連載株式会社フライウィール

「“売らずに創る”。これがセールスの新常識だ」──元Google Japan執行役員も参画!フライウィールに訊く、AI時代のセールス・インパクト創出法

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インタビュイー
塩入 賢治

IBM、アクセンチュアでソフトウェア営業・ビジネス開発を経験後、Google Japanで国内 Google Cloud Platform 事業の立ち上げをリード。7年間にわたり事業拡大を牽引し、執行役員/流通事業本部長としてリテール領域を統括。その後、医療系ベンチャーの執行役員、戦略コンサルティングファーム取締役を経て現職に至る。現在はフライウィールでセールス&マーケティング部門を統括し、大手企業向け事業戦略の立案・実行と、データ活用および生成 AI を活用した業務改革を推進。趣味は、トライアスロンと釣り。

黒岩 大祐

前職の富士通株式会社・株式会社NTTデータでは金融機関向けのソリューション営業に従事。主に銀行を担当し、国内最大規模の銀行から地域金融機関まで業務基盤の構築・改善、リスク管理やガバナンス強化、新規ビジネスの立ち上げ支援など、幅広い領域で価値を提供。2024年1月にフライウィール入社後は、製造・エネルギー・製薬業界などに向けて、AIやデータを活用した課題解決と価値創出を推進中。

近木 宏介

アメリカの大学で交渉学を学んだのち帰国し、約10年間メディア業界にて営業・事業開発に従事。スタートアップ企業で役員を務めた後、2024年7月にフライウィールへ Business Development Manager として入社。現在はCOOPなどの小売業や製造メーカーを中心に、AI活用の推進を支援している。趣味はタコス屋とサモエドカフェ巡り。

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エンタープライズ営業と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。

長期間の商談、複雑な稟議、膨大な調整業務──。

「面白みに欠ける」「成長できるの?」、そんなイメージを抱く人もいるかもしれない。

しかし今、そんな常識を覆すエンタープライズ営業が注目されている。プロダクトを“売る”のではなく、顧客と一緒に業務構造を“創り変える”営業だ。

株式会社フライウィール(以下、フライウィール)との共創で綴ってきた本連載(全4回)では、日本企業の97%がAI活用で成果を出せない現実とその解決策を紹介してきた。

最終回は、エンタープライズ向けデータ活用プラットフォーム『Conata®』を提供する同社で、構想を現場で具現化している営業チームの実像に迫る。

彼らが向き合うのは、仕様を詰めて“売る”相手ではなく、業務の本質をともに考え、改革を実現する「共創のパートナー」だ。顧客の業務課題を構造から読み解き、「整っていない情報を整える」状態まで一緒に伴走する──まさに「業務変革の設計者」としての役割を担っている。

幅広い世代が活躍する中でも、最前線でリードするのは20〜30代のメンバーたち。

そして最近、国内Google Cloud Platform事業の立ち上げをリードした塩入 賢治氏が参画したことで、かつては個人の工夫と努力に委ねられていた営業体制が、今では役割分担やナレッジ共有が機能する“チームで戦う組織”へと進化している。

AIの活用が加速するなか、業務の構造そのものを見直す必要がある企業は増えている。

そんな時代において、「売る」ではなく「共に創る」営業の価値は、これまで以上に高まっていくだろう。フライウィールの営業チームは、まさにその最前線を走っていた──。

  • TEXT BY HARUKA YAMANE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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営業が“売らない理由”とは?
顧客と一緒に業務構造を創り変える新常識

「営業が売らないって、どういうこと?」──まずはこの疑問からぶつけてみよう。

塩入フライウィールの営業が扱う“売り物”は、目に見えるプロダクトではなく、“顧客の業務構造に意味を与える”という、“非常に抽象度の高い価値”です。

連載第1回でお伝えした「整っていない情報を整える」という考え方そのものですね。データが散在し、業務プロセスが分断されているなかで、「そもそも何を変えれば本質的な改善につながるのか?」を見極め、それを形に落とし込んでいく必要がある。

