「何社もインターン行って意味あるの?」
と感じた学生こそ、
本当に行きたい会社を見つけられる理由

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インタビュイー
杉山 秀樹

慶應義塾大学を卒業後、新卒で大手メーカーに入社したが1年足らずで退職し、ドリコムに入社して約9年間従事。営業およびマーケティング、経営企画、広報/IR、HRに携わる。その後、エスクリでHR責任者を経て、パナソニックに入社し現職。

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1990年代の終わりまで、日本には影も形もなかったインターンシッププログラム。

それが近年では就活へ向けたマストアイテムであるかのように認識され、夏休みともなると多数の学生がかけもちで参加するようになった。

そんな中、日本の大企業としては初めてインターンシッププログラムを開始したパナソニックが、「インターン信仰」のような現状に「物申す」と名乗り出た。

  • TEXT BY NAOKI MORIKAWA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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インターンに参加するのは、もはや「普通」と気づくべき

1997年、日本の大企業として初めてインターンシップのプログラムを実施したのがパナソニックですよね? 今では外資系はもちろん国内系の大企業もベンチャーも、何らかの形でインターンシップ的な催しを開いていますが、杉山さんはそこに殺到する学生に疑問を持たれているとか?

杉山誤解しないでくださいね。「インターンなんて行かなくていい」と思っているわけではないんです。パナソニックでは今年も8月下旬以降、2タイプのインターンシッププログラムを実施します。実際の職場に入ってもらうOJTタイプと、計5日間を通じてリアルな仕事体験をしてもらうワークショップタイプの2つなのですが、どちらも募集人数を大きく超える応募をいただきました。

そうした状況をHRの人間として素直に嬉しく思います。ただ近年、新卒採用に臨む学生の皆さんの動向に疑問を感じているのもまた事実です。

何に疑問を感じているんですか?

杉山ストレートな言い方をしてしまえば「(インターンに)行けば良い」「たくさん行ったほうが良い」「行かないと就職できない」といった呪縛に囚われているのではないか、という疑問です。

今や当該年代の学生の7割がインターンシップを経験しています。要するに、たいていの学生がインターンシッププログラムに参加しているわけですから、インターンに参加するのは「普通」なこと。ですから、噂や思い込みで「インターンに行った者だけが有利になる」なんて発想が誤りだということはすぐにわかるはずです。

ちなみにパナソニックはもともと就業観の醸成のためにインターンシップを実施しているので、有利になるとかはそもそもありません。純粋に、私たちの会社に「どういう人」がいて「どんな仕事」を「どのように実行している」かを知ってもらうことを目的にインターンシッププログラムを実施しているんです。

パナソニックがそうだとしても、他社は違うかもしれませんよね?事実、倫理協定などの縛りとは無縁な外資系企業やベンチャー企業などでは、事実上の「選考」を実施していると聞きます。

杉山おっしゃる通りです。それらの企業の中にはきちんと採用との関連を明示している企業もありますので、そうした企業にいきたい学生はインターンシップを手段として活用すればよいと思います。

一方で当社と同様に、選考プロセスとは一線を引いた姿勢でインターンシップを実施している企業も多数あることは、あらためて伝えたいと思います。採否が決まるような気持ちでインターンに参画している学生にとっては肩すかしをされた気分かもしれませんが、私の知る限りでも多くの企業がインターンシッププログラムを選考とは切り離して実施しています。

そして、選考プロセスに関わっているか否かとは無関係に、学生の皆さんに伝えたいのは「インターンシップはその会社の実態を知る機会」という意識を強くもつべきということ。その機会を活かすためにも、まず自分自身に「そもそも、自分は何のためにインターンシップに行くのか?」と問うてもらいたい。インターンシップの場で採用してもらうための振る舞いに終始してしまうようではもったいない。どういう仕事を、誰がどのように行っていて、自分はそれをどう感じるのかを知るための場にしてほしいんです。

その返答が、「周りのみんなが行くようだから自分も」というものだったとしたら、もっとしっかり考えたほうがいいよ、ということですね。

杉山はい。「皆が足繁く複数の企業のインターンに出かけていくのに、自分だけ行かないと不安になる」という気持ちはわからないでもありませんが、もっと冷静に現状の採用市場を理解しておいたほうが良いと思います。

多くの企業が人手不足に悩んでいますから、自社で活躍しそうな方に出会えば前のめりで採用したい、他社に行かれたくない、という意識にかられるのは人情ですし、メディアもこの潮流を取り上げて、早いうちから積極的に行動することを後押しするような空気感が生まれています。だからこそ当の学生は自問自答をすべきだと言いたいんです。

そうではない学生が多い、と感じているからこそ、杉山さんは訴えているわけですね?

