開発はゴールではなくプロセス──全員“事業家”を標榜するネクストビートの開発組織と、プロダクトグロースの仕組みに迫る

インタビュイー
三井 陽一
  • 株式会社ネクストビート 執行役員 CIO/VPoE 

東京大学理学部卒。1997年、テニススクールのコーチとして社会人のキャリアをスタート。ITエンジニアに転身後、スタートアップ2社において、テックリード/CTOとして様々なプロダクト開発に従事。その後、株式会社ラックにおいて8年半に渡りサイバーセキュリティのプロダクト開発・研究開発を推進。クラウドマネージドサービスのトップベンチャーである株式会社FIXERを経て、2020年3月、CIO兼VPoEとしてネクストビートに入社。CISSP, CCSP, CISA, CISM, PMP, 知的財産アナリスト。

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「エンジニアとして、事業成長にこだわり開発したい」。もしそんな想いを強く抱いているとすれば、その考えを重視している組織かどうかは気になるところだろう。技術を「手段」と捉え、顧客への価値貢献に重きを置いた開発ができる環境はどこにでもあるわけではない。

では、エンジニアがプロダクトの開発方針や事業戦略にまで積極的に関われる環境は、どのような組織に存在するのか? 実際にそうした価値観を重視して事業拡大を続けているのが、人口減少社会における課題の解決をミッションに掲げ、ライフイベント領域を中心に多様な事業を展開するネクストビートだ。

2020年3月にネクストビートに参画し、同社のシステム・組織基盤を強化してきたCIO兼VPoEの三井陽一氏は、「当社のエンジニアは、事業成長への当事者意識を大切にしている」と強調する。

CTOやテックリードとしてさまざまな企業でプロダクト開発に携わってきた三井氏に、ネクストビートの事業の特徴と開発組織について詳しく話を聞いた。

  • TEXT BY ICHIMOTO MAI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY KEISUKE SHIMADA
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技術はあくまで手段。
エンジニアも事業での価値貢献を意識すべき

「正直なところ、昔は自分がいかにハッピーな人生を送るかしか考えていませんでした」。三井氏はネクストビートに入社する前の自分を振り返りこう語ってくれた。同氏がネクストビートにジョインした理由は、自身の価値観の変化にあったという。

三井子どもが生まれたことで、「このまま自分のことだけを考えて生きていて良いのだろうか?」と考えるようになったのです。子どもには幸せな人生を歩んでもらいたいですし、その子どもがいずれ親となり子育てをする立場になることを考えると、日本が抱える社会課題を自分の世代で少しでも解決できないかと思うようになりました。ネクストビートのことを知ったのは、まさにそんなタイミングでした。

三井氏は1997年に東京大学理学部を卒業したのち、複数のIT企業でキャリアを重ねてきた。従業員2,000人を超える大手ベンダーから数人のスタートアップまで、あらゆるフェーズの企業を経験した結果、「自分にはベンチャーの環境が合っている」という肌感があったという。そんな三井氏にとって、ネクストビートで働くことはまさにビジョンとカルチャー両面の希望を叶えるものだった。

入社後はシステム面の基盤整備に取り組み、全国11拠点のメンバーが快適に業務を行えるようにネットワーク環境を改善。コロナ禍のリモートワークシフトも推し進めてきた。直近ではCRMの全面リニューアルを手がけるなど、日々拡大するネクストビートの組織全体をCIO兼VPoEとして支えている。

これまで数々の開発現場を経験してきた三井氏だが、ネクストビートのエンジニア組織のカルチャーには入社直後から驚かされたと言う。

三井エンジニアが事業の話をする機会が多いことに驚きました。例えば、これまで経験した職場では、若手エンジニアが事業のPLを語ることなど、ほとんどありませんでした。一般的には、技術への関心は高いものの事業の数字には関心が薄いエンジニアは少なくありませんが、ネクストビートのエンジニアにとって事業での価値貢献は自分ごとなのだと感じました。

大事なのは事業を通じてどのような価値を生み出すかであり、技術はあくまで「手段」に過ぎない──。そんなマインドが組織に自然と染み付いているのは、役割に関係なく一人ひとりが事業への貢献実感を得やすい環境があるからだろう。

三井当社では、各プロダクトチームはコンパクトな開発体制を敷いています。少人数のチームなので、営業やカスタマーサクセスからあがってくるユーザーの声やインサイトをダイレクトに受け止めて、そこで浮き彫りとなる課題と向き合う必要があります。

また、お客様から直接フィードバックを受けるユーザー会にエンジニアが参加することもあります。ユーザーのリアルな声を常に意識しながら開発し、事業運営しているからこそ貢献実感を得やすく、開発のモチベーションにもつながるのでしょう。この循環こそが、当社の事業成長のコアだと言っても過言ではありません。

