なキャリアを作ってきた自分のスキルをChatworkにぶつけてみたいなと思えたし、先ほど大野木も言ってましたが、僕も入社前の面談で山本に「創業以来、今が最もアクセルを踏んでいます」という言葉をもらったのが今も印象的に残っています。一緒にこの会社をドライブさせたいと決意できた一言でした。

*……Chatwork株式会社の依頼による第三者機関調べ、2022年3月調査、n=30,000

提供:Chatwork株式会社

PLGという成長モデルを、国内随一のレベルで実践するプロダクト。これから確実に連続成長していくというイメージを、多くの読者が抱いているかもしれない。だが要するに、大野木氏も針北氏も、さらに言えば山本氏も、「一切満足していない」のだ。

利益を創出しながら着実なグロースを進める企業が多いのが、上場後の世界。その中にあって、さらに伸ばしていくための投資を厭わないChatwork。さらなる成長を実現できると考える自信は、どこから来るのだろうか。

大野木今、Chatwork全体での顧客解約率が0.4%、有料ユーザーのみで1.2%です(2022年6月末時点)。一般的にSMBで3〜7%、ミッドマーケットで1〜2%といわれているので、低く収まっている方だと思います。使いはじめてもらうとそのまま続けてもらえることがわかっていれば、多くの人に使ってもらえるよう注力することができます。そこに取り組んでいるのが今のフェーズです。

そのためにもマーケティングによって新規ユーザーを呼び込むだけでなく、ユーザーがユーザーを呼ぶ仕組みをプロダクト改善で強めていき、無料利用のユーザー数を最大限に大きくしていくわけです。これまでにない成長を生むため、プロダクトの観点から新規ユーザーを複利で増やすことが最重要だと考えているんです。

いや、「新規ユーザー獲得を、プロダクトで進める」というのはそもそも、ものすごく難しい話なのですが(笑)。

針北プロダクト内で新規ユーザーを獲得する方法って、あたりまえですけどリファラル(招待)しかないんですよね。だから、ユーザーがどういった状態のときに招待行動をしたくなるのか、そこへ導くためのUXはどういった体験が最適なのか、といったことを日々考えながら施策を動かしています。

僕が入社してからもさまざまな改善施策をリリースさせて、成功も失敗も経験しながら、日々喧々諤々議論しています。いい傾向は掴めているんですが、劇的な成長とまでは実現できていないので、ものすごく難しさを感じてます(笑)

大野木もちろん、同時に追うべき指標として「無料ユーザーの有料転換率」もあります。すでに十分高い数値となっていますが、より一層高めていきます。これもまた、プロダクトの改善・進化が大きく寄与する部分です。

こう説明すれば、PLGモデル実践におけるプロダクトマネジメントがどれだけやりがいのある面白い仕事なのか、想像できてくるのではないでしょうか。そしてその先に、非常に大きな売上規模や市場をつくることができるという未来まで、イメージしてもらえたらうれしいですね。

代表の山本氏が「いま、Chatworkがメチャクチャ面白い理由」という率直なタイトルのnoteを公開するのと同じか、それ以上の熱量が、この2人からも感じさせられる。その語る様子は常に笑顔で、こちらにもワクワクが伝わってくる。

ここからは、そのワクワクが満ちている開発現場にさらに近づいていく。

中期経営計画から抜粋。インサイドセールスやフィールドセールスによる営業活動と並行して、プロダクトマネージャーがアクティブ化を推進し続けるという構造がよくわかる(提供:Chatwork株式会社)

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PdMだからつくれる、“複利”の事業成長

さて、これからの事業成長を見据え、2人が声をそろえるのは、こんな考えだ。「ユーザーを増やし続けるために、本当にあの手この手を試して積み上げ、現在に至っている。極めて難しい領域で勝負をしている」と。

針北PLGを実践できていると言っても、新規登録ユーザーを連続的に増やし、アクティブ化させ、最終的には課金ユーザーになってもらう伸びしろは、まだまだ大きいんです。これからが本番なんですよね。

