「人材紹介エージェントから選ばれろ!」──Chatwork 吉成氏に聞く、採用を成功に導くために必要なエージェントへの向き合い方

登壇者
吉成 大祐

早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社入社。地域系サービスの新規事業、広告企画を経て人事へ異動。新卒採用、中途採用、両領域のマネージャーを経て、PayPay株式会社の立ち上げに参画。サービスリリース前のセールスの採用から同社の採用部門の立ち上げ、グローバルなプロダクトを含む採用責任者として携わる。その後株式会社ファーストリテイリングにてIT領域の採用を担当後、2021年2月よりChatwork株式会社にて人事責任者兼ビジネス本部HRBPとして従事。

赤井 雄介

大阪生まれ、兵庫育ち。幼少期を、アメリカ・ボストンで過ごす。兵庫県六甲学院高等学校を卒業後、早稲田大学政治経済学部に入学。体育会ボクシング部に所属し、4年時には主将を務める。新卒で、テラドローン株式会社にインターンを経て入社。ドローン測量サービスの営業とサービス提供に従事、またオーストラリア支社立上げに貢献。その後、2018年2月にスローガン株式会社にジョイン。中途領域の人材紹介事業立ち上げに貢献。両面の転職エージェントとして、ITベンチャー企業の採用支援活動と転職希望者の面談や活動支援に従事。3年半で約100名の転職支援実績を持つ。趣味は、バスケ・NBA観戦、英語学習、麻雀。

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組織の成長スピードを加速させる上で欠かせないのが、採用だ。

採用エージェントを利用して優れた人材を採用したい一方で、なかなか自社が求める人材を紹介してもらえない...と頭を悩ませていいる担当者も多いのではないだろうか?

いったいどのようにエージェントを活用すれば、自社の採用を成功に導くことができるのか。今回のイベントレポートでは、採用担当者側とエージェント側の目線を交え、その答えを探った。

2021年9月2日に開催した「Chatwork吉成氏が語る、採用を成功に導くエージェント活用のベストプラクティス」では、エージェント活用の現状やその向き合い方などを伺った。登壇したのは、ビジネスチャット『Chatwork』を開発・運営しているChatworkHRBP部マネージャーの吉成大祐氏だ。後半では、転職エージェントサービス『GoodfindCareer』にてエージェントとしてChatworkを担当している赤井雄介が参加。

前半は吉成氏による基調講演が行われ、後半からは赤井を交えてトークセッションが行われた。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
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エージェントは選ぶのではなく、“選ばれる”必要がある

初めに、吉成氏はChatworkの採用状況について触れた。

Chatworkは、2020年Q3から人材紹介エージェントの活用を開始。2020年Q2と2021年Q2を比較しても、およそ2倍に採用決定数が増えている。

吉成氏は「企業のフェーズによって採用のあり方が異なるため、どの企業にも共通するエージェント活用方法はないと考えている」と前置きした上で、企業が認識しておくべきエージェント活用に対する姿勢について次のように語った。

吉成採用を積極的に行っている企業の多くが、エージェントを活用しています。一見すると、クライアントがエージェントを選んでいるように思えますが、実は今その逆のことが起きています。

言ってしまえば、エージェントが誰をどこの企業に紹介するか『選ぶ側』になっているのが、現在の採用エージェントを取り巻く状況であると考えています。

というのも、エージェントは複数のクライアントを抱えており、その数が増えれば増えるほど優先順位を付けて行動しなければなりません。エージェントは、どのクライアントを支援するか選ぶ立場にあります。なのでエージェント経由で優秀な人を採用しようとすればするほど、企業はそこに選ばれなければ良い採用を行うことができません。

では、一体どのようにすればエージェントから選ばれる企業になれるのだろうか?その答えは「人事担当者が自社の立ち位置を理解する」ことだと言う。

吉成エージェントから選ばれるポイントはいくつかあります。事業の魅力や担当との相性、採用難易度など。エージェントからすると、この企業は採用が決まりやすいが、別の企業は難しいと判断することがあります。当然、エージェントに対してポジティブに働きやすいクライアントは注力しやすくなる。

