業界変革へ、単なるCSだけでは不十分──「PdMばりの開発思考」と「CREとの連携」で、あるべき姿へ導くバーティカルSaaS戦略をhokanに学ぶ

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インタビュイー
羽鳥 大貴
  • 株式会社hokan CS(カスタマーサクセス)Div/Div長 

損害保険会社で自動車保険の保険金査定業務を経験。2020年9月にhokanへ入社。カスタマーサクセス部門の責任者として全国規模のプロ代理店・企業代理店を中心にシステム導入のコンサルティング〜利用開始後の活用支援に従事。

小倉 隆宏
  • 株式会社hokan Tech Div/Div長 

システム開発会社で保険業界向けのシステム開発を担当。その後保険会社のシステム部門へ転職し、マネジメント業務に従事。2021年2月にhokanへ入社。CREチームを牽引し確立させ、エンタープライズ含めて30社以上の導入を実施。2児の父

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金融領域全体がDXの波に揺らいでいる今、変化の遅れが目立つのが保険業界だ。とりわけ、「保険代理店業界」は“超”がつくほどの属人的な業務スタイルから脱却することができず、生産性は著しく低いままだ。

そんな閉塞感の中、一筋の光明を見出したのが、保険代理店の業務効率化を進める『hokan®』を起点に、蔓延る業界のレガシーイメージを一新した株式会社hokanだ。

これまでの記事(一記事目二記事目)では、“逆張りの思考”を武器に、真のユーザーのペインを捉えるバーティカルSaaSの作り方や、三井物産グループとの大々的な協業を引き寄せたシリーズB15億円調達の裏側など、hokanの先進的な取り組みが明かされた。

そこで、今回の取材では、“変革の現場”に強く焦点を当てていきたい。登場するのはhokanの組織の中でも“もっともユーザーに近い場所”で働く羽鳥氏と小倉氏だ。そんな両氏の視点から、導き出されたhokanの組織力の核心。それは「セールスだけでなく、CSやエンジニアも含め、全員が『泥臭くユーザーと向き合う姿勢』を徹底していること」であった。

その姿勢は「ユーザーのペインに深く寄り添うべき」という言説の真の意味を体現しているようだ。ユーザーとの関わり方に悩みを抱える読者は、この事例を参考にしてほしい。

  • TEXT BY RINA AMAGAYA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「保険代理店のアップデート」こそ、保険業界DXの大本命だ

羽鳥“保険に対する世間の満足度”ってものすごく低いですよね?

私は前職の大手損害保険会社で8年間保険査定の仕事をしてたのですが、当時ずっと保険購入者の不安や不満を肌で感じていたんです。「自分がどんな保険に加入しているのか正確にわからない」「いざというときに、保険金が支払われないのはなぜだ」といったように......。

その問題の一因として、やはり保険代理店の保険募集人(保険のセールスパーソン)の過剰な忙しさがあると思うんです。

小倉最近、自動車保険に関する不正受給問題が社会的な注目を集め、懸念が高まっていますよね。こうした事態に対して、政府もただ手をこまねているわけではありません。最近も金融庁を始めとして迅速な対応がなされていますし、保険業法も繰り返し改正されてきています。2022年5月の法改正では、コンプライアンス観点での報告義務が強化されました。

実はこうした法改正により、代理店の現場で管理し取り組むべき業務がものすごく増えているんです。現場業務は量・質ともに、煩雑さを増しています。元々多忙な保険代理店が、従来の方法で対応しきれなくなり、さまざまな不安を抱えているんです。

個人が保険を契約するとき、直接保険会社から営業を受けるわけではないということを、読者もご存知だろう。日本損害保険協会の2022年4月~翌3月の統計では、損害保険における代理店を通じた売上の合計は全体の約90.5%を占め、保険会社の直販(オンライン販売を含む)はわずか8.6%に過ぎないとされている。

しかし、保険業界では、デジタル化が未だ十分に進展しておらず、特に保険代理店においては、依然として紙を使って手作業で商談や契約のデータを管理することが多い。そんな状況下で、改正保険業法の煽りを受け、保険募集人は多忙を極めているのが実情である。

小倉『hokan®』は、“現時点”では主に保険の代理店にアプローチしています。ですから、保険購入者への影響は間接的なものかもしれません。しかし、保険業界の変革を、ここから力強く推し進めていく必要があるんです。

