連載ユナイテッド株式会社

“生きづらい”子どもたちをゼロに──増加する特別支援教育、ユナイテッド × Gotoschoolが提唱する「非量産型教育」のあり方

Sponsored
インタビュイー
松本 哲
  • 株式会社Gotoschool CEO/代表取締役 

大学卒業後、柔道整復師の国家資格を取得。その後2012年に株式会社ViAを設立。同社では「5年後10年後を見据えたココロとカラダの健康づくり」をテーマに子どもの運動教室、パーソナルトレーニング、グループトレーニングを行うジムをはじめ、鍼灸接骨院、エステなどを運営。2020年にGotoschool社を設立。「あきらめを、チャレンジに」をミッションに児童発達支援・放課後等デイサービスを全国に14店舗、そのほかにも就労支援事業、シニアリハビリ事業を展開している。

井上 怜

2007年にエルゴ・ブレインズ(現ユナイテッド)に入社後、インターネット広告営業やメディア運営に従事。 その後、採用、育成、広報、人事制度など組織創りを担当。2018年から投資事業に従事、数十社の投資実行及び投資先支援の他、業務提携投資やLP出資も複数実行。2022年より投資事業本部長就任。プライベートでは2007年より私立佼成学園高等学校アメリカンフットボール部コーチを務め、現在はヘッドコーチとしてチーム運営に関わり、5度の日本一に貢献。

谷口 実玖

2020年4月よりユナイテッドに入社し、投資事業本部に配属。在宅医療支援、オンライン診療、発達障がい児支援事業といった医療関連分野の他、キャリアコーチング、アート、ハンドメイドといったwell beingをサポートするToC事業、web3関連領域等への投資を手掛ける。その他、EdTech、フェムテック、インフルエンサーマーケティング等の領域で事業を展開する投資先支援に携わる。

関連タグ

「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する。」というパーパスを掲げるユナイテッド。同社は投資事業をコア事業の一つとして捉え、これまで数多くの企業へと投資を行ってきた。

そんな同社の投資事業を象徴するキーワードこそ「善進投資」だ。平たく言えば、ESG・インパクト投資に近い概念にも思えるが、曰くユナイテッドのパーパス実現にあたっての重要な要素だという。

同社の投資事業の在り方を、投資先の対談から紐解く当連載。前回は、地方の農業を世界のグリーンな市場とつなぐ有機米デザイン株式会社との対談を実施。「よいことをしている」では終わらせない、社会的意義と儲かる農業を両立させる戦略的座組みについて尋ねた。

第2回となる今回は、発達障がいの子どもたちための運動教室や、大人の就労移行・継続支援などを行う株式会社Gotoschool(以下、GTS)代表・松本氏と、ユナイテッド投資事業本部 本部長の井上氏、キャピタリスト谷口氏による鼎談だ。

「教育の未来とその在り方」に焦点を当てたインタビューは、取材陣の予想を遥かに超える熱量で進行し、それぞれの視点から教育に対する深い洞察が交わされた。教育というテーマは、ビジネスパーソンだけでなく、一人の人間として深く考え、真摯に向き合うべきものである。すべての読者にとって、多くの示唆に富んだ内容となることは間違いない。

  • TEXT BY YUICHI YAMAGISHI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
SECTION
/

大人たちよ、子どもの無限の可能性を摘んでしまってはいないか

松本GTSの創業以前はパーソナルジムや鍼灸接骨院などを運営していました。そんな私がGTSを始めたきっかけは、原因不明で立つことのできない3歳の子どもとの出会いだったんです。

GTSの創設者、松本哲氏の想いは明確。それは、障がいを持つ子どもたちの教育を変え、未来を明るく照らすことだ。

松本数多くの角度から発達に向けたアプローチを試み、驚くべきことにやっとのことで1年後には立てるようになりました。次第にクラスの中にも馴染むことができ、他者を思いやれるとても良い側面も開花しました。

運動によるアプローチは身体機能だけでなくココロにまで大きな影響を与える──。

松本私たちが提供しているプログラムを通じて子どもたちが変わっていくのを目の当たりにし、「事業として立ち上げることができるのではないか」と感じ、2020年10月にGTSの創業に至りました。

