INTERVIEW
谷口 怜央 岩本 卓也
18-03-07-Wed

自由な働き方を目指すからこそ、
まず自分たちが体現する。
18人の複業集団企業が見据える仕事と人生の未来

TEXT BY MISA HARADA@HEW
PHOTO BY YUKI IKEDA
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Spacelook株式会社の谷口怜央は、社会には“見て見ぬふり”が蔓延していると指摘する。

自分自身について考えることは、
自分をとりまく世界に目を向けることにもつながる。

同社が運営する1日単位で仕事を探せるワークアプリ「Spacework」は、
人々の働き方や生き方を変革するための第1歩としてリリースされたものだ。

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人間が自由になれば、社会全体が前向きになる

野球少年だった谷口は、中学生時代に腰をケガして、約1年間の車椅子生活を余儀なくされた。そのとき彼が強く感じたのは、道行く人々の“見て見ぬふり”な態度だった。車椅子に乗った自分が転倒しても、道行く人は誰も助けてくれない。

そんな無関心が蔓延する社会に憤りを感じた谷口だったが、「自分だって貧困などの社会問題が多く存在することを知っているのに、何も行動に移していない。それも結局、見て見ぬふりではないか」と悟る。だったら、この世にあふれる“見て見ぬふり”をなくしたい──。

そんな思いからNPO団体の立ち上げも経験した谷口だったが、「世の中に大きなインパクトを与えるには、ボランティアよりも継続性の高いビジネスの方が適している」という結論に至った。谷口はすぐさま次の行動を起こす。

高校2年生の夏休みが終わると共に高校を休学して、名古屋から上京。決済系のITスタートアップで半年間、オフィス暮らしでインターンを経験し(高校生で休学しインターンのために上京する行動力は、企業からはいい意味で「イカれている」と評価されて即採用だったという)、2017年6月にSpacelook株式会社を創業する。

18歳、高校を休学したままの状態での起業とは、なかなか破天荒な意思決定だ。「高校は卒業しておこう」「大学には進学しておこう」と大多数は考えるところだが、谷口は起業家として即スタートを切ることを選んだ。

谷口「世の中を変えたい」という思いだけで起業しているので、自分の成功とかキャリアとかは全く考えていないんです。そんな人間が、3年、5年と待てるはずないですよね(笑)。細かいことは、走りながら考えようと思いました。

Spacelook株式会社 谷口 怜央氏

NPO団体や社会起業家など、多くの人々が世の中を変えようと奮闘しても、大きな変革を起こせていないのが現状だ。谷口は、その原因を“問題そのものにアプローチ”しようとしてしまっているからだと指摘する。

問題に直接アプローチするのではなく、問題を認識しつつも見て見ぬふりを続けている大多数の人々に“自由な生き方”を提供すれば、社会全体が良い方向に進み、自然と諸問題も解決していくのではないかという仮説を谷口はもっている。

自由な生き方を実現するためには、ネガティブなイメージがつきまとう“仕事”の領域を変えなければならない。谷口は人材領域で事業を行うことを決めた。

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企業や組織ではなく、プロジェクト単位で働ける社会へ

「Spacework」は、カフェやレストラン、オフィスなどで「1日単位の仕事」ができるワークアプリだ。現在のメインユーザーは長期でシフトを組むことが難しい学生。2017年9月にリリースされた同サービスの会社と個人のマッチング率はなんと90%を超えている。

高いマッチング率を誇る「Spacework」だが、他のサービスと決定的に異なるのは、日本人の働き方自体の変革を目指す壮大なビジョンだ。

Spacework| 「カフェ/レストラン」などで「1日限定の仕事」ができる1日求人アプリ |提供:Spacelook株式会社

Spacelookが目指しているのは、ひとつの企業や組織の枠の中ではなく、人々がプロジェクト単位で働くことができる社会。ビジネスマンたちは、プロジェクトからプロジェクトを渡り歩き、自分のライフスタイルに合わせて労働時間などを決めていく。フリーランスの働き方をイメージしてもらえればいいだろう。

現在の「Spacework」では、働く環境が変化してもノウハウを共有しやすい飲食店を中心にしているが、今後は企業も職種もどんどん増やしていく予定だ。

また、利用者も大学生がメインになっているが、いずれは社会全体にアプローチしていくつもりだという。働ける場所も、働ける人もどんどん広げていって、誰もが自由に働き方を選択できる社会を目指す。

谷口ライフステージによって、「今は仕事に専念すべき時期だ」という人もいれば、逆に「今は徹底的に遊ぶ時期だ」という人もいる。出産や育児を含め、働き方って人それぞれ自分に合った形を設計していくべきものだと思うんです。