だからこそ、抽象的な概念を正確に言語化し、顧客ごとに異なる業務文脈へと接続する力が求められます。プロダクトを“充てる”のではなく、価値の構造そのものを一緒に再設計していく仕事──それが、フライウィールの営業です。

塩入氏が話す“抽象度の高い価値”とは、顧客企業内に眠るデータを活用し、業務の構造そのものを再定義することで生まれる改革を指している。

フライウィールが提供するエンタープライズ向けデータ活用プラットフォーム『Conata®』は、汎用性の高い設計が特徴だ。一方でその分、何をどう使い、どの業務をどう変えるかは、顧客ごとに一から意味づけをしていく必要がある。営業はそこで、「顧客にとって価値ある使い方とは何か?」という問いから入り、その設計自体を担うことになる。

このときに求められるのが、連載第3回で波村CTOが語った「検索と推論のあいだを設計する」という思想だ。ユーザーが明確に言語化できない課題を、文脈から読み解き、意味のある問いへと翻訳する──。

営業現場では今、その思想が実装されている。営業は顧客の要望をそのまま扱うのではなく、その背後にある構造や本質的な目的に踏み込み、“本当に必要な変革”を設計・実装する伴走者となっているのだ。

フライウィール採用サイトから引用

塩入「プロダクトはこれから進化していきます」と言って売るのは、今や多くのスタートアップで当たり前です。

しかし、フライウィールの営業は、そもそも“何をプロダクトで解くべきか”を顧客ごとに設計するところから関わる。この違いは大きいと思います。

『Conata®』は汎用的なデータ基盤なので、どこを変えると成果につながるかは顧客によってバラバラです。そのため、フライウィールの営業は、単に要望を聞くのではなく、業務構造を読み解き、課題の意味づけそのものから始めていく。

その上で、エンジニアと共に「どう実装すれば、それが社会で機能するか」を考え抜く。プロダクトを“届ける”のではなく、“成立させる構造”を一緒に築く──それが私たち営業の仕事です。

SaaS業界においては近年、「プロダクトはこれから進化していく」という前提で売る営業スタイルが一般化しつつある。顧客とともに改善を重ね、プロダクトの価値を育てていくという姿勢は、多くの企業で理想とされているものだ。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

しかしフライウィールにおける営業の役割は、そうした枠組みをさらに一歩超えている。単に“機能を進化させる”前提で売るのではなく、顧客の業務構造において「そもそも何をプロダクトで解くべきか」そのものを定義するところから始まる。

『Conata®』は汎用的なデータ活用基盤であるがゆえに、導入先によって価値の出し方もアプローチも大きく異なる。営業は顧客の文脈を読み解き、プロダクトの使い方だけでなく、その“意味”自体を構造レベルで設計していく存在なのである。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

上図の通り、連載第2回で横山CEOが示した「プロダクト×プロフェッショナルサービス」の両輪アプローチを、営業現場で具現化する流れは以下の通りとなる。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

黒岩“創る”という表現は、フライウィールの営業を最も的確に表していると思います。

我々はプロダクトを押し付けることはしません。むしろ、お客さまの業務構造や文脈に踏み込みながら、「どの構造を変えるべきか」「どうすれば成果につながるか」を一緒に定義していく感覚に近いです。

たとえば、ある顧客から「過去のプロジェクト事例をテーマごとに検索できるシステムがほしい」と言われたとしても、その背景は企業によってまったく異なります。記録データの形式、プロジェクトの進め方、意思決定のプロセス──一つとして同じ構造はありません。

黒岩だからこそ重要なのは、「そもそも、なにが本当の課題なのか」「その人たちにとって、どういった解決策が最適なのか」を、お客さまと共に深掘りしていくことです。

営業は、課題の“意味”を構造ごと捉え直し、それを実装可能な業務設計へと翻訳する。そのプロセス全体をリードするのが、フライウィールの営業の役割です。

顧客の業務プロセスや意思決定の流れ、そこに紐づくデータ活用の仕組み──こうした“業務の構造”そのものをどう再設計するかを考えるところから、フライウィールの営業は関わっている。

