最強の競合は“現状維持バイアス”だ──「未来の体験」と「現場の理屈」を接続するInsightXのエンプラセールス【CEO佐竹×Sales今江】
SponsoredSaaSの役割や、求められている価値は今、大きく広がっている。特に、エンタープライズ企業が真に求めているのは、ツールを導入してすぐに効果を実感したいということではなく、自社の資産を活かし切って非連続な成長を実現する「道筋」をつくっていくことである。
ゆえに、InsightXのセールスチームは、単なる売り手であることを良しとしない。彼らが標榜するのは、「セールス」の枠を超えた「事業開発(BizDev)」としてのクライアントワークだ。 クライアントの中に深く入り込み、「まだ気づかれていない強み」や「現場に眠る熱意」に光を当てる。そして、経営と現場の結節点となりながら、生成AIなどの技術を用いてそのポテンシャルを形にしていく。
今フォーカスしているのは、特に変化の激しいリテール業界のリーダー企業たち。その内部に入り込み、経営戦略と現場オペレーションの双方を接続する「プロジェクトマネジメント能力」を磨きつつ、技術力での訴求に工夫を凝らすことで、前例のない事業を広く展開させる最前線での重責を担う。
それを牽引するのが、異なるバックグラウンドを持つ二人のプロフェッショナル。世界的な戦略コンサルティングファーム、ベイン・アンド・カンパニーで論理的思考と戦略構築の技法を体系的に習得してきた佐竹佑基氏(共同代表)。そして、アパレル企業で実店舗3カ所で店長を経験した後にZOZO TOWNや自社ECの責任者も担うなど実務に従事し、顧客の購買心理と現場オペレーションの機微を体感値として蓄積してきた今江柊一朗氏(Enterprise Sales)。
クライアント企業の中でまだ言語化できていない潜在的な事業機会を特定し、複雑な組織力学を読み解き、生成AIを活用したプロトタイピングを通じて、企業のポテンシャルを可視化していく──。そんなセールス手法を確立しつつある生々しい挑戦の模様を、お届けしたい。
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
「回っている現状」を変える、意外に超高難度なセールスの実態
最強の競合は、現状維持バイアス
2020年頃を中心に日本市場で爆発的な成長を遂げたSaaSには、「マイナスをゼロにする」ような役割を担うものが多かった。請求書処理の煩雑さ、経費精算の手間、ハンコ出社という物理的制約。そこには誰の目にも明らかな「業務上の痛み(バーニングニーズ)」が存在し、営業の役割は「これで痛みが減ります/消えます」と提示する場面がとにかく増えた。
しかし、InsightXの共同代表である佐竹氏は今、全く異なる“痛み”と向き合っている。
佐竹「上手くいっているときほど、変わるのが難しい」とよく言われますよね。そういう状態にある企業様へのサービス提供という、逆説的な挑戦をしています。具体的には「EC運営はタスクが多く、大変と言えば大変だが、このままでも売上がしっかり計上され続けるし、上手くハマれば成長も続く」という状況にいる方々がお客様なんです。
私たちが提案するのは「導入すれば、来月以降、エンドユーザーの体験を大きく変え続けることができ、その結果として売上を急角度で増やしていけます!」というもの。こうまとめると魅力的なサービスに聞こえるかもしれませんが……エンタープライズ向けに営業していくのが、おそらく皆さんが想像する数倍は難しい(苦笑)。
同社が主戦場とするのは、BtoCビジネスにおけるCX(顧客体験)の改善支援という「正(プラス)の創出」領域だ。
佐竹ECサイトは問題なく稼働し、毎月数億円単位の売上があり、現場のオペレーションも滞りなく回っている、そんな現場が対象となります。彼らにとっての現状(As-Is)は、多少の不満・不安はあれど「普通に機能している状態」なんです。
すでに売上・利益がある状態が続けば続くほど、そこでの「現状維持バイアス」は強くなってしまいがちなもの。我々が「御社の課題は何ですか?」とヒアリングを始めても、返ってくる答えは「特にない」か、あるいは「強いて言えば、もう少しリピート率が上がればいいけどね」といった程度の、緊急度の低い反応で終わってしまいます。
現在のコアプロダクト。この機能性もピカイチなのだが、それだけを訴求してセールスしているわけではない(提供:株式会社InsightX)
「聞く」営業から、「見せる」事業開発へ
