「競争優位を得たくば、顧客の商売をつくるべし」──特殊冷凍で“食”を変革するデイブレイク、グローバル4,000億円市場に挑む事業開発とは
Sponsoredわずか2年で業界歴20〜30年の競合たちを追い抜くスタートアップがある。2023年7月に20億円の資金調達を実施し、特殊冷凍テクノロジーを駆使して食の可能性を広げるデイブレイクだ。
故・出井 伸之氏(元ソニー会長)は同社の特別顧問を務め、「デイブレイクが特殊冷凍™テクノロジーを用いて切り込む事業には、他にはない独自性と勢いを感じる」と称賛していた。
デイブレイクの経営者であり、“食品流通の革命児”と呼ばれる木下 昌之氏は、3世代に渡って続く老舗冷凍機会社の3代目でありながら、家業の継承ではなく自らスタートアップを始めるといったユニークな挑戦者。
取材を終えて思うのは、「なぜ、これだけのスタートアップがこれまで表に出てこなかったのか」ということ。そこには業界を再編する秀逸な事業戦略と、その変革を強く推し進める実力者揃いの組織戦略があった。
食品流通市場の中でも、「特殊冷凍」という伝統的な領域に革命を起こすデイブレイク。その類まれな事業経営によって短期間で市場をリードする存在へと進化した。ぜひ、本記事ではその手腕に注目してもらいたい。
- TEXT BY YUKO YAMADA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
東南アジアの「マンゴスチン」が、
食品流通革命の引き金に
木下デイブレイク創業のきっかけは、「マンゴスチン」です。
10年以上前、東南アジアの路面店で買ったマンゴスチンを食べたとき、その鮮度とみずみずしさに感動を覚えました。「こんなに美味しいものがあるなら…冷凍して持って帰りたいな」と。しかし、一般的な冷凍保存では味が劣化してしまうため、「鮮度を保ったまま冷凍保存することができたら、イノベーションだよな」と思ったんです。
と同時に、ネガティブな現実も目の当たりにしました。なんと、これだけ美味しい果物にも関わらず、売れ残りがあると目の前でどんどん廃棄されていくんです。「勿体ないな…」と。
また、その路面店を営む人たちの風貌を見ると、私にはとても裕福には見えなかった。「こんな価値あるものを捨ててしまうなんて…。どうにかしてこの果物の鮮度を保ったまま、より多くの人に届けたい。そして、それを提供してくれる人たちに対価で還元したい」。そんな原体験が今のデイブレイクを形づくっているんです。
その後2013年、木下氏は特殊冷凍に対し変革をもたらすべく、デイブレイクを創業する。
特殊冷凍とは、主に飲食業や食品流通業を営む事業者へのソリューションとして用いられる技術であり、一般家庭では実現し得ない高品質な冷凍保存を可能にする。こうした冷凍技術自体は遡れば100年以上前から存在はしているものの、昨今のフードロスの削減、環境問題への対策、人手不足の解消に始まり、持続可能な開発目標(SDGs)にも好影響を与えるものとして、現在、世界各国で注目を浴びている技術であり、市場なのだ。
この特殊冷凍市場の中で、デイブレイクは代理店販売や比較サイトの運営などでビジネスをスタート。そして2021年にはそれまでの8年間で培ったノウハウや知見、業界ネットワークを駆使し、特殊冷凍機『アートロックフリーザー』の開発と製造に着手し、製品化に成功する。
これによって、従来の手法では冷凍が難しい食材も、高品質なまま冷凍保存することを可能にした。加えて、上述した世界的な追い風も受け、デイブレイクは日本の特殊冷凍市場(市場規模は200億円、潜在的には5,000億円規模とも言われる*)で一躍トップクラスのシェアを獲得することとなったのだ。
木下この2年間で『アートロックフリーザー』の受注社数は500社を突破し、来期は同市場で20%を超えるシェアを達成する見込みです。
また、特殊冷凍に対するニーズは世界共通のため、この事業はグローバル展開のポテンシャルも秘めています。グローバルでの特殊冷凍市場の規模は約4,000億円ほどとされていますが、そのうち約25%を獲得することができれば、デイブレイクは売上高1,000億円の企業へと成長することができるんです。