その過程では、どのタイミングで誰がどんなデータを見て判断し、どんなアクションに移すかまでを分解し、エンジニアと共にプロダクトのあるべき姿を定義していく。

「何をどう売るか」ではなく、「この企業において、プロダクトはどんな構造の上に成立すべきか」。

そこから逆算して提案が始まるのが、フライウィールの営業なのである。

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導入後が本番。製造業のトラブル対応システムからCO-OP事業拡大まで、現場で起きる“共創の実態”

では、実際に“業務変革の設計者”として営業がどう動いているのか。その実態に迫ろう。

大前提、フライウィールの営業は“導入して終わり”ではない。むしろ、導入してからが本番だ。PoC設計から実装・定着支援までを伴走するプロフェッショナルサービス領域を中心に担当する黒岩氏に実態を伺うと、まさに“共創”といえる営業のリアルが見えてきた。

黒岩以前、製造メーカーとのプロジェクトで「過去のトラブル報告書を検索できれば、未来のトラブル対応に活かせるのでは?」という仮説のもと、トラブル報告書を検索できるシステムを使ってPoCを進めていました。

しかし、関係者へのインタビューを重ねるうちに見えてきたのは「報告書が検索できるだけでは本質的な解決にならない」という現場のリアルな声でした。

そこで私たちは、「検索して終わり」ではなく、「いまこの状況において、何を優先すべきか」を自動的に提案してくれるような仕組みのほうが、現場では本質的に使われるのではないか──と考えるようになりました。

その結果、「検索システムの枠を超えて、ユーザーの意図や状況を理解したうえでアクションを提案するようなAIエージェントの導入を目指そう」と、営業チームやプロダクトマネージャーとの議論が本格化。プロジェクトは方向性を大きく見直し、顧客とともに“次に必要な動きまで導く”ソリューションの再設計へと進んでいきました。

フライウィール採用サイトから引用

黒岩氏の事例が示すように、フライウィールの営業は、あらかじめ用意された機能や画一的な使い方をそのまま“売る”立場ではない。顧客の業務構造そのものを読み解き、現場の声をもとに最適な解決策を設計していく“共創のパートナー”である。

連載第3回で波村CTOが語った「業務構造を読み解く」という視点は、技術領域だけでなく、営業現場においても実践されている。

その姿勢が如実に表れたのが、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)とのプロジェクトだ。

約7,000万人分の会員データをもとに、店舗単位で売れ行きを予測し、自動発注を最適化。結果として実売率は約20%改善された。

この取り組みは、まずは一部の発注領域でPoCを実施し、確かな成果を得たのちに全国のTSUTAYA全店へと展開された──まさに、連載第1回で紹介した「小さく始めて、大きく育てる」アプローチを体現した事例である。

【CCCの事例】
会員データで店舗ごとの需要予測とAI自動発注を実現、返品率低減へ

一方、『Conata®』の中でも生成AIプロダクトの導入支援を中心に担当する近木氏は、業務改革のためには“仮説を立ててアプローチする力”、“顕在化していない課題を見つけ出す力”が重要だと話す。

近木とくにAIを導入する話になると、既存業務にBとCの業務があった場合、「BだけAI化すればいい」という単純な話にはなりません。

Bが変わればCも影響を受ける、つまり業務全体に変化が起きるんです。なので、僕たちがやるべきことは単に「ここにAIを入れましょう」という提案ではなく、業務全体の変革をどう進めるかという“変革のマネジメント”をしていくことです。

近木たとえば、ある製造メーカーでは僕自身が何度も足を運んでAI活用に関するワークショップを重ねていきました。そうして信頼関係を築いたうえで、現場の業務フローを見せてもらい、今どこで何人がどう動いているかなど細かくヒアリングしていく。そのなかで「この部分はAIでなくても、もっと簡素化できますよね。こうなったら嬉しいですよね」と一緒に“変革の可能性”を探っていきます。