アパレル企業で実店舗もECも経験してきたSales Managerの今江氏は、今のInsightXの注力領域を誰よりも深く知る人物だ。その口から、「まさにこの“現状維持バイアス”こそが最大の障壁になる」と厳しい口調で語られる。
今江「今のままでも十分だ」と思っている現場に、外部の人間が「AIを使って売上を増やしましょう」と提案しても、それはノイズにすらなり得ます。新しいツールの導入は、業務フローの変更工数や学習コスト、そして失敗した際のリスクを負わせることを意味します。
「検討します」という言葉の裏にあるのは「今の安定を壊すのが怖い」という不安の意思だということも、よくある話だと思います。
だからこそ、InsightXのアプローチは「課題を聞く」だけにとどまることはなく、より前のめりな対応をし続ける。その動きはまさに、顧客企業の内部に入り込み、新規事業を企画するような「事業開発(BizDev)」そのものだ。
佐竹こちらから、「あるべき姿(To-Be)」を、とにかくわかりやすい形で、データとロジックに基づいて真摯にお示しし続けること。これが、唯一の突破口だと思っています。
そのために、緻密な情報収集や分析、そしてデモ作成やプロトタイピングまで、厭わず尽くします。
今江商談フローのできるだけ早い段階で、可能な限り「動くモノ」を見せます。
「もし御社のサイトにInsightXが実装されたら、トップページはこう変わります」というデモ動画、あるいは実際に担当者のスマホで操作できるプロトタイプサイトまでつくり込むこともあります。言葉で1時間、機能の優位性を説明するよりも、手元のスマホ画面で「未来」を10秒見せる。それだけで、相手の反応度合いは劇的に変わるんです。
想像してみてほしい。会議室で営業担当者から分厚い資料を読み上げられるのと、「これ、御社の来年のサイトです」と、自社のロゴが入り、サクサク動く新しい画面を渡されるのとでは、どちらが相手の心を揺さぶるか。
今江実際の戦略やデータに基づいたデモ画面を見せれば、多くの人が「こういう動きが欲しかったんだよ」「この部分はどれくらいでつくれるものなの?」と身を乗り出してくれます。
佐竹その上で、相手の課題認識に合わせ、以下のような率直なやり取りをしていきます。
「御社の顧客データ資産と現在のブランド力があれば、こんなにも満足していただける体験が提供できるはずです!」
「データをフル活用できれば、年間売上高で数千万円レベルのアップサイド(上振れ余地)が実現できるはずです。それができていない現状は、機会損失というレベルではなく、経営資源の毀損とも言えるのではないですか?」
かなり強い言葉ですが、それくらい鮮烈なビジョンを示すことができなければ、現状維持の重力は振り切れません。
今江具体イメージとデータによって、目指すべき理想の未来を詳細に提示し、本音での対話を進めていく。そうすることで初めて、“現状維持バイアス”を乗り越え、課題認識のフレームが変わっていくんです。「たしかに、言われてみれば今のUIは使いにくいかもしれない」「競合他社に比べて、自分たちにはやるべきことがまだまだ残されているかもしれない」と。
大きな不満はなかったはずの現状に対し、課題感が明確化する。ゼロから議論をリードし、彼らに「変われそうだ、変わりたい」という動機を埋め込む。このプロセスこそが、我々のエンタープライズセールスにおいて重要な第一歩目なんです。
「受注前でもフルコミット」という経済合理性
リスクを取った者だけが、リスペクトを勝ち取る
しかし、ここには経営的な問いも残る。多くの場合、顧客ごとにカスタマイズされたデモの作成は、受注後の「要件定義フェーズ」で行うものだ。まだ契約もしておらず、1円の売上になるかもわからない相手に対して、小さくない対応リソースを投下することは、従来の営業マネジメントの常識で言えば「コスト意識の欠如」と断罪されることもあるだろう。
だが、佐竹氏はこの非合理に見える行動を、明確な経済合理性に基づいて肯定する。
佐竹なぜここまでやるのか。それは、「利他」というバリューでも表現しているように、エンタープライズ企業との信頼構築において「Give First(ギブから始める)」こそが、顧客獲得コスト(CAC)を下げる最短距離だと考えているからです。
短期的な見返りは求めず、まず相手を圧倒するレベルのアウトプットを提供する。「契約してくれるなら動きます」というベンダーは山ほどいますが、「契約前ですが、御社の未来をこれだけ真剣に考え、形にしてきました」というベンダーは稀有です。その姿勢自体が、我々の本気度を証明する最強のプレゼンテーションになります。
