機会の「バリエーション」と「場数」こそが価値の源泉──リクルート新規事業開発PdMに訊く、個の経験値を左右する組織構造の真実
Sponsored人材輩出企業とうたわれることもあるリクルートに、どんなイメージを抱いているだろうか。HRや不動産、ブライダルや旅行、美容など事業領域の印象を強く持つ人もいるだろう。ややもすると、成熟した企業、新たな挑戦の機会はあまりないというイメージを持つ人もいるかもしれない。
実はリクルートには、『 ホットペッパービューティー』や『じゃらん』といった著名なサービス以外にも、領域やフェーズを問わず無数のプロダクトや事業が存在している。中には、FastGrowで取り上げるスタートアップと変わらない規模やフェーズ感でグロースしているものも少なくなく、その事業化を推進するプロダクトマネージャー(PdM)が多数活躍している。
今回は「リクルート×PdM」をテーマに、同社ならではの事業グロースや、個として機会を獲得するための思考法を伺った。
- TEXT BY YASUHIRO HATABE
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
新規事業開発室のPdMは、「学び」と「挑戦機会」が豊富
齊藤氏は2021年2月に中途入社して以来、『保険チャンネル』のPdMとして事業開発に取り組んでいる。リクルートにおけるPdMはどのような仕事なのか、齊藤氏の奮闘から見えてくる。
齊藤『保険チャンネル』はお金に関する不安や悩みを持つカスタマーがファイナンシャルプランナー(FP)に無料で相談できる、保険加入や保険の見直しを中心としたサービスです。
相談する中で、保険がカスタマーの問題解決手段になる場合はFPが適切な保険商品を提案し、その成約まで案内しています。デジタル化の余地を大きく残す保険業界を、ITの力で変えていくことがメインの取り組みとなっています。
FPとカスタマーをマッチングする、リクルートらしいビジネスモデルのプロダクト。齊藤氏は同プロダクトのPdMを務めるほか、PdMチームのリーダーとしての役割を果たしている。
業務内容は、プロダクトビジョンの検討、設計したユーザー体験を実現するソリューションの企画、プロダクトロードマップに合わせた開発の推進やディレクション、各部署との折衝など多岐にわたる上に、チームメンバーのフォローなども行う。
齊藤氏は、リクルートの新規事業開発室のPdMの特筆すべき点として「学びが多い」「挑戦できる機会が多い」ことを挙げる。
齊藤新規事業開発室では現在、十数件に及ぶ多様なフェーズのプロダクトを見ています。
リクルート全体では、さまざまな業界においてトップレベルにまで事業規模を成長させたプロダクトを多数持っており、経験に基づく膨大なナレッジが蓄積されているのが特徴です。
そのため、ビジネスモデルごとに、どのフェーズでどのような論点や検証ポイントが出てくるか、それに対してどのような取り組み方があるかという知見にアクセスしやすい環境が整っています。
このアセットのお陰で、一社にいながら多くの学びが得られており、この豊富なアセットの存在こそが、リクルートでしか得られない希少な環境を形作っていると言えるのではないでしょうか。
こうした環境は、私が前職の小さなスタートアップで事業開発をしていた時にはありませんでしたね。
「リードタイムゼロ」への挑戦。
FP無料相談の面談率を140%改善
入社以来3年間の成長を上司として見守ってきた小田氏から見て、齊藤氏はどのようなPdMに映っているのだろうか。
小田前提として、リクルートのPdMは大きく2つのタイプに分けられると思っています。ある部分において、特質した知見やスキルの深さを極めている「スペシャリスト」タイプと、ビジネス検討からシステム開発まで広くカバーできる「ゼネラリスト」タイプです。
この分類でいくと、新規事業開発室のメンバーは後者のタイプが多く、齊藤もその1人だと思います。今はメンバー育成にもチャレンジしてくれていて、チームビルドやリーディングも担ってくれています。
小田齊藤が担当する『保険チャンネル』の業界は、保険業界の慣習や業法の制約があり、イノベーションを起こしづらいビジネス環境にあるんです。その中で今、私たちは「リードタイムゼロ」というテーマを掲げてイノベーションを起こそうとしています。
リードタイムとは、カスタマーがFPに相談するアポイントを取るまでの時間、さらに面談を数回繰り返して保険というソリューションが提供され、問題解決に至るまでの時間のことです。