なぜなら、募集人の業務を抜本的に効率化していくことができれば、募集人が保険購入者に接する時間が増え、より適切な提案や相談が可能になりますよね。

この“間接的なアプローチ”こそが、我々のプロダクトが成長を続けられている重要なポイントだと考えています。

羽鳥やはり、保険の価値というものは、実際に保険金が下りるフェーズになってこそ発揮されます。しかし、それまでの間も、保険のユーザー体験として情報提供や細かな相談こそが、代理店にとっては重要です。

また、保険の主なコストは、実は人件費にあるんです。商品の開発や製造自体にお金がかかるものではありませんので。

だからこそ、小倉の言う通り、“保険代理店業務のDX”が何より大事なんです。代理店の人件費削減に貢献し、募集人の煩雑な作業を軽減、さらには保険契約者が適切なサポートを受けられるようになる。いわば「三方よし」が実現されると考えています。

保険業界の課題とその行く末について熱く語り続ける二人。そんな彼らはhokanにおいて“ユーザーに最も近い場所”で働く二人だ。

簡単に出自を紹介すると、羽鳥氏は、あいおいニッセイ同和損保の自動車保険の保険金査定部門にて、主に対人賠償保険を担当したのちhokanにジョイン。現在はカスタマーサクセス部門の責任者。

一方の小倉氏はシステム開発会社で保険業界向けのシステム開発を担当。保険会社のシステム部門へ転職しマネジメントに従事したのちhokanにジョイン。入社後は、CRE(Customer Reliability Engineering)という、技術を用いてユーザーの課題解決に取り組む、いわば「カスタマーサクセスを担うエンジニア」のチームを牽引、現在はTech DivのDiv長を務めている。

これまでのhokanの記事(一記事目二記事目)で登場した、CPO阿部氏、CTO横塚氏、CFO大竹氏は皆、保険業界出身ではない。いや、それどころか社内の保険業界出身の割合は3割程度だという。そんなhokanにおいて保険業界のバックグラウンドを持つ二人は、ユーザーの最前線でどんなやりがいを持ち、どんな想いで働いているのか、次章から見ていこう。

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テンプレート対応は一切通用しない。
保険業界特有のCSの難しさ

2017年、InsurTechのスタートアップとして創業したhokanは「適正な営業活動」と「組織の強固な監査体制」を実現するクラウド型保険代理店システム『hokan®』シリーズとして、複数のプロダクトを世にリリースしている。

早速、真のユーザーのペインを捉えるプロダクト開発の要諦を、現場の最前線で活躍するCS、CREの視点から、明らかにしたいところではあるが......。そもそも、日常で保険に触れる機会が少ない我々にとって、保険代理店とはなんたるか、ややその輪郭を捉えづらいかもしれない。hokanが日々対峙するユーザーとは、一体どのような存在なのだろうか。

羽鳥現在hokanが主に向き合うのは、大企業というよりも中小企業や、一代で保険代理店を築き上げたような方々です。これらの組織は、新規営業による売上向上に特化した構造を長年築いてきた傾向があります。

だからと言えるかもしれませんが、システム導入やDXを推進した経験がある人材は少ないのが現状です。

だからこそ、我々が「運用とはこうあるべきなんですよ」「システム設定はこうすべきですよ」と“ユーザーの成功”を定義し、DXの意義を明確化することが必要になってくるんです。

カスタマーサクセスという観点から、保険代理店の特徴を語る羽鳥氏。一方の小倉氏はCREとして、ユーザーが保有するデータの観点から話を続けた。

小倉やはり、もともとユーザーが長年に渡って蓄積してきたデータは、その会社が持つ何よりも重要な資産。それを無駄にしないよう、hokanにも引き継いでやっていかなければなりません。

そこで肝となるのが、「今あるデータをhokanにそのままの形で移行できればいいというわけではない」ということ。

まず多いのが、代表的な保険代理店向けの管理システムでデータを蓄積してきたパターン。これにはかなり慣れてきました。どこにどのようなデータがあるのか、そしてそれをどのように活用できるようにすればいいのか、そういった“肝”がわかってきています。

一方で時折、自前でシステムを作られてきたユーザーさんもいます。独自の思想でデータが蓄積された状態なので、どのデータのどの部分を、どのように『hokan®』に持ってくるべきか、CREがじっくり向き合っています。