大企業がベンダー選定で最も恐れるのは「失敗」である。言葉巧みに契約したが、納品されたものが期待外れだった……そんなリスクを、InsightXでも強く意識している。
佐竹やや打算的な言い方にもなりますが……先にリスクを取ってリソースを投じることで、競合他社が入り込めない独占的な信頼関係を築くことだってできます。結果として、コンペティションになったとしても、価格競争に巻き込まれ過ぎず、提案の質で選ばれる確率も高まるはず。これが、私たちの目指す在り方なんです。
机上の空論を許さない、「現場解像度」への執着
また、提案する「理想の未来」は、現場の実態を無視した机上の空論になりがちという点についても、この二人は強く意識し、先回りした対応を進めてきた。
たとえ、戦略としては正しくても、既存オペレーションに負荷を強いるようなシステムは、現場を疲弊させる。かつてアパレル企業で実店舗の店長、そしてZOZO TOWNや自社ECの責任者も務めるなど、現場の最前線に立ち続けてきた今江氏は、その「痛み」を誰よりも理解している。
今江私自身、EC担当時代がキャリアの中で最も葛藤を抱えた時期でした。本部が「これは革新的だ」と信じて導入した高機能なツールが、現場メンバーの足かせになるというのは“あるある”です。
使いこなせない機能、増え続ける入力作業、複雑化する管理画面。私自身を含め、現場スタッフの疲弊感を何度も味わいました。特にEC責任者の時代には、板挟みとなってうまく立ち回れないという苦しみもありました。同じことを、今のお客様にはできるだけ感じてほしくないんです。
だからこそ、InsightXの提案は「現場での実装可能性」にも執着する。
今江提案をつくる際、私は常に「これはあの時のEC担当者でも使えるか?」「忙しいEC責任者と現場担当者が皆、既存業務の合間にチェックできるか?」を何度も自問自答しています。彼らの裏側にある苦労が手に取るようにわかるからこそ、「現場が回る未来」しか提案したくない。売上のために、現場を不幸にする提案は絶対にしない。これは私の譲れない矜持です。
佐竹氏もまた、この「現場視点」こそがエンタープライズセールスの成否を分けると同意する。
佐竹LTVを最大化するということは、クライアント企業の担当者自身が成功し、その先のエンドユーザーが幸福になることと同義です。「ツールを売って終わり」ではなく、導入後の事業成長にコミットし続けるパートナーとして振る舞う。契約前の段階から、我々は「事業開発」としての責任を負い始めているのです。
LLMが「泥臭いお節介」をスケーラブルにする
なお、先行投資戦略のように伝えてきたが、決して工数を度外視しているわけではなく、むしろ持続可能なモデルにするための試行錯誤も力強く進めている。かつては数日を要していたデモ画面やプロトタイプの作成が、今では生成AI(LLM)を駆使することで、数十分〜数時間で作成可能になりつつあるのだという。
佐竹は、その具体的なプロセスの一端を明かす。
佐竹もちろん、クライアントの「中期経営計画」や「IR資料(投資家向け広報)」のような公開情報にも目を通しますし、整理や起案に使うLLMにも読み込ませています。これらは重要な大前提になります。
ですが意外と、ECの現場の皆様はもちろんのこと、経営層の皆様も、最も気にしているのが「エンドユーザーの体験が、どう変わるのか」なんです。
社外の立場から徹底的に、エンドユーザーの視点に立った疑問を提示しながら、議論を重ねていく。その過程で見えてきたリアルな課題に対する打ち手を、LLMも活用して広く発散的に考えながら、個別に収束させて最適な提案を準備していくんです。
セールスの早い段階から、具体的な提案とデモをつくり、お伝えして議論しては、さらにブラッシュアップしていく。このサイクルを回す中で、エンドユーザーの体験の変化を色濃く感じ取ってもらえるよう目指しているんです。
単に、膨大な情報を整理するというだけではない。それを大前提として捉えつつ、具体的な提案・デモを何度も見ながら議論していくことで、意思決定に向けた動きを進めようとしているのだ。
佐竹生成AIによって、提案準備コストは劇的に下がりました。だからこそ、出し惜しみはしません。InsightX全社で「AI武装」が進んでいるからこそできる戦い方です。
営業担当者がエンジニアの手を借りずに、自らコードまで準備し、デモをつくる。この「セールスエンジニアリング」の能力こそが、これからの営業に求められる必須スキルにもなると思っています。