こうしたネクストビートの柔軟かつ機敏な開発は、事業戦略上も重要だ。

三井大筋の開発ロードマップはありますが、それが一年間変わらないということはまずありません。ユーザーからのフィードバックや外部環境の変化を踏まえ、プロダクトをマーケットにフィットさせていくことが事業戦略において極めて重要だからです。そのために、事業の収益を次の機能開発に投資して、継続的改善によりプロダクトの質を高めています。

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磐石かつ多様な顧客基盤が、
プラットフォームへの進化を加速させる

ネクストビートはミッションに掲げる「人口減少社会における課題の解決」に向けて、さまざまな事業を展開している。その実情を探るべく、三井氏に3つの事業について掘り下げてもらった。

キズナコネクト
保育園・幼稚園向けの業務支援システム
キズナシッター
ベビーシッターマッチングサービス
キズナメディア
子育て世代向けメディア

※『キズナコネクト』、『キズナシッター』、『キズナメディア』は、株式会社ネクストビートの事業である『KIDSNA』™が展開するサービスの一部です。

一つ目の『キズナコネクト』は、保育施設向け業務支援システム。アナログなオペレーションが未だに多く残る保育施設に対し、職員のシフト管理から児童の登降園管理、写真整理などの幅広い機能で保育士の業務負担を軽減するサービスだ。

三井特に力を入れているのは、シフト管理や出退勤管理などの労務管理機能です。保育の現場には延長保育などの変則的な運用があり、児童数によって配置する職員の数が法律で定められているなど業界特有の事情も多くあります。これをシステムで完結できるようにすれば、煩雑なシフト管理など管理者の負担を減らせるだけでなく、保育士の働き過ぎも防止できます。

労務管理機能の利便性にこだわって開発を続けてきたのには、子どもを生み育てやすい社会を実現するためという理由もあります。保育施設の労働環境が健全でなければ、保育士の数自体が減っていってしまう。そうして子どもを預けにくい状況になれば、生み育てるのも難しい世の中になってしまいます。

二つ目の『キズナシッター』は、ベビーシッターと保護者のマッチングサービス。類似サービスとしてシッター派遣型のビジネスモデルは多く存在するが、ネクストビートはCtoCモデルでサービスを提供している。登録シッターが保育士や幼稚園教諭、看護師といった有資格者に限定されている点も、大きな差別化ポイントだと言える。

三井登録シッターは働く時間を自由に決めることができるため、フルタイムで働けない事情を抱える保育士でもフレキシブルに働くことが可能です。海外では当たり前のように利用されているシッターサービスですが、日本でも気軽に安心して利用できる状態を作りたいと考えています。そうすれば、子どもがいても保護者のライフスタイルに制約が生まれにくい状態を提供できるでしょう。

三つ目は、子育て世代向けのWebメディア『キズナメディア』だ。子供の健康や教育に関する有益な情報に加えて、子育てを楽しくするアイデアなども日々発信している。

三井いざ子育てが始まると、日々の慌ただしさから時間的制約や家事負担などネガティブな側面に目が行きがちです。でも本来、子育てはものすごくハッピーな出来事のはず。子育て中の保護者の生活をより豊かなものにできれば、子育てに関わる幸せを実感してもらいやすくなると考えています。

人口減少社会の課題を解決する上では、子どもを生み育てる保護者へのアプローチは欠かせない。今後はWebメディアの他にも、子育てフレンドリーなトラベル予約やショッピングなど、新たなサービスを検討していくという。

三井中期的にはサービスを統合し、子育てに関する便益をシームレスに提供できるプラットフォームを目指しています。

自社サービスのプラットフォーム化は、多くのスタートアップにとって悲願でもある。ネクストビートにそれを実現する見通しがあるのは、市場の先行者として築いてきた確かな顧客基盤があるからに他ならない。

三井保育園、保育士といった保育業界関係者だけでなく、保護者も含めた子育てに関わるユーザーを多面的に獲得できているのは当社の強みです。例えば、保育士はあるときはシッターにもなり得ますし、保護者としてサービスを利用する可能性もあります。また保護者は、Webメディアで情報を参照することもあれば、シッターとのマッチングを利用することもあります。このように、子育てに関わるユーザーに対して二重、三重に提供できる便益を持っていることが、当社の強みであるといえます。

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プロダクトを“次々と”生み出す開発組織と
理想的なキャリア選択