その際には、営業やCSの段階から「業務フローをもっとこのようにした方がいいのでは?」といった“あるべき姿”を擦り合わせていくことが不可欠です。その上で、適切なデータ移行を新たに考えていく必要があるんです。

なお、企業によって「データ管理の仕方が違う」というのは、使っていたシステムの違いによるシンプルな話ではない。そもそもの経営体制や報酬設計によって差が出るという。これこそ、保険代理店業界ならではのものだ、と羽鳥氏も続ける。

羽鳥保険代理店の業務フローに関しては、承認のフローなどに細かい違いはあれど、大きく変わることはないんです。

ただし、経営体制や思想は企業によってかなりばらつきがあるんです。例えば、保険募集人に対しての報酬制度を見ると、固定給のところもあれば、インセンティブ設計がなされているところもある。

そうした制度によって、フローがどのように運用されていくかが異なります。すると『hokan®』のベストな活用法も変わってくる。

この経営体制や社風によって、DXどころかシステムやプロダクトをうまく機能させられない可能性だってあるんです。

一定の社会のルールが厳格である人事労務のホリゾンタルSaaSの場合は、ルールに合わせて業務フローや管理体制が変化する。一方保険業界は、社風や経営体制による管理、インセンティブの設定の自由度が高い傾向にあるのだ。

だからこそ、hokanのカスタマーサクセス、CREには画一的なテンプレート対応ではユーザーのサクセスに伴走できない。ユーザーに合わせた対応が必要になる。

顧客折衝が難しい保険業界特有のCS、そしてCRE。羽鳥氏と小倉氏の二人はどうやって挑んでいるのか?肝となるのが、「ウェットなコミュニケーション」と「保険業界への深い知見」である。

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CSは「機能Gap」に瀕しても、“全体最適の観点”を失うべからず

羽鳥『hokan®』は保険業界の流通を最適化するためのプロダクトとして、パッケージで商品が提供されています。

当然、まだプロダクトとしては未成熟な部分もあり、特に自社の業務に合わせて自前でプロダクトを開発してきた経緯のあるお客様については、「機能Gap」が存在しています。

とはいえ、この「機能Gap」への向き合い方として、全ての要望にYesと答えていては“全体最適”という大事な視点を見落としてしまう。その業務の目的を丁寧にヒアリングした上で、「保険募集の最適化に必要な機能」については、機能開発を実施する。

一方、合理的でない業務に関しては他社の事例も紹介しながら、代替案を粘り強く丁寧に説明することを意識しているんです。

ただ、このように口で言うのは簡単ですが、実際に日々推進する難度は非常に高いなと思います。

保険業界の特性上、社風や経営体制の違いから必然的にカスタマイズの要望は増える。しかし、『hokan®』がSaaSとしての性質を持つ以上、パッケージ化への道を歩むことは避けられない。だからこそ、カスタマーサクセスには、「業務のあるべき姿」を自ら描き、ユーザーがもともと持っている考えを脱却させるための、“ウェットで泥臭い”コミュニケーションが求められる。

この過程で重要となるのは、個々の機能要望に対して「カスタマーサクセス(運用)で対応するか」「新機能開発(プロダクト)で対応するか」の見極めだ。

羽鳥重要なのは、「保険募集人が売り上げを最大化するためには、どんなプロダクトが必要か」という視点です。開発の優先度をインパクトの大きなものに絞ることが、ユーザーにとっても最適なんです。

「機能Gap」に直面した時、そこから逃げることなく自分がお客様のIT部門にいるとしたらどのように動くかを意識しています。

その中で、その業務が本当に必要か、必要であればその業務の仕方が正しいか、そこを徹底的に考えた上で、お客様に最適な提案をすることが求められるんです。

また、機能要望を上げる場合でも、それが全体最適を考慮した上での機能になっていくのかどうかをしっかりとプロダクトチームに共有して相談すべきなので、ユーザーと社内両方に向けてウェットで泥臭いコミュニケーションが大事です。

小倉もちろん、hokanのプロダクトもまだまだ発展途上であり、常に進化をし続ける必要があります。私が一人のエンジニアとして発言するなら、「開発要望は大歓迎」です。

しかし、リソースの観点から全ての開発要望に優先度をつける必要があるとき、プロダクトチームだけでは上手く進められないこともあります。プロダクトチームの時間をそういった議論にばかり割いてしまうのは、そもそも本意ではありませんしね。