近木氏が重視するのは、「AIを導入したい」と考えている経営層だけではなく、“現場の人々”が自発的に求める状態をつくることだ。本当の変革とは、「上から言われたからやる」のではなく「自分たちが納得して選ぶ」からこそ生まれる。

近木こうして伴走することで、たとえば僕が担当している生協さん(日本生活協同組合連合会 = CO・OP)では、現在デジタルマーケティング部門とのやり取りがメインですが、課題を発見すれば商品開発部門に話を広げたりといった拡張提案も可能です。

【CO・OP(日本生活協同組合連合会)の事例】
ツール導入でDXは完了しないデータ「統合」からデータ活用が広がる

近木連載第1回で紹介されたように、単なるデータ集約から、組織横断的なデータの統合への進化を実現し、「新しい事業の種を導き出していきたい」とお客さま自らが新たな改革への意欲を強めています。

顧客とともに改革を進めながら、自分の提案によって“新たな改革を創り出せる”のがフライウィールの営業の大きな特徴です。

改革を共に創る──。

実現するには顧客ごとの課題背景や現場の想いにまで深く目を向ける姿勢が欠かせない。では、こういった真のニーズを捉える姿勢は、どういったチーム環境で培われているのだろうか。

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GAFAM出身者らの“意外な正体”。
若手営業が語る成長環境の真実

ここからは、フライウィールの営業チームに焦点を当てていく。

同社はCEO横山氏CTO波村氏をはじめGAFAM出身の経営陣とメンバーが一丸となって生まれたスタートアップ。営業チームのマネージャーを務める塩入氏も、国内Google Cloud Platform事業の立ち上げをリードし、7年間、事業拡大を牽引してきた人物だ。

これだけ優秀なメンバーがそろった環境と聞くと「業務変革をつくるといっても、そもそも打席が回ってくるのか」「若手がやっていけるのか」と尻込みしてしまう気持ちもわかる。

黒岩僕は入社からまだ1年3カ月ほどですが、前職の大手SIerと比べると打席数の多さは圧倒的です。フライウィールに来てからの担当社数は5社、案件数でいえば15案件を担当してきました。

一方で、前職では主に大手銀行を担当していたこともあり、1案件に1年以上かけて取り組むのが当たり前でした。それも年に1回打席が回ってくるかどうかという感覚で。今は週に何度も新しいお客さまとお会いし、案件も2〜3カ月でクロージングしてそのままPoCに進むというスピード感あるサイクルです。

その分、多くの経験を積むことができ、成長実感も強く持てています。ここに来てからの1年3カ月がとても濃密に感じられますね。

実際、同社では年次や経験など関係なく若手にもどんどん打席が回ってくる。近木氏は、そもそも“GAFAM出身”は、あくまでひとつの経験に過ぎないと話す。

近木入社する前はGAFAMの人ばかりで怖いなと思っていました(笑)。でも実際に働いてみると、その印象は良い意味で大きく変わります。

そもそも、GAFAMを辞めてフライウィールに来ているくらいなので「自分でなにかを創りたい」「世の中を動かすような影響を与えたい」という想いを持っている人たちばかりなんです。

連載第2回でCEOの横山が語っていた「30年後の子どもたちのために」という想いを、みんなが共有している感じです。

「自分が」ではなく、「チームとして、企業として、世の中にインパクトを与えたい」という意志を感じます。全然、雲の上の存在ではないですよ(笑)。爽やかで熱意のある人たちばかりです。

黒岩すごくわかります。「GAFAM出身だから自分とは感覚が違うな」などと思うことは一切ありません。「前職ではこうだった」とひけらかすような人はいませんし、何よりみんな泥臭い。その点にむしろ、GAFAM出身ではない僕らも良い影響を受けています。

塩入Google出身の私の立場からも言わせてもらうと(笑)、「GAFAM出身だからすごい」と思ったことは一度もありません。

そもそも僕を含め、メンバーの多くがGAFAM以外の企業も経験してきているんですよね(塩入氏はIBMやアクセンチュアも経験)。GAFAMで培った知見を持ちながらも、他社での経験もある。つまり、各社の“いいとこ取り”をしているメンバーが多いと感じます。

