arrow_back JOURNALFebruary 2018 arrow_forward
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
01
02
03
closeCLOSE

「ゲノムはいま90年代のインターネットと同じ」AWAKENS高野、ゲノム事業を“今”始めるべき理由を語る

もう、「ゲノムをビジネスにするには時代が早すぎる」なんて言っていられない。GoogleやAmazonがゲノム市場に参入しており、将来は...
もう、「ゲノムをビジネスにするには時代が早すぎる」なんて言っていられない。GoogleやAmazonがゲノム市場に参入しており、将来は確実に、ゲノムをテーマとしたビジネスが大きな盛り上がりを見せることだろう。米シリコンバレーに本社を置くAWAKENSのCEOである高野誠大は、「今のゲノムは“90年代のインターネット”と同じ」だと語る。
あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──
18-01-22-Mon
高野 誠大 (たかの・ともひろ)
AWAKENS, Inc. CEO
沼倉 健介 (ぬまくら・けんすけ)
AWAKENS, Inc. CTO

もう、「ゲノムをビジネスにするには時代が早すぎる」なんて言っていられない。GoogleやAmazonがゲノム市場に参入しており、将来は確実に、ゲノムをテーマとしたビジネスが大きな盛り上がりを見せることだろう。米シリコンバレーに本社を置くAWAKENSのCEOである高野誠大は、「今のゲノムは“90年代のインターネット”と同じ」だと語る。

Googleが当たり前のものになると、90年代に想像できていたか?

高野『ゲノムは、90年代のインターネットと同じだ』とよく言われています。90年代にインターネットによって人々が繋がり始めましたが、まさか10年、20年先にGoogleやFacebookがこれだけ人間社会にとって当たり前のものになるなんて誰も想像していなかった。最初にゲノム領域に関心を持ったのは、『インターネットと同じ』という言葉が響いたからでした。

AWAKENS, Inc. 代表取締役社長 高野 誠大氏

高野は学生時代、インドのBOP(Buttom Of Pyramid)ビジネスに強い関心を抱いていた。それは、「誰も見たことのないような新しいものが生まれるワクワク感を感じられた」からだという。

“ワクワク感”というのは、高野という1人のビジネスマンのキーワードになっている。彼は、起業家やエンジニア、アーティストたちのコミュニティであるImpact HUB Tokyoの創業メンバーでもある。

同社を最初のキャリアとして約3年間働いたが、起業を志す人々とのコミュニケーションを通して、自分も0→1で何かを生み出したいという思いは募っていった。

彼らのように自分も何かワクワクするものを見つけたい──。

そう焦れていた高野は、上記の「90年代のインターネットと同じ」という言葉を聞いて、ゲノム領域に目を付ける。そこでエムスリーに転職し、G-TACというゲノム関連新規事業でビジネスプロデューサーを担当。

医療系企業である同社の中で、「むしろ医療以外のアプローチで、ゲノムをテーマにできないか」とひらめき、2017年1月にAWAKENSを設立したのだった。

CTOの沼倉は、東北大学工学部、同大学院情報科学研究科でバイオインフォマティクスを専攻。在学時から、個人ゲノム解析を行うソフトウェアやWebアプリケーションを開発していた。

沼倉ゲノムに興味をもって海外のゲノム解析サービスを調べたところ、これなら自分でも同じものを作れるのでは、と感じたんです。そこで、既存のゲノム検査Webサービスをリバースエンジニアリングするところから始めました。

AWAKENS, Inc. CTO 沼倉 健介氏

修了後は、ソニー、エムスリー、米IlluminaのジョイントベンチャーであるP5にて、医療機関向けゲノム検査システムの開発を進めてきた。また、同エムスリーにおいて、医師会員向けのWebサービス開発にも携わった。沼倉は、自身の居場所をアカデミアからビジネスに移した理由をこのように説明する。

沼倉研究室でもWebアプリケーションの開発をしていましたが、実際にユーザが使うWebサービスの開発については、このままでは素人の域を出ないという焦りがありました。大規模なユーザベースのあるWebサービス開発に携わる経験が必要だと感じていました。

