「再現性」と「収益性」なき非連続成長はない──EXIT経験者やキーエンス上位人材が集うデイブレイクCxOに訊く、PMFできないスタートアップが陥りがちな罠

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インタビュイー
守下 和寿
  • デイブレイク株式会社 共同創業者 取締役 CFO 

群馬県太田市出身 / 早稲田大学理工学卒業後、野村総合研究所にて債券、投信、デリバティブ商品の情報サービスの企画・開発・運用に従事。2007年にインターネットメディア事業で起業。その後2社のEXITに関わる。2013年にデイブレイク株式会社を木下と共同創業。現在は資金調達、財務戦略を担当し、コーポレート全般を管掌。

下村 諒
  • デイブレイク株式会社 取締役 COO 

キーエンスにてセールス、グループリーダーを経て、本社販促グループに配属。国内および海外マーケティングにおける分析・企画立案・戦略設計・構築・実行などを担当。木下の熱量と事業に将来性を感じて2020年デイブレイクに参画し、取締役COOとして事業全体を管掌。木下、守下、山川とは学生時代からの付き合い。

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特殊冷凍機メーカーというユニークな事業ドメインで他のIT系スタートアップとは一線を画すデイブレイク。前回、デイブレイク代表の木下氏の取材では、グローバルに繋がる特殊冷凍市場のポテンシャルや、そこに向けて構築している3つのビジネスモデルについて話をうかがった。しかし、それらはあくまで同社の魅力の一端に過ぎない。

第二弾となる本稿では、経営メンバーである2人のCxO陣を訪ねる。デイブレイクの共同創業者であり、現CFOの守下氏は、2023年7月にシリーズBラウンドで20億円という大型の資金調達をリードした人物。そしてもう1人は、前職キーエンスで常時セールス上位に名を連ね、さらには事業部の中から1%以下の確率で任命される、本社管轄のマーケティング・販促を手がけた、現COOの下村氏だ。

創業から試行錯誤をくり返し、泥臭く事業の柱を模索し続けた数年。そして、そこからセールス組織を構築し、一挙に業界トップの地位に踊り出たデイブレイク。その過程にはどんなドラマがあったのだろうか。キーエンス流の徹底した仕組みと、圧倒的な付加価値で事業を伸ばす実例をもとに、スタートアップの事業グロースのリアルを体感してもらおう。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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デイブレイクを「共に創った」守下氏と、「危機を救った」下村氏

下村事業のコンセプトは良いが、伸ばし方が上手くない──。

それがデイブレイクに参画する前の、外から見たデイブレイクに対する僕の印象でした。また、「自分なら売上をX倍にして、数十億円規模の事業に成長させられるな」と感じていました。

下村氏はもともと、学生時代のインターン先で偶然にもデイブレイク創業当時の木下氏と守下氏と出会い、彼らとは「よく飲みに連れていってくれる社会人の兄貴たち」という関係値で親交を持っていた。 

その後、下村氏は新卒でキーエンスに入社するのだが、デイブレイクの二人とは交流を続けており、同社の事業状況については適宜耳に入ってくる状態であった。2020年頃になるとデイブレイクは徐々に業界内で認知度を高め、多くのメディアに取り上げられるようになる。しかし、下村氏ただ一人は、デイブレイクの評判と事業の実態に、乖離を感じていた。

そこから2020年11月、木下氏と守下氏から何度も熱烈なオファーを受けていた下村氏は、満を持してデイブレイクに参画。そう、ここから同社の起死回生の逆襲が始まるのだ──。

と、そのエピソードを紐解く上で、まずはデイブレイクの変遷を辿るところから始めたい。前回の取材では、代表・木下氏の視点で同社の想いや事業が熱く語られたが、ここでは共同創業者である守下氏の視点から、デイブレイクの変遷を辿っていく。

元々、守下氏は新卒で野村総合研究所に入社し、金融機関向けにサービス提供とエンジニアリングに従事。2007年にインターネットメディア事業で起業し、CTOとして事業を牽引。その後、友人とソーシャルゲームの事業も起業し、2社のEXITに関わっている。

そして、知人のWebソリューション会社に参画していたが、それも一区切りし、再び起業に向けてパートナーを探していたときに出会ったのが木下氏だ。

守下当時2010年代の初頭ですかね。もともと木下との出会いはプライベートでしたが、出会った瞬間に私だけでなく周囲の人たちも振り返るほど、カリスマ性というか、オーラを纏っていたんです(笑)。