僕自身もGoogleで学んだことはたくさんありますが、IBMやアクセンチュアで得た学びもあり、それらを取捨選択しながら組織づくりに活かしています。

塩入氏の言葉を裏付けるように、黒岩氏と近木氏は、塩入氏のマネジメントに対して「“やれ”と押し付けるのではなく、共感をベースに背中を押してくれる」と話す。

塩入氏のなかには、自身の経験とGoogle時代に培った“空気のようなマネジメント”思想がある。

塩入僕自身、過去さまざまな現場でエンタープライズ営業を経験してきましたが、「言われたことをただやらされる」だとやる気が出ないし、成果も出にくいんですよね。

だからこそ、自分がマネジメントする側になったときには、メンバーの“やらされ感”をできるだけなくしたいと思っています。

その土台になっているのが、Google時代に教わったリーダーシップの在り方です。Googleでは「リーダーは“空気”になりなさい」と言われるんです。

要するに、前に立ってグイグイ引っ張るようなリーダーシップを発揮するのではなく、空気のような存在になって、チームが挑戦しやすい雰囲気をつくり、そっと背中を押す。失敗したときには再び立ち上がれるように支えるリーダーです。この考え方に僕は感銘を受け、今でもそんなリーダーであれるよう精進をつづけています。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

近木塩入からは、「詰められている」と感じる瞬間が驚くほどないんですよ(笑)。

営業現場でよくある“詰める”ではなく、“解像度を高めるためのアドバイスをくれる”印象が強いですね。

たとえば、部下に対して「君たちのチームはこれだけの売上をつくれ」と指示すればいいだけの話も、「自分はこの会社で、世の中に対してこういうインパクトを与えたいと考えている。そのためには◯◯をしていく必要がある。この実現のためには〜〜な協力が必要だから、みんな力を貸してほしい」といった具合に、我々が思わず共感したくなるような言葉で話してくれるんです。

だから塩入の言葉を受けて、自然と前向きな気持ちで業務に取り組むことができているんです。

黒岩わかります。他にも、「メンバーに無駄なことはさせたくない」という思いも強く感じられて、本質的な業務にしっかりと時間を使わせてくれる。メンバーの負荷を考えながら、仕事に集中できる環境を整えてくれていることも日々実感しています。

指示ではなく共感、管理ではなく信頼。

「なにをすべきか」を明確にし、「どう進めるか」を任されるからこそ、チームが良い意味で自律性を持ちながら力を最大限に発揮できるのだ。

では、そうした文化を継続的に支えるための仕組みや体制は、どのように整備されているのだろうか。

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事業の成長、そしてGoogle出身マネージャー・塩入氏の参画により、個人戦から団体戦へと組織が進化

その答えの一つが、共感と信頼でチームが自律性を持ちながら、力を最大限に発揮できる環境づくりにあるのかもしれない。

とはいえ、「自分がこの組織で生き残れるのか」──そんな不安を抱く読者もいるかもしれない。特に、営業に高度な構造理解や設計思考が求められるフライウィールでは、個のスキルに依存する印象を持たれがちだ。

実際、かつての営業スタイルは、限られた人数で売上を上げることが求められていたため、個々の力を活かす“個人戦”が中心にならざるを得なかった。だが今、事業フェーズはプロダクトの本格導入と顧客数の急増を背景に、“実装・拡張”へと移行している。属人的なやり方ではスケールしきれず、“団体戦”への転換が急務となっていた。

そのタイミングで塩入氏が参画。Googleで培った“空気のようなマネジメント”を軸に、組織の仕組み化と役割分担を推進し、再現性ある成果を支える体制を構築している。特にエンタープライズ企業では、部門やレイヤーをまたぐ複雑な構造が当たり前だ。

