INSIGHT
18-09-12-Wed

デジタルグッズ売買「CryptoKitties」に倣え ── 日本のキャラクター市場2兆円の拡大余地を探る

TEXT BY TAKASHI FUKE

2017年末以来、日本でも仮想通貨の存在がようやく認知されるようになった。
しかし、今となっては投機熱も冷め、日本円や米国ドルなどの法定通貨へ戻されたか、
バーチャルウォレットに放置されたままだ。

米国大手の仮想通貨取引所「CoinDesk(コインデスク)」が発表したレポートでは、
仮想通貨の代名詞でもある「ビットコイン」の2018年第1四半期における取引量減少が報告されている。
その取引量は28%減少、採掘者の収益も22%減少したという。

一方、ビットコインとしばしば比較される
仮想通貨「イーサリアム」の取引量は前四半期比較で6%上昇し、
採掘者の収益は22%増加したと報告された。
こうした背景もあってか、イーサリアムを活用したプラットフォームサービスが増えてきている。

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「バーチャル仔猫」の売買プラットフォームは、何を実現するか?

CryptoKitties(クリプトキティーズ)

2017年6月にカナダで創業された「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」は、仔猫のデザインをしたデジタルカードの売買プラットフォームを運営している。『VentureBeat』の記事によると、2018年3月の時点で150万ユーザーを保有し、累計取引額は4,000万ドル(44億円)相当に及んだという。

ユーザーはイーサリアムを使い、好みの仔猫カードを購入。カードを選ぶ際の基準は「世代」「ブリード(交配)」「クールダウン(次に交配できるまでの待ち時間)」の3つがある。世代が若い、交配によって誕生した希少種、クールダウンが短い仔猫に高値がつく。速い競走馬の子孫に高値がつくイメージに近いだろう。また、稀に誕生する「Fancy Cats(ファンシーキャッツ)」と呼ばれるレアな仔猫にも、高値がつく。

ユーザーは仔猫同士を交配させることで、両親の特徴を受け継いだ新たな仔猫カードを生成できる。世代が若ければ交配するまでの待ち時間が短く、たくさんの仔猫を生み出すことが可能。しかし世代が若くとも、何度も交配を繰り返していればクールダウンが長くなるという仕組みだ。また、全ての情報はブロックチェーン上で記録されるため、ユーザーは簡単に購買の履歴を確認できるようになっている。

CryptoKittiesの特徴は、プラットフォーム上では仮想通貨が直接的に絡まないスタンスにある。具体的には、仔猫カードはイーサリアムのブロックチェーン上で扱われる電子データ「トークン」として取引されている。つまり、デジタルカードを作品コレクション「CryptoCollectibles(クリプトコレクティブル)」として扱っているのだ。

昨今、仮想通貨の取引に関しては世界各国が厳しい規制を敷いている。有価証券として扱われる仮想通貨周りの規制をかいくぐるため、デジタル作品のデータ売買サービスに終始しているというCryptoKittiesのアイデアは賢いといえる。

こうした工夫から、CryptoKittiesは仮想通貨取引に厳格な中国市場の参入も果たした。

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「つまり、それはRTMではないのか?」という疑問への解答

ここまで聞くと、ゲーム内で現実の資金を「課金」して、デジタルアイテムを手にする「RTM(リアル・マネー・トレード)」との違いがないように感じるかもしれない。

仔猫のデータを売買するのであれば、現金でもできるし、履歴を追うのも技術的には高い障壁には思えないだろう。

しかし、従来のゲーム内課金アイテムの所有権は、アイテムデータを管理するサーバーを運営する企業側にある。つまり、仮にユーザーが課金をした購入アイテムであったとしても、所有権は運営会社側にあるため、ユーザーが勝手に売り買いすることは禁じられているのだ。また、運営会社が潰れてしまえば、多額の課金をしてきたアイテムもサーバーの運営終了とともに消えてしまうリスクを背負う。

一方、ブロックチェーンを用いると、取引記録はユーザー自らが保有することになる。そのため、デジタルグッズの所有権は購入者に帰属する。売買をしても問題はない。

中央集権的な管理システムもないため、半永久的にデータは残る。言い換えれば、CryptoKittiesが倒産したとしても、保有する仔猫のデータはイーサリアムのブロックチェーン上に残り続けるのだ。

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「デジタルグッズ版Amazon」登場。ヤフオク!やメルカリの姿もちらつく

CryptoKitties(クリプトキティーズ)

CryptoKittiesは、いわば「仮想資産版ポケモン」のような市場ポジションを取りつつある。仔猫のデザインは血統によって様々に変わり、ほぼ無制限に種類は広がる。そのためコレクションにハマれば、いつまでも収集をやめられなくなる。