一見するとクールな出立ちではありますが、口を開くとめちゃくちゃ熱いキャラクターでして。そんな彼と何度か交流を重ねていくうちに、「この男とタッグを組んだら面白いことができそうだ」と思うようになっていきました。

当時の木下氏は家業である老舗冷凍機会社の3代目を継承すべく、施工管理士として父の会社に勤めていた。しかし、異国での“ある体験”をきっかけに、家業の道ではなく自ら起業家となり、「特殊冷凍技術の力で食品流通に変革を起こす」ことを目指し、2013年にデイブレイクを創業するのだ。(創業エピソードはこちら

そしてその共同創業者として選んだ相手こそが、この守下氏である。「次に起業するならパートナーは木下しかいない」と考えていた守下氏にとって、彼の申し出を断る理由はなかった。

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メディアやショールームで業界を席巻するも、「代表のセールス力」依存で伸び悩んだ黎明期

前回の取材でも語られているが、デイブレイクは創業当時、急速冷凍機のメーカーの代理販売から事業をスタートしている。2人しかいない組織において、全国を行脚するセールス活動は非効率。であるならばと、守下氏の強みであるデジタルマーケティングを起点にビジネスを回していった。

守下Webで調べてみると、2013年当時のリスティング広告で、「急速冷凍機」というキーワードで広告を出稿している競合他社は一社もありませんでした。ニッチ過ぎてマーケットがそもそもないのか、それともレガシーな業界が故にどの会社も出稿していないのかわからず、ひとまず簡単なランディングページ(LP)をつくり、少額のリスティング広告を回してみたんです。

すると、出稿を始めた初日からリードを獲得することができ、「まさか俺たちは、ブルーオーシャンを見つけたのかもしれない…」と木下と興奮して盛り上がっていたことを覚えています。

初月から30件程度のリードを獲得し、幸先の良いスタートを切った2人。当初、コスト観点で自社オフィスは構えず、知り合いのオフィスを間借りしていたデイブレイクは、問い合わせがあると代理店として直接メーカーのショールームに顧客を帯同し、その場で3社商談をおこなうスタイルを1年ほど続けた。

その後二人は、食品事業者が急速冷凍機を比較・検討できるメディア『春夏秋凍』を立ち上げると同時に、急速冷凍機のショールームを開設。全国の急速冷凍機メーカーを一ヶ所に集めることで、リアルにおいても一度に複数社の急速冷凍機を比較、検討できるようにしたのだ。

守下我々がこうしたショールームを開設するまでは、お客様自ら全国のメーカーを回って実機を確かめる必要があり、きわめて非効率な慣習がありました。試食においても、人の味覚はその日の体調や天候、気温によっても変わるため、条件が異なる環境下で適正な比較をすることは難しいと思っていたんです。

したがって、同じ日に同じ場所で一気に試すことができれば、お客様も本当に自社に合う製品を選ぶことができる。このように、オンラインでは『春夏秋凍』、オフラインでは『ショールーム』の2つを駆使して代理店事業を伸ばしていきました。

こうした創意工夫の結果、いわゆる「木下・守下ペア」の時代の売上は最大で2億円にまで及んだ。一見すると好調に見えるものの、ここから徐々に二人の中に暗雲が立ち込める。

守下2013年〜2020年に至るまでのデイブレイクは、木下と私、他に社員4名、そしてインターン生といった少数組織の時代が長く、創業以来、セールスとして大半の売上をつくっていたのは代表の木下自身でした。そのため、彼がマンパワーで出せる成果が、そのままデイブレイクが生み出せる成果の上限値になっていたんです。

そのため、いくらメディアやショールームをフックに問い合わせが増えても、木下が稼働できなければ案件を取りこぼしてしまう状態。そして、それをカバーできる人材もいなかった。

その壁を乗り越えるべく、木下のセールスに頼らず売上をつくっていける新規事業に踏み出したこともあるのですが、その企画推進に木下が関わると、やはり代理販売事業の数字が落ちてしまう。きわめて属人性の高い状態であり、デイブレイクとしてそれ以上のグロースに難航した時期でしたね…。

このままでは永年に事業をグロースさせることができない。突破口があるとすれば、日本有数のセールス組織で活躍しているあの男を呼ぶしか──。

兼ねてより声はかけていたものの、いよいよ本格的に事業の限界にぶち当たった木下氏と守下氏。二人は一縷の望みをかけ、キーエンスが本社を置く大阪へと向かった。

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「マーケティングの神様」と「元ソニーの会長」が推してるって、どういうこと…?

