“ワンプロダクト”でなければ、グローバル競争には勝てない──ノーコード時代を牽引するため、北米展開を自ら推進するSTUDIO代表石井氏の「原点回帰」

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インタビュイー
石井 穣
  • STUDIO株式会社 代表取締役CEO 

デザイナー兼エンジニアとして学生時代にWeb制作会社を設立。その後旅行サービス「Travee」を創業し、2年間に渡ってバンコクに移住し事業を展開。その後国内大手旅行会社に事業売却。2016年12月にSTUDIOへ参画、2017年6月に代表取締役就任(現任)。2024年1月より米国法人「STUDIO Technologies, Inc. 」CEOに就任し、グローバル展開を推進。

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日本発のグローバルプロダクト──。それは、あらゆるスタートアップにとっての夢である。

しかし現実はそう甘くない。世界には国内の非にならないほど激しい競争があり、ユーザーの特性もさまざま。そんなグローバル市場において、事業グロースはおろか、PMFを叶えた企業さえ、ITスタートアップの中には未だひとつとして存在しないと言えよう。

そんな中、地道な取り組みによって夢を掴もうとしている日本発のプロダクトがある。ノーコードで本格的なWebサイトを構築できるデザインプラットフォーム『STUDIO』だ。

グローバル展開を見据えて開発を開始し、2017年4月にβ版をリリースすると、またたく間に全世界の注目を集めた。ギークな読者ならご存知かもしれないが、新プロダクトを共有・発見するためのWebサイト『Product Hunt』では、日本企業初のデイリーランキング1位を獲得。

現在では、メルカリやnoteのようなベンチャー・スタートアップから、電通、博報堂のような超大企業、IDEO、日本デザインセンター、グッドパッチといったデザイン業界の雄、さらには行政団体であるデジタル庁まで、あらゆる企業・組織が活用している。2023年12月時点での公開サイト数は約10万サイト、ユーザー数は約40万人といった広がり具合だ。

Webサイト構築における課題は全世界共通であり、全世界のノーコード市場は35兆円にものぼる。そのためSTUDIOは前述の通り、リリース当初から世界中へと展開し、グローバル水準でプロダクトを磨き続けてきた。結果として、『STUDIO』には既に10万人の海外ユーザーがおり、海外を拠点に働くメンバーもいる。

しかし「グローバル市場を獲る」という意味では、まだまだスタートラインといった状態だ。そこで今年からSTUDIOは、いよいよ北米における本格的な事業展開を始め、現地におけるPMFに力を入れていくのだという。

まだ誰も成し遂げたことのない「日本発プロダクトによる世界制覇」に向けて、STUDIOはどのような戦略を描いているのか。自ら先陣を切ってアメリカに足場を移し始めた代表取締役CEOの石井穣氏に話を伺った。

  • TEXT BY MARIKO FUJITA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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既存のクリエイターソフトは操作が難しく、プロでなければ創作意欲が削がれてしまう

石井北米進出にあたり、いままではアッと驚くような新機能を開発して市場に入り込んでいくなど、様々なアプローチ方法を模索していました。しかし、蓋を開けてみるとそれは徒労に終わりました(笑)。

というのも、実際に現地に足を運んでユーザーの声に触れたところ、本当に重要な強みはリリース当初から変わらない「シンプルさ」でしかないとわかったんです。つまり、海外展開だからといってわざわざ新たに訴求軸を考える必要などはなく、ひとたびプロダクトを触ってもらえたらその魅力はストレートに伝わるんだなと。

なので、日本だろうが世界だろうが、勝負していくためには結局、この強みをひたすら強くするだけなんだなと吹っ切れました。

「『STUDIO』が一番シンプルで、使いやすい」──このように、『STUDIO』の強みは圧倒的なプロダクトの質の高さにある。とりわけ、感度の高いデザイナーやクリエイターから国境を超えて愛されており、グローバル展開を本格化させるフェーズにおいても変わることなく求められていたのだ。

ではなぜ、このこだわりが生まれたのか。そんな話から改めて追っていきたい。プロダクトの開発の原点は、石井氏自身の「サイトをつくるときに、めんどくさいことが多すぎる!」という当事者としての課題意識にあった。

石井僕はもともとデザイナー兼エンジニアとして活動してきたのですが、IllustratorやPhotoshopのようなソフトを使うのがめちゃくちゃ苦手だったんです。