パーソナルジム(運動教室)で出会った、一人の子どもの無限の可能性は、松本氏の心を捉えて放さなかった。子どものチャレンジマインドを養い、多様性を受け入れる社会を目指す──。そんな熱い使命を胸に、松本氏は立ち上がった。

見据えるのは、単なる運動教室ではなく、障がいを持つ全ての子どもたちが自ら意志を持ち、可能性を広げることができる機会を創出する、そんな“環境”だ。

松本私は、子どもたちの可能性を閉じてしまうのも、開くのも、環境要因が大きいと考えているんです。そして、その環境を作っているのは我々、大人たち。大人は、既存の環境を当然と捉えず、より良い環境へと変えなくてはならない。それを土台に、子どもの未来は切り拓かれます。

良い環境を作っていくと、子どもたちはすごく柔軟で、大人には思いつかないような発想をし始めます。例えば絵の具を使って絵を描くにしても、大人には絵の具を筆につけて塗るという発想以外になかなか思いつくものはありませんよね?

しかし子どもの中には、空間を“立体的”に捉え、絵の具を縦に積み重ねるように塗る子もいる。

そんな自由な発想が許される環境で子どもを育てたいと思ってくださる親御さんが来てくれて、子どもたちが集まる環境を作れたら良いな、と考えています。

大学時代に人間科学を学び、発達障がい分野に明るい、ユナイテッドのキャピタリスト谷口氏も、松本氏の考えに深く共感を示す。

谷口子どもたちの個性をポジティブに捉えることはとても重要だと私も感じています。絵の具を立体的に使って表現すること。この発想はこれまでの一般的な教育現場では矯正されてしまうかもしれません。結果、子どもたちが傷ついて後ろ向きな性格になってしまうリスクがある。型にはめずに、評価をしてあげることが大事だと思います。

松本谷口さんのおっしゃる通りですね。実は私は学校教育を根底から変えたいとも思っているんです。先生たちが作るテストで子どもたちが一律に評価される現状は、本当にベストなのでしょうか?

子どもたちの自由な発想を「すばらしいね」と肯定し、さらに可能性を広げていくこと。それが、教育者としての理想の役割だと私は考えています。

しかし、今の教育システムでは、宿題やテストの完了度に基づいて生徒を評価し、一方的な「正解」を強いてしまっています。

でも、想像してみてください。成績のみで「優秀」とされた人々の仕事が、将来AIに代わりえるとしたら?特に、ChatGPTのような技術の進化は、AIがクリエイティブな領域にまで進出しているという証しです。それにより知的労働が、自動化、リプレイスされる可能性は十分あるのです。

だからこそ、教育においては、成績以外のものも見るべきです。人間ならではの感性や共感、創造力を育む教育の重要性がより一層、際立って来るはず。子どもたち一人ひとりの個性や能力を大切にし、それぞれが持つユニークな価値を引き出し、伸ばす。そんな教育を大事にする国になってほしいんです。

「子どもたちがこの国に生まれてきてよかったと思えるようにしたい」と何度も繰り返す松本氏。ユナイテッド投資事業本部・本部長の井上氏も、松本氏の並々ならぬ強い想いに共感を覚えたという。

井上 発達障がいをニューロダイバーシティ(脳の多様性=個人レベルでの様々な特性の違いは多様性)と捉え、特性の違いを社会の中で活かすという松本さんの思想にはやはり胸を打たれるものがあります。

社会課題解決に対して強い意志を持ち、社会を善い方向へ進めたいと考えているスタートアップの方々に投資することで、その成長をサポートする。それがユナイテッドの「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する。」というパーパスに則った投資方針です。

少子化が進み、労働人口が減少する日本において、「運動療育」により苦手の克服・意志の構築を、「就労支援」により雇用創出を、この2つのアプローチを通じて、多様化する価値観の中で自分の生き方を主体的に選ぶ人たちへの支援の事業化に挑むGTSはまさにこのパーパスど真ん中の事業でした。