だからこそ、人材担当者が自社の立ち位置を理解することが欠かせません。よく自社を良く見せようとするあまり、「あれもやっている」「これもやっている」と言いがちですが、他社も同じように取り組んでいると認識することが前提です。表面的な取り組みを並べるだけでは駄目で、エージェントに自社の事業構造や魅力、今後の展開などを解像度高く理解してもらい、いかに共感してもらえるかが重要です。さらに採用努力として、コントロール可能なものに関しては改善が必要です。

そうでなければエージェントにただ「お願いします」と伝えても、よくわからない状態になってしまいます。

一定の知名度がある企業であれば選ばれるポイントが押さえきれていなくても、比較的採用の紹介を得られやすいかもしれない。一方で、知名度の低いスタートアップなどであればなおさら意識する必要があると吉成氏は語る。

また、自社の立ち位置を理解するだけでなく、エージェントの特徴を把握することも欠かせない。

吉成エージェントによって、スタートアップ人材、若手エグゼクティブ、エンジニアなど、どの人材に強いか特徴が異なります。当然、一つの求人に対して複数のエージェントで同じコミュニケーションを取ったとしても、ばらつきが出てしまう。だからこそエージェントごとに異なる期待値を持ち、個別に対応していくことが大事です。

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適切なパートナーシップを築くことが、
採用の成功につながる

エージェントの特徴を理解した上で、『選ばれる側に立つために』適切なコミュニケーションを重ねていく。またそれぞれのエージェントの特徴を理解した上で、個別に期待値の調整をすることが、重要だと吉成氏は語る。

さらに、エージェントとの関わり方にも求められる姿勢があると吉成氏は付け加えた。

吉成エージェントは、採用チームの一員です。採用チームがカバーしきれない範囲を動いてもらう役割を担っている。やはり業者扱いしてしまうと、一気に離れてしまいます。

採用チームの一員として大事なことは、いかにエージェントが自社のマインドシェアを高めてくれるかです。そのためには、些細なことでも相談できる関係性を構築できるよう、一定のコミュニケーション接点が必要です。

エージェントが動きやすいように、組織・事業の理解やペルソナのイメージを共有していく。エージェントを採用チームの一員としてマネジメントすることも大事なポイントの一つです。

もしエージェントの対応に不満を抱えたことがあるならば、向き合い方に問題がなかったかの見直しも必要だと語る。

とはいえ、なぜここまでしてエージェントとパートナーシップを築いておくべきなのだろうか。

吉成エージェントが味方についていることは、採用機会の損失を防ぐことにつながります。例えば、その時採用ポジションが空いていなかったとしても人材を紹介し続けてもらうことで、ふとしたタイミングで紹介された人が組織に合うこともあります。採用がすでに決まっていたとしても、エージェントを活用できないことをお話した上で、どう取り組むか決めることが大事です。

また、エージェントとの信頼関係を築くには時間がかかるので、コアとなるエージェントを見つけておくことが必要です。特に、エージェントによる企業の評判は波及しやすいため、良い関係性を構築することが採用の成功につながります。

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パズルを埋めるように、エージェントと情報交換せよ

後半では、Chatwork担当のエージェント赤井も交えて、どのようにChatworkがエージェントを活用しているのかについて『クライアントとエージェント』の目線を交え話を伺った。

赤井Chatworkを担当してすぐに、吉成さんから「赤井さんが気になったことは全部解消しますので、何でも聞いてください。常にChatworkについて考えていただくために、どんなサポートもします」と印象的な言葉をいただきました。

実際に毎週30分の定例を実施し、情報共有を行いました。内容は、主に組織構造の現状や新たにジョインしたメンバーについて、今起きている事業課題や今後の動向など。さらに、採用候補者がなぜ落選したのか、どのような点が評価ポイントだったのかについてもお話させていただきました。

吉成氏が全面的にサポートする姿勢を見せた背景として、エージェントが求職者に必要な情報を全て紹介者に伝えられているかどうかを心がけていたと語る。

吉成大きな戦略は理解いただいていた一方で、欠落している情報が多かったんです。エージェントの立場からすると、なかなか細かい情報まで聞きづらいだろうと思い、あえて「なんでも聞いてください」と声をかけました。