こうしたソフトは完全にプロ向けで、慣れるまでは使い方を調べてじっくり学ぶ必要があり、すぐに直感的に使うことが難しい。「つくる」前に調べたり、煩雑な繰り返しの作業があったりすると、もうそこで萎えちゃうじゃないですか。

なので、テクノロジーの力でそうした煩雑さをなくし、より直感的に操作できるツールを生み出すことができたら、創作体験はいまよりずっと楽しくなる。それに、プロでない一般の人たちだって今まで以上にデザインに携われるようになるんじゃないかと思ったんです。

デザイナー兼エンジニアのキャリアを活かし、自らが思い描く「使いやすい」プロダクトをつくる──。その想いが起点となり、デザインから実装までをワンプロセスで可能にするWeb制作プラットフォーム『STUDIO』が生まれた。

そして、2017年4月にβ版をリリースするやいなや、『STUDIO』は感度の高いデザイナー・クリエイターたちの心を掴んだ。誰もが石井氏と同じように、「もっと使いやすいツールを使うことで、クリエイティブな活動に集中したい」という課題を感じていたのだ。

その評判は瞬く間に広がり、最初はIDEOやグッドパッチのようなデザイン系企業、メルカリ、クックパッド、noteのようなベンチャー・スタートアップ、次第に電通、博報堂のような大企業、デジタル庁のような行政団体にまで広がっていった。

こうした広がりを受け、2023年11月には国内でエンタープライズ向けプランをリリース。その手ごたえと展望について石井氏は、「非常に好調に推移しており、グロースの基盤は整った」と語る。

石井先日もデジタル庁がSTUDIOでつくったニュースメディアサイトを新たにリリースされていましたし、全国に店舗を展開するような大企業にも導入いただくなど、大きな手ごたえを感じています。これまでは「めちゃくちゃ使いやすい」という切り口だけでシェアを拡大してきましたが、新たな展開が訪れたような感覚です。

プロダクトが社会に浸透していくのに併せて、必要な機能をひとつずつ地道に追加していった結果、エンタープライズ企業にも対応できるだけのプロダクトとサービスに育ってきたわけです。エンタープライズ向けプランのリリース直後から大きな反響が得られており、順調に拡大しています。

IT業界には強固な既得権益があって、「サーバー代だけで30万円もかかるうえに、自分たちでサイトを直接いじることができない」みたいなことも未だにザラにあります。そんな状況にも風穴を開けたい。制作会社とパートナーシップを組み、企業が抱える課題に直接アプローチできるような仕組みを強化していくことで、社会の無駄もなくしていきたいと思っています。

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シンプルで直感的な操作性。
北米展開で気づいたサービスの本質的価値

国内事業は既に拡大フェーズに入った。そこで、STUDIOが今年から本格的に注力していくのが、北米市場の開拓だ。事実、石井氏自身も2023年後半からは多くの時間をアメリカで過ごすようになっている。

ここで1つ強調しておきたいのは、STUDIOは今回の北米展開に向けて兼ねてより「準備」を重ねてきたということだ。プロダクトは、開発当初から海外での利用が広がるよう、英語対応はもちろん、質自体をグローバル水準で磨き続けてきた。

そして2022年12月には、既にカリフォルニアに子会社「STUDIO Technologies, Inc.(以下、STUDIO US)」を設立。そこからさらに1年間の期間を経て、満を持して北米展開のアクセルを踏んでいこうというのが、今年なのだ。

ではなぜ、STUDIO USの設立当初からアクセルを踏まなかったのかと言えば、実際に現地のユーザーと会っていく中で、描いていたビジョンに微妙な変化が生まれてきたからだ。

石井アメリカに行くとなると、やはり日本より競合の数が圧倒的に多く、市況が厳しい。僕たちが日本でシェアを取れたのも、国内には競合がいなかったからというのもあります。

一方で、向こうには既に先行プレイヤーもいれば、新興プレイヤーも出てきており、互いにしのぎを削っている。そうした市場で戦っていくためには、「シンプルで直感的に使える」という既存の強みだけでは弱いのではないかと考え、STUDIO US立ち上げ当初は、「AIネイティブのノーコードツール」という新たな見せ方をしようと考えていました。

しかし、繰り返しになりますが、何年も『STUDIO』を使ってくれている現地のユーザーに話を聞いてみると、「『STUDIO』のいいところは、シンプルで使いやすいところだよ!」と言ってくれて……。この声に、ハッとさせられました。