「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する。」──。

2022年に制定されたユナイテッドの新しいパーパスだ。投資事業の柱の一つとして、一見ESG・インパクト投資と思える投資を行っているが、これはユナイテッド独自の「善進投資」という概念に基づいている。ユナイテッドのパーパス実現にあたっての重要な要素なのだ。

松本氏の力強い「意志」の存在は明白であり、それが投資決定の大きな動機となったことは言うまでもないが、もちろんそれだけが理由で投資を行うわけではない。

ユナイテッドが投資対象とするのは、「よいこと」をしている、で終わることのない、社会的意義と経済合理性を両立させた戦略的座組みがある、そんな企業だ。では、ユナイテッドはGTSに、どのような社会的意義と経済合理性の両立を見出したのだろうか。

SECTION
/

「発達障がいは治らない」という大前提を180度覆すGTS

井上 少子化が進む一方で、特別支援教育を受ける子どもの数は実はここ10年で約2倍に増加し54万人にものぼると言われています。

しかし、多くの支援施設が“子どもを預かる託児所に近いサービス”に留まってしまっているという現状があります。また、障がいを抱える子どもの就労率は7.2%、かつ就労定着率も低水準です。国の定める法定雇用率基準達成企業は50%程と障がい者雇用は進んでいない。

これらの社会課題に真正面から挑むのがGTSなんです。

松本氏も「児童発達支援に関する施設の絶対数が足りていない」と強く同意する。少子化で子どもの数は減っているにも関わらず、なぜ特別支援を必要とする子どもの数はここまで顕著に増加傾向を示しているのだろうか。

松本氏曰く、その背景にあるのが、いわゆる“*グレーゾーン”にカテゴライズされる子どもたちの存在だという。

*グレーゾーン:「発達障がいの特性が見られるものの、診断基準には満たない状態」の通称。発達障がいの診断を受けた方と比較し、日常生活への影響は少ないと思われがちだが、「支援を受けられない」「相談先がない」「理解を得られにくい」といった特有の壁にぶつかることも多く、社会問題化している。

松本一昔前の日本では、発達障がいを抱える子どもでも、他の生徒と共生するなかで、一歩ずつゆっくりと成長を促してきました。

しかし、近年では発達障がいという言葉が世に広く認知されたことで、有名なもので言えば、「ASD(自閉スペクトラム症)」や「ADHD(注意欠如多動症)」といったようにカテゴライズの細分化が進み、別ルートの生き方が定義されました。結果、発達障がいを抱える子どもは多様な環境に身を置いて一緒に生活する機会が減ってしまいました。

すると、子どもたちは、「ゆっくりでも良いから伸びていく環境」ではなく、「ゆっくりした子どもたちしか集まらない均一な環境」で過ごすことになります。これが結果的に、かえって発育がすすまなくなってしまう原因となったのです。

谷口加えて松本さんは、学校現場で教師と生徒の教える・教わるの一方通行のパイプラインしかなくなりつつある、という課題感にも言及されていましたよね。

以前であれば、仮に勉強が苦手な子どもも、得意な子どもから教わる機会があったはず。特別支援学級が発展することで、両者は分断される傾向にある。結果、友だちと切磋琢磨しながら思考を深める経験も少なくなったと。

松本そうですね。私が考える理想的な教育とは、社会と自分を隔てる様々な壁との正しい向き合い方を教えてくれる環境のことです。時にはあえて壁を用意してあげたり、競争する環境を用意できるのが、教育の真価だと思うんです。

子どもたちが悩んでいる一番の奥底になにがあるのか。そこにアプローチして環境を変えることで、子どもたちは自ら目指す未来を描くようになる。そうすれば社会はよくなるはずだと確信しています。

自分がやりたいことを否定されずに、自らの意志で冒険するように行動でき、実感を持って学べる社会を作れたら、日本は捨てたものではないと思います。

谷口氏は学生時代、発達障がいを抱える子どもの家庭教師をしていた経験もあるなど、ユナイテッドの中でもこの領域に対する思い入れが人一倍強い。起業家である松本氏の“意志”に寄り添いながら、同じ視座で議論を深めることができる若手キャピタリストはそう多くはないだろう。

