「昇進より、技術者として勝負したい」──特殊冷凍のデイブレイクに集結した大手メーカーのエースたちが語る、決断の瞬間
「技術者として、これ以上の成長はないのだろうか」──。
大手メーカーの技術者にとって、最先端の技術に携わり、安定した環境で経験を積めることは大きな魅力だ。しかし、組織が大きいゆえに業務が細分化され、一人の技術者が携われる範囲には限界がある。
より大きな裁量と挑戦の機会を求めて、ベンチャー企業への転身を考える技術者も少なくない。だが、「本当に力を発揮できるのか」「会社の将来は大丈夫なのか」と決断をためらう声も多い。そんな中、大手で培ったスキルを武器に一歩を踏み出した技術者たちがいる。
「ベンチャーで不安?技術力があれば失敗しても戻れると思っています。そこまで懸念はありません」
「大手で培った技術力を存分に活かしつつ、新しいことに挑戦できる。まったく飽きがない刺激的な環境です」
そう語るのは、「特殊冷凍」という領域で急成長を遂げるデイブレイクのTEC部門のメンバーたちだ。当社は、解凍後も食材の鮮度や触感をほぼそのまま保つ特殊冷凍技術を開発。この技術により、従来の冷凍技術では難しかった果物や生鮮食品の保存が可能になり、食品流通に革新をもたらしている。大手メーカーで機械設計や冷熱技術に携わり、豊富な経験を積んできた彼らは、己の腕を試すべく当社を選んだ。
FastGrowではこれまでデイブレイクの創業背景から事業モデル、成長戦略、セールス組織の構築、海外事業、CxO採用戦略に至るまで多岐にわたるテーマを取材してきた。今回は、「大手からベンチャーへの転身に不安はなかったのか?なぜその決断をしたのか?」という観点から、技術者たちの生の声に迫る。彼らの経験が、同じようにキャリアの選択に悩む技術者たちの背中を押すヒントとなれば幸いだ。
- TEXT BY YUKO YAMADA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
技術者としての市場価値を理解しているからこそ、不安はなかった
「このまま大手で順調に昇進していくのか、それとも新しい挑戦をするのか」──。
圧縮機メーカーの前川製作所に18歳で入社し、製造現場、設計、生産技術、そして海外工場の立ち上げと11年にわたり順調にキャリアを歩んできた遠藤豪氏。現在はデイブレイクのTEC部門R&Dに所属する彼が、30歳を目前に自身のキャリアの岐路に立たされたのは2023年のことだった。
遠藤当時、前職でアメリカ工場の立ち上げプロジェクトを任されていました。そのプロジェクトが軌道に乗れば、次は5年ほど海外駐在を経て、帰国後には部長職、その後のキャリアもポジティブに見えていたんです。
出世ルートとしては申し分のないポジションだった。上司や先輩たちの姿から、その先にある幸せも十分に想像できた。しかし、自分にはもっと違う可能性があるのではないかと考え始めた。
遠藤氏は前職でも常に新しい挑戦を求めてきた。他社とのジョイントプロジェクトを手がけ、既存の枠組みにとらわれず、真に価値ある製品を生み出すために新たな領域を切り拓いてきた。
そこから次のステップを模索する中で、これまでの経験や得意分野をさらに広げられる場を求めるようになる。
遠藤製造の仕事は得意分野でしたが、今のままだと将来のキャリアの選択肢に限界があるのを感じていました。設計や生産技術、マネジメントといった分野でこれまでの経験を活かせる場所を探していたんです。
他業界への転職も視野に入れていた遠藤氏だが、専門性をもっとも高く評価してくれたのは同じ冷凍機業界だった。そんな中、インターネット上で見つけたのがデイブレイクだ。
遠藤製造業×ベンチャーという珍しい組み合わせに加えて、「なぜ冷凍業界に?」と驚きました。そこからデイブレイクの事業内容を調べていくうちに、これまで自分が培ってきたスキルをすべて活かせるチャンスがありそうだと確信したんです。さらに、設計、生産技術職は通常、地方の工場勤務が多い中、デイブレイクなら東京で働ける。その点も魅力でした。