戦う市場が変わるからと言って、プロダクト自体を変えたり目新しい見せ方をしようとする必要はなく、従来からの強みをもっと突き詰めるべきなのだと考え直しました。AIを含めたテクノロジーの力も、あくまで「シンプルで使いやすい」という競合優位性を強化するために使っていくべきなのだとね。

昨年リリースしたAIを活用したデザインアシスタント『STUDIO AI』も、マーケティング的な「Wow」は大きかったんですけど、実用性の観点では少し甘い部分があって。最近は、そうした「Wow」を目指すのではなく、本質的な価値を追求することこそが、競争の激しい北米市場でサービスを伸ばす上で不可欠だと考えるようになりました。

『STUDIO』の本質的な価値は、シンプルで直感的な操作性にある。そこで、その強みを強化すべく、石井氏は2024年2月に一時帰国。自ら指揮を取り、プロダクトのコア機能である「エディター」のリニューアルプロジェクトを急ピッチで進めるのだという。

石井エディターは、プロダクトの根幹を担う最も重要な部分なのですが、リリースして6年経っていることもあり、機能が増えた反面、やや複雑になってしまっているという課題がありました。

加えて、いまはAIが急速に発展しており、今後はAIがより自然にプロダクトの機能に溶け込んでいくことが予想されます。そうした展開も見据えて、ここで一度立ち止まって機能の整理をすることで、現状の最適解を描いていこうと思ったんです。

ここでうまくエディターを刷新できれば、国内市場だけでなく今後海外で戦っていく上での競合優位性にも直結するので、自分が直接関わり、スピード感を持って進めることに決めました。

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GAFAMの台頭は脅威にあらず。
国内で成功したリファラル戦略で北米へ進出

北米現地のユーザーの声を聞いた結果、「プロダクトの品質をとことん突き詰める」という戦略に立ち返ったSTUDIO。

しかし、どれだけプロダクトの質を磨いたところで、GAFAMのような巨大企業が参入した瞬間、一気にシェアを奪われてしまうのではないか?

この質問に対し石井氏は、「シェアがすべて奪われることはなく、多様なツールが共存していく」と、市場についての見解を語る。

石井ノーコードツールの最大の敵って、コードなんですよ。

世界的にはコードを書くユーザーが圧倒的に多く、対するノーコード市場はまだまだ小さい。今はその中で企業がシェアを争っている状況です。しかし、今後は間違いなくノーコード市場が拡大していくことでしょう。

ノーコード勢力の中には、Webflowのような大企業もありますが、彼らは一貫してプロ向けのツールを展開しているので、STUDIOとは立ち位置がやや異なります。『STUDIO』のような直感的に使えるWeb制作プラットフォームという観点では、いまのところの競合はオランダの会社1社のみですね。

Figmaが流行ってもPhotoshopはPhotoshopで生き残っているように、それぞれのツールは共存しながら棲み分けていくんだと思います。

ですので、『STUDIO』としては「北米のノーコード市場において、選択肢に入ること」が第一の目標なんです。

そして、その実現のために、手始めにコアユーザーを捉えてコミュニティをつくり、リファラルの基盤を整えることに注力していくという。

石井国内では、リファラルでかなり広まったのですが、それができたのは、『STUDIO』のファンとなってくれるようなコアユーザーをちゃんと捉えることができたからです。同じように、北米でも一定数のコアファンを獲得し、リファラルの基盤をつくることができれば、あとは自ずと広まっていくと考えています。

具体的には、まず個人やスタートアップにいるようなデザイナーに訴求し、徐々に会社規模が大きなところに浸透していくイメージです。北米市場をとることで、他の英語圏やヨーロッパにもアプローチできると考えています。

コアユーザーのイメージとしては、先日サンフランシスコで出会ったフリーランスのデザイナーのような人。この方は「Product Hunt」で『STUDIO』を知り、それ以来5〜6年使ってくれています。

その間、他のツールもいろいろ試したそうなのですが、「STUDIOが一番使いやすい」と定着してくれていて、「知り合いにも勧めるよ」と言ってくれています。彼女のようなユーザーと出会い、関係性とコミュニティを構築していけば、北米市場でも芽が出てくるんじゃないかと思っています。ですので、今年はどんどんユーザーと出会って、コミュニティづくりに注力していきたいですね。

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世界標準のプロダクトを目指すなら、国内市場に迎合しすぎるな

昨今では、「マルチプロダクト戦略」「コンパウンド戦略」といった言葉もしばしば耳にするようになったが、STUDIOの戦略は至ってシンプル、「ワンプロダクトで全世界」。その意図について石井氏は、「そもそもマルチプロダクトにしたり、各国ごとにローカライズする必要がない」と語る。