谷口少なくとも私が大学時代で子どもの発達障がいについて学んでいた数年前までは、「発達障がいは治らない」という前提にたった上で、「いかに社会性を身につけるか」を論じていました。

しかしGTSが試みているのは、その前提を180度覆しうるもの。しかも、障がいを“マイナス”と捉えてゼロに近づけるという思想ではなく、子どもの特性を活かしてプラスに変える、またはプラスをさらに伸ばすようなアプローチなんです。

SECTION
/

子どもの成長を促し、社会に雇用を創出し、障がいを抱える人々の生きづらさを解消している

ユナイテッド×GTSで繰り広げられる未来の教育の在り方に関しての議論は、国の障害福祉サービス費等の報酬算定構造にまで広がった。児童発達支援の現場も、病院などと同じように、点数制によって施設に支払われる報酬額が決まっているというが──。

松本例えば、先ほど井上さんがお話ししていた“子どもを預かる託児所に近いサービス”の点数と、GTSのように子どもたちの成長に積極的に取り組んでいる施設の点数が、まったく同じなのです。点数が成果に応じて傾斜配分されておらず、現場の改善に対するインセンティブ設計がなされていないんです。

この環境下では、工夫を凝らす発想そのものが生まれず、むしろ工夫を凝らせば仕事が増えると感じて、余計な提案はしない組織になってしまう危険性があります。これは子どもの未来を鑑みると由々しき問題ですよね。

GTSが創業事業として取り組んだのが、運動を通じて発達障がいやグレーゾーンの改善を目指す子どもの運動教室「LUMO」だ。児童発達支援と放課後デイサービスという制度を活用しながら運営されている。

また事業を進める中で、「子どもたちが大人になっていった先の自立の問題が心配だ」という親たちの声を聞き、就労移行支援事業「LUMO+」も開始した。

運動療育により苦手の克服、意志の構築を目指す「LUMO」。ビジネススキルやITスキルを習得することで就労移行支援を目指すプログラムや、自社でまちの弁当屋を展開することで雇用を自ら創出する「LUMO+」。これらの両輪からのアプローチにより、発達障がいを抱える人々の支援〜雇用の創出を実現しているのだ。

松本発達支援の必要な子どもたちの親御さんは、「自分の子どもが生きづらいのは自分や家庭のせいだ」と思ってしまっている場合が多いのです。

そんな方々でも、我々の施設に通っていただき3カ月も経てば、「生きづらさがなくなった」とおっしゃってくださる方が非常に多いです。私たちも「子どもたちはしっかり成長していきますよ」と親御さんに伝えられますし、とても感謝していただけることが私たちのモチベーションですね。

まだまだ我々が生きる社会においては、障がいを抱える子どものことを人前では話しづらい風潮が残っているかもしれない。それでも、子どもの成長を促し、社会に雇用を創出し、障がいを抱える人々の生きづらさを解消しているのがGTSなのだ。

もちろん社会的意義の高さだけではなく、事業としての伸び代という観点でも、GTSのポテンシャルは計り知れない。

谷口発達障がいは、社会の中で生きづらいこと自体が非常に大きな課題となります。また、障がい者雇用支援サービスの市場規模は推定7,500億円とも言われており、年々、増加傾向にあります。社会的意義はもちろんのこと、あえてドライに事業としてのポテンシャルという観点だけでみても、期待がもてる分野だと言えます。

井上少子化の進行、それに反比例して増加する特別支援教育を受ける児童の数、そしてその市場規模の大きさが大前提ではありますが、このマーケットにおいて、例えば松本さんご自身の運動領域での経験(接骨院・ジム経営経験)などのGTS経営陣の強みを活かしつつ、当社の支援の掛け合わせにより「勝負ができる」と思ったポイントが3つあります。

