「グローバルを制すには、業界の普遍的構造を見抜け」──累計エクイティ調達額257.3億円調達のキャディ・加藤氏に訊く、日本発SaaSが世界で勝ち抜く術

インタビュイー
加藤 勇志郎

東京大学卒業後、外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーへ入社。同社マネージャーとして、グローバルな領域で製造業メーカーを多方面から支援するプロジェクトを牽引。大手メーカー15社程度の調達改革に従事した結果、同分野への課題意識から、2017年末にキャディ株式会社を創業。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」ことをミッションに、テクノロジーによる製造業の改革を目指す。

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日本発のSaaSが、なぜ海外で通用しないのか──。

国内でプロダクトを磨き、営業体制を整え、満を持してグローバルに挑む。そんな“王道”を歩んだはずの企業が、現地で成果を挙げられず撤退を余儀なくされるケースは後を絶たない。勝負を分けるのは、「構想」ではなく「構造」なのではないか。

つまり、そのプロダクトは、最初から世界で通用するように設計されていたのか?組織体制は?顧客の選定軸は?実行のオペレーションは?問われているのは、「グローバルで通用すること」を、最初から前提にして構造が描けていたかどうかだ。

そんな問いに真正面から向き合い、構造から逆算して世界に挑むスタートアップがある。それがAI×製造業SaaSを展開するキャディ株式会社だ。同社は、2025年3月、シリーズCエクステンションラウンドにて総額40億円のエクイティ資金調達と、51億円の長期デットファイナンスを発表。難度の高い産業領域で、世界共通の課題に応えるプロダクト構造と、グローバル展開を前提とした実行組織が評価された結果だ。

今回は、アメリカから一時帰国中のキャディ代表・加藤勇志郎氏に独占取材を実施。世界で勝つための構造設計とは何か、そしてグローバルSaaSをスケールさせる“本質的な勝ち筋”とは何かを訊いた。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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「構造」を捉えれば、日本のスタートアップも“世界で勝てる”

──日本発のSaaSは、プロダクトは良いはずなのにグローバルで通用しない。そうした課題感が語られることも少なくありません。加藤さんは、その背景をどう捉えていますか?

加藤日本発のSaaSが苦戦してしまう最大の理由は、そもそも“グローバルに通用する構造”を持っていないことだと思います。

ここでいう“構造”とは、製品の見た目や機能ではなく、「業界に共通する業務の進め方」や、その際の「意思決定の仕方」、そしてそのための「情報整理の手段」など、ローカライズせずにスケールするための“根本的なつくり”を指します。

加藤多くの場合、まずは国内市場に合わせてプロダクトや営業体制を作り込み、ある程度軌道に乗ってから海外展開を考えます。しかし、言語や文化、商習慣が異なる市場に対し、日本市場向けに設計されたプロダクトをそのまま展開しても適応できません。結果として、現地向けに設計を一からやり直すことになってしまいます。

特にコンシューマー向けのサービスでは、現地のニーズに合わせてアプリを作り直したり、運用体制を大きく変えたりとローカライズが不可欠です。Amazonのように、一見するとグローバル共通のUXを提供しているように見える企業でも、裏側では物流や商品構成、カスタマーサポートなどは徹底的に国やエリアごとに最適化している。つまり、日本での前提に合わせて作られたプロダクトの設計や業務フローを、そのままの形で海外に展開してもうまくいかないことが多いのが実情ではないでしょうか。

私も含め、多くの起業家は、日本である程度事業が伸びると、「海外でもきっと通用する」と思いがちです。「日本でここまでこれたんだから、アメリカでも何とかなるはずだ」と。ですが、実際にやってみると想像をはるかに超える難しさがありましたね……。

とはいえ、冒頭に述べた通り、私たちが取り組んでいる製造業は、国や地域をまたいでも“構造”が大きく変わらない。この市場環境の違いこそが、キャディがグローバルに通用する理由のひとつになっていると思います。

加えて、もう一つ大きいのが、経営者自身がどこまで現地にコミットできるかです。私はアメリカに家族を連れて移住し、現地での採用や事業づくりも自ら手を動かしてきました。“構造と覚悟”、その両方が揃わないと、グローバルでは勝ちきることはできない。私はそう考えています。

──製造業において「グローバルで構造が共通している」とは、どのような業務フローや前提を意味しているのでしょうか?

