“巷の営業本”が再現性に欠ける訳──キーエンスTOP人材が集うデイブレイクに訊く、市場価値の高いセールスの育て方
Sponsoredマッキンゼー式・戦略思考。Apple流・イノベーション創出の方法など、「〇〇式、◇◇術」といったフレーズは、いまや日常で見かけない日はないほど巷に溢れている。
しかし、実際こうしたテクニックやノウハウを実践し、それによって成果を得ることができた読者はどれほどいるだろうか。多くの読者は、「理屈は掴めたが、自社の環境でどのように適用すればよいかピンときていない」と感じているのではないだろうか。
それもそのはず、世の中で提唱されるテクニックやノウハウを体現するためには、それを組織に適用させるための仕組みが必要だからだ。
そう看破するのは、元キーエンスで本社の販売促進部門という、同社のTOP人材のみが抜擢されるポジションを経験した下村氏と大平氏である。彼らは現在、特殊冷凍技術を用いて食品業界に革命をもたらすスタートアップ・デイブレイクのCOO及びセールス統括マネージャーとして活躍している。
徹底した仕組化のノウハウを持ち、国内屈指の高収益を誇るキーエンス。その哲学やセールス手法を、彼らはどのようにデイブレイクに取り入れているのだろうか?
同社の類稀なる事業や組織を紐解く連載の3回目となる今回は、デイブレイクでセールスを担うメンバーたちをお招きした。なぜ今、特殊冷凍領域のスタートアップにキーエンス出身の猛者たちが集まるのか?また、彼らはどのように非キーエンス人材たちと融合しながらセールス組織を構築しているのか?
大企業やベンチャー / スタートアップに関わらず、市場価値の高いセールスパーソンを自負している者は見逃す手はないだろう。
- TEXT BY YUKO YAMADA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
キーエンス本社勤務経験者が2人も集う、デイブレイクという奇跡
デイブレイクのセールス組織は、2023年12月現在、15名で構成されており、4名のマネージャーが各地域を担当するメンバーを率いている。このセールスチームのトップに立つのが、キーエンスで23年間にわたり営業責任者・販売促進などを歴任してきた大平氏だ。
下村2023年9月に大平がデイブレイクに参画するまで、デイブレイクのセールス組織は僕が統括していました。彼が入社してからはセールス部門の指揮を任せ、僕は国内事業部におけるマーケティングや技術、あとは食材を研究するラボのチームを管掌するといった棲み分けになっています。
下村氏がデイブレイクの創業者である木下氏(CEO)と守下氏(CFO)から熱烈なオファーを受けて参画するに至った経緯や、入社後わずか6ヶ月で同社の売上を倍増させた戦略については前回の連載2記事目をご覧いただきたい。ここではまず、残る3名がデイブレイクに参画した背景を語った。
安彦僕は新卒で鉄鋼系専門商社に入社し、主に産業機器メーカーに鉄鋼の原材料を販売していました。デイブレイクへの入社は、これまでのキャリアとは全く関係がなくて。学生時代にアルバイトをしていたレストランがコロナの影響を受け、瞬く間に倒産したことが、自分の仕事を考えるきっかけになりました。
その時に『フードテック革命』という本を読んでいたのですが、そこに掲載されていたフードテックに携わる企業のWantedlyのページにひたすら「いいね」をしていったんです。そこで唯一、返信があったのがデイブレイクで、そこからとんとん拍子に話が進み、2021年4月に入社するに至りました。
能登私も安彦と同じ2021年1月にデイブレイクに入社しました。前職はIT企業で製造業向けのソフトウェアのインサイドセールスをしていましたが、異動を機に「自分は本来、何をやりたいのか?」と1年ほど悩んでいた時期があるんです。その時に関心を持ったのがフードロスの問題です。
学生時代、お惣菜やパン屋でアルバイトをしていた際、売れ残った品物が大量に廃棄されていく現場を目の当たりにすることがありました。
対して、海外のボランティアへ行った際、その日の食材を翌日に持ち越して何とか食料を確保するといった経験をしたこともあり、食の豊かな国と貧しい国とのバランスを何とか保てないものかと考えていました。そこでたまたまWantedlyを見ていたところ、デイブレイクの特殊冷凍技術がフードロス削減になることを知って「ここだ」と思ったんです。
下村能登さんは何度も応募してくれていましたよね。