杉山そうです。「行かなきゃいけないムードだから行く」「将来何をしたいのか、どうなりたいのか、自分自身でもわからないからとりあえず行く」。私は、この2つが大半の学生の本音じゃないかと捉えています。前者の周囲に流されるだけの理由でインターンに参加するのでは意味がないですし、後者の学生にもインプットを無為に増やす前にまず自分自身に問いかける機会を持ってほしい。その上で自分なりの行く理由をもってインターンに参加できるとよいですよね。

なるほど。「インターンに行く学生にはこうあってほしい」という、杉山さんの結論をまず教えてくれますか?

杉山私が大事にしてほしいと思うのは、インターンでは心が震えるような感動や共感、気づきを得る経験や機会を求めていってほしいということ。心が揺さぶられる経験をすると、自然と自分が為したい事や、こうありたいという姿が直感的に生まれることもあります。漠然としていた想いが、具体的なミッションやビジョンと結びつくこともあります。ものすごく抽象的な話だと自覚していますが、とても重要だと思っているんです。

周りに認められたくて、とにかく世の中で難関といわれる企業や有名企業に入社する、という判断軸を持つ学生も多いと思います。それも一つの選択肢です。ただ、人生100年時代と言われ、仕事の存在感が大きくなる中で、自身が長期的に働く価値を見出せる仕事に携わることこそが人生の長期的な安定や、満足度を高めると私は考えています。そうした仕事を見つけるためにも、何に自分の心が揺さぶられるのか、ざわつくのか、共感するのか。インターンだけに限らず、行動と体験を通じて、自身の心の機微を知ることが一番です。

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「心が震える経験」こそが、将来のキャリアの方向性を示す

杉山さん自身は、就職活動で「心震える体験」をしたんでしょうか?

杉山以前FastGrowでお話をした通り、私自身は新卒時にはそんなことも考えずに、自分の外にあるものさしで仕事を選んでいたと思います。あれから10年ちょっと経ち、いまパナソニックにいるわけですが、この転職理由は心震える体験があったからです。きっかけは子どもが生まれたことでした。

自分で言うのもなんですが、ふだんの私はかなり淡々として冷静なタイプだと思います(笑)。ところが、子どもを授かって半年を過ぎたくらいの時に初めて家族でちょっと長めの旅行をした時に、帰りの飛行機で人前にもかかわらずなぜか涙が止まらなくなった。人生で初めての経験でした。その時は自覚していなかった子供の存在の大きさを、先に心が知っていて、涙があふれたんです。

この時から、自分の仕事選びのものさしは「この子が自分と同じように、家族を持つ30年後、40年後の未来が希望をもてる世界にしていくこと」の一点に集約されるようになりました。それから色々な業界、規模、フェーズの企業の方々と出会い、中でも「A Better Life, A Better World」の実現に愚直につきすすむパナソニックと出会い、気持ちが共鳴し、入社を決めました。

こういう理解で良いのでしょうか?「企業の業績や事業内容は、データ等に触れるだけでもある程度理解できる。しかし、その会社の一員になった時、辛い時でも踏ん張れる、自分の心をポジティブに動かす要素があるかどうかは、インターンや実際の就業体験の機会を通じて知りに行くことが大切だ」と。

杉山はい。何も泣く必要はありませんが(笑)、やっぱり人間は心のありようで左右される生き物ですから、「共感できるか?」「感動できるか?」という判断軸は重要です。こればっかりは企業サイトやメディアや評判だけ見ていても材料として不足します。実際に、会社という空間に足を向けて、そこにいる人と会って、生の言葉や表情に触れた時、初めて自分の心が動くのかどうか確認できる。インターンシップをそういう機会だと思って参加しているのなら、何も言うことはありません。

ただ、この記事にしたってそうですし、社会人が登場するメディアやイベント、そしてインターンシップで見聞きすることに対して、学生の側は「これ本当かな。パナソニックは、自分たちを良い会社だと思ってもらうために盛っているんじゃないのかな?」という疑念を抱きがちです。

杉山素直じゃないですね(笑)。ただ、分かりますよ、そういう疑心暗鬼は。就活をしていれば色々な人が不安になるようなことを言ってくることもあるでしょうし、インターンで出会う社会人は良いことばかり言うかもしれない。情報を多く持っている学生ほど「やすやすと乗っからないぞ」と身構えるのかもしれません。もしそうであれば、いっそのこと就職に関連する情報を絶ち、イベントやインターンシップへの参加をしなくてもいいんじゃないかと思うんです。周りに惑わされず、自分の心に素直になって自由に考え、行動すれば良いと思います。現代は間違いなく情報過多の世の中ですから。

でも、就活自体を止めてしまったら、「どこで働いたら心震える経験ができるか」もわからなくなりますよね?