こうしてユーザーが持つデジタルキャラクターの収集癖を突くことで、投機目的だけに用いられていた仮想通貨の流動性を圧倒的に上げたのだ。

たとえば値が下がり、売り抜けずに中途半端にウォレットに残ってしまった仮想通貨は、手つかずのまま残り続ける不動資産となってしまう。しかし、CryptoKittiesを利用することで、ウォレットに残った少額の仮想通貨でもキャラクターを購入できる。

楽しみながら育成していき、キャラクターのレベルを上げていきながら仮想資産を増やせば、最終的には大きな売上を立てて法定通貨へと換金できる機会が訪れる。

CryptoKittiesに代表されるデジタルグッズの種類は次第に増えつつある。そこで、各グッズを売り買いできる大規模プラットフォームを目指すサービス「Rare Bits(レアビッツ)」と「OpenSea(オープンシー」も登場し始めた。

Rare Bitsは2018年4月に600万ドル(日本円で約6.6億円)を調達。約20種類のデジタルグッズを競売形式で売りに出せるイーサリアムを活用したプラットフォームだ。仕組みは「ヤフオク!」のような競売に似ている。ユーザーはグッズの販売期間と始値と終値を設定。時間を追うごとに終値に向かって値段が上下降する。

一方、OpenSeaは2018年5月に200万ドル(日本円で約2.2億円)を調達。「メルカリ」のようにあらかじめ販売金額が設定されており、値引きをしたければ購入者は希望価格をオファーすることができる。同サービスの取り扱いグッズ数も20種類ほど。

Rare BitsやOpenSeaのように、今後「デジタルグッズ版Amazon」のポジションを狙う戦いが加熱していくだろう。大手企業主導による事業者も参入するかもしれない。

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日本の十八番「キャラクター文化」に勝機あり

Rare BitsとOpenSeaの両サービスは、20種類のグッズを扱う点や、依然としてCryptoKittiesが取引の大半を占めている点において大差のないプラットフォームにみえる。しかし、今後この手の取引プラットフォームは数を増すことが予想される。

すでにスポーツ分野では、急成長の兆しをみせるサービスとして「Unblockable(アンブロッカブル)」が登場した。2018年6月に500万ドル(日本円で約5.5億円)を調達。

同サービスはスポーツ選手のデジタルカードを、独自トークンを使って売買できるプラットフォームを運営する予定(正式リリースはまだされていない)。野球やバスケットボール選手のリアルタイムの成績が反映される「ファンタジースポーツ」の要素が組み込まれている。こうしたギャンブル性を盛り込むことでユーザーの中毒性を誘う。

Unblockable(アンブロッカブル)

こうしたプラットフォーム乱立が想定される市場情勢において、独自性を高めるには長期戦略が重要になってくるだろう。そこで日本のキャラクター市場が競合優位性を持つと考えられる。

海外でも大人気キャラクター「マリオ」「ポケモン」「ゼルダの伝説」の商標は任天堂が独占している状態ではあるが、仮に同社が本格的にデジタルグッズ市場へ参入した場合、米国で爆発的に流行ったARモバイルアプリ「Pokémon Go」のように市場を席巻する機会が生まれるはずだ。

世界的なエンタメ企業だけでなく、新しい人気キャラクターを生み出すことができれば、日本のスタートアップにも大きな勝機が訪れる可能性が十分考えられる。DeNAや楽天などスポーツクラブを抱える企業が参入すれば、Unblockableと同様のビジネス展開が期待できるだろう。「くまモン」に代表される地方のマスコットキャラクターや、人気のアニメキャラクターが活用されれば、新たな収益源となるに違いない。

いまだ日本において、デジタルグッズ取引に関しての市場認知は十分に行き渡っていないのが現状ではある。しかし、日本のキャラクター文化は一様に世界で高い知名度を有する。この点、日本には大きなポテンシャルが眠っていると考えられる。

市場開拓期の今のうちに先手を打つことで、政府が打ち出す「クールジャパン戦略」以上のリターンを手にできるかもしれない。「矢野経済研究所」のレポートによると、2016年度のキャラクター市場規模は約2兆円という。前年度比の横ばいであったと指摘しているが、この規模を拡大する機会になるはずだ。

いずれにせよ、2018年前半期で仮想通貨を通じたデジタルグッズ市場は大きな動きをみせた。この流れを一過性のものと捉えるか、市場がレッドオーシャンになるまで見守るかで、大きく日本の仮想通貨ビジネスの勢いに変化が出るのは明らかなはずだ。市場は2020年の東京オリンピックまでは待ってくれないだろう。

[文]福家 隆

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