いくら手間をかけたとしても、失注のリスクは常にある。しかし、今江氏はその徒労さえも、長期的な資産になると捉えているのだという。
今江「10回のうち1回決まるかどうか」というのが営業の“あるある”とされる中、感覚的には5割くらいで決まるというほどの営業ができています。
ただし、手ごたえも感じる一方、100%受注するんだというところを目指し続けたい。10回の提案のうち5回は意味がないというわけではなく、それらも全力で取り組むことで、より高い受注率を達成でき、その結果としてより多くのエンドユーザーの体験に変革をもたらすことができるはずなのだと思うんです。
たとえ、全力でチャレンジしてダメだったなら、それは単純にタイミングが合わなかっただけ。「ここまでやってくれた人たち」という記憶は相手に深く刻まれていくこともありますから、数年後に「あのときの話なんだけど……」と連絡が来ることも十分にあり得ます。
そうした未来も含めて、我々は、今月や来月という時間軸での受注ではなく、数年スパンでのLTVをセールスとして追いかけようとしています。
リスクを取った者だけが、リスペクトを勝ち取れる。彼らは商談の場で、商品を売っているのではない。「我々は、御社の未来にコミットする覚悟がある」という信頼を売っているようなものだとも言えるだろう。
エンプラセールスとは「合意形成のアーキテクト」である
組織図の裏側にある「見えない相関図」を描け
すでにさまざまな試行錯誤を見てきたようだが、エンタープライズからの受注に向けた工夫にはまだまだ多くの難しさがある。
たとえ、デモによって担当者の心を掴み、信頼の端緒を開いたとしても、エンタープライズセールスにおいてそれは「入り口」に過ぎない。その先には、巨大組織特有の「組織の壁」が何度も立ちはだかるものだからだ。
大企業において、一人の担当者が「やりたい」と言っただけでシステム導入が決まることは、構造上あり得ない。ECサイトのUI/UXを管理・改善するチーム、EC全体のP/L責任を負う役員クラス、全社的にITツール投資・導入を管掌するシステム部門、ブランドの世界観や訴求を考えるマーケティング担当、全社最適(事業戦略やOMO戦略等)を考える経営層など、社内だけでもさまざまなステークホルダーが存在する。加えて、EC運営を支援する外部ベンダーの意志も重要だ。
それぞれが異なるKPIと「正義」を持っている。
佐竹例えば、EC担当者が「売上が上がるから導入したい」と熱望しても、システム部門は「既存システムとの間でうまく連携できるかわからない」という指摘をします。ブランドのマーケティング担当者は「AIによるレコメンドがブランドの世界観を損なってしまうリスクを確認したい」と反応し、経営層は「ROIはどうなのか?」と問いかけるでしょう。
こうかいつまんで言葉にすると、冷たく見えてしまいますが、この誰にも悪意などありません。全員が、自分の役割において会社を守ろうとしている。この構造を理解し、一緒に改善を考えることが、エンタープライズセールスの本質だと思うんです。
エンタープライズセールスの経験が浅いと、こうした構造にぶつかった途端に心が折れてしまうかもしれない。そうして「御社でのご調整をお願いします」と丸投げするようなコミュニケーションとなり、結果として「稟議を通せませんでした」「他部署の反対が強く、検討が頓挫しました」という連絡を受けて終わる。
だが、InsightXはもちろん、この複雑なパズルを解くことを最初から織り込み済みで挑んでいる。
佐竹誰と誰がどのように決定するのか、どの部署から懸念が示され得るのか、その懸念をどうすれば突破できるのか……。そんな「組織の力学相関図に基づく提案進行フロー」を、徹底的に解像度高く描き出します。
ロジックで頷かせ、エモーションで動かす
ここで、コンサルタント出身の佐竹氏と、現場出身の今江氏という「異能のタッグ」が真価を発揮してきたという。彼らは、相手の役職や関心に合わせて、伝える言葉を瞬時に切り替えるのだ。
佐竹私は主に、経営層への「翻訳」を担当しますが、あえて数字の話は後回しにします。彼らが求めているのはROIだけではありません。それよりもむしろ、「この投資が、ブランドの10年後にどう意味を持つか」という戦略的ストーリーこそ、求めていることなんです。