能登はい。どうしてもデイブレイクに入りたい一心で、セールスに限らず全ての職種に応募していました(笑)。
4回応募して一度も返信がなかったため、次に連絡がこなければ諦めようと思っていて…。ところが、5回目の応募で奇跡的に返事がきて、そこで下村さんに採用してもらいました。
当初はフードロスという観点でデイブレイクに興味があったのですが、デイブレイクは兼ねてより海外進出も視野に入れており、世界規模でインパクトを与える仕事ができるという点も魅力に映りました。
そして大平氏は、先ほど触れた通り、キーエンスで23年間、営業責任者・販売促進などを歴任し、直近では先端技術重点顧客攻略チームのプレイングマネージャーとして、個人・組織共にトップの業績を収めている。そんな実績を持つ彼がなぜ、スタートアップのデイブレイクに足を踏み入れたのだろうか。
大平これまで仕事柄、多くの経営者に会ってきましたが、代表の木下と初めて会った時に「こんなに魅力的な人は見たことがない」「この人は天下を取れる人だ」と一瞬にして惹かれたからです。
大平そもそも、最初は転職の意志はありませんでした。転職する4ヶ月ほど前のGW休暇に何気なくネットを見ていたところ、自分の適正年収がわかるページを見つけまして。何気なく「自分はキーエンスだから高収入を得ているけれど、よそに行ったらどれくらいの年収なんだろう」と興味本位でクリックしたことが始まりです。
それ以降、ヘッドハンターから連絡が来るようになり、初めは断っていたんですが、「面白い会社があるから、社会勉強として会ってみませんか?」と紹介されたのがデイブレイクでした。
そこで代表の木下をはじめ、COOの下村や海外事業部のマネージャーである杉浦と面談し、優秀なメンバーが揃うデイブレイクに可能性を感じたんです。「この機会に転職しなかったら一生後悔するだろうな」と思い、オファーを受けてから1ヶ月足らずでデイブレイクへの参画を決意しました。
下村僕と大平は、キーエンスの本社で販促の経験がありますが、年代が違うため業務は被っていません。大平の優れた点は、皆が並々ならぬ努力をしているキーエンスという環境の中で、常にトップクラスを維持しており、かつ狭い道のりである販売促進というポジションを、過酷な競争を経て勝ち抜いてきているところです。
また、個人としての能力だけでなくチームプレイで成果を生み出すことにも長けており、両方のバランスを兼ね備えた稀有な存在であるとリスペクトしています。
「一喜はしても、一憂はするな」。
セールスとしての人生観すら変わる場所
デイブレイクは、キーエンス流の徹底した仕組化と、顧客ニーズに加え、顧客自身もまだ気づいていない潜在ニーズを掘り起こすことで、圧倒的な付加価値を生み事業をグロースさせている(詳しくは前回の記事を参照したい)。安彦氏は、そうしたキーエンス×デイブレイク流のセールスについて、前職との比較を交えながら語る。
安彦前職の鋼材販売では、どの業者から商品を購入しても変わらないため、「いかに価格を下げられるか」が勝負でした。商談以外の動きと言えば、見積りや契約書の作成など、セールスとしての最低限の行いしかできていませんでした。
一方、デイブレイクでは他社よりも100万円、200万円も高い商品を納得して購入してもらうための提案が必要です。そのためには、業界理解や自社商品の理解、他社商品との優位性、顧客との関係構築などが欠かせません。さらに言えば、顧客に必然的に選ばれるためのマーケティングまで学ぶ必要があり、もはや前職とは異なる職種を経験しているようなものですね。
能登前職と明らかに違うことは、デイブレイクでは「スピーディに、確実に受注を取る」という姿勢です。
例えば、顧客の気持ちはほんの数日で変わる可能性があるため、1日でも早く注文書を取ることが大事だ、ということですね。こうした細部にまでこだわる徹底ぶりが組織として当たり前になっている点は、前職では経験することがなかったものです。
私は前職でインサイドセールスをしていましたが、心のどこかで「受注が取れたらラッキーだ」という感覚がありました。しかし、下村からは「ここでは前職のやり方や上司から言われてきたことを全て忘れて、一から始めるように」と言われたことが印象に残っています。
能登また、下村から受けたアドバイスの中で私が最も心に残っていることは、「一喜はしても、一憂はするな」──という言葉です。
商談経験を重ね、この言葉がしっかりと腑に落ちるようになってからは、いま起きていることをどう捉え、どう対応するかを、あらゆる角度から細かく考えるようになりました。