この特殊冷凍という技術は、何も近年生まれたわけではない。約20年前から中小企業メーカーらがその技術開発に取り組んではいたが、当時はまだこのニーズが顕在化しておらず、市場としては成立していなかった。上述の企業たちもその技術をどう世に広めていくかといったマーケティング・セールスに対して最適解を見出せず、この技術を市場に普及させるには至らなかったのだ。
そこに対しデイブレイクは、デジタルマーケティングやセールスの力で少しずつ、少しずつ市場のニーズを掘り起こし、顕在化させていった。苦節8年──。顧客がどんな課題を抱え、どうすればその課題を解決できるのかを、一つ一つ検証し、答えを積み上げていった。その努力の結晶が、上述の『アートロックフリーザー』なのである。
「ものづくり」の枠を遥かに超えた、
「商売をつくる」スタートアップ
今までの市場にはない画期的なプロダクトであり、ローンチからわずか2年で市場を席巻するデイブレイク。しかし、同社が急成長を遂げている理由はプロダクトの力だけではない。以下の3つの価値提供こそが、デイブレイクを市場のトップランナーに押し上げた強みなのだ。
デイブレイクが生み出す3つの価値
- 「特殊冷凍テクノロジーのプロダクト」
- 「特殊冷凍コンサルティング」
- 「特殊冷凍フードプラットフォーム」
特殊冷凍機『アートロックフリーザー』の提供による、高品質冷凍食材の作り手の増加
CS型コンサルティングとコミュニティ運営により冷凍事業者のエンゲージメントを向上し、高品質冷凍ビジネスの立ち上げを支援
特殊冷凍を用いた食品流通のプラットフォームにて商品化と販路開拓を支援
木下『アートロックフリーザー』は、「誰でも簡単に」高品質な冷凍食材をつくり出すことができるよう設計されています。他社製品との違いは、冷凍技術はもちろんのこと、使い手を選ばない圧倒的な使いやすさにあります。
これは特殊冷凍機に限らない話ですが、どれだけ高機能な製品を提供してもお客様が使いこなせなかったら宝の持ち腐れなんです。『アートロックフリーザー』を開発するまでの8年間、多くの食品事業者様のお話をうかがって、色々な悩みにふれてきました。そこで感じたことは、9割のユーザーは、導入している冷凍機の機能を最大限に活用しきれていないということです。
木下また、多くの冷凍機メーカーは「ものづくり」に軸足を置いているため、直販よりも代理店セールスに頼る傾向がある。つまり、お客様の活用実態を解像度高く理解することが構造的に難しい状態になっているんです。対するデイブレイクはと言うと、お客様が特殊冷凍機を使いこなし、良い食材をエンドユーザーに提供できるようになるまで伴走を続けます。
例えば、「特殊冷凍コンサルティング」では『アートロックフリーザー』を購入してくださったお客様同士でノウハウやナレッジをシェアできるコミュニティを設けたり、このプロダクトを用いた商売の仕方、事業開発の支援を行ったりしています。
そして「特殊冷凍フードプラットフォーム」では、お客様と共同で高品質な冷凍食材、冷凍食品を開発して販売する。ここまでお客様にコミットするという意味では、デイブレイクは「ものづくり」の枠をはるかに超えてしまっている企業なのかもしれませんね(笑)。
明かされた通り、デイブレイクは単なる特殊冷凍機のメーカーではない。まるで読者の馴染み深いSaaSスタートアップのように、プロダクトを提供しながら顧客の課題解決に伴走し、顧客と共に事業成長に貢献していくスタイルを取っているのだ。
Freezing as a Service®(Faas®)の力で、
食品業界の低利益率を解消
木下お客様に伴走して商売の方法をお伝えしている事例を挙げると、とある鰻屋さんのプロジェクトがあります。このお店は熊本県内でトップクラスの人気を誇っていましたが、商圏が限定されていたため、ある時から売上が伸び悩んでいました。