ちょうど齊藤が入って来た2021年頃、まずは「思い立ったらすぐ相談できる」状態を目指し、面談までのリードタイムをゼロに近づける取り組みを開始していた頃でした。その中で、齊藤にはアポイント取得までの時間をゼロにする「即時予約」の実現を担当してもらったんです。
齊藤当時は、カスタマーがweb上で予約リクエストをし、コールセンターがカスタマーに電話をして予約日時を確定していたのですが、そのプロセスに1〜2日かかっていたんですよね。その状況からweb 上で「即時予約」できる顧客体験に変えられるよう、改善に取り組んできました。
「即時予約」の実現に向け、web上での予約体験をいかに最大化できるかを主眼に、UXの観点はもちろん、web集客を担うマーケティング観点も考慮しながら体験設計を行っていきました。
結果として、CVR130%、後続指標となる面談率140%の改善に貢献することができ、現在は「今すぐ相談できる」面談リードタイムゼロの実現に向けて検証を重ねているところです。
FP無料相談の面談率を約140%グロース──。その成果を打ち出すことができたポイントは何だったのだろうか。
「見立てる」「仕立てる」なくして「動かす」べからず
齊藤そうですね。まず、すべてをきれいに問題なく進めてこられたわけではなくて──。
担当した当初は私の事業理解が浅く、大雑把にROIしか見えていませんでした。しかし、取り組んでいくうちに、営業やマーケティングの観点でどうあるべきか、他にもシステム開発の投資効率などが分かってきて、徐々に事業を伸ばす上で必要な幅広い視点を持てるようになっていきました。
成果を生み出す上で最もインパクトをもたらした要因は、腰を据えて「設計する」ようにしたことだと思っています。
最初に何を検証し、それによって何が分かったら次に何を検証するのかという、“ストーリー”を最初に設計したんです。
闇雲に手数を増やすのではなく、正しい方向を見定め、ステークホルダーの合意を取ってから行動を積み重ねる。それこそが自分の中での一番の学びでしたし、新規事業開発室のメンバー全員が小田から言われている、「プロダクトづくりにおけるセオリー」でもあるんです。
小田それはその通りですね。私たちはPdMの行動指針として「最・最・最」を掲げています。
これは「最速で最高のユーザー体験をつくり、最大成果を追求する」というテーマを略したもの。最初に綿密な仮説設計をした上で成功確率を高める取り組みを進めることが「最速」につながり、既存の何かの延長線上にない発想を持つことが「最高」の体験を生む。そういう視点でPDCAサイクルのスピードとプロダクト品質を両立することで「最大成果」を得るという考え方です。
つまり、最速で最大効果を得るには、闇雲にアクションしていては駄目なんです。
「最速」とは成果に到達するスピードを指しており、手数を繰り出していればその時はスピードが出ているように感じられるかもしれませんが、仮説の精度が低いと手戻りが出てしまってトータルでは最速になりません。
どういう仮説の筋で、何を検証することを目的としてアクションするのかを設計できていないと、学びが学びとして返ってこない。結果として、成果を生み出すまでのスピードが遅くなるという事態を招くことにも繋がりますよね。
リクルートには「ロクヨン」と呼ばれる「6つのスキル」と「4つのスタンス」のフレームワークがある。「見立てる」「仕立てる」「動かす」のそれぞれに対して2つのスキルが紐づいており、計6つとなる。
新卒・中途の各採用サイトでは、「リクルートにおいて、より高い価値を発揮するための普遍的なケイパビリティを定義したものです。個々人の特性や中長期のキャリア観点を踏まえて、メンバーと上長がどの時間軸でどんな力を伸ばしていくかを話し合う際の共通言語として活用しています。」と説明されている。
小田今お話しした「最・最・最」の考え方も、このフレームに根差しています。「見立てる」「仕立てる」が無いまま「動かす」をしていても成功確率が高まらず無駄が多くなり、成果を上げるまでのスピードが出ないということですね。
つまり、小田氏の個人的な考え、あるいは新規事業開発室に特有の考え方ではなく、リクルートに脈々と語り継がれている行動原則がそのまま新規事業開発室PdMのカルチャーの土台となっているのだ。
「新規事業の種を育てる」。
総勢約30名の新規事業開発室・PdM陣営
齊藤氏の取り組みの事例を手がかりにリクルートの新規事業開発室の仕事とカルチャーを概観してきたが、ここであらためて、リクルートにおける新規事業開発室の位置づけと、担っているミッションについて小田氏に聞いた。
小田新規事業開発室は、リクルートの次の世代を担う事業を開発し、事業検証を行う部署です。