「大手からベンチャーへの挑戦に不安はなかったのか?」という問いに、遠藤氏は迷いなく答える。
遠藤不安はないですね。
技術者としての自分の市場価値は把握していましたし、「私ならやれる」という自信もありました。かつ、前職からは「戻りたくなれば、いつでもウェルカム」と背中を押してもらえていました。不安どころか、自分の経験をどこまで試せるか、新しい環境でどれだけ成長できるのかという期待の方がはるかに大きかったです。
レガシーが残る業界慣習を変えられるのが、ベンチャーの醍醐味
遠藤氏と同様に、確かな技術力と課題意識を胸に、大手からベンチャーへと活躍の場を移した技術者たちがいる。
その一人が、食品流通の複雑な課題解決を目指して2024年1月にデイブレイクに参画した渡邉智己氏だ。デンソーグループで車載用冷凍機の設計開発に携わってきた彼は、現在デイブレイクのTEC部門長として開発チームを率いている。
渡邉冷凍業界の共通認識でもありますが、生産者から消費者まで一定の温度を保ったまま食材を届ける「コールドチェーン」の仕組みには、まだ多くの改善の余地があると感じていました。特に課題となるのが各工程間の連携です。
物流倉庫や輸送現場では、それぞれ独自のノウハウで品質維持に取り組んでいますが、工程のつなぎ目となる「受け渡し」の場面で温度管理が徹底されず、品質が損なわれるケースが少なくありませんでした。
この問題を根本から解決するには、物流や保管だけでなく「食材をどのように凍らせるか」という最初の工程から理解する必要があると考えた渡邉氏は、その過程でデイブレイクと出会う。
渡邉「作り手から食べ手までのより良い未来を創造する」というミッションと、特殊冷凍技術を軸に新しいコールドチェーンを築こうとする姿勢に強く共感しました。デイブレイクが中心となり、多くの企業と協力すれば食品流通全体に新たな価値を生み出せる。その可能性の大きさに胸が躍ったんです。
ただし、彼にとって、それは技術者としてのキャリアを広げる一歩であると同時に、家族との話し合いを必要とする大きな決断でもあった。
渡邉安定した会社を辞めることに、家族は不安を抱いていました。しかし、このまま前職にとどまれば自分の技術力が狭まってしまう。このチャンスを逃せば成長の機会を失うのではないかと。一生に一度のわがままとして、新しい世界に飛び込むことを決意したんです。
2023年4月、同じく大手での経験を活かし新たな挑戦を始めたのが、現在TEC部門でセールスエンジニアリーダーを務める小檜山翔太氏だ。前職の大和冷機工業では14年間、厨房機器の設計・施工管理一筋で携わってきた彼は、古い業界特有の体質に直面し、変革の必要性を痛感していた。
小檜山新卒で入社して以来、長年培った経験を活かして新しい取り組みができないかと、社内で提案を重ねてきました。しかし、業界全体が保守的で変化に時間がかかる。自分の意見が通りにくい状況が続き、もっと自由に挑戦できる環境を求めるようになったんです。
転職活動中、偶然デイブレイクのオファーを受けた小檜山氏。その理念に触れ、大きな衝撃を受ける。
小檜山世の中の殆どのメーカーは、機械を納品したらそれで役目は終わりです。その後は故障が起きたか、新規購入時にしか接点はありません。しかし、デイブレイクはそうではない。
納品後も定期的に顧客とコミュニケーションを取り、機械の使い方や保守のアドバイスはもちろん、食材に最適な冷凍方法の提案から運用時の課題対応まで。さらには冷凍した食品の販売や流通支援まで行い、顧客が冷凍技術を最大限に活用できるサポートを提供している。他社とは一線を画すその姿勢に惹かれました。
そして少人数ながら、日本の急速冷凍業界を牽引し、世界進出を目指すという明確なビジョン。その志の高さに強く共感したんです。
キャリアの岐路で新たな挑戦を選んだ遠藤氏、物流の課題に解決策を探る渡邉氏、そして業界の変革を求めた小檜山氏。三者三様、確かな手応えを感じて選んだ先が、デイブレイクという新天地だった。
「まったく飽きることがない」。