そこで、『アートロックフリーザー』でうな重を冷凍し、自販機を用いて商圏外で販売する手段を講じたんです。結果、自販機で購入してその味を気に入った人が店舗まで食べに来るといった相乗効果も得られ、売上拡大に貢献することができました。ちなみに、デイブレイクの伴走はここで終わらず、まだまだ続きますよ──。
店舗ビジネスで売り上げが順調に伸びてくると、次に狙うのは多店舗展開。しかし、その際に付き纏うのは人手不足の問題だ。そこでデイブレイクは、『アートロックフリーザー』を活用しながら、大幅な省人化を可能にする画期的な仕組みを提供する。
木下この鰻屋さんの2店舗目では、アルバイトが蒸し器で数分温めるだけで、焼きたて同等の鰻を提供できるようにしました。仕掛けとしては、職人が焼き上げた鰻を事前に大量に冷凍保存しておき、新店舗では加熱専用のセントラルキッチンで温めるだけで提供できるというものです。
他にも、駐車場の空きスペースを活用したコンテナ型のテイクアウト専門店もオープンさせています。こうした店舗運営はアルバイトだけで行うことができ、価格を下げて消費者に提供することができる。ゆくゆくはフランチャイズで県を跨いだ店舗展開も狙っていけますよね。
まさに事業開発最前線──。「売って終わり」などどこ吹く風か、デイブレイクは特殊冷凍機を起点とした一連のソリューション提供を「Freezing as a Service®(Faas®)」と称し、顧客のビジネスをグロースさせていく。しかし、なぜ同社はそこまでして顧客に寄り添うのだろうか。その理由は、顧客のビジネスモデルがデイブレイクに集積されることで、自社に「商売のつくり方の宝庫」ができると考えているからだ。
木下食にまつわる様々な業態のお客様と共に、『アートロックフリーザー』を活用した冷凍ビジネスをつくっていくことで、無限に「ビジネスの勝ち筋」が積み上がっていくんです。これをパターン化してノウハウ提供することで、多くのお客様が再現性高く新たなビジネスをつくっていくことができる。当然、我々としてもコンサルティングビジネスとして高利益な事業を持つことができるんです。
その過程でお客様のビジネスモデルにも深く入り込んでいくため、どの現場オペレーションをいじればどうお店の売上や利益に跳ね返ってくるのかも精緻に把握しています。そうすると、我々の方からお客様の利益率を向上させるビジネスモデルの提案ができ、結果として食品業界に蔓延る低利益率の解消にも貢献できると確信しています。
このように、お客様には「商売の仕方」を提供しているので、もはや冷凍機自体で差別化しようなどとは思っていません。デイブレイクは物を売っているのではなく、商売をつくっているんです。
「デイブレイクファミリー会」で
顧客間の交流を促し、市場を活性化
デイブレイクは、特殊冷凍機を活用しながら顧客のビジネスを拡張させるコンサルティングに加え、顧客が事例やアイデアを共有し合えるコミュニティ運営にも力を入れている。
木下食品業界の事業者の方々は、他社との差別化を行うため、基本的には横の繋がりを持たない傾向にあります。それはそうですよね、自社の技術やノウハウを積極的に開示するメリットはありませんから。しかし、お客様の話をよくよく聞くと、「自社で感じている課題に対し、他社はどのように取り組んでいるのだろうか…」と情報を求めている方々が多いことに気づきます。
そこで私たちは、『アートロックフリーザー』を購入してくださったお客様同士が繋がれる、『デイブレイクファミリー会』というコミュニティプラットフォームを立ち上げました。この場では、お客様同士が冷凍ビジネスに関する課題やナレッジを共有し合い、相互に技術向上やビジネスの拡張ができるような機会を提供しています。もちろん、デイブレイクからも成功事例や研究開発のナレッジなどは惜しみなく発信します。結果として、自社の課題解決はもちろん、オープンイノベーションの推進にも繋がるなど、市場の活性化にも貢献できていると感じています。