こうして客観的に「思考を増やす」ことができるようになると、「こんな時、下村さんならどう考えるだろう」と想像できるようになる。その結果、自分自身で問題解決に向けたアプローチを見出すことができ、以前よりも一憂することが少なくなってきたと感じています。
デイブレイクの魅力を前のめりで口にしながら、前職との差分を述べる安彦氏と能登氏。そんな2人は、日々のセールスにおいて下村氏と大平氏から何を学んでいるのだろうか。
安彦僕は、下村から「体系化する力」を学びました。
単に商品が「売れた・売れなかった」に留まらず、売れた理由や売れなかった理由にはどのようなプロセスがあったのか、その要因を深く掘り下げて分析していくことで、論理的思考力が鍛えられ、再現性の高いセールススキルが身についたと感じています。
そして現在、大平からは僕がセールスとして伸ばすべき強みについて現在進行形で学んでいる最中です。例えば、顧客担当者ごとの特性の見抜き方や、それに応じたコミュニケーションの打ち手などですね。
能登学んだことは数え切れませんが、何より下村からは「生き方」や「考え方」を教わったことが大きいです。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、「人生が変わった」というのは正直な気持ちです。
もちろん、自分の価値観を変えるわけですから、そこには大変なこともありました。しかし、今振り返って思うのは、この道を歩んできて本当によかったということです。もう一度、将来のキャリアについて思い悩んでいた時期に戻ってもデイブレイクを選びます。
そして今、大平から学んでいることは、たとえ自分が苦手だと思うような場面や顧客であっても、それを克服し、どんな相手にも受け入れられるセールススキルを教えてもらっています。最近は大平の商談に同行する機会もいただいており、日々学びを得ている最中です。
「若い芽」に懸けざるを得なかった3年前。
今こそ開花の時期に
稀有なマネジメントメンバーに囲まれ、確かな成長を実感している2人。一方で、育成する側の大平氏と下村氏からはどのように見えているのだろうか。
大平まず、私のところに来る相談の質が変わりました。おそらく最初はどこまで私に相談をすればいいのか判断がつかず、遠慮があったのでしょう。
能登の場合、以前は顧客との間で問題が発生し、自分ではほぼ手に負えなくなってしまった状態で相談に来るケースが多くありました。しかし、最近では顧客へ向かう前から「私はこうしようと思うのですが、どう思いますか?」と自分の意見や考えを持って早めに報連相ができるようになってきている。これは仕事ができる社会人の特徴としてあるべき第一歩と言えるでしょう。
大平また、安彦に関しては当初、個人主義の印象がありましたが、今では新しく入ったセールスメンバーの育成について一緒に心を砕いて考えてくれたり、他の人の仕事を率先して引き受けていたりと、私が入社してから僅か3ヶ月の間に大きく成長していると感じています。
安彦それはめちゃくちゃ嬉しいです。
下村元々、僕がデイブレイクに入社した2020年11月当時、新卒のセールスが1名だけで、とても「組織」とは言えない状況でした。
そこで2番目のセールスとして採用したのが能登で、次に安彦。二人ともそこまでセールス経験が豊富だった訳ではないので、最初はどうなるかと心配していました(笑)。しかし、当時から2年半が経ち今では大きく成長したと感じています。
今は大平がマンツーマンで二人を育成してくれているので、安心して一流のセールスになってくれると信じています。
デイブレイクに入社した当初、安彦氏と能登氏にはセールスとしての力量に伸びしろがあったと下村氏は言うが、その当時、経験豊富な熟練のセールスを採用するという判断はなかったのだろうか。
下村正直に言えば、もちろんベテランのセールスから採用したかったです。しかし、今も途上ですが当時のデイブレイクは“ど”が付くベンチャーです(笑)。なので募集をかけても経験豊富なセールスからは応募が来なかった、というのが実態です。だからこそ、若手を育てるしかなかったという訳ですね。
そして、安彦と能登はそんな時代からデイブレイクを信じて入ってきてくれた貴重な人材たちです。この2人がいなければ、デイブレイクは道半ばで頓挫していたかもしれない。この2人は今後のデイブレイクを担う重要なセールスメンバーであると、僕は思っています。
“感情の機微”をつかめ!