大野木これまでに効果を実感したものも、もちろんいくつかありますよ。

そう言って大野木氏らが示したのは、新機能リリースとして発表されたこれらの例だ。2022年1月~2月のリリースノートで示されたのが、新規登録をApple IDやGoogleアカウントでできるようになったという内容。2022年3月のリリースノートでは「ユーザー管理」機能の無料ユーザー向け開放が伝えられた。2022年7月のリリースノートでは招待機能のアップデートが紹介された。

そして直近では2022年10月からの変更として、無料ユーザーが参加できるグループチャット数の制限が撤廃されることも発表された

これらの機能開発に対して「使いやすくなる」あるいは「誘いやすくなる」という面がまず感じられると思うが、それだけではない。「ユーザー管理」機能を使ってもらえれば、ユーザーとなり得る企業のデータが早期に蓄積されるかもしれない。AppleやGoogleのアカウント情報が得られれば、その先のさらなる連携も検討しやすくなるかもしれない。そんな狙いも背景にあると言える。

こうした軌跡を見ると、プロダクトマネジメントにおけるチャレンジや試行錯誤が感じられる。

だが、新たな非連続成長を生み出す大きな成長ドライバーは、まだ他にたくさんあるはずだと2人は強調する。

大野木たとえば、コミュニケーションツールとしてのノウハウをどのように活用してもらうか、ユーザー企業における別プロダクトとの連携をどのように実現していくのか。こうした点の伝えかたは、まだまだ改善の余地があると思います。

導入時のオンボーディングでメールマーケティングとして行うのが現状なのですが、プロダクト内でのオンボーディング機能やボットの仕組みの強化によって、ユーザーごとの業界やビジネスモデルに切り分けるなど、さまざまな手法が考えられますよね。

針北先ほども言いましたが、施策自体はいろいろ行っています。いい方向に改善はできているんですが、大きな成長ドライバーか?と言われるとそうではなく、今現在も招待体験の改善を中心に試行錯誤の日々を過ごしてます。

今はオンラインでの招待体験に焦点をあてた施策改善を進めていますが、オフラインでの招待体験はプロダクトとしてまだまだ磨き込める要素が大きいと思っていますね。やりたいことはたくさんあるんですが、選択と集中をしながら着実に一歩ずつ進めています。

大野木繰り返しになりますが、“複利”を生み出す仕組みを、プロダクトとしてつくっていく。具体的に言い換えれば、「新たな招待が増えていく仕組み」をつくるということですね。そうすれば、複利が効いていくためのボリュームゾーン自体をどんどん最大化できるはず。

撮影:藤田慎一郎

そしてさらなる難しさとして、プロダクトマネージャーが常に頭を悩ませる「ユーザーヒアリング」に関する悩みを打ち明ける。

大野木新規ユーザー獲得のためのニーズって、ユーザーヒアリングで得ることがとても難しいんですよね。なぜかというと、新規ユーザーというのはまだユーザーじゃないので、そもそも話をするのが難しいからです(笑)。

だから、非ユーザーから適切なヒアリング相手を探し出したり、あるいは既存ユーザーからなんとかして有効な情報を得たりするしかありません。

プロダクトマネジメントが既存ユーザーのグロースを念頭に置く場合が多い理由は、こうした背景にあるのかもしれない。取材陣がそんなことを感じていると、「だからこそ面白い」とこの2人はまた言うのである。

針北やっているのは基本的なことが多いですね。ユーザーの課題を過去のヒアリング情報含め、あの手この手で探り出し、実際の利用データと突き合わせて施策に落とし込んで、リリースして検証。ひたすらにその繰り返しだと思っています。

新規ユーザーが「Chatworkを使い続けたい!」と思ってもらえるようなプロダクトを提供するってことがシンプルにやりたいことなんですけどね。まだまだ手応えが掴めてなくて、泣きそうなんですけど(笑)

大野木そのために必要なことは何なのか。誰も答えを持っていないこの問いについて、突き詰めて考えていくのが面白いんです。

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PLGという言葉に縛られては、本末転倒。
“ポリシー”として向き合うべし

2人が感じている面白さは常に、難しさと表裏一体だ。そんな現場での創意工夫についての話はまだまだ止まらない。PLG実践におけるさらなる課題とユニークな対応手法について、続いて語られる。