少数精鋭ベンチャーでこそ得られる機会、裁量
彼らの挑戦の舞台となるのは、わずか8名の少数精鋭で構成されるデイブレイクのTEC部門だ。その業務範囲は広く、R&Dの開発設計から納品、機械故障の対応までを担うフィールドサービス、製造パートナーとの連携、調達、生産管理にまで及ぶ。
渡邉大手メーカーであればそれぞれ専門部署が担うような業務を、私たちTEC部門でそれを一手に引き受けています。言うなれば、各部署の部門長が一堂に集結したようなチーム。
専門性を持ちながらも、メンバー全員が領域を横断しながら大きな裁量を持って仕事を進めているのが特徴ですね。私自身もTEC部門全体を統括する立場ですが、エンジニアとしてR&Dの開発設計にも直接携わっています。
遠藤そうですね。デイブレイクは一人当たりの守備範囲が広いので、まったく飽きることがないんですよね。大手企業だと「餅は餅屋」じゃないですか。
例えば熱交換器の設計、開発では、熱交換機の能力を計算をする人、それをもとに具現化する人、製造生産技術を担当する人と役割がきちんと分かれていて、それぞれが専門分野に集中します。自分が関われる範囲は限られていて、新しい提案をしても組織の壁に阻まれてしまうこともあると思うんです。
一方、デイブレイクでは全部自分でやる(笑)。
遠藤必要とあれば新しいことを勉強するのも当たり前です。私自身、前職での経験を活かしながら、制御や電気設計などこれまで触れてこなかった領域をここに来てから学びました。一見すると負担が大きいように感じるかもしれませんが、自分の持ち味を活かしながらどんどん経験を積んでいく。そんな環境を求める人にとっては面白い場所だと思いますね。
こうした裁量の広さは、技術者にとって新しい挑戦の機会をもたらす。小檜山氏が取り組む納品体制の構築もその一例だ。
小檜山当社の特殊冷凍機は最小機種の重量で283kgあり、設置には専門知識が必要です。以前は「できる人が納品する」状態で、私自身、年間約100台を担当してきました。しかし、200台規模になれば限界がある。そこで物流パートナーとの協力体制を築き、納品の仕組み化を進めています。
大手企業なら人員が豊富なため解決できることも、私たちは限られたリソースで対応しなければならない。その創意工夫こそがベンチャーの強みです。大手に負けない体制を築いていきたいと考えています。
こうした業務フローの仕組みは、初めから整備されているわけではない。今もなお、必要に応じてゼロからつくり上げている最中だ。
渡邉仕組みのない環境に来るというのは、大手から来た人にとっては大きなハードルだと思います。私自身も最初は「どこから手をつければいいんだろう」という戸惑いがありました。しかし、未知の課題だからこそ自分たちでつくり上げる達成感はある。
例えば、トラブルが発生したとき、大手企業なら既存のマニュアルに従って速やかに対応するのが一般的です。しかし私たちは、まず「この問題に対して今できる最善の対応は何か」を考え、簡単なフローを作成する。それを実際に運用しながらチームで改善点を出し合い、より良い仕組みへと確立していくんです。その一連のプロセスを自分たちでつくりあげていけることこそが面白いんですよね。
自分たちで仕組みをつくる経験は、大手企業にいたままでは経験し得なかったかもしれません。
このような現場での挑戦を通じ、渡邉氏は技術者としての成長に加え、経営的な視点も養われているという。
渡邉私は今、経営にも携わっています。自分の仕事が会社全体の利益や収益に直結していると実感していて、「こういう取り組みをすれば、会社がもっと伸びる」といった数字のインパクトを常に意識するようになりました。
一般的に、大手ではあらかじめ決められた予算の中で業務を進めるのが基本です。私自身、前職までは利益について深く考える機会はほとんどありませんでした。
しかし、デイブレイクでは自分の取り組みが会社の「生きるか死ぬか」に直結する責任がある。その分、やりがいも大きく、この点はデイブレイクに来て最も意識が変わった部分かもしれません。