キーエンス流の顧客理解をインストールせよ
「キーエンスのセールスは強い」──、そんなことはわかってる。では、そこに秘めたる要素とは何なのか?元キーエンスの下村氏と大平氏に共通しているのが「人の思考や心情を推察する能力の高さだ」と安彦氏は語る。
安彦「お客様はこういう人でしょう。だから、こうしてあげた方がいいんじゃないの?」という2人のアドバイスが的を射ていて、驚くほど成果が出るんです。なぜここまで、顧客の気持ちやニーズを深く捉えることができるのかと不思議で仕方ありません…(笑)。
下村再現性高く成果を生み出し続けるには、顧客やメンバーの「心理面・感情面の機微」を掴むことが重要です。
能登が冒頭でお伝えした通り、「思考を増やす」というのは、今起きている事に対してどう対応するのかを、あらゆる角度から細かく考えること。これができるようになると、上司の思考を再現し、自分一人で問題解決できる能力が身につきます。
ところが、経験が浅いとそこまで広く深く思考することはできません。
例えば、顧客が「導入した特殊冷凍機が本当に大丈夫なのか確認したい」と申し出があった場合、その背景には顧客自身の特性があるかもしれませんし、我々がベンチャーだからという不安があるのかもしれない。
では、顧客の不安を払拭するためにセールスはどういう伝え方をすればいいのか、どういう表現をすべきか、細部まで確認作業をしていくのです。それを徹底しているのが、キーエンスなのでしょう。
そうしたキーエンス流のセールス手法をデイブレイクのメンバーにレクチャーする際、大平氏が今、特に注力しているのが、セールス側の“発”のシチュエーションと、顧客側の起因による“受け”のシチュエーション、この2つのアプローチの改革だと語る。
大平セールス側の“発”のシチュエーションでよくありがちなのが、誰でもプライベートでは会話のキャッチボールができるにも関わらず、いざ商談になると“押し売りマシーン”のようになってしまうことです。
例えば、プライベートでは「〇〇さんは、どんな食べ物が好きですか?」と質問できるのに、なぜかビジネスの場になると「〇〇さんが好きな食べ物は、あんこのお団子ですかね」などと言ってしまう。これでは会話にならないんですよ。
実はビジネスとプライベートでの会話には大きな違いはなく、考え方やフレーズの出し方を1つ変えるだけで会話が上手になるということを、まずはセールスメンバーに教えています。
大平そして顧客側の起因における“受け”のシチュエーションでも、顧客のタイプに応じた対策をレクチャーしています。
例えば商談中にいろんなアイデアを出される顧客がいたとします。私の分類では「感性の人」と呼んでいるのですが、そうしたタイプは一見、とても協力的に見えるものの、発散的にいろいろな意見を出されるので、実は物事が進まない可能性が高い。こうしたタイプにはこちらが早めに1つのアイデアに焦点を絞り、そこにフォーカスして話を進めることが正解なんです。
他にも、顧客の中には「組織の人」というタイプもいます。自身の権限内であれば何でもできるけれど、権限を超えることはしないという相手には「この方にお願いできる最大限はここまでだから、ここを商談のゴールに設定しよう」と見極め方をセールスメンバーの商談に同行しながら一つひとつレクチャーをしています。
さらに、大平氏は自ら率先して商談の場に臨み、メンバーに向けて「今日の商談ではここまで進める」「こういう提案をしていく」と具体的に宣言した上で、見本を示していく。「大平さんは顧客のタイプに合わせて、毎回、キャラを変えてアプローチされるんです」と能登氏は教えてくれた。実際、こうした顧客の分類はキーエンスのセールス手法として存在しているのだろうか。
大平いえ、実は僕がキーエンスに在籍していた時、ある先輩から学んだ手法です。
そこで人のタイプを9つに分類して、それぞれが望む対応、望まない対応を長い間研究してきました。もちろん、人のタイプを見抜くことは容易ではないため、最初は当てずっぽうですけどね(笑)。