その名の通り、新規領域の発掘や既存領域の戦略の延長線上にない、パラダイムシフトを起こすような新規事業を発掘し、検証していくことが役割となります。より早く、より多くの事業を検証して、より大きな、“リクルート規模”の事業を見いだしていくことが我々のチャレンジです。
現在のPdMの人数は約30名で、十数件のプロダクトを管掌しています。
PdMの役割は、プロダクトの企画から顧客体験の設計、開発ディレクションなど、プロダクトに関わる全てをマネージすること。社内のステークホルダーとしては、システム開発を行うエンジニア組織、集客・マーケティング組織、財務面を見る事業企画など、多岐にわたります。
ここで小田氏から“リクルート規模”という言葉が出たが、そこにはどの程度の事業規模が求められるのだろうか。
小田明確な定義はありません。ただ、既存事業の『ホットペッパービューティー』や『じゃらん』『SUUMO』などは各領域における日本最大級の事業なので、中長期的にはそれらと同等ないし超えていく事業規模は目指していきたいと思っています。
ただ、私たちが行っている新規フェーズ、少なくとも入口の段階においては、事業規模はそこまで重視していません。市場性は事業検証を通して見つけていくものですし、最終的に規模の検証はしますが、スタートは目の前の課題から事業を発掘していくことになりますね。
スタートアップ的なケイパビリティが求められる、新規事業開発室のPdM
リクルートには新規事業開発室以外にも、既存の事業・サービスに紐づくプロダクトを見るPdMも数多くいることが分かった。そうした面々との違い、新規事業開発PdMに特有のものは何なのだろうか。
小田PdMは「プロダクトを成長させること」を常に期待されています。ただし、事業フェーズやビジネスモデルによって、体制、役割のカバー範囲に違いがあると思っています。
例えば、『じゃらん』などのように成熟したプロダクトに携わるPdMは、同じプロダクトにおけるカスタマーサイドを見ていくPdM、クライアントサイドを見ていくPdMといった形で分かれているケースが多いです。
規模が大きいプロダクトは開発投資額も大きく複雑性も上がるので、PdM以外の、例えば開発ディレクションに強い人、データマネジメントに強い人のような専門知見を持つ人と一緒になって動かしていく体制で推進しているケースもあります。
一方で、私たちのような新規フェーズのPdMは、限られた予算の中で不確実なものを確実にしていく活動になるため、早くアウトプットして蓋然性を高めていくような動きになります。そのため、1人のPdMが担うカバー範囲が広く、いろいろな役割をこなしていく必要があるんです。
そう聞くと、セクション2で出てきた「新規事業開発室にはゼネラリストタイプのPdMが多い」という話にも頷ける。
PdMのあり方は企業規模や関わるプロダクトの規模、事業フェーズなどによってさまざまだが、あえて類型化すると、リクルートの新規事業開発室におけるPdMはスタートアップにおけるPdMに近い存在だと言えそうだ。
自分が「知らなかっただけ」で、課題は「いくらでもある」
新規事業開発室を起点に、リクルートのPdMとはどんな存在なのかが徐々に見えてきたことだろう。ここではより具体的に、どんな経験を持つ人材がどんな想いで同社を選び、プロダクトづくりに参画しているのかを探っていく。小田氏と齊藤氏は、それぞれどのような経緯でリクルートに入社したのだろうか。
齊藤私は2020年に新卒で小さなスタートアップに入社しました。しかし、ちょうどコロナ禍に入った頃で、事業は強い向かい風を受けた時期でした。
事業や組織の成長を目指したり、新しく何かに挑戦したりできるような状況ではなく、その場をしのぐための“運用”的な仕事が多くなっていたんです。そのため、成長の機会がなかなか見込めず、転職の可能性を模索していました。そんな時に、大学の同期でリクルートに入社した友人に会う機会があり、この新規事業開発室という部署と、PdMのポジションがあることを知りました。
ただ、それですぐに転職しようと決めたわけではありません。なぜなら、私が新卒で前職の会社を選んだ理由は、社会課題を解決しようというビジョンに共感したからです。
リクルートにはいろいろな事業がある中で、自分が共感できる事業に携われるかどうかが分からなかった。事業への共感を大事にするか、共感できる事業に関われなくても修行期間と割り切るかの選択で迷いましたが、結果としてリクルートを選んだことは正解でした。
自分が知らなかっただけで課題はいくらでもありますし、その中で自分が共感できることをやっていけばいい。そんなスタイルで挑戦を続けていくのも“アリ"だと今は思っています。