加藤一番わかりやすい例が「図面」です。製造業では、図面が設計から生産、調達まで全工程で使われる“共通言語”なんです。日本でも、ヨーロッパでも、南米でも図面の書き方は基本的に同じ。寸法の表記や材料の規格も国際標準で統一されていますし、解析技術も共通しています。

加えて、図面というのは言語に依存せず、どの国でも同じ手順・判断基準で扱われる非言語フォーマットです。たとえば、ある図面を見れば、どんな形状の部品をどう加工するか──といった一連のプロセスは、日本でもアメリカでも基本的には変わりません。

このように、図面を起点とした業務フローそのものがグローバルで共通しているという点が非常に大きい。だからこそ、図面ベースのプロダクトは“業務の構造レベル”でグローバルに通用する。その前提で事業が設計されているかどうかで、グローバル展開の成否を大きく左右すると感じています。

──なぜキャディは、国や市場を超えて通用する“業務構造”を起点に事業を設計することができたのでしょうか?

加藤そもそもの話になりますが、こうした構造レベルでグローバルに共通性がある課題に挑むことこそが、私の起業時の前提条件としてあったからです。

私が事業テーマを選ぶ際に掲げていた基準は大きく3つ。

  1. 市場が極めて大きいこと
  2. 簡単には解決できない深いペインがあること
  3. グローバルで共通する課題・業務構造があること

技術で解決できる程度の課題ではなく、“人生をかけても解き切れるか分からない”ような、途方もなくスケールの大きいテーマに取り組みたいと思っていました。

そうした事業の種を探すために、私は新卒でマッキンゼーに入り、中国やアメリカ、オランダなど、実際に現地に足を運びながら製造業のプロジェクトに携わりました。国や地域が違っても、現場で起きている課題の構造が本質的に共通していることを肌で実感できたことが、大きな確信につながったんです。

実際、日本の産業を見ても、グローバルで戦える領域は限られています。たとえば建設や医療、教育といったいわゆる重厚長大な産業は、日本国内では大きなマーケットを持っていますが、言語や制度の違いから、なかなか国外には広がりにくい。

一方、製造業は車や家電をはじめ、日本企業が世界中で存在感を持っている数少ない分野のひとつです。

つまり、私たちキャディが特別な戦略をとっているというよりも、「グローバルで通用する構造があらかじめ備わっている市場を、最初から選んでいた」というのが正確な表現かもしれませんね。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

「グローバルへの“構想”があるから挑戦する」のではなく、「グローバルに通ずる“構造”があるから挑戦できる」。キャディのグローバル展開は、そうした逆算から始まっている。

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売上1兆円超えの米国エンプラ企業も導入。
キャディはグローバルでも伸びている

──現在、グローバルの本丸とも言える、アメリカ市場の手応えはいかがですか?

加藤手応えはあります。2023年にシカゴに現地法人を立ち上げ、祖業である『CADDi Manufacturing』を先行して展開してきました。2024年に入って『CADDi Drawer』との事業統合を経て、『製造業AIデータプラットフォームCADDi』として新たに本格展開を進めています。

拠点としてゼロから立ち上げたアメリカでは、2024年3月からVPクラスの幹部採用も本格化しており、すでに売上1兆円を超えるような現地のエンタープライズ企業にも導入が進んでいます。

一方で、日本では2017年に『CADDi Manufacturing』を開始し、2022年に『CADDi Drawer』を立ち上げています。つまり、国内では『CADDi Drawer』を伸ばすうえでのブランド認知や組織体制といった“下地”があったわけです。

その日本と比べても、ゼロからスタートしたアメリカ市場で同等のスピードで立ち上がっているのは、我々にとっても予想以上の成果でした。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

──ゼロから立ち上げたアメリカ市場で、ここまで急速に浸透したのはなぜだったのでしょうか?