勘の良い読者ならお気づきかと思うが、ここにデイブレイクの事業モデルの秀逸さがある。特殊冷凍機の販売で利益を出し、それを活用したビジネスコンサルティングで更なる利益を生む。加えて、コミュニティプラットフォームで顧客間のビジネスを活性化させることで、「もっと大量に『アートロックフリーザー』を導入したい」とアップセルの機会を生み出す。このサイクル(下図参照)を半永久的に生み出し続けていけることが、デイブレイクの最大の武器と言えるのだ。
木下 もちろん商売としての戦略ではありますが、何より、みんなが笑顔になれるコミュニティって良いじゃないですか。デイブレイクはビジョンとして「温かい連鎖が生まれる社会を実現する」と掲げています。私たちを介してお客様のビジネスが成長し、先ほどお伝えしたような低利益体質から脱却していくことで、多くの笑顔を生み出していきたいんです。
デイブレイクの優れた事業モデルや、木下氏の温かくも熱い想いを聞くに、「確かにデイブレイクは業界を変革し得るスタートアップだ」と感じてきたのではないだろうか。しかし、こうしたレガシーが残る業界に変革をもたらすことはそうそう容易ではない。ここ2年の急速な成長の裏には、地道な努力の積み重ねがあった──。
2年で市場のトップランナーに立てた裏には、
苦節8年で積み上げた「信頼」あり
木下「新参者が出てきて何をするかと思えば、『メーカー同士を比較する』だって?そんなの言語道断だ!」と、食品事業者様たちから厳しいお叱りをいただきました…(笑)。
2013年の創業当初、木下氏は他社メーカーの代理販売を行うことからスタートした。デイブレイクの立ち上げメンバーは、同社の共同創業者であり、現在は取締役CFOを務める守下氏ただ一人。
当然ながら2人だけではリソースが限られるため、全国を回るセールス活動は非効率だと判断。そこで、デジタルを活用したセールス手法に絞ってビジネスを進めていった。
木下わかりやすく言うと、何十社もの保険商品を取り扱う『ほけんの窓口』というサービスがありますよね?これと同じビジネスモデルで、食品事業者様が急速冷凍機を比較・検討できる『春夏秋凍』というメディアを立ち上げました。
今でこそ、購買にあたって他社製品と比較することは当たり前ですが、当時の特殊冷凍市場ではそうした風潮はありませんでした。となると、購買側は各社の機能やスペックをフラットに見ながら比較検討することができない、半ばブラックボックス化された状態にあったんです。
それだけに、比較サイトへの掲載交渉は困難を極めた。しかし、ここで木下氏の持ち味であるセールス力が突破の鍵となるのだ。
木下『春夏秋凍』の運営とは別に、元々ある特殊冷凍機メーカーの代理店もしていたんですが、この販売支援を比較サイト上でも行うことで、1年間で売上倍増という結果を出すことができたんです。
それこそ毎日のように送客ができており、業界関係者の間では「デイブレイクという、Webを使った支援会社がいるらしいぞ…?」と噂になっていたようです。そこで、この実績を引っ提げて再び特殊冷凍機メーカー各社にアプローチしていきました。
「デイブレイクはお客様と一緒に特殊冷凍市場を大きく伸ばすことができます」「もし社長が、自社の製品に確固たる自信があると思うのであれば、堂々とデイブレクの比較サイト上で勝負してください」「それが嫌なのであれば、市場も御社の状況も変わらないですよ」と──。今思えば、メチャクチャ生意気ですよね(笑)。
こうした熱意ある交渉によって、「君たちがそこまで言うのなら、本当にこの市場が大きくなっていくのなら、やってみようか…」と、各社の経営陣は徐々に木下氏らの提案を受け入れ始める。
その結果、木下氏らの狙い通り比較サイトは更なる注目を集め、各社への送客も順調に増加していった。8年間に及ぶこうした取り組みを続けていくことで、デイブレイクは業界において実績や信頼ある企業として認められるようになっていったのだ。と同時に、同社の熱意ある挑戦がなければ、そもそも今日の特殊冷凍市場はなかったと言っても過言ではないだろう。
「信頼は対価」──。
木下氏の仕事観を形成する父からの教え
「私なんて、人よりも少しだけ喋りやセールスが得意なだけですよ…(笑)」と謙遜する木下氏だが、ここまでのデイブレイクの沿革を聞けばその手腕は本物であることは自明。して、その卓越したセールス力はどこで身につけてきたのだろうか。