(より詳しく新規事業開発室の実態を知りたい方は、齊藤氏のプロダクトデザイン室公式noteを参照したい)
一方の小田氏も、リクルートには中途で入社している。小田氏は高校生の頃から「将来は自分で事業を創って社長になる」という想いを持ち、新卒時の就職に際しても「若いうちに多くの意思決定ができる機会を得て、誰よりも早く成長できるところに行きたい」と考えていた。
小田私は新卒でIT系企業に就職し、EC領域のコンサルタントをしていました。
大規模ECシステムのリプレイスのプロジェクトに携わったり、事業成長のための戦略策定・戦術提案をするといった事が主な役割です。そこで6年ほど過ごした頃、ビジネスパーソンとして一通りの経験を積んだと思えた時に、次のキャリアへ踏み出すことを決めました。
コンサルタントは卒業しようと決めていたのですが、当初考えていた起業の道と、すでにある事業会社に転職して当事者として事業をグロースする経験を積む道、2つの選択肢がある。そこから考えた末に、ビジネスをもう少し学びたいという想いから、後者を選び、2017年にリクルートへ転職するに至ったという具合です。
入社後は、ほぼ一貫して新規事業領域に在籍しています。モール事業の『ポンパレモール』に始まり、上述にある『保険チャンネル』などに携わってきました。現在は、事業開発領域プロダクトデザイン部の部長として、家具領域、M&A、障害福祉支援SaaSなど新規事業フェーズの事業を横断的にみるPdM組織をマネジメントしています。
事業や組織が拡大しようとも、「現地現物」こそが一丁目一番地
新規事業開発室のPdMとして、ジャンルや規模を問わず様々なプロダクトに携わってきた小田氏。そんな彼女がリクルートで得た学びとして、『価値検証をするにあたり、それを最速・最大で推進するためには「スキーム」と「体制」も見極めることが重要』ということが挙げられる。
小田ここでいうスキームとは、「フォアキャスト」と「バックキャスト」を結びつけてプロダクトづくりを進めていくことです。
前者はユーザーから出てくる課題の本質を捉え、目の前の課題解決を積み重ねながら未来を描いていくこと。そして後者は、未来軸でみた時にどんな世界が体験がくるのかを想像しながら、そこから逆算して今やるべきことにコミットすることを指します。私は、この2つを結びつけながらプロダクトづくりを行うことが重要だと捉えています。
よくある価値検証の失敗事例として、足元の課題ばかりに目がいってしまい、フォアキャストの視点のみでプロダクトをつくってしまうことが挙げられます。しかし、そこでいかに視野を広く持ち、バックキャスト的に思考できるかが鍵となるんです。
足元の課題、それは価値検証の起点としては正しいが、目先のソリューションを点でみると、本質的な課題解決には繋がらない。確かに小田氏の言うことは納得できるが、具体的にはどうか。
小田例えば、先ほどお話しした『保険チャンネル』における「リードタイムゼロ」の構想もそうです。 元々は面談率改善にあたってコールセンターの通電率に目を向け、いかにカスタマーと会話できる時間帯に電話するか、いかに通電の利便性を上げるUXを構築するかが主目的となっていました。
もちろん、通電率の数字自体はあがりますが、「それがカスタマーにとって最適なUXなのか?」と考えると、必ずしもそうではないことに気づきます。
「そもそも電話が不要なプロセスをつくれないか?」という思考から、「デジタル全盛の現代で電話による予約確認をするなんて、カスタマーにとって却って負担になるのでは?」という問いが生まれ、結果として、即時予約や「今すぐ相談」というアイディアが生まれたんです。
このように、バックキャストとフォアキャストを結びつけ、「どんな価値を提供すべきか?」「我々は今、どんなイシューの解決に向かうべきか?」を思考することで、冒頭に挙げたような改善成果を生み出すことができたのだと思っています。
このスキームの重要性を肌で感じた小田氏は、齊藤氏に任せた『保険チャンネル』の即時予約の件においても、最終的に提供したい価値と、今やるべきこととを結びつけた上で案件を渡している。ではここで、「スキーム」と合わせて小田氏が重視する「体制」に関しても見解を伺ってみる。
小田組織づくりに携わる方であれば自明かもしれませんが、チームとしてどんな価値を追求すべきか、チームの枠組みは最適かを考えるのも、リーダーやマネジメントを担う立場として重要なミッションですよね。