少人数ながら、各自が大きな裁量を持ち、領域を超えて挑戦をする。仕組みがなければ試行錯誤を重ねながら自らの手でつくり上げていく。その積み重ねを基盤とし、彼らが目指すのは冷凍技術を軸とした食品流通の革新だ。その挑戦の要となるのが、次世代冷凍機『アートロックフリーザー』の開発なのである。
リリースから3年で4回のバーションアップ。
デイブレイクなら常に未踏の地を開拓できる
デイブレイクは2021年に初代アートロックフリーザーを発売して以来、食材本来の鮮度や触感を損なわない独自の冷凍技術で高い評価を得てきた。以来、顧客の声に応えながら製品の進化を重ねている。(2025年初頭には更なるアップデートも予定)
小檜山我々は常に、お客様の声を聞きながら、お客様と共に製品を進化させてきたと思っています。特に飲食店の方々からの「こうなれば、もっと使いやすいのに」というフィードバックは、私たちの開発の大きな原動力になっています。
遠藤技術者として面白いのは、お客様の声から新しい技術的チャレンジが生まれることです。例えば、食材ごとの最適な冷凍方法を探る中で、温度制御の新しい手法を発見することもあります。そういった発見を製品開発に活かせるのは、デイブレイクならではですね。
こうした技術革新の進化を支えているのがデイブレイクの食材研究である。最近、ある海鮮食材を使い他社製品を含めた複数の冷凍機による品質実証実験で、『アートロックフリーザー』が最も高い評価を得た。冷凍機の導入を検討していた食品業界の店主が、解凍後の風味や触感が生に近いとしてデイブレイクの製品を選んだのだ。
渡邉私たちが重視しているのは、なぜその結果が得られたのかを科学的に解明することです。たまたまの成功ではなく、その仕組みを明らかにすることで、さらなる改良や新たな食材への応用が可能になるからです。そのため、現在は食材研究に特化したチームの立ち上げも計画している真っ最中で、ますます楽しみになってきています。
魚、肉、野菜、果物──それぞれの食材が持つ特性を深く理解し、その性質に応じた冷凍方法を確立すること。デイブレイクは冷凍機開発の「機能/性能の向上」はもちろん、食材の特性を最大限に引き出す冷凍技術の確立を目指している。
ものづくりを通じて「顧客の商売をつくる」。
それがデイブレイクのユニークネス
冷凍技術に携わる読者であれば予測がつくかもしれないが、今の冷凍食品市場は急速な成長を続けている。Fortune Business Insightsの報告によると、世界市場規模は2023年に2,974億7,000万米ドルと評価され、2032年には4,411億1,000万米ドルに達するという見立てだ。(参照:冷凍食品市場分析:製品タイプ、流通チャネル、地域別予測(2024~2032年))
日本国内市場も同様の成長を見せている。日本冷凍食品協会の発表では、2023年の冷凍食品生産金額(工場出荷額)は前年比2.1%増の7,799億円と過去最高を記録した。特に、業務用の生産金額は前年比6.3%増の3,804億円と顕著な伸びを示している。(参照:「冷食協、昨年の冷凍食品生産高発表、生産数量3.3%減、生産金額2.1%増7799億円で過去最高」)
しかし、この市場の成長とは対照的に、冷凍技術そのものは成熟期を迎えつつある。
遠藤従来の冷凍機開発は、効率的な冷却や省エネ性能の向上が中心です。最近では環境規制への対応から、環境負荷の低い冷媒への切り替えやIoTを活用した省エネ運転など、新たな取り組みも進んでいます。ただ、これらは業界全体の課題であり、差別化は難しいのが実態です。
では、デイブレイクは他と何がどう違うのか。その価値に迫る上で、同社の歴史を簡単に振り返ってみる。
デイブレイクは現在のような冷凍機メーカーになる以前の2013年、商社としてスタートした。実は特殊冷凍技術自体は約20年前から存在していたが、当時の中小メーカーたちは優れた技術を持ちながらもその価値を市場に広める術を持ち合わせていなかった。デイブレイクはここに着目し、まず商社という立場から市場開拓に挑んだのだ。