守下当時はとにかく事業を伸ばそうと必死で、約半年間、下村にはしつこいくらい「早く来い、早く来い」とオファーを出し続けていたよね?

下村そうでしたね。あの時はなかなか悩みましたよ。二人には学生時代からお世話になっていたので、力になりたいという想いはありましたし、事業内容はユニークかつ社会貢献性も高い。そして何より、キーエンスで培った力を発揮すればデイブレイクの事業はもっともっと拡大できる。そんな自信は持っていましたが、とはいえ当時のデイブレイクはあまりに少数組織で、セールスと言えば実質、木下のみ。

キーエンスという、合理性を極めたセールスのプロ集団と共に事業を伸ばしていた自分が、いきなりたった5名の、それも特段セールスのプロや売れる仕組みがある訳でもない組織に移って結果が出せるのかと思い、不安で仕方なかったです(笑)。

抱く懸念はごもっとも。しかし、そんな下村氏の背中を押した最後のきっかけは、意外にも彼の「ミーハー心」だった。

下村マーケティングの神様・コトラーと、元ソニー会長の故・出井さんです。この二人がデイブレイクを「推している」という事実に驚き、この会社の底知れぬポテンシャルに賭けてみようと思ったんです。

なんと、マーケティングに携わる人なら誰もが知るフィリップ・コトラーが、木下と対面してデイブレイクの事業をCSV*の文脈で認めているんですよ。「えっ、フィリップ・コトラーが日本の小さなスタートアップを認めるなんてことあるの?デイブレイクに入れば本物の彼と会えるの?一体、どういうこと?」と衝撃を受けまして(笑)。

*Creating Shared Value:共有価値の創造

フィリップ・コトラーとデイブレイク代表・木下氏

下村さらには、元ソニーの会長である故・出井 伸之氏が当時2020年11月にデイブレイクの特別顧問に就任するといった吉報もあり、「なぜ、これだけの有力者たちがこうもデイブレイクと繋がっているのか、まったくもってそのロジックがわからない…」と不思議で仕方ありませんでした。

とはいえ、それだけデイブレイクには人を惹きつけるポテンシャルがあるのだと強く感じました。現に今でも、各界の重鎮たちとお話の機会をいただくことが多く、あの時、デイブレイクに参画を決めたことは間違っていなかったと実感しています。

元ソニー、故・出井会長とデイブレイクの面々

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「本能型」のライバルに対し「知略型」で逆張りを。
すべては「生き残る」ため

晴れてデイブレイクの救世主として参画した下村氏だが、その経歴を聞けば彼も十分「バケモノ」であることがうかがえる。なんと彼は、単にキーエンスで若くしてトップクラスセールスになっただけでなく、事業部内で1%以下の確率でしか選ばれない、本社のマーケティング・販促部門で複数事業体の国内と海外のマーケティング戦略をリードしていた人物なのだ。

下村セールス界隈ではしばしば「元◯◯トップセールス」と言った肩書きを出される方が多いですが、僕はその期間が重要ではないかと思っています。

と言うのも、ある年やある月だけガムシャラに頑張ってトップ成績を出した人と、常に安定して上位の成績をおさめる人がいたとしたら、どちらを評価しますか?僕は後者の方が難度が高く、評価すべき対象だと思っています。

僕はキーエンスに入社して4年半、セールスとして従事していましたが、常に安定してトップクラスに入る売上成績を収めていました。その結果、当時のキーエンスでは最年少グループリーダーにアサインされ、その半年後には事業部のマーケティング戦略を管掌する本社の販促グループへと異動し、大規模な売上創出に貢献していました。

守下昨今のスタートアップ界隈では「元キーエンス」の人材が増えているかと思いますが、彼はセールスだけでなく、マーケティングや販促を経験した数少ないプロフェッショナルです。周囲を見ても、これだけの実績を持ったキーエンス出身メンバーはいないのではないでしょうか?