木下セールスに関して、特に誰から教わったというものはありません。その代わり、「顧客に対して最善の提案とは何か」「どうしたら自分の提案を選んでもらえるのか」ということを常に思考し続けてきました。
このスタンスを取るに至ったのは、「信頼は対価だ」という父の教えが影響しています。私の家系は80年近く続く老舗冷凍機会社を営んでいまして、私は3代目として生まれ、家業を継ぐために施工管理士として父の会社に勤めていました。
そう聞くと真っ当な半生に見えるかもしれませんが、恥ずかしながら、私は10代の頃は本当にどうしようもない人生を送っていまして(笑)。そんな私を見かねた父は、「信頼を得るための仕事の仕方や振る舞い方が、結果的に対価として戻ってくるんだ」と教えてくれたんです。
その言葉が、職人時代から今になってもずっと心に残っています。例えばですが、施工管理の職人は手元の仕事に集中するあまり、足元に用具を散らかしてしまう人が多いんですね。すると、次の作業に必要な用具をパッと見つけて作業に入ることができなくなる。つまり、生産性に影響を及ぼすということです。
一方で、自分の仕事に用いる用具やその順序などを理解して整理できている人は、生産性が高い。これって、どんな仕事においても言えることですよね。仕事はシンプル、キレイ、セクシーであることを大事にしていきたいです。
今のデイブレイクには、COOの下村氏を始めキーエンス出身のメンバーが多く在籍しているとのことだが、キーエンスと言えば「徹底的に整理し、仕組み化する」といったイメージがある。そのため、同社出身のメンバーたちからは「木下の考え方はキーエンスのセールスに通じるものがある」と言われたことも度々あるそうだ。
グローバル規模で、
「強い組織で、作り手から食べ手までのより良い未来を創造する」
今回の取材を通して、業界の革命に挑むデイブレイクの優れたビジネスモデルや、その革命を主導する木下氏の人柄や魅力などが伝わってきた。そんな同社は2023年7月にシリーズBラウンドで総額20億円の資金調達を実施。特殊冷凍という極めて専門性の高い領域に挑むデイブレイクに対し、名だたるスタートアップを多数支援している投資家陣がこれだけ集結するというのだから、同社に対する期待値は言うまでもないだろう。今回、リード投資家として名乗りをあげたモバイル・インターネットキャピタルからは、「(投資をする)1年半以上前から注目していた」とのコメントも寄せられているほどだ。
これからますます事業を加速させていくことが予想されるデイブレイクであるが、木下氏に今後の目論見を聞くと、「グローバルに戦える仲間がほしい」との答えが返ってきた。
木下今後の展望としては、「国内市場の獲得」「グローバル進出を目指すプロフェッショナル人材の採用」「フード事業の展開」の3つを掲げています。
1つ目は、国内市場の獲得です。現在の特殊冷凍市場においては、デイブレイクのビジネスモデルやマーケティング戦略を模倣する企業も出てきています。その結果、従来よりもお客様の獲得コストが高騰し、セールスの機会損失にも繋がっています。この状況を打破するために、デイブレイクの資本投資を増やし、顧客獲得において他の追従を許さない強固な基盤をつくっていきます。
2つ目は、『アートロックフリーザー』のグローバル展開に伴い、プロフェッショナルな人材採用を強化します。特殊冷凍機に限らず、日本はものづくりのレベルが高く、海外ではメイドインジャパンの品質が高く評価されていますよね。
従来、日本製の特殊冷凍機は海外製品と比べて高額でしたが、今は円安の影響で価格に逆転現象が起きている。つまり、海外事業者が日本製の特殊冷凍機をお得に購入できる状況にあるんです。この機会をチャンスと捉え、日本国内のみならず、グローバル市場でも戦える優秀な人材を獲得していきます。
グローバル展開に向けた人材獲得は確実に進んでおり、既に6か国語を操るメンバーや、三菱商事を飛び出してデイブレイクのポテンシャルに懸けようというメンバーなど、頼もしい仲間たちが次々と参画しているとのこと。