小檜山当社は商社として活動する中で、食材に対するノウハウや知識を徹底的に蓄積してきました。お客様が求める「本当に美味しい冷凍とは何か」を8年にわたって追求し、2021年に満を持して自社製品「アートロックフリーザー」を世に送り出すことができたんです。
私たちは冷却される食材に焦点を当て、その特性を最大限に活かす冷凍機械の開発を行える。この視点を持つことこそが、他のメーカーにない私たちの強みとなっています。
先の記事で代表の木下氏が挙げた通り、現在のデイブレイクは商社時代から培ってきた経験を活かし、3つの事業価値を提供している。
デイブレイクが生み出す3つの価値
-
特殊冷凍テクノロジーのプロダクト
特殊冷凍機『アートロックフリーザー』を通じて、高品質冷凍食材の生産者を増やす。 -
特殊冷凍コンサルティング
コンサルティングサービスやコミュニティ運営を通じて、冷凍事業者のエンゲージメントを向上させ、高品質冷凍ビジネスの立ち上げを支援する。 -
特殊冷凍フードプラットフォーム
特殊冷凍を活用した食品流通プラットフォームを提供し、商品化と販路開拓を支援する。
デイブレイクが提供する価値は、生産者や飲食店などの支援にとどまらない。食品メーカーにおいても、冷凍食品開発における可能性を広げている。
遠藤一般的に大手食品メーカーには専門の研究員がいて、例えば氷の粒のサイズまで細かく管理する体制が整っています。しかし、多くの中小メーカーにはそこまでリソースがない。
私たちは冷凍機を売るだけでなく、冷却プロセスの設計から商品化まで一貫してサポートもできる。いわば研究所の代わりになれる存在なんです。これは他の冷凍機メーカーとの違いの一つですね。
また、デイブレイクの冷凍技術は食品ロス削減や新しい価値創造にもつながる可能性を秘めている。
渡邉例えば、2〜3月が旬のある海産物は、ノロウイルス流行期と重なるため生での提供が難しく、多くの飲食店では廃棄や安値での取引を余儀なくされています。
ところが、特殊冷凍を活用すれば、旬の時期に収穫した海産物を保存し、需要の高まる夏場に高品質のまま提供できる。
結果、生産者は安定的な収益を得られ、飲食店は高品質な食材を提供でき、消費者は一年を通じて美味しい海産物を楽しめるようになるんです。三者それぞれにメリットをもたらす仕組みが実現できると考えています。
このような高品質冷凍技術を武器に国内市場での地位を固めるデイブレイク。そのビジネスモデルは海外からも注目を集めているが、同社は慎重な姿勢で次なる展開を見据えている。
遠藤アメリカなどでは、冷凍機の規模や物量が日本とは全く違います。日本で売れ筋の冷凍機の二回り大きいサイズがスタンダードで、スーパーマーケットの冷凍食品売り場を見ても分かる通り、「手軽さ」「大量供給」「価格」が重視される市場です。
遠藤高品質・高付加価値という観点ではおそらく日本が世界で最も進んでいる。だからこそ私たちはまず、日本市場で高品質路線を確立し、その後、各国の安全基準に適合する製品開発やメンテナンス体制を整備していく。それが世界展開への最適な道筋だと考えています。
冷凍機の会社じゃない。
食品流通の仕組みを変える存在だ
食品流通の仕組みを根本から変える──。デイブレイクの技術者たちは、製品開発にとどまらず、食品流通の新たな可能性を切り開こうとしている。
その一例が、物流倉庫での新たな価値創造だ。従来、冷凍食品の物流は保管と運搬が中心だったが、デイブレイクはここに可能性を見出した。
渡邉ある大手物流倉庫企業から、生鮮食品を倉庫内で急速冷凍し、高品質な商品として市場に届けるシステムの構築について相談を受けています。
これまで物が集まる保管場所だった物流倉庫が、急速冷凍技術によって食品の価値を創造する拠点へと生まれ変わる。このモデルケースが日本で確立できれば、アメリカや東南アジアなど、それぞれの国ごとのニーズに合わせて展開も可能です。