そんな下村に憧れてか、最近は彼と仕事がしたくてジョインしてくるメンバーも少なくありません。

キーエンスにおいてセールスから本社の販促グループへ行くのは非常に限られた狭き門。実力主義の代名詞とさえ言えるキーエンスの中でも、下村氏は完全に頭ひとつ突き抜けていた。

下村僕のセールスは顧客の潜在ニーズを喚起するようなスタイルでしたが、それは他のキーエンスメンバーにも一定存在はしていました。ではどこで僕と彼らに差が生まれるか。それは「戦略思考」にあったと捉えています。

キーエンスには、マンガ『キングダム』でいう「本能型の武将」、いわゆる直観や勢いで圧倒的な成果を出す人材が、社内に蓄積された大量のデータ分析によって本能的なアクションを定量化し、微修正する営業スタイルが多い印象でした。そこで僕は、真逆の「知略型の武将」のごとく、理論を用いてセールスプロセス全体を体系化していったんです。

具体的には、顧客の反応を想定したシナリオを入念に練った上で商談に挑むのです。例えば、お客様からAという発言が来ればこう返す、Bという発言が来ればこう返す、Cという発言が来ればこう返す…という具合に、架電から訪問、商談、クロージングまでのプロセスをすべてパターン化していく。

そうした樹形図のようなものが僕の頭の中には無限に描かれており、お客様の反応に応じて瞬時に適切な対応を返していく。それが結果的に、安定的に高い成果を生み出すに至ったのだと思っています。

しかし、それは意外にもキーエンスの中で「埋もれないための処世術」として身につけたものだと言うのだから、驚きである。

下村最近、デイブレイクの海外事業責任者として元キーエンスの同期である杉浦が入ってきたんですが、彼もめちゃくちゃ優秀で面白い人物でして、キーエンスには優秀な人材が多く集まっています。

実際、新卒入社して早々に、「周りと同じ努力をしていたら、自分は間違いなく埋もれていくだろうな」と危機感を覚えました。そこで、あらためて自分の強みとは何かを深掘りしていった際に、頭を使うこと、が武器になると思ったんです。言わば、生き残るために編み出した生存戦略と言えますね。

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創業者たちが築いた事業に、「再現性」と「収益性」を纏わせる

2020年11月、満を持してデイブレイクに参画した下村氏は、事業をグロースすべく、デイブレイクを取り巻くビジネスの市況を洗い出すところから始めた。

急速冷凍市場はTAMが大きく、今後も拡大していく可能性が高い。現在、日本の急速冷凍市場の規模は200億円、潜在的には5,000億円規模*とも言われており、さらにグローバルでは約4,000億円規模の市場が存在していることがわかった。

*農林水産省「フードテックに係る市場調査

下村市場ポテンシャルや、デイブレイクが持つプロダクト自体の魅力は申し分ない。しかし、それを売る力や、プロダクトを起点に事業を拡張していくビジネスモデルの設計力が足りないと感じていました。

僕が参画した当初のデイブレイクは、各界の重鎮を巻き込む木下の人的ネットワークと、特殊冷凍によるフードロス削減といったコンセプト以外に、正直ビジネスで勝てる要素がなかったんです。

そこで、デイブレイクの強みを生み出すために、採用の強化や技術研究へのリソースの投資を考えましたが、そこには大きなコストがかかる。しかし、強みがなければ資金調達も難しい。そこで、従来のワントップモデル(木下氏の強みを用いたモデル)から、「再現性」と「収益性」を追求したビジネスモデルへの転換を図ることに決めました。

下村氏の戦略を要約するとこうだ。まず、見込み顧客のフィルタリングによって受注率の高いリードを獲得し、木下氏以外のメンバーもふくめて高い精度で安定的に売上を生み出せる仕組みを構築する。そして、そこで得られた利益を採用予算に回し、優秀な人材を獲得して組織を強化しながら事業拡大を狙うといったものだ。

下村ここでキーエンスでの経験が役立ちました。僕は頭の中にはBtoBマーケティングにおける膨大な打ち手とそれによって得られる結果のパターンが無数にインプットされており、今のデイブレイクならどの打ち手を取るべきか容易に判断できました。

実際にWebマーケティングや展示会、メルマガ、DMといったマーケティング手法を駆使して、発注確度の高い見込み顧客のリードを獲得していったんです。

また、受注率の高いフィルタリングを行うということは、すでにニーズが顕在化されている見込み顧客に集中してアプローチすることができます。そのため、デイブレイクのメンバーたちは、潜在ニーズを喚起する難度の高いセールススタイルを取る必要がなく、シンプルに競合に負けないための提案・交渉・クロージングといった戦術だけを学べば良い。つまり、セールスの育成に多大なリソースを投じることなく、短期間で売上を急増させることができました。