どういった情報はすでに手に入れていて、何を伝えれば情報のパズルが埋まるのかを想像して、土壌づくりをする。エージェントが自社の情報を全て語れるようにすることが大事なポイントだと思います。

さらに、赤井は「良い人材を紹介してもらうために、漠然としたコミュニケーションでは不十分だ」と言う。

赤井エージェントの方と採用活動を進める中で、「こういう企業やこういう業務を経験している人に是非会いたいです。お願いします。」「わかりました。」といったコミュニケーションが度々起きますが、これではコミュニケーションが不十分です。

企業がどのような事業や組織の課題を抱えていて、なぜその方を採用したいのか、その方が次の環境に何を求めていて企業はどのような機会を提供できるのか、提案して断られた時用に備えてカウンタートークがないかなど、綿密なディスカッションすることが大事です。

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採用候補者の保持と担当者の熱意が、採用を成功させる

ここで、モデレーターが「なぜ吉成さんは、赤井さんをエージェントに選ばれたのか?」と疑問を投げかけた。

吉成Chatworkに必要な採用候補者を持っていること、赤井さんのやる気を感じたことが決め手でした。この両輪が大事だと考えていて、そもそも自社に合う採用候補者を持っているかどうか、双方が熱量を持って取り組む姿勢があるかどうか。どちらか一方だけではうまく行きません。だからこそ、両輪を備えているエージェントが自社に対して興味を持ち、選んでくれるかは、採用担当者の腕の見せどころです。

ただ、ターゲットとなる採用候補者がエージェントにいそうだと思っても、実は母集団が少ないこともあります。正直、こればっかりは取り組んでみないとわからない。

その上で、エージェントが自社の情報を理解し、自社のために頑張りたいと覚悟を持って探してくれることが必要です。そこまでやらなければ、採用が上手く行ったか否かは判断できません。

赤井もまた「一定の情報共有は、良い採用を実現する上で欠かせない」と語る。

赤井情報交換できている企業とそうでない企業とでは全く紹介の質が異なります。

ベンチャーは事業・組織ともに変化が激しく、どんどん求人もアップデートされていく。その中で情報のキャッチアップが遅れると、候補者を紹介しても無駄になってしまうケースがあります。以前だと採用されるはずの人が書類選考で落選になっている場合、組織体制が大きく変わっている可能性がある。

企業との関係値や忙しさによっても情報交換できないことがありますが、可能な限りキャッチアップしていきたいですし、より良い人をタイムリーにご紹介させていただくためにも、些細なことでもコミュニケーションを取っていただけると大変嬉しく思います。

採用に向けたエージェント活用として、必ずしもたくさんのエージェントと向き合う必要はない。だからこそ、エージェントに向けたスタンスを維持できる範囲で体制を整えることが大切だと吉成氏は語る。

吉成Chatworkで活用しているエージェントは15~20社程度です。個別にエージェントと向き合うことができれば採用数は増やせる可能性が高い一方で、採用マーケット自体はそれほど変わらない。むしろ、エージェントの数が増えれば増えるほど自社の求人の希少性が下がり、同じ候補者に複数のエージェントがアプローチするなど候補者体験を毀損する可能性があります。

求人の希少性を鑑みながら、エージェントが動きやすい体制を構築することが大切です。

最後に吉成氏が「エージェントを活用して採用を成功に導くためには、向き合い方が重要」と語った。

吉成繰り返しになりますが、これまでの経験を踏まえると、エージェントをうまく活用できるかは、向き合い方次第です。たとえフィーを上げたとしても、この企業と付き合いたくないと思われてしまったら、あまりうまくいきません。エージェントと雑に向き合えば、雑な取り組みになってしまう一方で、丁寧に向き合えば、より良くなります。そこに飛び道具は存在しません。

今日お話ししたエージェント活用に対するスタンスの意識の差が、採用活動の明暗を分けると考えています。

こちらの記事は2021年11月12日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

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