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アマゾンゴーは序の口?
デリバリーから自動車販売まで。
中国で加速する「無人化」とその背景に迫る

細谷 元
  • Livit ライター 

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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先日、米シアトルでついにオープンしたアマゾンの無人コンビニ「アマゾン・ゴー」。

画像認識、ディープラーニング、センサーフュージョンなど先端テクノロジーを駆使したこのコンビニでは、来店客は入店から支払いまですべてスマートフォンの専用アプリだけで済ますことができる。

小売店の形態をどのように変えていくのか、雇用にどのような影響を与えるのか、また日本進出の可能性はあるのか、など期待と不安、さまざま憶測が飛び交っている。

アマゾン・ゴーのオープンが大々的に報じられている一方、中国ではすでに複数の企業が現地で無人コンビニをオープンしており、この分野で先行しようという動きが顕著になっている。

アリババやテンセントなど資金力のあるIT大手の参入もあり、活況の様相を呈している。

今回は、無人コンビニをはじめ中国で加速する「無人化」の流れを追うとともに、無人化を加速させる背景にも迫ってみたい。

  • TEXT BY GEN HOSOYA
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中国で加速する「無人化」の流れ

無人コンビニ「アマゾン・ゴー」(アマゾンウェブサイトより)

最近の中国テック関連のニュースを見ていると「無人コンビニ」や「無人デリバリー」など、無人化に関するものが非常に増えている印象を受ける。代表的な事例をいくつか挙げてみたい。

スタートアップ「ビンゴ・ボックス」は中国でもっとも勢いのある無人コンビニの1つといえるだろう。2016年8月に上海で1店舗目をオープンしたのを皮切りに、1年ほどで約30都市、200店舗まで拡大している。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、ビンゴ・ボックスは中国本土で5000店舗まで拡大するだけでなく、欧州や東南アジアへの進出を計画しており、2018年第2四半期までに韓国、マレーシアに出店する見込みという。

2017年8月には深センで初めての無人コンビニ「Well Go」が登場した。Well Goを運営するのは、深セン証券取引所上場企業レインボー・デパートメントストアだ。ビンゴ・ボックスとは異なり、多数の小売店を抱える大手企業による無人コンビニとして注目を集めている。チャイナ・デイリー紙の取材で同社関係者は、既存のコンビニでは1店舗あたり少なくとも6人のスタッフを雇う必要があったが、無人コンビニは1人で10店舗の管理ができると説明している。また、無人コンビニのコストについて、1店舗あたり15万元(約250万円)ほどと明かしている。現在、コストや損益を見るテスト段階で、テストが終了次第各地に拡大する計画という。

中国IT大手アリババも無人化トレンドに乗ろうとしている。2017年7月、無人コーヒーショップ「タオ・カフェ」を試験的にオープンしたのだ。C2Cマーケットプレイスのタオバオアプリを使って店内のQRコードを読み取るとアプリに登録されたIDと顔認識技術によりユーザー本人であることを確認。さらに、コーヒーの注文を受ける際には音声認識技術でユーザー本人からの注文であることを確認するという。

また、アリババは同年12月に、自動車の自動販売機をローンチすると発表し、世間の注目を集めた。アリババが提供してる中国版個人信用評価システム「芝麻信用(350~950点)」で700点以上の高得点を維持し、さらにアリババの上級会員「アリババ・スーパーメンバー」であることを条件に自動販売機で自動車を購入できる仕組みだ。

アリババ・自動車自動販売機(YouTube アリババチャンネルより)

アリババの動向に、競合であるIT大手テンセントも黙って見ていない。テンセントは2018年1月20日、上海で期間限定の無人コンビニをオープン。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、最初の2日間で3万人以上の客が訪れたという。2月4日まで試験運用を続ける計画だ。

このほかにも、中国の家電小売販売スーニンやEコマースのJD.comなど大手やスタートアップによる無人コンビニ市場への参入が相次いでいる。

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背景にある労働市場の変化、労働不足と賃金上昇

中国でこれほど無人化の動きが加速しているのはなぜなのか。イノベーションや実験的な意味合いが強いという見方もあるが、長期的に見ると深刻化する人材不足と賃金上昇への対応とも見て取ることができる。

中国の政府機関、人力資源社会保障部のスポークスパーソンが、チャイナ・デイリー紙のインタビューで今後の国内労働市場が深刻な人材不足に陥ることを語っている。

2011年、15〜59歳で構成される中国国内の労働人口は9億2500万人だった。しかし、2012年には340万人減少、2013年は244万人減少、2014年は371万人減少、2014年は487万人減少と、毎年大幅な減少を続けているという。このペースでいくと、2030年の労働人口は8億3000万人と、2011年比で1億人以上少ない数となってしまう。さらに、2050年には労働人口が7億人にまで減ってしまうという試算もあるという。

労働人口の縮小にともない、賃金上昇への歯止めがかからない状態が続くことも見込まれる。中国の全産業の賃金上昇率は2011年に11.3%、2012年に10.5%、2013年に9.7%といずれも10%近い上昇率となっている。

実際現時点でも、労働者不足と賃金上昇が無人化を推進する動機になっている事例がある。

中国で爆発的な成長を見せるフードデリバリー市場。配達員不足による賃金上昇が起こっており、無人化によりこの問題に対応しようとする企業がある。アリババ傘下のフードデリバリー企業「餓了麼(ウアラマ)」だ。同社はこのほど、オフィスビル専用デリバリーロボとデリバリードローンの試験運用を開始することを明らかにしたのだ。

迅速かつ的確なデリバリーを実現するだけでなく、高騰する人件費を抑制することが狙いのようだ。

新聞晨報など中国地元紙によると、現在の配達員の給与レベルは6000〜1万元(約10万円〜17万円)ほど。レストラン従業員などに支払われる給与額5000〜6000元に比べると高く設定されている。

全体的な労働者不足に加え、旧正月に農村に帰郷する配達員が多いなどシーズン的な要因も絡まり、配達員不足の問題はすぐには改善できない状態のようだ。

毎年数百万人、2050年までには2億人以上の労働者を失う中国では、小売・販売だけでなく、製造や建設などありとあらゆる産業で「無人化」を推し進める必要があるのかもしれない。労働者減少は日本にとっても深刻な問題。中国の無人化の取り組みは多くを学べる先行事例となるはずだ。

[トップ]Photo by Hanny Naibaho on Unsplash

こちらの記事は2018年02月01日に公開しており、
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執筆

細谷 元

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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