ECが、「利益率は高いが、体験価値が限定的な点から、リアル店舗の『下位互換』」という位置付けになってしまっている企業もまだ、実際にはあります。これからの成長戦略にECをどう位置付けるか、悩んでいる経営層も多いんです。そこに、私たちは「ECこそが、ブランドを好きになってもらう『起点(センターピン)』になるべきだ」と提言します。
「店舗では出会えない商品と出会える。店舗以上に文脈が伝わる。InsightXを導入して、ECを単なる『販売チャネル』から、顧客ロイヤルティを最も高く醸成できる『ブランディング戦略のメイン施策』へと変革しませんか?」
こう問いかけることで、プロジェクトを単なるツール導入から、全社的な顧客体験の変革へと昇華させるんです。
佐竹氏が語ることで、導入プロジェクトは「現場の要望」から「経営課題の解決策」へと格上げされる。一方、今江氏は「現場」にフォーカスし続ける。
今江私は、店舗やECの実務担当者、あるいはマーケ担当の方々への「翻訳」を担います。彼らには、経営指標へのインパクトよりも、「日々の業務がどうなるか」「お客様がどう喜ぶか」を具体的に伝え続けることが重要です。
「この機能が入れば、お客様は迷わずに商品にたどり着けます」「スタッフのこの作業時間が半分になります」と、手触り感のある現場の言葉を、感情を載せて伝え続けるんです。
ロジックだけでは、人は動かない。感情だけでは、組織は動かない。その両輪を、二人の役割分担をうまく使って回していく。
佐竹何よりも重要なのが、「焦ってクロージングしないこと」だと思うんです。
担当者がどれだけ乗り気でも、システム部門の懸念が払拭できていなければ、導入後に必ずトラブルになります。「とりあえず契約しましょう」は、我々にとって敗北です。関係者全員の懸念を一つひとつ丁寧に潰し、全員が「これならいける」と腹落ちした状態をつくる。
遠回りに見えますが、この「合意形成のプロセス」を設計することこそが、CX改善の仕組みを実現するための、最も確実な近道なんです。
「論理の鋭さ」と「現場の皮膚感覚」
違和感を言語化する「野性の嗅覚」への信頼
経営層にはロジカル面から、現場には感情面から。いくつもの壁を役割分担で乗り越えていくこの二人。なぜここまで阿吽の呼吸で背中を預け合えるのか。その根底には、互いの「異能」に対するリスペクトが存在するという。
佐竹氏は、今江氏が持つ「非言語情報を読み解く力」に、コンサルタント時代にはなかなか出会うことのなかった衝撃を受けていると率直に語る。
佐竹正直、今江の現場嗅覚には全く勝てません。商談中、「あ、今、お客様の目の色が少し変わったな」とか「この言葉はロジックとしては正しいけど、感情的には刺さっていないな」という微細な変化を読み取る解像度が、桁違いに高いんです。
商談後に「あの発言、先方の部長さんは実は納得してないと思います」と指摘されることがよくあります。後で実際に聞いて確認すると、本当にその通りなんです。
机上の戦略論だけでは絶対に身につかない、現場で何万人もの顧客と対峙してきた人間だけが持つ、野性的とも表現できそうな対人能力というわけだ。
佐竹私がどんなに綺麗なロジックを積み上げても、彼が「現場の皮膚感覚」でNOと言えば、その戦略は見直すことにしています。それくらい信頼しています。
一方の今江氏もまた、佐竹氏の持つ「構造化する力」に全幅の信頼を置いている。
今江私は感覚派なので、現場で拾ってきた情報や違和感を「なんとなくここがボトルネックな気がする」「この担当者はここを気にしているはずだ」といった曖昧な形でしか表現できないことがあります。でも、それを佐竹に投げると、翌日にはそれが完璧に構造化されて返ってくるんです。
言語化できないモヤモヤとした感覚が、誰もが納得するロジックへと昇華されている。カオスな情報を一瞬で武器に変えてくれる戦略眼とアウトプット能力。
今江この変換スピードと精度には、いつも背筋が伸びる思いです。彼が論理的にまとめてくれるおかげて、自分の肌感覚が合っていると自信が持てる。だから私は、迷いなく現場のリアルをぶつけることができるんです。
全ては「エンドユーザーの幸せ」という北極星のために
彼らは、単に「仲が良い」わけではない。互いに「自分にはない武器」を持っていることを認め、それを戦略的に利用し合っている。
その背景には、深い次元での共通目的があるという。それは先ほども触れた同社のバリュー「利他」でも表される、「目先の売上よりも、顧客の成功とエンドユーザーの幸せを優先すること」だ。
佐竹営業として受注数や受注額といった数字だけを追うのなら、「今月中に契約を巻かせてください」と無理強いするようなコミュニケーションもすべき場面が生まれるでしょう。しかし、それは私たちのありたい姿と反します。