このセールス戦略を敷いてから僅か6ヶ月で、当時のデイブレイクの売上は2億円から4億円へと倍増した。これを救世主と言わずなんと言おうか。下村氏の大・活躍劇である。

そしてその後も下村氏の活躍は止まらない。前回の取材で木下氏が掲げた3つの価値の構築。そこにも当然ながら下村氏の知見やノウハウが大いに注ぎ込まれている。そう、企業がさらに非連続的にグロースしていくためには、顕在ニーズに応えるだけでなく、顧客もまだ気づいていない潜在ニーズを掘り起こし、それをサービスや製品として提供し続けることが重要なのだ。

デイブレイクが生み出す3つの価値

  • 「特殊冷凍テクノロジーのプロダクト」
  • 特殊冷凍機『アートロックフリーザー』の提供による、高品質冷凍食材の作り手の増加

  • 「特殊冷凍コンサルティング」
  • CS型コンサルティングとコミュニティ運営により冷凍事業者のエンゲージメントを向上し、高品質冷凍ビジネスの立ち上げを支援

  • 「特殊冷凍フードプラットフォーム」
  • 特殊冷凍を用いた食品流通のプラットフォームにて商品化と販路開拓を支援

木下氏と守下氏が約7年かけて築き挙げた土台の上に、下村氏の戦略が加わり、デイブレイクの事業は「再現性」と「収益性」を纏う秀逸なものとなった。そこから更に3年が経った2023年現在、同社にはキーエンスを筆頭に優秀なメンバーが続々と参画するようになり、事業・組織ともに優れた企業へと進化しているのだ。

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3億円が20億円に?
事業家・守下氏だからこそ成し得た資金調達のリアル

デイブレイクの沿革は、大別すると3つだ。木下氏と守下氏が創業から試行錯誤をくり返し、事業を0→1で形作ってきた黎明期。下村氏がキーエンス流の再現性と収益性を追求したビジネスモデルでセールスを仕組化し、1→10で事業をグロースさせてきた変革期。そして今、10→100に向け事業を加速させている拡大期だ。

それを象徴するかのように、2023年7月にはシリーズBラウンドで20億円という大型の資金調達をおこなった。それをリードしたのが現在はデイブレイクでCFOを務める守下氏だ。

守下当初、資金調達の相談をしていた投資家や元CFOの友人からは「デイブレイクのビジネスモデルはSaaSなどのWebサービスと異なりハードウェアメーカー型の事業だから、VCや投資家を集めづらいのでは?」「仮に資金調達ができたとしても、3億円程になるのでは?」と言われていました。しかし、トラクションは出ているし、マーケットのポテンシャルもある。自分たちの見せ方次第でそれは覆せるという自信が私の中にはありました。

スタートアップの主流であるIT・テクノロジー企業の場合、資金調達ではエクイティファイナンスを重視する傾向がありますよね。これは多くのIT系スタートアップが創業初期の段階で大きな利益を上げることが難しいためです。投資家側としても、バリュエーションの小さいタイミングで投資できれば、将来の大きなリターンを見込めますから、利害が一致しやすいですよね。

守下一方、デイブレイクのように有形商材を扱うメーカー企業の場合、人件費や販促費が運転資金のメインとなるIT系スタートアップとは異なり、機械製造や在庫といった「有形」物に対する運転資金が別途必要になります。

そのため、私たちはエクイティファイナンスで成長投資を進めるのに加えて、将来の事業成長から逆算し運転資金をデットファイナンスで大きめに確保して、目の前のキャッシュフローを回していく判断をしました。その方がダイリューションも抑えられるため、エクイティファイナンスとデットファイナンスを織り交ぜた資金調達を行ったんです。

さらに守下氏は、ブランディングの要素として「調達額合計20億円」という数字と、「調達先」にもこだわった。その理由は、業界のプレゼンスを高め、競合他社の追従を許さない圧倒的な基盤を築くためである。

今回の資金調達が数億円規模であれば、さほど競合他社に対する牽制には繋がらないが、「20億円という巨大な資金を得た」「その資金を強力な人材採用や、大規模なマーケティングに同時並行で投下していく」「あのパナソニックが出資した」というメッセージを市場に広めることができれば、競合他社は「デイブレイクは本気だ。生半可な覚悟ではこの領域でデイブレイクには勝てないかもしれない」と考えるだろう。戦略家・守下氏はそこまで計算して今回の資金調達を行ったのだ。