1つ目は、経営課題の抽出や経営管理などの経営基盤構築。2つ目は、校舎拡大に向けた出店戦略策定や、本部と各校舎間の連携強化による事業グロース。3つ目がデジタル化やオペレーション改善による収益力の向上。この3つを支援することで、GTSが本領域において大きな事業成長を成し遂げることができると確信を持てました。

2023年に10月には、ユナイテッドをリード投資家とする2.1億円の資金調達を実施したGTS。今回の資金調達により現在大阪・東京を中心に14校舎を展開する「LUMO」を、2024年7月までには29校舎、2025年7月には49校舎展開を予定するなど、さらに事業を加速していく予定だ。

SECTION
/

科学的根拠はなくとも(ない段階でも)、起業家の“熱”は嘘をつかない

取材時間のほとんどの時間を教育の未来について熱く語る3名。時間が許せば、まだまだ議論は発展したことだろう。ここではあえて話を戻し、GTSとユナイテッドの出会いについても聞いていきたい。

創業当初のGTSは、投資家探しに苦心していた。松本氏にとっては確信であった、3歳の子どもが運動によるアプローチにより心身ともに成長していく効果も、その時点では科学的に証明することは難しかったのだ。

松本私たちの仮説では、これまで繋がっていなかった何らかの神経細胞が、運動によって繋がったのではないか、と考えていました。それで、運動を通じたカリキュラムを推し進めてきたわけです。

しかし、GTSがさらに全国展開を目指すには、気合と根性論だけでは難しく、科学的なエビデンスの取得が必要だったのですが、この過程はもっとも苦労しましたね。アメリカやヨーロッパの文献を当たっても「改善する可能性がある」止まりで決定的な根拠を押さえるまでには至らず、八方塞がりでした。

そんなとき、2021年冬頃に出会ったのが、発達障がい及びグレーゾーンの子どもへの療育の権威、今ではGTSの公式アドバイザーとして社外取締役にも就任いただいている医師 本間龍介先生でした。

私たちの仮説は、もしかしたら*プリミティブ・リフレックス(原始反射)ではないかと教えてくれたのです。それ以降、原始反射を根拠に展開しようとなったのですが、やはり原始反射自体もまだまだエビデンスが少なく、自分たちで証明するために研究をはじめたんです。

*プリミティブ・リフレックス(原始反射):乳幼児が刺激に対して反射的に起こす動きのこと。赤子は脳の発達が未熟なため、原始反射によって生命を維持し、発達を促していると考えられている。

ゆっくりとマイペースで研究や事業成長を進める選択もできたかもしれない。しかしそれでは、変わることのできるポテンシャルを持つ子どもたちにとっては、大きな機会損失になってしまう。

現状のままの成長スピードでは、世の中や社会を変えるには遅すぎる。どうにかして投資家を募る必要があった。しかし一方で松本氏は、成功事例を作ってからでないと出資を受けるのは難しいとも考えていたのだ。

資金繰りの面でもショートしかねず、不安があった。そこで、いくつかの成功事例が出てきた2022年春頃のタイミングから、賛同してもらえるパートナー探しに奔走した。

松本なかなか変わらない現状に対して、自分たちがスピードを上げないと、やっぱり子どもたちが可哀想なんです。それで、お力添えをしていただける投資家を探すことになったのですが...ユナイテッドさんと出会うまでは、相当な苦労がありました。

そんな折に、松本氏の兄と、ユナイテッド代表 早川氏の親交が深いという縁から、ゴルフに誘ってもらう機会があり、ユナイテッドとの関係が始まったのだ。

松本早川さんはとても器の大きい方で、善進投資に信念を持って取り組んでいるように思えます。年下の私に対しても敬語で話してくださり、私のアイデアを常にポジティブな言葉で肯定してくださる。それだけでなく、ゴルフのキャディさんに対する優しさも見ていると、本当に懐の深い方なのだなということが伝わってきます。

もちろん投資もビジネスとして行っているとは思いますが、早川さんはじめユナイテッドさんは経済的なリターンだけを求めている方々ではないことが、言葉の節々から伝わってくるんです。