石井ウェブ制作という全世界共通の技術があって、僕たちはその課題を刺しに行っているので、わざわざ別のプロダクトにする必要がありません。

そもそも、iPhoneもNotionもFigmaもみんなワンプロダクトですよね。よいプロダクトをつくりさえすれば、ワンプロダクトでも全然世界に行けると思っています。ウェブの市場が全世界共通かつめちゃくちゃ大きいからこそ、可能なのかもしれないですけどね。

ただ、いずれにしても、最初からグローバル展開を視野に入れてプロダクトをつくることは必要だと思っています。

日本のプロダクトはどこか日本っぽいものが多いんですけれど、そのままでは海外展開は難しい。一度日本市場に特化してしまったら、そこから抜け出すことはできません。「日本向けとは別に、海外向けにプロダクトをつくる」という話になってしまうと意味がないですよね。

つまり、「ワンプロダクトで全世界」という海外展開戦略は、最初から海外展開を視野に入れてプロダクトをつくってきたSTUDIOだからこそとれるものなのだ。

このように書くと当たり前のようにも聞こえるが、国内市場に迎合し過ぎることなく、ここまでプロダクトを磨き続けてきたSTUDIOの一貫性には、ただただ舌を巻く限りである。

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デザイナーは、経営の一番身近なところに配置せよ

そしてSTUDIOは今、いわゆる第二創業期を迎える。

つまり、0→1のフェーズが終わり、ここから国内海外ともに大きく舵取りをしていこうという面白いフェーズにある。

プロダクトを開発するエンジニアやデザイナーに加えて、エンタープライズ企業向けのセールスを行う営業や、STUDIO USの現地チームや将来的なIPOに向けたCFOなど、幅広い職種で採用にも動いている。

石井氏は、「プロダクトをとことん極めたり、気持ちのいいユーザー体験をつくりたい人にオススメ」と、今後のプロダクトビジョンについて次のように語る。

石井まず、新興勢力としてシェアをとっていくためには、やはりAIのような新たなテクノロジーを取り込んで、極限まで効率的な体験をつくっていくことが必要だと思います。

たとえば、トップページをつくったら他のセクションはAIが自動でつくってくれるとか、キャラクターを途中まで書いたらあとはAIが仕上げてくれるとか、AIと会話をしながらブラッシュアップをしていくことができるとか。

グラフィックデザインの領域では既にそうしたツールも出ているのですが、ウェブデザイン領域ではまだいいツールが出ていないので、そこはやりたいと思っています。何かつくりたいもののイメージがある人に対して、その手を拡張させてあげるような、ポジティブな創造性を解放し、加速させてあげるようなツールをつくりたいんです。

また、ワンプロダクトと言いつつも、拡張の余地は大いに残されているため、「興味のある分野についてとことん極めたい」という人にも向いているでしょう。

また、直接プロダクトをつくるわけではない営業やCFO、コーポレート部門のメンバーであっても、プロダクトとデザインへの理解は重要だ。

石井プロダクトドリブンで成長してきた会社なので、プロダクトへの理解は必須ですね。デザイナーやエンジニアでなくても、プロダクトには普通に触って、愛情がある状態でいてほしい。

一方で、たとえばですが売上至上主義、数字至上主義というセールスタイプの人は正直向いていないと思います。無理に数字をつくるのではなく、ユーザーの問題解決のために導入を提案できる人。別の言葉で言えば、「ビジネスとデザインを掛け算できる人」ということでもあります。

昔からよく「経営の一番身近なところにデザイナーを置け」と言われていますが、STUDIOの経営陣はまさにデザインバックグランドがあるのが特徴です。なのでこの強みは今後も拡大していきたいですね。

やはりデザイナーは、いろんな情報を整理してまとめるのが得意なので、全員がデザイナーである必要はないですが、少なくともデザインに興味や理解のある人で、経営層やマネジメント層を強化していきたいと考えています。AirbnbやNotionのCEOもデザイナー出身で、強い企業を創っていますよね。そんな組織が理想です。

「自分がほしいものをつくる」──。

シンプルなモチベーションの力強さを、石井氏の言葉は改めて実感させてくれる。既に「Product Hunt」で話題を呼んではいるが、アメリカの地でどんなセンセーションを巻き起こしてくれるのだろうか。STUDIOの展開に、今年は目が離せない。

こちらの記事は2024年03月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

藤田マリ子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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