例えば、以前はセールス、プロダクト、マーケティングと別々の指標を追っていたものの、職務機能ごとのチーム編成の場合、目標やミッションが異なるため利益相反が発生したり、調整や推進におけるコミュニケーションコストが大きくなり、スピードの壁になりやすい、という課題がありました。
そこで、今は職務ではなく、テーマ(提供すべき価値)からの切り出しで、チームとして取り組むべきテーマを設定し、全員で同じ目標を持つような設計を意識しています。追うべき定量指標が本質的な指標かどうかを判断し、求める価値に向かうために正しい指標を再定義することも重要だと思っています。
実際に、こうしたスキームや体制を最適化していくことで、成果の大きさが変わることも実績として出ています。
こうした実体験をもとに、プロダクトづくりにおいて確固たる指針を持ちながらメンバーを率いていく小田氏。そんな彼女の印象を、直属の部下に当たる齊藤氏はこのように話す。
齊藤小田はリクルートでお馴染みの「ロマンとそろばん」でいうなら、「超ロマン」の人ですね。今の小田の話を聞いた後だと正直ギャップを感じられるかもしれませんが(笑)。
制約にとらわれず、実現したいことへのベクトルを指し示す力と、そこに向かう熱量がとてつもない。それでいて、お分かりの通り「そろばん」にもめっぽう強い。
実務においても、十数件のプロダクトを横断的に見ている中で、全てのプロダクトのエッセンスや、現時点での注力ポイントをくまなく把握している。これってなかなかできることではありませんよね…。私がリクルートに入社して約3年、上司はずっと小田ですが、日々PdMとしての“いろは”を叩き込んでくれて感謝しています。
小田超ロマンね(笑)どうもありがとうございます(笑)。
資金調達に目を振らず、ひたすら「PdM」にコミットできる
これまでFastGrowとしてリクルートの取材に立ち会ったことは何度もあるが、「PdM」という切り口でここまで同社を掘り下げていったのは今回が初めて。
ぜひ、本記事をきっかけに同社と良い縁を築いてもらえたらと思うが、そのためには他社と比較した際のリクルート・PdMというキャリアがどれだけユニークかを示す必要がある。して、そこにはどのようなアドバンテージがあるのだろうか。
小田ひとえに、「経営資源」と「環境」だと思っています。
これだけ多くのビジネスモデルと事業フェーズのプロダクトがある会社ってなかなかないと思うんですよね。プロダクトマネジメントに関するナレッジが膨大にあり、それを実際に経験した人たちが数多くいて、それらに容易にアクセスできる環境ってあまりないのではないでしょうか?
本来なら、自分たちで一から経験して、失敗して、ナレッジを蓄積していかなければならないところですが、これまでの歴史の中で培われたアセットの上に立って、そこからスタートできることはPdMにとって大きなアドバンテージだと思います。
あとは、独立したスタートアップだと本当はプロダクトをグロースして検証に集中したいのに、資金調達をしたりするところから始めなければいけなかったりしますよね。
それに対してリクルートでは、外部から資金調達するのでなく経営ボードに予算の決裁を仰ぐ形になるので、資金調達のコミュニケーションフローがシンプルです。そしてもちろん様々な専門性に秀でた人材も社内に豊富に在籍しているので、プロダクトのグロースに集中できる、恵まれた環境が揃っていると思います。
齊藤前職でスタートアップにいた自分から見ても、まさにその点がリクルートの、新規事業開発室のPdMの優位性だと思います。
ナレッジやケーススタディが豊富にあり、分からないことは即解消できる場がある。私も実際、他の領域の人にヒアリングさせてもらった経験は数え切れないほどあり、PdMとして学び、成長しようと思えばいくらでもできる環境です。
あとは、意外に思われるかも知れませんが、“ひりつく”場面が多いです。
経営ボードに起案を通す時は、自分より何段も高い視座を持つ人にプレゼンして、ものの10分で投資の可否を判断される。何か聞かれた時に備えて誰よりもプロダクトのことを知っていなければいけないし、もし検討が足りていなかったり、不足している視点を指摘されると、とても悔しくなります。そんな緊張感ある場に何度も立てる会社はそう多くはないと思いますね。
この環境は確かに恵まれており、刺激的だ。現在、新規事業開発室には約30名近くのPdMが在籍し、多様なフェーズのプロダクトづくりに携わっているとのことだが、どのようなバックグラウンドを持つ人たちなのだろうか。
小田バックグラウンドは多様ですね。扱うプロダクトのフェーズによっても変わってきますが、SIerやITコンサルなどのIT系企業やネット系事業会社で経験を積んで来た人は、比較的すぐ活躍しやすいと思います。