そして、ディー・エヌ・エーが取り組むゲノム事業MYCODEの立ち上げメンバーであったCOO松田を加えた3人は、今はまだビジネスにするには早いと言われてしまう、フルスペックのゲノムデータ"全ゲノム"のインフラになるような事業を、医療やヘルスケアの分野にとらわれずにやれないかと意気投合し、AWAKENSの前身となるプロジェクトを始める。

そして、ゲノム業界最大手の米Illuminaが運営するスタートアップ支援プログラムIllumina Acceleratorに採択され、米国にAWAKENSを設立した。

ゲノムの先進企業が集まる米国西海岸を拠点に活動を続け、現在は米UC Berkeleyが運営するアクセラレータプログラムSkyDeck Acceleratorに参加している。

“全ゲノム”解析に必要な費用はどんどん安くなっている

実際に日本だと「ゲノムをビジネスにするには早すぎるのではないか」という漠然としたイメージを持っている人が多い。

しかし、かつては人間1人のDNAデータすべて、“全ゲノム”を解析するのに3,000億円かかったが、いまや必要な費用は30万円を切っている。おそらく1万円以下の価格で全ゲノムを取得できるようになる日も、そう遠い未来ではないだろう。

GoogleやAmazonといった超大手企業もゲノム分野に目を向けており、「ゲノムをビジネスにするにはまだ早い」どころではないのだ。

高野さらに研究が進むにつれて、ゲノムからわかることも増えていくでしょう。将来は、あらゆるサービスにゲノムが組み込まれていくはずです。ゲノムは、医療をはじめ運動や食事、人々の生活に寄り添った部分での応用範囲がすごく広いんです。

たとえばゲノムデータがあれば、自分がどんな病気にかかるリスクがあるのか、どの薬が効いて、逆にどの薬は副作用が出やすいのか、そういったことも把握できる。また、医療というよりもう少し手軽なヘルスケア領域である、自分の体質に合った運動、食事、美容についても理解が深まるだろう。

さらに高野いわく、アメリカでは、「自分の祖先を知るサービスがものすごいスピードで伸びている」。

高野ゲノムってある種、自分たちのアイデンティティというか、ストーリーを補完できるツールなんです。他にもゲノムによって性格傾向を再確認するなど、“自分を再発見する・保管する”手段としてゲノムデータが使われているのは、ゲノム領域に身を置く僕たちとしても面白く感じます。

もしかすると現代人は、SNSの普及で自分を見失いやすくなっているからこそ、『自分はこうなんだ』と教えてくれるものに惹かれるのかもしれませんね。

ユーザーと開発者をつなぐパーソナルDNAクラウド「GENOME LINK」

高野僕たちが目指しているのは、人々がまず自分の全ゲノムを一度に手頃な値段で取得した上で、状況に応じて知りたい情報をそのつど引き出し、それによってサービスという恩恵にアクセスできる世界です。

たとえば、フィットネスジムで自分のゲノムデータを見せれば、体質に合ったトレーニング内容を提案してもらえるような世界観。現在は個別のゲノム検査サービス毎に解析をしていますが、一度解析したデータをユーザーがオーナーシップを持ち、自由に活用できるようにすることで、ゲノムがもつデータの価値と、コスト構造を一気に変えてしまいたいんですよね。

今の市場の構造を変えていくことに対して、多くの企業が二の足を踏んでいますが、そういうところで踏み出すのが、やっぱりスタートアップの役割だと思います。

AWAKENSでは、一般ユーザーとプロダクトの作り手を繋ぐパーソナルDNAクラウド「GENOME LINK」の開発を進めている。

こちらは、「ゲノム版のPayPal」だ。「GENOME LINK」を使えば、それほど専門知識のない企業や開発者でも、ゲノムに関する新たなサービスをコーディングだけで簡単に作り出すことができる。

沼倉研究者向け、開発者向けと、ゲノムのAPIサービスはこれまでも世に出ているものがありますが、とくに一般の開発者向けのデファクトスタンダードといえるものがまだありません。