ところが、長年の努力により「この人は、こういうタイプだ」ということが見えてくる。常に考え続けていけば、誰でもそのスキルを伸ばすことができるのです。今は15人ほどのチームなので、それを1対1で教育できるというわけですね。
能登大平からは、商談で何を言えばOKなのかではなく、顧客がどういうタイプで、それに合わせてどんなアクションをしたから、提案が相手に刺さったのか、もし相手に刺さらなかったら何が理由なのかを、逐一フィードバックをもらっています。
こうしたセールススキルが身につけば、どんな商材でも成果を出せると思うんです。いま、デイブレイクで学んでいることは、どこへ行っても通用するスキルだと確信を得ています。
巷のキーエンス流・営業理論には、「仕組みをつくる・動かす」部分が欠けている
こうした生のキーエンス・ノウハウを聞くと、読者の中には「キーエンス流のセールス手法について記された書籍はいくらでもある、その内容を実行すればいいのでは?」と考える者もいるはずだが、その問いに対してはどうか──。
安彦確かに、書籍には下村や大平が言っている理論は書かれていますが、それを実践して、さらにフィードバックを受けられる場所ってありますか?そういう意味では、デイブレイクが唯一無二の場所ではないでしょうか。
下村僕がキーエンスの本社にいた時、「キーエンスのセールス手法をそのまま再現しようと組織に取り入れたが、商品が売れなかった」という話をよく耳にしていました。
結局、理論がわかっていても、その仕組みをつくるところや、仕組みを動かす部分までは書籍に書かれてはいない。「これをやれば成功する」とセールスのプロセスだけが明示されている印象ですね。
大平そう。キーエンスの仕組みは言うまでもなく秀逸なんですが、その仕組みづくりを学べるところは“本社の販売促進部門だけ”なんですよ。
もちろん、キーエンスのセールスパーソンは努力家で優秀な人が多いです。しかし、「仕組みづくりを学ばず、セールスのみを実施してきた人が、別の環境でキーエンスの仕組みを構築することができるのか?」というと、「まず不可能」だと思うんです。
また、キーエンス流の仕組みをどのフェーズで、どうやって組織に移植していくかも見極めなければなりません。
例えばキーエンス流がレベル100まであるとすれば、今のデイブレイクではまずはレベル30まで取り入れてみよう。次はレベル50に引き上げてみようなど。組織のフェーズを無視していきなりレベル100のキーエンスの仕組みを導入しようとしてもうまくいく会社はありません。
ではなぜ、デイブレイクではキーエンス流の徹底した仕組み化が実現できているのか。それは、キーエンスの事業部内でわずか1%以下の確率でしか選ばれない、販売促進部を経験した下村氏と大平氏がいるからだ。これほどの経験を持つ人材がスタートアップにいること自体、極めてレアなことだろう。
下村それもキーエンス時代に繫がりがあったわけではなく、偶然ですからね(笑)。でもそれが逆によかった。部署も扱っている商材も違ったので、結果的にお互いに持っているスキルやノウハウが全く違う。メンバーに対しては良い影響に繫がっていると思いますね。
安彦それはよくわかります。僕はデイブレイクに入社する前は、自分の感性でセールスをするタイプでしたが、下村からは自分に足りていない知識やプロセスについての学び方を2年間かけて教わりました。
そして大平からは、これまで感覚でやっていた自身のやり方を言語化することで、自分の強みを補強してもらっていると感じます。
能登その通りですよね。まずは下村からベースとなる基礎を学んだことで、今、大平が私にアドバイスしてくださることを深く理解できるようになりました。もし何もない状態で大平から教わっていたら、理解が浅いままで追いついていなかったと思います。
単にキーエンスでセールス経験を持つ人材が複数集まったところで、今のデイブレイクのような非連続な急成長は成し得ないだろう。キーエンスでセールスの仕組みそのものを生み出し、浸透させてきた経験を持つ者が、奇跡的に同じスタートアップに2人揃ったことが同社の急成長を実現させたのだ。