この点で、羽鳥さんのように、開発の視点も持ちつつ、ユーザーとの折衝を通じて、「プロダクトのあるべき姿」から逆算して洗練した開発要望を提案してくれるのは非常にありがたいですね。

羽鳥氏のいうカスタマーサクセスとは、ユーザーに上から目線で「あるべき姿」を押し付けるような傲慢なものではい。もちろん、理想の業務フローに関して、時に両者の意見が分かれる時もあるだろう。だが、根底にあるのは「保険募集人の余計な業務を軽減し、より本質的な業務における付加価値を高めること」。

だからこそ、hokanとユーザーが議論を重ねながら、機能を開発するべきか、運用で対応するべきかをユーザーと一緒に考えていく姿勢こそが求められるのだ。その過程では、あらゆる手段を駆使し、労を惜しまないと羽鳥氏は強調する。

羽鳥元々現在の業務に課題があってシステムを切り替えているはずが、導入の中で現在の業務フローをベースにコミュニケーションが進んでしまうこともあります。

我々としては保険代理店経営における理想の業務フローに変えていただくことで代理店経営の基盤を整えていただきたい。その上でご納得いただくために我々が蓄積してきたノウハウを惜しみなくお伝えし、ご理解いただくために何度でもご説明する。

難度は高いですが、ユーザーに納得してもらい、あるべき姿にもっていくという、クリティカルな貢献ができたときは本当に「この仕事楽しいな!」と感じますね。

前回の記事で同社CPOの阿部氏は自身を、“保険のプロ”でなく、「プロダクトで保険営業を抜本的に効率化・デジタル化していくプロ」だと表現した。同社は実直に保険業界の課題に向き合い、「あるべき姿」を描き、プロダクト開発を進めているのだ。

そんな同社の保険業界の“課題”への深い造詣と、理想主義のプロダクト開発思想こそ、ホリゾンタルSaaSと比較した際の代替不可能性を生んでいる。

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“保険代理店DXのプロフェッショナル”だからこそ、ユーザーに選ばれる

とはいえCRMであれば、ホリゾンタルSaaSでも十分なのでは?といった疑問も残る。しかし、両氏曰く「保険業界の業界特性を考えると、バーティカルSaaSでなければならない」のだという。

羽鳥保険代理店は消費者の大事な財産をお預かりする重要な仕事をしているからこそ、経営として遵守しなければいけないことがたくさんあります。

保険業法や金融庁の指針は日々変化していくものなので、保険代理店はそれに追従して業務の流れを変えていかなければならない。

現場での使い勝手の問題だけでなく、年々変化する法制度への迅速な対応ができないことにより、システムがどんどん時代遅れになっていき、結局現場でのデータ入力が形骸化してしまうことも多いんです。

小倉保険業界の特殊性ある業務に対応するためには、かなりのカスタマイズ工数とメンテナンスのコストが必要となります。

例えば、ホリゾンタルSaaSはどんな業界でも対応できる優れたプロダクトであるが故に、「設定を小まめに変えたり、外部とのシステム連携をしたりするのには工数がかかりすぎる」というように、多大なコストと時間がかかるので、保険業界とはややアンマッチかなと思ってしまいます。

羽鳥また、hokanは保険代理店に特化したバーティカルSaaSを運営する中で保険代理店の業務フローや課題をきちんと把握しています。

ゼロから保険業界のことを説明しなければいけないコストがないことも含めてhokanを選んでいただくことも多いんだと思います。

その点、小倉さんは「保険業界を知っているエンジニア」だから、ユーザーのみなさんもすごく安心していますよね。

小倉結論、hokanにはもちろん保険業界出身者以外のエンジニアも多く活躍しているので、専門知識は必要ではないのですが......やはりエンジニアは入社後保険業界に強い関心を持つことが多いですね。自分が作ったプロダクトが現場でどのように使われているのか気になって仕方ないのは、エンジニアの性(さが)だと思います。

またユーザーに向き合うことが多いCREの立場としては、お客様とお話しする中で、ある程度保険用語を理解している、業界の力学を理解しているといった点は、非常に喜ばれますね。