加藤一言で言えば、アメリカの製造業にキャディのプロダクトが強く“刺さった”からだと思います。

その確信を持てたのは、2024年3月からの半年間、私自身が現地の製造業の現場を徹底的に見て回り、「この市場に本当に深い課題があるのか?」「プロダクトがその課題に刺さるのか?」という見極めに時間を使ったからです。

そのなかで見えてきたのが、日本と課題の構造は共通しながらも、アメリカの方がより複雑な2つの課題を抱えているということでした。

1つ目は、“人材の流動性”です。

アメリカでは人の入れ替わりが非常に激しく、2〜3年でチームの大半が入れ替わることも珍しくありません。こうした環境では、知見が“人の頭の中にあるだけ”では継承されず、退職とともにノウハウが組織から失われてしまう。

製造業は本来、過去の知見を再活用することで生産性を高められる産業です。しかし実際には、毎回ゼロから情報を探し直し、設計をやり直す。いわば「車輪の再発明」が起きている。

加藤だからこそ、製造業AIデータプラットフォームCADDiで、過去の図面や知見を“製造業のライブラリ”として蓄積・活用できる仕組みを提供しています。経験を“積み上げ式”に変えていくことで、会社全体の知見として再現性のあるかたちにしていく。これは、「人にある知見を、会社の資産に変える」「部署をまたいでつなぐ」というキャディの思想そのものです。

もちろん、日本にも知見の承継という課題はあります。ただし、日本では長く同じ会社で働く人が多いため、ノウハウが“人の頭の中”にあっても、現場でなんとか回ってしまうケースが多い。だからこそ、「属人化してばらついた知見をどう全体最適につなぐか」が、日本ならではの論点になる。

一方、アメリカではそもそも人が頻繁に入れ替わるので、知見が組織にすら残らない。人材の流動性の高い市場だからこそ、キャディの仕組みが強く求められていたんです。

──なるほど。ではもう一方の複雑な課題とは何でしょうか?

加藤もう1つは、活発なM&Aによる“データの分断”です。

アメリカでは、20社以上を買収している企業も珍しくなく、PEファンド傘下の企業も多いです。こうした企業再編の多さが、現場での知見や過去のデータの分断を引き起こし、組織内に蓄積されるはずの情報が失われやすい原因にもなっています。

というのも、買収先ごとに使っているシステムや図面の管理手法がバラバラで、情報が統合されていないんです。図面自体は共通フォーマットでも、「どこに何があるのか」「どう使われたのか」が引き継がれておらず、似たような部品を別々に作っているのに連携できていない、という状況が頻繁に起きています。

こうした断絶された情報を、製造業AIデータプラットフォームCADDiで一気に可視化できるようになると、たとえばPMI(M&A後の統合作業)の初期段階であっても、「この2社で共通化できる部品がある」「同じサプライヤーにまとめたほうが効率的だ」といった判断がすぐにできるようになります。 その結果、部品の標準化やサプライヤーの集約が進み、コスト削減にもつながる。製造業AIデータプラットフォームCADDiは、PMIの現場で“即成果を出せる”プロダクトとしての手応えを感じる場面が増えてきました。

こうした2つの複雑な課題が、結果的にキャディにとってアメリカ市場で強い追い風になっているのだと思います。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

キャディは、“日本企業の海外展開”ではなく、“グローバル市場で競争力を持つプロダクト”として、異次元の成長を遂げている。

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キャディが世界に通用する理由は、「現場で使える」プロダクトだから

──製造業AIデータプラットフォームCADDiはグローバルでも導入が進んでいることがよくわかりました。実際に、“現場”での反応や評価はいかがですか?