今や一人の営業だけで完結するのは現実的でなく、チームで翻訳し、連携して実装する体制が求められている。

塩入まずエンタープライズのお客さまの場合、特定の誰か一人が単独で課題を抱えているわけではありません。

多くのステークホルダーが関わっていて、部門ごとにビジネスの在り方も異なる。そんななかでお客さまを多面的に捉えながら「本質的な課題はなにか」を見つける必要があります。

加えて、フライウィールはエンジニア中心の企業です。だからこそ、裏側にいるエンジニアたちの持つケイパビリティ(技術力や知見)を正しく理解し、お客さまの課題と技術の橋渡しになる必要がある。この両者をつなぐ役割こそが、フライウィールの営業ならではの難しさとやりがいの一つです。

塩入そしてもう一つ、我々が目指しているのはチャレンジャーセールス*です。

*…顧客に新しい気づきを与え、行動を促す営業のこと

すでに表面化している課題には、他社も当然アプローチしているはずです。だからこそ私たちは、お客さま自身がまだ気づいていない本質的な課題をどう見つけ出し、どう形にするかが重要になると考えています。そのためには、テクノロジーだけでなく、業界知識や業務理解が欠かせません。顧客の言葉をうのみにするのではなく、その背後にある構造を捉える力が求められます。

そして、そうした“気づき”を提供するには、営業が単独で頑張るスタイルでは限界があります。営業だけでなく、エンジニアや他職能のメンバーが一体となり、仮説を立て、検証し、顧客にとって最適な提案を共に創る──。

いまフライウィールは、そんな“団体戦”の営業スタイルをチーム全体でつくりあげている最中です。

近木そうですね。塩入がマネージャーとして参画して以降、チームに“団体戦ならではの安心感”が生まれたのを実感しています。

以前は、個人の工夫や気合いに頼ってなんとか踏ん張る──そんな空気もありました。ですが今は、オンボーディング体制や営業支援の仕組みが明確になり、「どこまでが仕組みで守られ、どこからが自分の挑戦領域なのか」が可視化されたことで、余計な不安なく挑戦に集中できるようになったと感じています。

黒岩それに、営業だけで完結しないのが、フライウィールの特徴だと思います。エンジニアチームは、単に「言われたものを形にする」スタンスではなく、営業が持ち帰った顧客の背景や目的を正確に捉えようと、対話の解像度を上げてくれるんです。

そのうえで「こう設計すれば、顧客の本質的な課題に届くのでは」といった提案が自然に返ってくる。職域の境界線を超え、ひとつのチームとして課題に向き合う空気があるからこそ、質の高いアウトプットにつながっていると実感しています。

この“重なり合いながらつくる感覚”は、単なる協業ではなく、プロフェッショナルが対等に補完し合っているからこそ成立するもの。そういう意味でも、誠実かつ思考の深いメンバーに恵まれた環境だと感じます。

彼らがいう“団体戦”を強める働きとして、最近では営業チームの再編も行われた。

もともとはチームごとにバラバラに動く毛色が強かったが、現在は3チーム制となり、それぞれの役割が明確化されている。これによって他部署(エンジニア、マーケティングなど)との連携もさらにスムーズになった。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

また、営業活動においても「どんなアカウントなら提案に進んでいいか」といった判断基準が整備され、塩入氏がレビューする体制も構築。バラバラだった営業活動が組織全体を通して管理される状態に変化している。

黒岩営業の視点だけでなく、コンサルの視点も持っている塩入がレビューするからこそ、単純に「売上が上がっていれば良い」といった評価にはなりません。一方で、「価値があるから赤字でも構わない」といった極端な判断にもならない。

ビジネスとしての健全性と、提供価値の本質を両立できているか──そのバランスを見られている感覚があります。

近木「どうやって塩入のレビューを通すか」は、僕たちの間では一つの“登竜門”のような位置づけになっています(笑)。

もちろん、塩入が“偉いから”というわけではありません。レビュー段階では、お客さま視点に最も近い立場から、提案の質そのものにフィードバックが返ってくる。

だからこそ、塩入が納得しない提案は、お客さまにとっても本質的ではないと判断される可能性が高いんです。

黒岩実際には、“通すか通さないか”という対立ではなく、「もっと良くするにはどうすればいいか」を一緒に考えてくれるプロセスです。だからこそ、毎回のレビューが学びになるし、提案内容もどんどん磨かれていくわけですね。