ゲノムに精通していなくとも、Webエンジニアやモバイルエンジニアであれば気軽に使ってみることができるサービス目指しています。

高野目の色やフィットネス傾向、病気のリスク、効きやすい薬など、開発者は、ユーザーのゲノムデータの中から必要な情報をAPIで簡単に引っ張ってこられるんです。

どこの文字列にどういう情報があって、それをどんなふうに計算して、どういうふうに保管しておかなければならない、という専門知識は一切必要ありません。

一般ユーザーは自身のゲノムデータを元にさまざまな情報やサービスにアクセスし、開発者はユーザーのゲノムデータを元に新たなサービスを生み出していく。

そのような循環を作り出すプラットフォームこそが「GENOME LINK」。一般ユーザーや、ゲノムを専門としていない開発者たちをメインターゲットとしたサービスにするのには、「ゲノムのムーブメントを起こしたい」という狙いもある。

そのために、AWAKENSではゲノムの普及啓発のため、自分たちでハッカソンを開催したり、大規模なハッカソンのスポンサーになったりといった活動も積極的に行っている(現在は世界初となるオンラインゲノムハッカソンも開催中、もちろん東京からでも参加可能だ)。

もっとゲノムに対する関心や問題意識を人々に持ってもらいたいという想いからだ。

提供:Awakens, Inc

高野日本人にとって、まだまだゲノムは遠いものです。だから僕らとしては、コンシューマーにまずゲノムというものを理解して、その恩恵を受けてみてほしい。

また、それに早い段階から、他の開発者も巻き込みたい。今後のためにゲノムと人々との間のギャップを埋めていきたいんです。

専門知識がなくても“ブリッジ”は作れるかもしれない

シリコンバレーに本社を置くAWAKENSだが、日本拠点で勤務することも可能だ。渡米する機会はもちろんあるため、海外を行ったり来たりするような働き方がしたい人にとってはピッタリの環境と言えるだろう。

500 Startups Japanやエンジェル投資家の鎌田富久氏(TomyK)などからの資金調達にも成功し、今後は「GENOME LINK」の構築にさらに尽力していく。

ここまで聞いて、「知見のない自分にとってAWAKENSで働くことは難しそうだ」と感じた人もいるかもしれない。しかし、高野は「僕だってアカデミアで学んだようなバックグラウンドがあるわけじゃない」と話す。

AWAKENSでは、ゲノムに関するバックグラウンドのない人材も歓迎しているのだ。

高野僕らが作りたいのは、“リモコンがなぜ動くかわかっていないとリモコンが使えない”世界じゃありません。

インターネットだって、インターネットはここがこうなっているから繋がるというテクノロジーを理解している人だけだったら、今のような世界は作れていないわけです。テクノロジーとユーザーとを繋げようとしている人々は、ゲノム領域にはまだ多くありません。

僕らはそのブリッジがしたいわけですから、ゲノムの専門家はもちろん、専門知識はないけれど何かユーザーにとって価値ある体験を生み出したいという人もぜひジョインしてもらいたいです。

沼倉ゲノムを扱うバイオインフォマティクスだけでなく、Webエンジニアリングのベストプラクティスとの両輪でシステムを開発しています。

ゲノムデータを同時アクセス下で効率良く処理するシステム基盤や、プライバシーとセキュリティーで求められる米国HIPAAへ準拠するインフラの構築、ユーザーのゲノムをインタラクティブに描画するWebフロントエンドの開発など、Web開発の専門性が求められ、いちエンジニアとしてとても挑戦のしがいがあります。

スティーブ・ジョブズも晩年、自身のすい臓がん治療においてゲノム解析にもとづいた治療方針決定がなされたという。バイオテクノロジーとインターネットテクノロジーをかけ合わせる時代は、ゆるやかに、しかし確実に迫ってきている。

いずれエンジニアは、人間のデータそのものをプログラミングするようになるかもしれない。ゲノムは人間1人1人が体の中に持つ宇宙だ。

そして、IoTやブロックチェーンと並び、今まで未開拓だった領域にようやく羅針盤が出来てきた瞬間だ。乗り出すなら“今”しかない。

0→1創世記

あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──