大野木特にtoBプロダクトでは、セールスやカスタマーサクセスの役割も大きいので、ユーザーへのアプローチがサイロ化していくのも課題です。

たとえば、オンボーディングの施策としてカスタマーサクセスが行っていることを、同じようなコミュニケーションでプロダクト内でも行っていることが生じます。どちらも推進することが正という可能性もありますし、どちらか一方に集中することが正という可能性もあるのですが、そうした状況を把握し、確実に進めていくことも求められます。

つまりPLGのさらなる実践は、プロダクトマネージャーだけで成り立つものではないんです。セールスやカスタマーサクセスといったビジネスサイドのメンバーも適切に巻き込み続ける必要がある。そのためにChatworkで置いているのが、PLG推進部です。

大野木氏・針北氏に加え、ビジネスサイドのマネージャーを含めてほとんどのメンバーが兼務のかたちで構成されるこのPLG推進部。より効率的で効果的なPLG実践に向け、ビジネス・プロダクト分け隔てなく事業横断で、連携施策の調整や優先度の検討がなされる。

針北PLGってプロダクト主導ってイメージが強いと思うんですけど、ビジネス側との連携ってとても大事なんですよね。プロダクト側じゃ知り得ない情報をビジネス側はたくさん持っているので、組織を横断して施策優先度を整理していくこともプロダクトマネージャーとしての役割として求められています。逆にプロダクトの変化をビジネス側もいち早くキャッチアップいただくことで、ビジネス側の打ち手も洗練されるので、連携することは必須ですね。

大野木PLGという言葉が広がってきて、そのメリットだけを考えて取り入れようとする企業や事業が増えているように感じます。たとえばエンタープライズに導入してもらうことを考えるならたいていの場合、Sales-Led Growth のほうが合うはずです。

フレームに固定されてグロースできない、という結果になったら、完全に本末転倒ですよね。

撮影:藤田慎一郎

PLGを取り入れたいという声を聞く機会が増える中で、実践知を共有する大野木氏らの声は貴重だ。「どうすれば自社の事業成長に、PLGを取り入れることができるのか」という課題意識を持ってここまで読んでくれた読者もいるかもしれない。そんなあなたこそ、今一度、プロダクトの特性や、目指すべきグロースの姿を再検討してみるといいかもしれない。

と、ここまで聞くと、Chatworkは全社で、高い理解度でPLGを実践し続けられているという印象を抱くかもしれない。もちろんそういう見方もできるのだが、「そう簡単ではない」という点も改めて強調される。

大野木社内でたまに聞かれる質問に、「これって、PLGなんですか?」というものがあります。実はこの問いって、あまり重要じゃないんです。プロダクトを中心に考えて事業成長を目指しているのならば、すべてPLGのためのアプローチと言えるはずなので。

針北組織が急速に拡大している中で、PLGを戦略の中心に掲げてものごとを進めていくって、各々の解像度が全然違うので、とても難易度が高いと思ってます。

ChatworkではPLGについての本を全社員に購入して読んでもらっていますね。PLGの基本的な知識がある上で会話することが大事だと思っています。

大野木「これをやったらPLG」みたいなフレームがあるわけじゃないんです。本に書いてある内容は、たしかにわかりやすいフレームのようになっていますが、それをすれば必ずグロースできるかというとそうではない。

すべきことは、プロダクトの特性に合わせてグロース施策を推し進める、それだけです。そうしてうまくいったのなら、それはPLGといえるかもしれないけれど、うまくいかなかったらPLGできませんでしたね、というだけです。PLGを施策実行の判断基準にしているわけでもないんです。

たとえばセールスも同じような進め方です。無料で使ってもらった人がまずいて、その中で価値を感じてもらえていたら、有料提案をする。カスタマーサクセスも、プロダクト中心で考えて、より活発に使ってもらえるためにどうすべきかを常に考える。そういうことを考えるためのポリシーという在り方、捉え方として、PLGを捉えなければなりませんね。