木下3つ目は、フード事業の展開です。特殊冷凍機と同様に、海外市場では日本食への需要が高まっています。元ソニーの会長でデイブレイクの特別顧問でもあった故・出井 伸之さんは常々、『もう一度海外から羨望される国を』をテーマに活動する中で、(1)地方の資産を見直し、(2)高度な技術でまだアジアでもリードできる産業に目を向ける『二重戦略』を提唱しており、「その先にたどり着いたのが『食』だった」──、と述べていました。
また、例えば日本では100円で売れている商品が世界市場では450円で販売されると、そこに大きな利益が生まれます。これにより、先に挙げた、日本の食品業界が抱える低利益率という課題を解決し、同時に海外の人たちに美味しい日本食を届けることができます。デイブレイクでは既にフード事業でも着実に売上を伸ばしてきており、今後はさらにこの事業を強化をしていきたいと考えています。
目を輝かせながら未来のデイブレイクを語る木下氏。最後に読者として気になる点としては、「グローバルに戦える仲間を」と言うが、今のデイブレイクにはどんなメンバーがいて、今後はどんな経験スキルを持ったメンバーを集めたいと考えているのか?ということではないだろうか。
木下共同創業者の守下は元NRIで、デイブレイクの前にもインターネットメディア事業やゲーム事業で起業しており、EXIT経験も持っています。そしてCOOの下村はキーエンスでセールスとしてグループリーダーを担い、本社のマーケティング・販促にも携わった人物ですので、キーエンスの中でもトップクラスの活躍をしてきた人物です。
また、セールスの統括や海外事業のマネジャーなど幹部陣にも元キーエンス、元アクセンチュアなどのメンバーがこぞって集結しています。そして今はまだ言えませんが、先々CSOとしてとんでもない実績を持ったメンバーがジョインしてきます。正直、これだけの顔ぶれがレガシーな特殊冷凍領域に集まるなんて、絶対にあり得ないと思うほどです。
木下そして未来のメンバーに求めたいことは、経済的な価値だけでなく、社会的な価値の追求へに対する想いですね。デイブレイクのミッション「作り手から食べ手までのより良い未来を創造する」に共感してもらえるなら、食品業界の変革に力を貸してほしいです。
かといって、経済的なリターンが少ないというわけではありませんよ?(笑)。先ほどもお伝えした「食品業界の低利益率の改善」は、この業界で働く人々への経済的リターンの向上も含んでいます。昨今では、大型の資金調達をしている企業をはじめ、スタートアップにおける給与水準がどんどん高まってきていますよね。もちろんデイブレイクもその水準と同等ないしそれ以上を狙っていくので、経済的リターンの観点でも魅力ある組織にしたいと考えています。
こうした前提をふまえて、共にグローバルに向けて戦っていける方が来てくれたら、大歓迎ですよね。マネジメントクラスでもメンバークラスでも、どんどん話を聞きにきてほしいです。ぜひ、待ってます!
まるで凍った食材すら溶かしてしまうのではと思うほど、熱いパッションを持った木下氏のインタビュー。いかがだっただろうか。
デイブレイクが挑むグローバル規模の市場ポテンシャル、その市場で勝ち切るための秀逸な戦略、そしてその戦略を遂行する木下氏率いる強力な組織。
正直、デイブレイクの魅力をこの記事だけで伝え切ることは難しいと感じている。読者においても、「戦略設計についてもっと知りたい」「セールス組織の構築法を教えてほしい」といった感想を抱く者もいるはずだ。ぜひ、その期待に応えるべく、食品流通革命児たちの挑戦を引き続き、追いかけていく所存だ。乞うご期待。
こちらの記事は2023年11月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
山田 優子
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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