そして僅か15名(2023年12月時点)というセールス組織の中で、この2名から学び、挑戦する機会を得られるデイブレイクは、セールスパーソンにとって贅沢すぎる環境ではないだろうか。
デイブレイクは、「社会的価値」と「経済的価値」の両立を常に追い続けてきた
デイブレイクのセールス組織が、いかに成長環境に優れているのか、具体的な事例を聞くことができた。ここからは同社のセールス組織のカルチャーについても触れていきたい。
デイブレイクは、特殊冷凍機『アートロックフリーザー』の開発と製造を手がけているが、単なる特殊冷凍機のメーカーではない。顧客が特殊冷凍機を最大限に活用できるよう、事業開発の支援を行ったり、顧客同士が事例やアイデアを共有したりし合えるコミュニティの運営にも注力している。
安彦僕たちのビジネスモデルは、特殊冷凍機を売って終わりではなく、その後、顧客が自社のビジネスに活用できているかに焦点を置いています。
そのため、ありきたりな言葉かもしれませんが、顧客に対して「寄り添う力」や「思いやり」がカルチャーとして根付いていると思います。
能登そうですね。例えば、特殊冷凍機の場合、食材によって異なる前処理の方法や解凍の工程、冷凍に合わせたレシピなどがあるのですが、顧客からは「そこまで理解して支援してくれる企業は他にはいなかった」と、皆さん驚かれます。そこは私たちが長年にわたって研究・実験を重ねてきた成果が強みになっていますね。
下村それは僕たちが、CSV(Creating Shared Value)、つまり社会的価値と経済的価値を同時に叶えるために、どのようにアクションをすればいいのか常に考えてきたからだと思います。
特殊冷凍機が売れれば、経済価値は実現できますが、顧客の役に立っていなければ社会的価値の実現はできません。
しかし、僕たちが顧客に伴走支援をして顧客の事業が成功すれば、僕たちの経済価値も生まれます。そのような考え方が「寄り添う力」や「思いやり」というカルチャーに繫がっているのかもしれません。
大平そのマインドは社外だけでなく、社内にも溢れていると私は思います。
私がデイブレイクに入社した際、「なんて心地の良い、素晴らしい会社なんだろう」と思いました。
実際、多くの会社では縦割りのカルチャーがあり、自分の担当以外は仕事をしないというスタンスが一般的でしょう。それがデイブレイクには一切ない。今日も休んでいるメンバーに対して、「〇〇さんのチームの仕事が止まっているから代わりにやっておきますね」という連絡が自然と交わされているのを見て、メンバー同士の思いやりもしっかりと醸成されているなと感じました。
デイブレイクには、「会社全体の成功が個人の成長に繫がる」というマインドが根付いているため、担当以外の仕事にも自然と協力する姿勢ができている。そうした考え方は、セールス組織を構築してきた初期の段階から続く“シェア”するカルチャーに基づいているという。
安彦「ノウハウを共有すれば、それが会社の財産になる」と、下村がまさに僕たちに教えてくれたことです。冷凍食材のテスト、事例、運用方法など、未知な分野に挑戦する中で得られた成功体験も失敗体験も、それをシェアすることが組織の財産になると──。
僕が入社した2021年当時は、1人の経験値をシェアすることで3人分の経験値となっていましたが、今では1人の経験値が15人分の経験値になる。こうした経験の共有が、組織全体の成長を促していることは間違いないと思います。
下村何千人もの従業員を抱える大手企業では、新たなメンバーが加わっても組織のカルチャーはそう変わらないでしょう。しかし、僕らのような少数精鋭の組織では、一人ひとりの影響が大きいため、従来のカルチャーを維持しつつ組織を拡大していくことはそう容易ではありません。
そうした中でもデイブレイクが自分たちのカルチャーを見失わずに成長できていることは、奇跡に近いのかもしれませんね。
15名程の組織で、2人のキーエンスTOP人材から学べる。そんな環境が他にあるか?