こんな素晴らしい経営者がいる会社に支援してもらえたら、どんな困難も乗り越えてチャレンジしていけそうですし、それは必ずや子どもたちのためにもなる。そんな想いから、どうしてもユナイテッドに出資をしてもらいたく、懸命に想いを伝えていきました。

最初の早川氏との出会いから投資が実行されるまで約半年。ユナイテッドが投資を決意したのは、まだ「エビデンス」を取得する前の話だ。

松本つい先日になってようやく、原始反射と自閉症が相関するという論文が発表されたんです。世界でトップ5に入るイギリスで権威ある論文誌に掲載された論文です。自分たちのやっていることは間違いない、と確信を持てた瞬間でしたね。

ここまで我々を信じて投資いただいたユナイテッドさんをはじめとする投資家さんと、この日を迎えられて本当によかったなと思います。

確信を得て以降は、スタッフに対しても今まで以上に「自分たちのやっていることは間違っていない、胸を張って頑張っていこう」と言えるようになったという。

追い風を受けたGTSとユナイテッドが次に推し進めるのは、エクイティストーリーの作成と店舗拡大の戦略だ。

SECTION
/

社会起業家にとって“時間という資産”を持てるか否かが、事業の生命線

井上もちろん、投資家としてはIPO等でのイグジットにてキャピタルゲインを狙いにいきます。それは投資先企業にとっても資金調達の機会でもあるのです。一方で、投資先企業がイグジット後も継続的に事業成長を続けていくために、どのようなタイミングで上場を狙いに行くのかは経営者と投資家で深い議論が必要です。

GTSの場合、目先の利益だけを追求して急成長を志向すると、子どもたちにとって目の行き届かないサービスになってしまう可能性がある。

今後GTSが事業成長を続けていくために、いくつかのポイントが存在します。順序良く着実にステップアップすることで、さらに大きなビジネスチャンスを呼び込める。先ずはサービスや事業の価値を創り上げ、世の中から適切に評価される状態にしていくことが大切です。実現にはそれなりに時間を要する前提で考えていますし、当社として、そのステップをいかに速く、確実に登るための貢献をしていきたいと思っています。

ユナイテッドは、事業会社かつ自己資金による“直接投資”というファンドの満期がないスタイルで投資実行が可能だ。これにより、GTSや前回記事で登場した有機米デザインのような社会を大きく変化させるべく、一定の時間を要する事業に投資が可能となる。起業家にとってこの“時間という資産”を持てるか否かは、事業の生命線と言えよう。

そして、もちろんユナイテッドと言えば、これまでのFastGrowの連載でも再三に渡って語られてきた通り、ハンズオン支援を強みとしている。とはいえ、実店舗数を拡大していくというリアルビジネスの要素が強いGTSの事業に対して、ITビジネスに強みを持つユナイテッドはどのような角度から貢献することができるのだろうか。

松本ユナイテッドさんに投資家として支援いただいてから、“数字への意識”と“仕組み化への取り組み”が見違えるように高まりました。

多店舗拡大を図る上で、出店先の検討や、店舗の立ち上げ、運営のオペレーションにおいて、再現性を高めながら精度を磨き上げていかなければなりません。

それだけでなく、本部と各校舎のデータ連携の強化、またアナログ業務のデジタル化など、なかなか自分たちだけでは推進しづらい施策も、支援いただきました。

また、店舗拡大にあたってはミドルマネジメント層(校舎長)の育成が必要なわけですが、メンバーの育成手法なども日々、壁打ちをしてもらっています。

井上投資事業のキャピタリストチーム、バリューアップチームのメンバーで構成される投資先支援組織UVS(UNITED Venture Success)が、経営・現場に入り込み経営判断や施策実行を支援させていただいています。現状の療育領域の事業拡大を考えたときに、やはり経営基盤の構築・店舗拡大とそれに伴うマネジメント・デジタル化や効率化などによる収益率の向上がビジネス上の重要な鍵となりますからね。