まさに、食品流通のインフラを創造していくような、グローバルな視点を持ったプロジェクトができるのが当社の魅力ですね。
また、渡邉氏は食品工場の現場でも新たな需要を模索している。生産現場を訪れる中で、多くの作業が人手に依存しており、生産性向上の余地が大きいことを強く感じているという。
渡邉食品工場の生産現場では、海外からの実習生を含め、多くのスタッフが手作業で生産を支えています。例えば、トレイを冷凍機にセットする際、180センチの高さまで持ち上げる作業は、特に女性スタッフにとって大きな負担になっています。大手企業では自動化が進む一方で、中小規模の工場では依然として手作業が中心です。
そこで私たちは、AGV(無人搬送車)による搬送の自動化など、段階的なDX化を通じて生産性を高める提案に取り組んでいきたい。自動化技術と冷凍技術を融合させた生産ラインの構築は、まだ開拓の余地が大きい分野です。
そして、食品の価値を高めるためにデイブレイクは次の課題にも目を向けている。
小檜山私たちの冷凍技術の価値を最大限に活かすには、解凍技術も重要です。
市場にはさまざまな解凍機が存在しますが、当社の特殊冷凍技術に最適な解凍方法の確立はまだまだこれからの挑戦です。この課題を解決できれば、冷凍から解凍まで一貫した品質管理が実現でき、食品の価値をさらに高められます。チームの仲間が「冷凍のすべてを任せられる」とお客様が期待できる未来を必ず実現してくれると信じています。
こうした挑戦を支えているのは、技術者たち一人ひとりの探求心と創造性だ。
デイブレイクには、さまざまな専門性を持つメンバーが集まり、それぞれのスキルを活かしながら新しい価値を生み出す環境がある。社内ではこの環境を「サバンナ」と呼ぶ声もあるほどだ。メンバーたちは現状に安住することなく、常に新しい価値の創造に挑み続けている。
渡邉私たちは既存の仕組みを変革する挑戦を続けています。そのためには、自分の得意分野を持ちながら、新しいアイデアを生み出せる仲間と一緒に働きたい。
冷凍機器の市場では後発企業である私たちですが、特殊冷凍という分野では実績を築き市場をリードしてきました。今では多くのパートナー企業が私たちのアイデアに賛同し新しい取り組みを一緒に進めてくれています。
ベンチャーならではのスピード感もあり、自ら課題を見つけ、さまざまな企業と連携しながら解決策を生み出していく。その醍醐味は他にはないものだと思います。
小檜山もし当社に興味を持ってもらえたら、まずはぜひ代表の木下に会ってもらいたいです。
彼の描く壮大なビジョンと人間味あふれる人柄は、我々はもちろん、業界の重鎮たちも含め多くの人の心を動かす魅力があります。そうしたビジョナリーな代表と共に、業界の変革を掲げて自分自身も成長しながら未来を切り拓いていきたいと思う人なら、この場所で確かな可能性を感じられるはずです。
「ベンチャーへの挑戦は、リスクじゃない」──。
この言葉は、確かな実績に裏打ちされている。デイブレイクの技術者たちは、大手メーカーで培った専門性を武器に、食品流通の課題に次々と新しい解決策を生み出してきた。
ただし、この環境は決して生易しいものではない。「サバンナ」と呼ばれる所以だ。既存の仕組みに頼れず、自ら考え、動き、時には失敗も重ねながら道を切り拓いていく。その覚悟と情熱がなければ、ここでの挑戦は厳しいかもしれない。
しかし、この記事を読んで胸が高鳴った技術者がいるはずだ。「自分にもできるのではないか」「この革新的な環境で、持てる力を試してみたい」。そう感じた読者は、ぜひ彼らと対話の機会を持ってみてはどうだろうか。きっと、自身の挑戦への確かな手応えを感じられるはずだ。
こちらの記事は2024年12月16日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
山田 優子
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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