InsightXでは、「顧客が成功し、その先のエンドユーザーが幸せになること」を最上位のKPIのようなものとして置いています。受注や売上は、その結果としてついてくるものです。
今江だから、私たち二人がHow(手段)の議論で意見がぶつかることはあっても、向かう目的の部分はブレないので、対立するようなことはありません。
「それが本当にクライアント企業の成功につながるのか?」「これがエンドユーザーの幸せを生むのか?」という問いに立ち返ることで、必ず一致する考えにたどり着ける。この信頼を互いに感じられているんです。
「売る人」から、「事業を創る人」へ
AIが奪うのは「仕事」ではなく「言い訳」
AIの進化により、セールスの役割は不可逆的に変化している。市場調査、リスト作成、日程調整、そして提案資料の叩き台づくり。かつて若手が時間を費やし、成長の足がかりとしてきた「足で稼ぐ業務」や「定型業務」は、今やAIが瞬時に代替する。
これは、人間が「楽になる」ことを意味しない。むしろ逆だ。 誰でもできる作業が消滅した結果、残されたのは、AIには決して模倣できない「高度な意思決定」や「人間関係の構築」という、最も苦しく、かつ付加価値の高い業務領域だけだ。
「資料作成に時間がかかって……」「リサーチが追いつかなくて……」。そんな言い訳は、もう一切通用しない。 InsightXが求めているのは、テクノロジーで武装し、浮いたリソースの全てを「顧客の未来を構想すること」に注ぎ込めるプロフェッショナルである。
佐竹我々は、人数に頼る拡大戦略はとりません。よくある「営業担当を大量採用し、KPI管理で行動量を最大化させる」というモデルは、我々が挑むエンタープライズの継続的な課題解決には馴染まないからです。
手足を動かすことも必要ですが、それだけでは複雑な組織力学や経営課題というパズルは解けません。必要なのは、常に自律的に動き、顧客の経営層をリスペクトしながらも対等に渡り合い、現場とは感情的なつながりを構築できるような、人間的に強い「個」が集まるチームです。
今や、営業にも「行動量でカバーする」という逃げ道はありません。一人ひとりが「ミニ・経営者」として、自分の頭で仮説を立て、検証し、結果責任を負う。高いスキルと覚悟を持った「少数精鋭」とは、聞こえはいいですが、裏を返せば「誰かの後ろに隠れることができない」という極めてシビアな環境でもあると思っています。
正解のない問いに、仮説を立て続ける挑戦
求められる基準は高い。しかし、そこにあるのは孤独な戦いではない。 「IQの佐竹、EQの今江」という強力なタッグが存在するように、InsightXには、互いの背中を預け合い、異能をリスペクトし合う文化が根付いている。
今江氏は、自身たちがつくり上げてきたスタイルさえも「まだ過程に過ぎない」と語り、新たな仲間に対して、従業員ではなく「共創者」としての参加を呼びかける。
今江今のInsightXの営業スタイルは、決して完成形ではありません。毎日が実験であり、私たち自身も日々失敗し、仮説を修正しています。「こうすれば売れる」というマニュアルも正攻法もない。
だからこそ、面白い。そして、だからこそ、新しい仲間の力が必要なんです。
私と佐竹だけでは見えていない景色が、必ずあるはずです。私たちが持っていない「第3、第4の武器」を持った方が加わることで、このチームはさらに進化できる。既存の型にはまる人ではなく、型を壊し、拡張してくれる人に来てほしいですね。
ここには、あなたの挑戦を止める上司もいなければ、無意味な社内政治もない。あるのは、広大な市場機会と、背中を預けられる信頼できる仲間だけ。まだ誰も正解を知らない世界で、顧客と共に未来をつくり出し、業界のスタンダードを自分たちの手で塗り替えていく──。
そんなヒリヒリするような最前線で、セールスという手段から、世界を変えていく一歩目を生み出す。そんな挑戦がここにはある。
DS・FDE・エンプラセールスなどの採用に注力中、詳しくはこちらから
こちらの記事は2025年12月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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藤田 慎一郎
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