加藤現場からも「素早く簡単に活用できる」との声を頂いています。

まず前提として、二次元図面を起点に課題解決を図るスタートアップは、世の中にほとんど存在しません。スタートアップは基本的に「新しい技術」があるところに挑戦する傾向があって、製造業で言えばそれは3D CADや自動設計などの領域。実際、3D CADに関するスタートアップは日本にもアメリカにもたくさんあります。

しかし、現場のリアルは違う。私たちが『CADDi Manufacturing』事業で対応してきた5,000社以上の現場では、実際に発注依頼に添付されていた図面のうち、99.9%以上が3Dデータではなく、2Dの設計図──紙やPDFなどの形式で提供される、いわゆる“平面図”でした。

当初は、3D CADの活用を想定して“CADDi”という社名にしましたが、立ち上げから2〜3ヵ月で現場が本当に必要としているのは二次元だと実感し、方向を切り替えたんです。

二次元図面は、一見整っているように見えても、その多くが設計者ごとの描き方に左右されるため、機械的な解析は非常に難しい。誰もやりたがらない。けれど、まさにそこに非効率が一番集中していたんです。

加藤私たちは“調達”から事業を始め、自分たち自身が困ってきた課題に真正面から向き合ってきました。ですから製造業AIデータプラットフォームCADDiは、現場の困りごとに直結するプロダクトになっている。それが「すぐ使える」「判断が早くなる」といった評価につながっていると感じています。

──“類似図面検索”機能など、製造業AIデータプラットフォームCADDiには高度なAI技術が使われているように感じます。

加藤「最初からAIをコアに設計されたSaaS」って、実はほとんどないですよね。多くのプロダクトは、まずはUIや業務フローを先につくって、“あとから”「AIアシスタント」のような補助機能を加えるのが一般的です。

しかし製造業AIデータプラットフォームCADDiは逆です。AIが図面を解析して、形状を認識し、類似部品を自動で引っ張ってくる。この一連の流れがプロダクトの中核になっており、AIがなければそもそも成立しない、「AIネイティブ」なプロダクトになっている。そこが他とは決定的に違う点です。

とはいえ、現場のユーザーの方々はそれを「AIで動いている」とは感じていないでしょう。図面をアップロードすれば、過去の部品や情報が自然と出てくる。あまりにナチュラルなので、「すごい技術」というよりも、「業務の流れにフィットしている」「余計な手間が減った」と感じてもらっている。それが、CADDiが“誰でも使えるプロダクト”として現場に浸透している理由だと思います。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

『CADDi Drawer』がアメリカを中心に世界の現場で使われ続けているのは、国を超えた共通の課題があるから、だけではない。現場の判断を支え、業務に自然と馴染むプロダクトだからだ。

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世界の投資家からも認められる、キャディのビジョン・事業・組織

──2025年3月、キャディは新たに総額40億円のエクイティ資金調達と、51億円の長期デットファイナンスを実施されました。特に、リード投資家である欧州グロースファンドのAtomicoからはどのような評価を受けたのでしょうか?

加藤大きく3つの観点で評価をいただいたと感じています。1つ目は、市場の大きさとグローバルに通用する共通性です。これまでにもお話ししたとおり、製造業AIデータプラットフォームCADDiが対応する製造業の課題は、国や地域を問わず本質的に共通しており、その意味で「このプロダクトで世界を獲れるか」という問いに、強くYESと応えられる構造があること。

2つ目は、足元の成長ですね。SaaSのトップクラスのパフォーマンスと言われるT2D3(※)を大幅に超える成長を継続できている。

そして3つ目が、組織の体制に対する評価です。特に印象的だったのは、Atomicoによるキャディの経営チームへの丁寧な見極めの姿勢でした。今回は日本とアメリカ、両方のマネジメントチームに対しても個別でヒアリングが行われるなど、グローバルな実行体制まで深く見られている感覚がありましたね。こうしたアプローチは、世界各国のテクノロジー企業を支援しているAtomicoならではだと思います。

*…T2D3とは、SaaS企業が年次経常収益(ARR)が1億円のタイミングから、1年毎に3倍、3倍、2倍、2倍、2倍のペースで成長させることで5年間で約100億円規模になることを表す指標。ServiceNow や Marketo 、Zendesk などが実現。

──今回、51億円のデットファイナンス(無担保・無保証)も実現しています。それが可能になった理由は何でしょうか?