小倉氏のように保険業界に詳しいエンジニアが存在していること。またそうでないメンバーも一人ひとりが保険代理店業務に対して、強い興味関心を持って取り組んでいること。これにより、開発組織自体が「保険代理店DXのプロフェッショナルエンジニア」として機能しているのだ。

そんな開発組織だからこそ、2週間に一度といったペースで機能のアップデートが可能となる。

小倉このアップデートのペースが最適かどうか、実は我々自身もまだ確信を持てていません(笑)。

というのも、徐々に大企業さんの導入が増える中で、「二週間に一回のアップデート」という頻度に不安を覚えるユーザーがいることもわかってきました。社内でのマニュアル作成やメンバーへの周知の必要が生じるため、その頻度自体が負担になることもあるんです。

このペースが本当に適切かどうかについては、まだまだ議論の余地があるなとは感じています。ただ、先ほども述べた通り、hokanはまだまだ発展途上で、機能をどんどん作ってリリースすることが必要なので、しばらくはこのペースを維持するつもりです。

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保険業界から寄せられる期待に答えるべく、プロダクトの進化は終わらない

そんなhokanだからこそ、保険業界の変革の担い手としてあらゆる方面から期待が寄せられている。2023年10月にシリーズBラウンドで総額15億円の資金調達を発表。調達金額の大きさは言うまでもなく、三井物産グループ企業からの出資を受けると同時に、hokanと協業を推進するための「協業部署」の設立にまで発展した調達例は多くのスタートアップのオープンイノベーションの一つの理想形として話題を集めた。

2023年7月にリリースされた企業代理店特有の入出金管理や精算業務に特化した精算管理システム『hokan出納』もそんなオープンイノベーションにより生み出されたプロダクトの一つと言える。

羽鳥ある保険代理店様から現在利用しているシステムが提供終了になるため、「後継のシステムを探している」というお声がけをいただいたんです。

我々にとっても、多様な企業代理店のセグメントを開拓していくことは、TAMを拡大する上でも重要です。大手の企業代理店のニーズに応えるためには、精算機能まで備えたシステムが必要不可欠。そうでなければ、「検討の土俵にも立てない」ですからね。

小倉保険代理店業界の潮流として、単一の保険会社のみを扱う代理店というよりも、多様な商品を扱う「乗合代理店」が増えています。一般消費者のニーズの変化によるものです。

保険会社のシステムは、専属保険代理店にとっては十分な機能を提供していますが、この「乗合代理店」においては機能が充足していないことが多いんです。

だからこそ、我々のような「特定の保険会社の色がついていないプロダクト」が今求められているのだと思います。

羽鳥我々が目指すのは「保険流通のプラットフォーム」。その目標に向けて機運が高まってきているのを日々ひしひしと感じます。実際いろんなユーザーから「hokanが共通プラットフォーマーになってくれると嬉しいのですが」と言われることが増えたんです。

多方面から大きな期待を寄せられるhokanだからこそ、と言えるがプロダクトの進化や新規事業開発に終わりはない。

羽鳥CRMという観点から見ると、世の中には既にさまざまなプロダクトがあり、それらも日進月歩でどんどん進化し続けていますよね。だからこそ、我々もそれに負けないよう、機能追加やパフォーマンスの改善を怠らずに進めていく必要があります。幅広いお客様を支援するためには、プロダクト自体をずっと進化させ続ける必要があるんです。

小倉hokanの歴史を振り返ると、最初はSMBなどの小さな代理店さんから顧客基盤を拡大していき、現在では大手の企業代理店さんにも導入いただけるようになりました。ユーザーの変化に伴い、必要とされる機能も当然変わってきていますし、今後、ナショナルクライアント規模の代理店にも使っていただくとなると、またまた新たな機能が必要になるでしょう。そういった意味ではプロダクトの進化に終わりはないなと感じますね。

最近だと、特に企業代理店の場では、CTI連携やショートメールの一斉送信などの便利な機能が求められているので、これらの機能を実装していき、保険募集人の業務をさらに楽に効率的にしていければと考えています。

もちろん、どの機能を本当に我々のプロダクトで提供するかは、慎重に検討していく必要がありますけどね。

「保険流通のプラットフォーム」を目指すhokan。今後も保険業界にまつわる数多の課題を解消すべく、新規事業、M&Aなどあらゆる手段を講じて新しい価値創造を続けていく目論見だ。目下挑むのは事業のコンパウンド化。直近では、三井物産グループとの新規プロジェクトに加え、EVオーナーに特化した経済圏プラットフォーム事業『FEVOW(フェボウ)』もリリース。保険業界のアップデートという使命に向け、同社の進化は止まることを知らない。