その谷口のビジョンと思いを同じくしていたのが、SpacelookのOrganizationなどのドメインに参画する岩本卓也だ。一橋大学大学院でMBAを取得して今春卒業する彼だが、すでにSpacelook を始めとした4社と複数のプロジェクトに携わっている。

彼は、日本舞踊の名家という特殊な環境に生まれた。そこで感じたのは、実力よりも血筋が重視される環境に対する違和感だった。そこから彼は、「社会に存在している暗黙の階層を崩したい」という思いを抱くようになる。

Spacelook株式会社 岩本 卓也氏

学校教育の中で、「一元的な評価軸しかない社会はおかしい」という違和感も抱いていた岩本。だからこそ、“自由な生き方を選べる社会”という思いを持ち続け、それを実現するための手段としてSpacelookにジョインした。

岩本自分に合った生き方を見つけるとなると、自分自身のことはもちろん、「他の人はどうなんだろう」と周囲のことにも目を向ける機会が増えます。そうなると、怜央の言う“見て見ぬふり”は自然と減っていくんじゃないでしょうか。

最近、僕達が導入した取り組みの1つに「ALLIANCE(アライアンス)」という考え方があります。

これは『アライアンス』(リード・ホフマン(著)、篠田真貴子(翻訳))で有名になった概念ですが、簡潔にいうと、企業に個人が雇われる状態ではなく、企業と個人がお互いの目指すものを相互補完的にサポートするという意思表明となり、それが雇用契約の代わりとなるという考え方です。

直近ではトルコでアプリの開発を行っていたトルコ人メンバーが日本の語学学校へ通うことになった際に学費支援をするということがありました。我々としては物理的な距離が縮まって事業の推進力が上がる、彼はより理想的な環境で個人のwillを実現できる。

Spacelookは個人と組織の成功を両立できる世界を作っていきたいと考えています。

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“ティール・オーガニゼーション”をもとにした柔軟な組織作り

Spacelookでは、2018年1月時点で18人ほどのメンバーが関わっている。自由な働き方を目指す同社では、基本的にリモートワーク。いつ来てもいいし、いつ帰ってもいい。給与も自分で決めるし、経費の決裁権も個々にある。

だからこそ岩本のように“複数の担当プロジェクトの中のひとつ”という形でジョインしているメンバーも少なくない。正社員や非正規、アルバイトといった括りや、立場の上下も存在しない。

しかし、柔軟な働き方を受け入れるぶん、重要になってくるのが組織マネジメントだ。その領域で組織に貢献しているのが、岩本である。彼は組織作りにおいて、“ティール・オーガニゼーション”の考え方に近い思考をしている。

2018年1月に邦訳版『ティール組織——マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(フレデリック・ラルー(著)、鈴木立哉(翻訳)、英治出版(2018/1/24))が出版され話題になっている概念だ。本書では、組織経営の進化形態をレッド、アンバー(琥珀)、オレンジ、グリーン、ティールの5種に分類している。

特定の権力者が力で支配的に運営する“レッド”、ヒエラルキーをベースに上意下達の明確な支持命令系統で組織運営する“アンバー”、成果によって従業員を評価し競争を促す“オレンジ”、個々人の主体性と多様性を尊重する“グリーン”、そして、特定の指揮命令系統を持たず、信頼をベースに各々がセルフマネジメントによって組織の目的を実現するためコラボレーションする“ティール”。

岩本の考えは、今までとは異なるこの複雑さを捉え、これまでのシンプル化し微分的思考から、今まで無視し、見過ごしてきた変数を取り入れる積分的思考を要求する。

この5つの組織形態に関してもグラデーションのように混ざり合い、さらに自由にそれぞれの切り替えができる、より複雑な流動的な組織を理想に掲げている。

それを実現するための組織作りまで含めて、Spacelook内で自由な働き方を実践し、得た結果をサービスに還元していく。

同社では、人の働き方や生き方そのものを変革しようとしているからこそ、単なる求人サービスを運営する企業以上の姿勢が求められる。しかし、谷口は、その状況を心の底から楽しんでいる。

「Spacework」を通じて特定の企業や組織に縛られる個人が減少すれば、自然と人の流動性は高まる。生活圏も特定の場所に縛られる必要がなくなる。人があらゆる垣根を超えてつながり始める。魅力的なアイデアが次々と生まれる。そこから生まれたサービスがより良い社会を実現していく。

そんな好循環が連鎖するビジョンが谷口には見えているようだ。

谷口僕はひたすらわくわくしているんですよ。最近は、「スタートアップのメンバーは、すべてを犠牲にして事業にコミットしなければならない」というイメージを壊したいと思っています。

スタートアップの働き方にも多様性があっていいと思っています。自由な働き方が許容される社会を実現するためには、まずは自分たちから自由な働き方を体現することが大事ですから。

「わくわくしている」は、もはや最近の口癖ですね。

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