加藤デット(融資)において金融機関が重視するのは「返せるかどうか」、つまり事業としての信頼性です。今回は、そうした観点からも製造業AIデータプラットフォームCADDiというプロダクトのスケーラビリティや収益性、そしてそれを支える組織体制に対して、一定の信頼を得られたということだと捉えています。

要するに「構想がある」だけでは、資金は集まらないということです。プロダクト、組織、事業成長とあらゆる観点で再現性が見えたからこそ、世界のトップティアの投資家や金融機関が動いた。今回の調達は、キャディが単なるスタートアップを超えて、グローバルで信頼されるプレイヤーへと移行しつつあるという証だと思っています。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

「構想がある」だけでは資金は集まらない。グローバルでスケールする構造と実行力がそろってこそ、世界のトップティア投資家と金融機関が動く。キャディは、プロダクト・組織・事業成長すべてにおいて、すでに“世界基準”での信頼を獲得しつつある。

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『CADDi Drawer』は“入口”。
世界の製造業の「知」をつなぐプラットフォームへ

──今回の資金調達では、「2030年までにARR1,000億円規模のプラットフォームを目指す」とも発表されています。今後の展望を教えていただけますか?

加藤私たちが掲げているミッションは、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」ことです。その実現に向けて、プロダクト面では大きく2つの取り組みに注力していきます。

1つ目は、「データプラットフォームの構築」です。製造業は、実は最もデータ量が多い業界のひとつです。CAD(設計データ)、CAE(シミュレーションデータ)、ERP(基幹業務システム)、IoT(センサーからの稼働データ)、リアルタイムの生産情報など、非常に多種多様なフォーマットが存在しています。にもかかわらず、その多くが社内で活用されずに眠っているのが現状です。

さらに、図面のメモ書きや会議の口頭共有など、そもそもデータ化されていない情報も数多くある。私たちは、そうした構造化されていない情報(非構造データ)まで含めて、可能な限り可視化し、つなぎ直していけるような基盤をつくっていきたいと考えています。

そして2つ目は、「アプリケーションの展開」です。こちらは、あらゆる製造現場で今まさに直面している業務課題に、深く刺さるプロダクトを個別に届けていくという考え方です。たとえば、部品の調達一つとっても、見積もり、発注、品質対応、戦略購買といった多様な業務があります。この中で「見積もり」業務に対しては既に『CADDi Quote』というアプリケーションをリリースしています。このように、様々な現場業務にしっかりとフィットするアプリケーションを今後さらに広げていきます。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

──今後のグローバル展開についても加藤さんの見解を教えてください。

加藤今後は、日本とアメリカをハブとして、アジアと西洋圏を全体をカバーしていく計画です。さらにインド、欧州、東南アジアなど、製造業の主要国すべてに拠点を広げていきたいと考えています。世界の製造ボリュームの8〜9割を占めるおよそ30カ国を、中期的にカバーしていくのが目標です。

──まさに、グローバルスタートアップですね。キャディは、その先にどんな世界を実現したいと考えていますか?

加藤私たちが目指す未来を語るには、まず今ある現実を見つめ直す必要があります。製造業には、150年以上続く企業も珍しくありません。それだけ長い年月のなかで、無数の試行錯誤や判断が積み重ねられてきたはずです。しかし実際には、それらの知見が十分に継承されず、同じミスが繰り返され、同じ部品がまた一から設計されている──そんな光景が、今も多くの現場に残っています。

それは、とてももったいないことだと思っています。過去に誰かが考え抜いて出した答えや経験が、別の誰かの未来に活かされる。そうなれば、人は「同じことを何度も繰り返す」のではなく、「新しい価値を生み出すこと」にこそ時間を使えるようになる。私たちは、その未来を実現するためにプロダクトをつくり、組織をつくり、グローバル展開を進めていきます。

キャディが目指すのは、世界中の製造業に眠る知見をつなぎ直し、誰もがより良い意思決定をできる“次の標準”を、グローバル規模で確立していくことである。

こちらの記事は2025年04月24日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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