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保険DXの波は遅れてくるが必ずやってくる。

もちろん、爆速成長を遂げる同社だからこそ、と表現できるかもしれないが、成長痛とも言えるとある課題に直面しつつあるという。

羽鳥先ほども申し上げた通り、hokanの次のステップは“ナショナルクライアント”と呼ばれる超大手企業に付随して存在している、「全国規模の企業代理店」へ市場を拡大していくことです。それにあたっては保険業界出身で専門知識が深い人材というよりも、例えば、コンサルティングファームやSIerで実際にプロジェクトマネジメントをゴリゴリやってきたという人材が必要です。

そもそも、保険業界出身者にはプロジェクトマネジメント経験のある人はかなり希少なんです。私自身そうなんですけど、プロジェクトマネジメントをこれまで経験したことがない中、三年かけて苦労しながら今に至ったという実情があるんです。

また、その経験を今すぐ仕組み化できるかというと、そこまで単純な話でもありません。やはり、プロジェクトマネジメントとはなんたるか、つまりプロジェクトのリスクポイントがどういうところになるか、タスク管理の仕方とは、人の動かし方とは、といった知見がある方であれば、保険の知識を持つメンバーと手を取り合うことで、すぐに活躍していただけると思います。

小倉CREチームにも、プロジェクトマネジメントができる方は大歓迎ですね。

ただ、開発組織という意味では、現状ありがたいことにSMB、大手関わらずユーザーの数が増えていますので、それに伴い機能開発の要望も多くなっています。シンプルに「エンジニアリングをどんどん進めていくチーム」の人員を増やしていかなければと感じています。

現在、開発部門は5つのチームに分かれているのですが、今後どんどんチームの数が増えると予想されます。社内からリーダー人材を育成していくことはもちろん、外部からの採用など、今後の方針を考えるタイミングに来ていると感じますね。

口を揃えて「本格的なチーム化がこれから始まっていくフェーズだ」と語る両者。これまで再三語られた通り、保険のバックグラウンドが必須なわけではない。hokanの社内における保険業界出身者の比率は3割。エンジニアに至っては、小倉氏ただひとりだ。

保険の知識がなくとも、このビックウェーブに乗るには、今が絶好のタイミングなのかもしれない。

羽鳥昨今の保険業界における不祥事を受け、保険募集人に対するコンプライアンスやガバナンスといった観点でのルールがどんどん厳しくなっていくと考えられます。このような時流の追い風も受けて、hokanのプロダクトが提供できるシステムによる標準化や効率化といった価値の浸透が、一刻も早く現場に求められているんです。

小倉保険業界は、他の金融分野に比べてDXの波がやや遅れてやってくる印象があります。金融業界全体では、銀行や証券といった分野が先んじてDXのメスが入れられていますよね。その波が今まさに保険業界にも及んできているんです。

とはいえ、比較するとまだまだ保険業界のDXには大きな注目が集まっていないのは事実なので、今がこの重要な変革期を体験できるチャンスだと個人的には楽しみにしています。

金融庁が2018年に指摘した「2025年の崖」は、日本企業がレガシーシステムの刷新に失敗し、DXの実現が遅れた場合、2025年からの5年間で毎年最大12兆円の経済損失が発生する可能性を示唆している。

この警告を受け、金融DXの流れは2019年から本格化し、業界は生き残りをかけた変革の時代に突入した。現在、大手保険会社の多くがDX化に着手しているものの、未だ「保険商品の代理店営業」はDX化の遅れが目立つ分野なのだ。

hokanは、この最後のフロンティアであり、保険業界のDXの本丸ともいえる保険代理店から業界のアップデートを試みている。

これまでの連載で語られた通り、同社はこれまでの定石や業界の悪しき慣習には一切囚われないゲームチェンジャーだ。ただし決して驕ることなく、真摯に保険業界の課題を受け止め、「あるべき姿」から変革をリードする理想主義者である。今回の取材では、そんな“hokanらしさ”がより浮き彫りとなった。

こちらの記事は2023年12月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

雨谷 里奈

写真

藤田 慎一郎

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