しかし、もともと金融のプロフェッショナルや会計士といったバックグラウンドではない守下氏が、なぜこのように戦略的な資金調達を成功させることができたのだろうか。

守下昨今のスタートアップCFOと言えば、証券会社や投資銀行出身、会計士の方が就任するケースが多いですよね。一方で、私はエンジニアリングやマーケティング、BizDevといった事業サイドを幅広く経験してきましたが、それが逆に功を奏したととらえています。

具体的には、我々はただのハードメーカーではなく、冷凍ソリューションカンパニーであり、フードプラットフォームに進化していくエクイティストーリーを多角的に構築しました。これは金融業界しか経験のない方だと難しいことなのではないかと考えています。

エクイティファイナンスにおいてもデットファイナンスにおいても、また事業のポテンシャル面だろうとリスク面だろうと、資金提供側が求める情報を一人称として解像度高く、プロアクティブにお渡しすることができたんです。これが相手からすると「ファイナンスに限らず、事業、組織、マーケティング、プロダクトどれにおいても詳しく、的を得た答えが瞬時に返ってくる」といった体感となり、それがデイブレイクに対する評価や信頼の醸成にも繋がったのではと思っています。

こうして実現した資金調達の使い道において、先の取材で木下氏はこう語っている。

「今後、デイブレイクは国内の特殊冷凍市場を獲得し、『アートロックフリーザー』のグローバル展開に伴うプロフェッショナル人材を採用していきます。そして、海外市場におけるフード事業の展開に注力していきたい」と──。

いよいよ、その挑戦が幕を開けようとしているのだ。

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「サバンナ」と書いて、デイブレイクと読む。
既存のITスタートアップでは物足りない猛者たちへ

「事業が飛躍的に伸びているタイミングだからこその魅力がある」。守下氏は次の挑戦機会を探している読者に向け、こんなメッセージをくれた。

守下現在、私たちの組織は50〜60名ほどです。スタートアップが成長する上で直面する「組織の壁」とされる60人、100人の段階に今まさに突入しようとしています。そこには予想だにしない困難があるかもしれませんが、そうした組織づくりのカオスも含めて、これからのタイミングはエキサイティングであると思っています。

私たちデイブレイクは、特殊冷凍技術という分野を事業ドメインとしているため、業界未経験者の方にはハードル高く感じられるかもしれません。でも安心してください。木下はともかく、私や下村も含め社内の9割は完全に業界外からの参画ですから(笑)。

それに、「食」という観点で見れば、誰しもの生活に深く結び付いているものです。日本だけでなく、グローバル市場で新たなサービスをつくっていきたいという人にとっては、挑戦し甲斐のある環境だと思います。

下村僕が最後に声を大にして伝えたいことは、デイブレイクは一般的なIT系スタートアップとは一線を画する存在であるということです。

守下の言う通り、僕たちは特殊冷凍技術を扱う機械メーカーです。例えば、昨今のスタートアップではWeb3やAI、メタバース、SaaSといったITテクノロジーが主流ですが、「イマイチ親和性を感じることができない」「でも、スタートアップの環境には興味がある」という方もいると思います。そういう方にはむしろ、デイブレイクのような「ものづくり系スタートアップ」が面白いと感じるかもしれません。ぜひ、日本のものづくりで世界を獲りましょう。

エネルギーと野心に満ち溢れ、多くの重鎮たちやタレントを惹きつけるデイブレイク代表の木下氏。幅広い知見と経験を武器に、組織の屋台骨として活躍する守下氏。ハイレベルなビジネス構築力と推進力で事業を急成長させる下村氏。

そしてこれからFastGrowでも順次紹介していく予定だが、他にもキーエンス、アクセンチュア、日本M&Aセンターを渡り歩いてきた実力派の海外事業責任者や、同じくキーエンスで23年トップランナーを勤めた国内事業責任者などが在籍している。

彼らはそんなデイブレイクを「サバンナ」と称する。多種多様な猛者たちでひしめき合う、スリリングな環境がそこにはあるのだろう。ぜひ、そんなサバンナにおいて「自らの力を試したい」「猛者たちと切磋琢磨し合いながら、日本のものづくりで世界を獲りたい」と感じる読者は、その門を叩いてみるがいい。

こちらの記事は2023年12月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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