特に最近は、システム開発の経験があったり、基本的なITリテラシーが備わっている方を積極的に採用しています。プロダクトの新規フェーズだと、最初のニーズ検証においてはPdMが要件をプロトタイピングベースでアウトプットして素早く検証できる方がよい。ですので、1人でコードも書けてプロジェクトマネジメントもできる人は重宝されますね。
ただ、今はPdMの育成を強化しており、未経験もしくは経験が浅くても、ポテンシャルに期待して採用・育成していく体制も整えています。そのため、能動的に動ける、成長意欲がある人であれば、バックグラウンドは問いません。
齊藤1人でできる幅が広い人が多い印象です。私はあまりコードを書きませんが、他のPdMメンバーは自身でササッと書いて進めてしまう人もいるし、デザインやUXの知見が深い人もいます。なので、PdMメンバーの中だけでも「誰かに聞けば絶対疑問が解消する」といった安心感がありますね。
生み出す意志がある人にしか、見えない。
それが「機会」だ
最後は未来のリクルートPdMを担う読者に向け、同社のPdMとして活躍できる人物像について語ってもらい、締めとしよう。
小田リクルートはボトムアップの文化なので、上から指示が降りてくるケースが少ないんです。“正解”を常に自分たちでつくっていかないといけないし、逆に言うとつくっていける環境です。なので、受け身の姿勢だと馴染むのが難しいかもしれません。
私は、PdMの醍醐味は、自分がどんな顧客体験をつくりたいか、そのためにどんなソリューションを打っていくかを、ビジョンや戦略から考えられるところだと思っています。そして「考える」だけでなく、ビジョンの実現にコミットすることに楽しさがあるのだと。
その意味でも、自分で物事を考えて、Willを指し示せることが重要です。制約や「できない」というバイアスにとらわれず、「実現するためには?」の視点で考えられる人。また、実現するために現場やステークホルダーを調整し巻き込める人。これが、リクルートのPdMにとって一番大事な素養だと感じています。
齊藤私は、「自分のやりたいこと」に貪欲な人が活躍できると思います。リクルートは組織が大規模でガバナンスなどもしっかりしているので、その意味で安心感・安定感はあります。そういう環境にありながらも、新規事業開発室のPdMは何がしたいのかを自分で考えて、それを自ら実現していく、未来を創っていく部門です。
環境に安住せず、貪欲であり続けることが重要になってきます。機会はいくらでもあるので、貪欲な人にぜひ新規事業開発室の仲間に加わってほしいです。
小田あと重要なことが一つ。PdMの人たちに共通する悩みとして、「どこまでできたらPdMと言えるのか」「自分がどんなPdMになりたいか」「PdMとしての自分の市場価値」が分からないといったことが挙げられるかと思います。その点、リクルートには多様なPdMのロールモデルがいるので問題なし。キャリアとしても視野を広げることにつながります。
齊藤の言うように、貪欲で明確なWillを持つ人がいたらもちろんそのまま突っ走ってくれていいのですが、実はリクルートの言うWillってそこまで大きなことを求めていないんですね。「成長したい」「チャレンジしたい」という小さな想いでもいいんです。
大事なのは「成長=経験値」だということ。そして経験値とは、機会のバリエーションの多さと場数によって積み上がっていくものです。じゃあ、その機会のバリエーションが豊富に揃っているのって、どこなんだっけ?と考えてみてほしいです。
「もう成熟した企業だから、機会がないのでは」と思えば、そこにあるはずの機会は見えてこない。自ら機会を創ろうとして挑戦する人にだけ、機会は見えてくる。
リクルートならそれは尚更だ。明確なPdM像や、やりたいプロダクトがあるならそこへ飛び込めばいい。しかし想いはあっても、自身のケイパビリティが足りないと感じている人には経験が必要だ。
1社に居ながらにして、何度でも機会を得て成長していける環境は得がたいもの。PdMに少しでも興味がある人は、リクルートを成長のフィールドとして選択肢に加えてみてはどうだろうか。
リクルート プロダクトデザイン室を詳しく知りたい方
こちらの記事は2024年03月18日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
畑邊 康浩
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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