経営チームとは隔週、現場間では週に3〜4回ほどはコミュニケーションの場を設けていただき、多角的に事業成長に向けた議論をしています。

谷口事業領域が異なっても、第三者であり、株主でもある私たちの立場だからこそできることは意外と多いですね。

例えば、松本さんをはじめとした経営陣は当然のごとく数字を追わなければならない一方で、子どもと触れ合う現場の社員の方々はやはり経営よりも目の前の子どもたちを助けたいという想いのほうが強い。

現場から得られた貴重な意見を、実際の経営にどう落とし込んでいくかなど、第三者だからこそ提案・検証できることもあります。

松本少し違う角度からですが、ユナイテッドさんはみんなコミュニケーションが快活ですね。日々会話するシーンでも、何のために話すのか、何が聞きたいのか、何のためにこの質問をしているのか...具体例をあげるとキリがないですが、みなさん会話の目的が明確で確実。

日々のコミュニケーションにおいて、意思疎通がしっかりとできているからこそ、「私たちがユナイテッドさんにやってもらいたいこと」がすごく明確になり、ご相談しやすいんです。

SECTION
/

キラキラした存在よりも、社会を土台から支える人たち

取材も終盤にさしかかる中、松本氏は、この国の生活インフラを支えるような、誰かが必ずやらなければいけない社会的意義の大きい事業に挑むなら、一度はユナイテッドに相談して欲しいと未来の起業家に向けてメッセージを残した。

松本国や地域にインパクトを残す事業を作りたい、そんな想いを持つ起業家の方はぜひ一度ユナイテッドさんに相談してみてほしいです。

相性が良いのは、この国の経済や社会を引っ張るキラキラした存在というよりも、我々のように社会を土台から支える人たち。そんな人たちこそ、ユナイテッドさんを知って欲しいなと思います。

井上現代の日本はとても多くの社会課題が存在していますが、これは世界の先進国もいずれかのタイミングで直面するような課題とも言える、つまり、日本は「課題先進国」だと捉えられると思います。

そんな日本を「課題解決先進国」にすることができたら、前向きで明るい世の中になりますよね。そのためにはスタートアップの成長・成功が不可欠だと思いますし、チャレンジをバックアップする仕組みも必要です。我々は投資事業を通じて、社会課題解決をする起業家の方々の強い意志を実現していきたいと考えています。

そして、投資先企業がしっかりと利益を出せるビジネスにし、継続的に事業展開できるよう、私たちも支援を惜しみません。

ユナイテッドはパーパスに合致し、社会的意義と経済合理性の両立を図れる企業であれば、積極的にシード期からリード投資家として入る。GTSにはシードステージからリード投資家として入り、追加投資も実行済みだ。

もちろん、投資事業としてのポートフォリオを拡充すべく、一部の案件ではシビアにレイター投資や、他のファンドへのLP出資といった選択肢も使い分ける柔軟さを持ち合わせている。しかし、パーパスに則ってユナイテッドが投資する必然性を感じた事業には、アーリーステージから積極的にリード投資家として入っていくのだ。

障がいを持つ子どもにまつわる社会課題解決という、一見するとビジネスと遠そうな福祉性の高い事業にも、成長の余地がある。ユナイテッドは、パーパスとの合致、経済合理性の高さ、そして社会的意義の高い事業への投資と支援を通じて、社会の善進に寄与するのだ。

今回のユナイテッド、出資の決め手

  • 社会的的意義の大きさ
    多くの支援施設が“子どもを預かる託児所に近いサービス”に止まってしまっているという現状に対して、発達障がいを抱える人々の支援〜雇用の創出を実現している
  • 創業者松本氏の意志
    発達障がいをニューロダイバーシティ(脳の多様性=個人レベルでの様々な特性の違いは多様性)と捉え、障がいを“マイナス”と考えてゼロに近づけるという思想ではなく、特性を活かしてプラスに変える、またはプラスをさらに伸ばしていきたいという松本さんの強い想い
  • 市場のポテンシャル
    少子化が進む一方で、特別支援教育を受ける子どもの数はここ10年で約2倍に増加し、その規模は推定7,500億円とも言われる障がい福祉市場のポテンシャル

こちらの記事は2024年02月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

山岸 裕一

写真

藤田 慎一郎

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

新規会員登録/ログイン