実践知について聞いていくと、非常に深いところまで進んでいく。Chatworkでさえこうした課題を抱えながら、日々の実践で創意工夫を繰り返しているのだ。「PLGを取り入れることができれば、比較的ラクにプロダクトを伸ばしていける」なんてあり得ないということが、よくわかる。

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補完し合う個性が、強いプロダクトマネジメントを可能にする

Chatworkのプロダクト組織でも、PLGに関するさらなる浸透や創意工夫は必要であり、手探り状態の部分も少なくないという。だからこそ、伸びしろは大きい。現在は約10人のプロダクトマネージャーが在籍し、さまざまな開発を主導しているのだが、2024年に全社売上100億円を達成するための体制としては組織に不足があるという課題感も隠さない。

少なくとも国内において、この企業でしか経験できない骨太なプロダクトマネジメントがあることは、ここまでの内容である程度感じられたのではないだろうか。さらに深い話・詳しい話は、大野木氏のMeetyに応募したり、Chatworkが主催するイベントに参加したりしてみるのが良いだろう。

そんな展開も期待して、最後にこの2人の個性に迫ってみたい。プロダクト組織の雰囲気が、色濃く伝わると思う。

大野木針北はアイデアマンですよね。僕の持っていない発想力を持っていて、なんだかハッカー的です(笑)。機能開発の案出しをするなかで、「まだChatworkを使ったことのない人にアプローチするには、本を出版すればいいのでは?」と言われ、自分からは出ない発想だなと思いました。

針北アイデアマンなのかはわからないけど(笑)、でも、ふざけたことも含めて常にいろんなことは考えてるかもしれないですね。本の話もふざけたアイデアから始まったけど、よくよくちゃんと考えてみるとすごくいい施策なんじゃないか?と深掘りできたり。

いいアイデアを考えるために日々行ってることは、新しいサービスはだいたいすぐにID作っちゃっていますね。で、ある程度使ってみる。こういうのがアイデアの引き出しに結構役立ってるかもしれないです。

最近気になっていじくり倒してるのが、テキストを元に絵を書いてくれる『Stable Diffusion』というAIですね。ビジネスチャットとはかなり距離のあるプロダクトですが、こうしたものも含めて雑多に触ってみることが、いろいろな場面で活きると思うんですよね。

過去に東京で撮影した2人の談笑風景。現在、大野木氏は福岡、針北氏は熊本に住み、在宅勤務をしている(提供:Chatwork株式会社)

一方で針北氏は大野木氏の印象について、「安定感がある」と答える。

針北私は事業を立ち上げた経験はありますが、プロダクトマネジメントについて専門的にやってきた経歴はありません。むしろ、Chatworkで初めて学んでいる部分が多いです。

大野木は、私が足りてない部分をうまくカバーしくれるので、めちゃくちゃ安定感があるなって思ってます。ありがたさしかない。

大野木向き不向きがはっきり分かれているので、お互いに背中を預けやすいということはありますね。

針北まだ何もできてはいないですが、ある程度今の仕込んでいる施策が落ち着いたら、2025年の計画を実現するために、お互いの強みをより活かしていきたいなって思ってますね。

自分の強みはゼロイチにあったりするので、スーパーアプリ構想に向けた動きも徐々にしていきたいなという想いもあります。

大野木プロダクト開発組織全体で見れば、僕の入社時には60人くらいいて、いま100人くらいに拡大しています。これから数百人規模にしっかり大きくしていくことが、僕の一番頑張りたいところですね。

メルカリで組織が急成長する中であった痛みは、同じように起こっていると感じることも多々あるので自身が得てきた経験もうまく活かしていきたいですね。

PLG戦略を掲げるChatworkにおいて、プロダクトマネージャーはどのようなことを考え、どのように開発を検討しているのか。そのユニークな現場が、少し見えただろうか。

さまざまなSaaSプロダクトが、おそらくこれからも多く生まれては消えていく。開発に携わる人も同時に増えていくだろう。そんな中で、この記事で語られたPLGについての実践知はおそらく、常に参考になるものだろう。

これからのChatworkの企業成長も追いかけながら、この記事を中心にして定期的に学びつつ、大野木氏・針北氏との交流なども検討してもらえると幸いである。

こちらの記事は2022年09月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

上野 智

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