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AI時代に“人間の営業”が勝つ理由。
業務変革の設計者が描く営業職の未来

ここまでで見えてきたのは、フライウィールの営業が担う役割の深さだ。

課題の本質に向き合い、社内のエンジニアやメンバーとともにPoCを設計・推進し、顧客とともにプロダクトそのものを育てながら、実装・定着まで伴走する。商談相手ではなく“業務変革の設計者”として信頼される存在になる──そんな営業のあり方が、フライウィールでは当たり前に根づきはじめている。

そしてその営業スタイルは、AIが台頭するこれからの時代、ますます求められていくのかもしれない。

近木今の日本は人手不足や生産性の伸び悩みといった課題に直面しており、だからこそ、データやAIを活用して業務を効率化し、物事をシンプルにすることには、企業にとって大きな価値があると感じています。

ただの売り手ではなく、顧客の未来を共につくるプロデューサーのような存在でありたい。

ときには、自社にないリソースも外部から調達しながら、最適な形で価値提供をする。そうした関係性の構築にこそ、営業としてのやりがいを感じています。

いま、AIの進化によって、これまで営業が担ってきた定型業務の多くは効率化されつつあります。その分、“人として向き合う営業”により多くの時間を使えるようになる。だからこそ、最終的に差が出るのは、どれだけ顧客と信頼関係を築けるか──そこにこそ、営業の本質が残っていくのだと思います。

近木氏が指摘するように、AIが普及する時代だからこそ、企業の思想や人間としての面白さ、人間味ある部分が大きな差別化ポイントとなるだろう。

事実、マッキンゼーの報告によると、営業業務のうち、AIによる自動化・効率化が可能な領域は全体の約3割にのぼるという調査データもある。つまり、“人にしかできない営業領域”の価値はこれから高まっていくというわけだ。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

そう考えると、フライウィールの営業は“一歩先を行く存在”と言ってもよいだろう。今後、営業職のスタンダードとなる“業務変革の設計者”としての姿がすでに今、ここで生まれつつある。

では最後に、そんな営業チームで活躍するためには、どのようなポテンシャルが求められるのか。それぞれの見解を聞いて幕を閉じよう。

塩入自発的にアイデアを出し、仮説を立て、自分でアクションを起こしていけるようなタイプでしょうか。それができればフライウィールでも力を発揮できます。

近木自分の営業活動によってプロダクトを育ててきた経験がある人──そうしたスタートアップ / ベンチャー出身者は、フライウィールのような環境でこそハマると思います。

黒岩僕はSIer出身なのですが、お客さまの課題に向き合い最適な解決策を提案するという点では、SIerの営業と今の環境も本質は似ていると感じます。だからこそ、お客さまの課題に対してソリューションを提供するというスタンスに共感していただける人には、親和性があると思います。

たとえば、「もっとチャレンジしたい」「もっと多くの打席に立ちたい」「本当はこんな提案がしたいのに会社の方針で実現できない」と感じている人にはぜひ来てほしいです。フライウィールには、そういった想いを存分に発揮して活躍できる環境がありますから。

連載第1回で明らかにした日本企業の「97%問題」、第2回で横山氏が語った「プロダクト×プロフェッショナルサービス」の戦略、第3回で波村氏が技術実装で示した「壊さず整える」思想──そのすべてが、営業現場での「業務変革の設計者」として結実している。

AIが台頭する時代だからこそ、顧客と共に業務構造を創り変える営業の価値は高まっていくだろう。

では、なぜ「いま」フライウィールに参画すべきなのか?

FastGrowとしては以下の理由にまとめられる。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

「データを人々のエネルギーに変える」というフライウィールのミッションを現場で体現する挑戦。その最前線で、あなたも“構造をつくる営業”として、日本企業の未来を描いてみないか。

こちらの記事は2025年06月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山根 榛夏

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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