現在、デイブレイクのセールスメンバーは15名ほどだが、今後の採用計画を尋ねると「今後半年で約10名のメンバーを追加したい」というチャレンジングな答えが返ってきた。同社ではこれからどんなメンバーを仲間として迎え入れたいと考えているのだろうか。
大平私個人としては、「今までの経験を一度リセットして、デイブレイクで一から学び直したい、もっと成長したい」というチャレンジ精神のある人に参画してもらいたいです。
この環境下で1年間セールススキルを鍛えれば大きな戦力になりますし、2〜3年間、腕を磨いたらどこでも通用するセールスパーソンに成長できると思います。
下村僕は反対に、「デイブレイクで腕を試したい」という方に本気でセールススキルをぶつけに来てほしいですね。
デイブレイクには、キーエンスを始めアクセンチュアなど、様々な企業で経験を積んできた優秀なメンバーたちのノウハウが集積しています。
そこに新たなエッセンスを加えて、「こうした方がもっと良くなるのでは?」という意見をお互いに出し合い、共に事業を拡大していけたらいいですよね。
デイブレイクでは新たなチャレンジを望む者にとっても、自らのアイデアで挑んでみたいと思う者にとっても門戸が開かれている。そんな組織として拡大していくフェーズにある今、同社に参画する魅力を尋ねてみた。
安彦自分が手がける仕事がダイレクトに世の中に影響を与えられることって、そんなに多くない気がするんです。
僕たちは特殊冷凍機メーカーですが、顧客が急速冷凍機を使って冷凍食品をリリースしたことがメディアに取り上げられたり、フランチャイズで事業規模を拡大したり、人手不足が解消されたりと、実際にそうした事例がたくさん生まれています。そこにやりがいを感じる人には楽しい環境だと思いますね。
能登今回お話をした通り、キーエンス出身のこの2人から一流のセールススキルを学んで、セールスパーソンとしてどこでも活躍できる人材になりたい人、成長意欲の高い人にはピッタリの環境です。
私自身、ここまで夢中になれる仕事と出会えるとは思いませんでした。そして今、仕事が面白くて仕方ありません。ぜひ、そんな感覚を皆さんにも味わってもらいたいです。
大平実はキーエンスの本社には、至るところにアンモナイトなどの化石が飾られています。それは、「化石になってはいけない、常に変化し、進化をし続けるんだ」というメッセージが込められているんです。
デイブレイクも同様、キーエンス流とデイブレイク流が融合して柔軟に変化を遂げている会社。そして、私自身、社会人として最強だと思う人は、変化を恐れずにいろいろなものを吸収できる人だと思うんです。そうしたマインドの人にはデイブレイクはチャレンジし甲斐のある環境だと感じますね。
下村僕は大手企業からスタートアップに来て人生が180度変わりました。ある程度、似たような能力やスペックの人材が集まりやすい大手企業とは違って、ベンチャーやスタートアップは実力主義ゆえにバックグラウンドも多様。
正直、大手企業でマネジメントをするよりも、ベンチャーやスタートアップの方がよりサバイバルな能力が必要とされると思うんです。
下村もし、大手企業でくすぶっているぐらいなら、デイブレイクに限らず、人生を豊かにする選択肢の一つとしてベンチャーやスタートアップを検討するのもおすすめしたい。僕自身、「自分の意志で人生を生きているな」と実感する日々です。
そして前回もお話ししましたが、デイブレイクは昨今のスタートアップの中では珍しい、“ものづくり系”のスタートアップです。実際に手に取って動くプロダクトを持ち、手触り感を持って事業に挑戦してみたい人にとっては、面白い環境だと思いますよ。
特殊冷凍機メーカーという事業ドメインで、ものづくりの領域に彗星の如く現れたデイブレイク。第1回目の取材では、デイブレイク代表・木下氏が特殊冷凍機市場のポテンシャルの高さを熱く語ってくれた。続く第2回目の取材では、デイブレイクがどのようにして非連続成長を遂げているのか、同社の事業成長の軌跡に迫った。
そして、今回の取材でセールス組織に焦点を当てると、デイブレイクには超一流のセールスパーソンからフィードバックを受けながらスキル・マインドや思考を磨いていける環境があることがわかった。彼らは単にキーエンスでセールスを経験しただけでなく、世のキーエンス本では明かされていない、「キーエンスの仕組みづくり」に関わってきたコア中のコアメンバーである。
チャレンジングなスタートアップの中でも「ものづくり」というユニークな環境に身を置きながら、日本トップクラスのセールスパーソンを目指していける。FastGrowは、これほど充実した挑戦の機会、成長環境を他に知らない──。
こちらの記事は2024年01月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
山田 優子
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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