未来の「ふつう」を次々と。──ネクストビートがステイトメントとして掲げるこの言葉は、同社の開発スタイルそのものだ。

三井複数の事業を展開する当社においては、並行稼働するプロダクトを適切にマネージし、いかにスケールしていくかが鍵となります。例えば、ScalaのOSSライブラリ「IxiaS」を社内共通で用いることで、短期間で一定の質を担保する開発が可能になります。また、複数のプロダクトにおいて、採用する技術スタックは基本的に統一しています。これにより、プロダクト間のエンジニアの異動も比較的柔軟に実現できますし、将来的にそれぞれのサービスを統合してプラットフォーム化する際に、事業間の連携をスムーズに推し進めることができるでしょう。

また事業が次々と生まれるからこそ、エンジニア一人ひとりが理想とするキャリアを手に入れるための選択肢は豊富だという。

三井当社のエンジニアは、全員がフルスタックエンジニアです。お客様にスピーディーに価値提供するためには、フィーチャー単位の短期間での開発が不可欠なので、「新しい価値を届けるために必要なこと」は全てできなくてはいけません。

開発中のプロダクトは常に複数あります。新規開発のプロダクトもあれば、事業がある程度成熟して保守運用がメインのプロダクトもあるため、立ち上げからグロースまで、さまざまなフェーズを経験できます。

プロダクト開発に関わるほぼ全てのエンジニアがサーバーサイド、フロントエンド両方の開発に携わるのは当たり前。それに加えて、クラウドインフラの設計・構築・運用を手がけるエンジニアも多い。決して楽な環境ではないことは言うまでもないが、それだけスキルアップのチャンスは豊富にありそうだ。三井氏は一人の若手エンジニアについて話してくれた。

三井ある開発プロジェクトを立ち上げる際に、エンジニアの社内公募をしたんです。明らかに困難なプロジェクトなので、事前にその旨ははっきりと伝えていたのですが、20代中盤の若手の一人が手を挙げてくれました。

彼はそのチャンスをものにしようとモチベーション高く取り組んでくれています。プロダクトはもちろん、彼自身も圧倒的なスピードで成長しているのは誰の目にも明らかです。

指示された通りに開発するのではなく、若いうちから自分でどうするかを決めながら開発を進めていくのは、かなり刺激的な体験だろう。だからこそ、エンジニアとしての視野は縦にも横にも広がっていく。

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安定や手堅さはない。
ビジョン解像度を高め、常に自分をアップデートする選択を

「エンジニアに限らず、当社に入社する方にはビジョンやカルチャーに対する共感を求めたい」と語る三井氏。ネクストビートで活躍するには、ビジョンへの解像度をどれだけ高められるかも大事になりそうだ。

三井漠然と「社会貢献したい」と考えている方は多いと思いますが、人口減少社会の課題を自分なりに突き詰めて、自分だったらこういう貢献ができると説明できるぐらいまで深く考えて欲しいですね。なぜなら、それがそのまま価値貢献するうえでのモチベーションになるからです。

当社の事業内容から「安定」や「手堅さ」というイメージを抱くかもしれませんが、実際の社風は真逆です。決まっていないことを決めたり、やったことのないことに取り組んだりする機会が多いので、それを成長のチャンスと捉えて、ポジティブに発奮できる人に来てもらいたいと考えています。

だが、決して一方的にスキルアップを求めているわけではない。三井氏は自分の得意分野を活かしながら、伸ばしていきたい分野にもチャレンジできるようにするための制度設計を進めてきた。

その一つとしてエンジニアが週2時間、業務時間中に勉強できる「夕学」(せきがく)という制度がある。個々の学びを促すだけでなく、IoTの勉強会が開催されたり、メイン言語であるScalaの元となる数学理論を学ぶ場が設けられたりと、自発的に学ぶ動きも生まれている。

三井昨年から、シニアエンジニアを対象に週休3日制も導入しました。給与は変えずに、スキルアップのための時間を提供することで、マネージャー相当以上のエンジニアが自らの学習・成長を通じて、開発組織を更に引き上げる先駆者になることを目的としています。

「技術はあくまで手段。“刀”は常に磨き上げておかなければならない」。そう話す三井氏はこれまでの豊富な経験を通じてエンジニアが伸びる環境を知り尽くしている。だからこそ、思い切った制度を導入できたのだろう。

技術への高い関心はもちろん、技術を使って事業を成長させることにこだわりたい。そんな強い意志があるのであれば、一日でも早く自身の想いにフィットする環境に身を置くのが吉だ。さらなる進化を続けるネクストビートは今、社会課題に対する「当事者意識」を持つエンジニアとの出会いを心待ちにしている。

こちらの記事は2021年08月20日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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フリーライター。1987年生まれ。東京都在住。一橋大学社会学部卒業後、メガバンク、総合PR会社などを経て2019年3月よりフリーランス。関心はビジネス全般、キャリア、ジェンダー、多様性、生きづらさ、サステナビリティなど。

写真

藤田 慎一郎

編集

島田 啓佑

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