杉山「何もしなくていい。何も考えなくていい」とは言っていません。例えばインターンに行かずに世界を旅して、そこで出会った人との会話や、壮大な自然で過ごした時間などが引き金になって、「自分は何にワクワクするのか」「どんなときに楽しいと感じるのか」がつかめれば、それもまた人生における選択肢の判断軸になります。

アルバイトやゼミやサークルでの経験からだって、同じように軸をつかむことができるかもしれません。とにかく伝えたいのは、何か行動するなら、なぜ自分がそれをするのかを明確にしようということです。「インターンシップに漫然と行き続ける」だけでは自分の人生の選択軸は見つからないし、「とりあえずバックパッカーして世界を一周」したからといって、何かが掴めることもない。

実際の採用選考で「私はサークルでリーダーをしていました」と語ること自体に意味があるわけではないことは、就活生の皆さんにも理解いただけると思いますが、それと全く同じことです。企業が学生の皆さんに問いたいのは「何をしていたか?」ということではなく、「なぜそれをしたのか?そこで何を感じたのか?その結果、どう行動したのか?」という話なんですよ。

重要なのは「何をしたか」ではなく「そのとき何を感じたか」、あるいは、自分は何を重要と思って人生の意思決定をしているか、ということですね。

杉山はい。感じたことを自覚することも大切なのですが、もっと言えば、それをきっかけにした行動を積み重ねていってほしいんです。「自分という人間は、どういうものに対して心が動くのか」を多様な経験から導き出すことは、短期的な「種火」を見つける作業に過ぎません。「心が動かされる経験」で見つけた「種火」が、長期的に灯し続けられる「大きな炎」になるものか検証するためには、「経験」し「感じた」あとの、「継続的な行動」が必要なんです。

学業も、課外活動も、インターンも、自分の心を動かす「種火」をみつけるための活動の1つ。そこで心が動いた瞬間をしっかり記憶して、「きっと私は、こういうことであれば楽しく続けられるはずだ」と心が揺れたことについて自分で仮説を立て、それが本当か検証するために行動を続ける。この「経験」から「行動」へのサイクルの繰り返しによって、将来に向けた自分だけの「軸」や「志」が見つかるんです。だからこそ、パナソニックのインターンシップでも「体験」を通じて参加者の皆さんに「種火」を見つけてもらい、その後の行動にもつなげてもらいたいと思っています。

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就活に「踊らされる」な。「うまく使って」ほしい

その他に、いま本格的に就職活動を開始した学生に伝えておきたいことはありますか?

杉山就職活動自体を「うまく使ってやる」という意識を持ってほしいな、と。冒頭では「インターンに数多く行けば良いわけじゃない」という持論を伝えましたが、「軸」や「志」を見つけるための「種火」を見つける活動として活用しようというのならば、それに適していると思えるインターンシップを見つけ出して、行動を起こしてほしいと思っています。

例えば、自分の「軸」が「グローバルで働く」ことにあるのだと気づいた学生が、ある企業が実施する海外インターンシップのプログラムに参加するとしましょう。海外で働くことを疑似体験できたことで、その会社に入りたいと強く思うかもしれないし、「やっぱりここではない」とわかるかもしれない。事実、インターンに参加した就活生のうち3割は参加企業への志望度が下がるという調査もありますが、私はそれが正しいインターンシップのあり方だと思うんです。企業が提供するインターンシッププログラムは、「内定を取るために行かないといけないもの」ではなく、学生が「自分の将来を考えるために活用する」ものだと捉えてほしい。

「インターンなんて無意味だよ」と言いたいわけではなく、あくまでも、自分ならではの目的意識や主体性をもって参加してこそ有効に活用できるよ、ということですね。

杉山私はそう考えています。でも、しつこいようですが付け加えて言えば、人生の判断軸を見つけるきっかけとなる「種火」を見つけるための活動は、インターンだけではない、という認識も持っていてほしいです。かつての私がそうだったように、一度社会人になってからでも、何かの「経験」で「種火」が生まれ、転職につながったりもしますが、「学生だからこそできる活動」は、実は身の回りにいくつもあるはずです。インターンシップへの参加は、その中の1つでしかない。先ほど例に挙げたゼミやサークルだけでなく、今いる大学内を見回してみたら、今まで気づいていなかった貴重な活動を見つけるケースもあると思います。

例えばパナソニックは、ロフトワークカフェ・カンパニーとともに「100 BANCH」という、未来志向の実験空間を2017年に開設しました。そこで協働させていただいているロフトワーク代表の林千晶さんが大学で授業をやっていて先日少し参加させていただいたんですが、内容がめちゃくちゃ濃いんですよね。しかも最先端のビジネスの現場の話も盛りだくさん。こんな貴重な授業を受けられる大学生がうらやましくて仕方が無いのですが、知らない学生も多いんですよ。もったいないなと率直に思います。

また、ある海外インターンシップを支援するNPOのプログラムも、聞いてみると実は倍率が思ったよりも低い。チャレンジすれば機会を得られる可能性が高いのですが、それも学生にはあまり知られていない。直接的に就職活動とリンクしていなくても、大学にある寄附講座、NPOやボランティア活動、今だったら起業だっていいかもしれない。心を揺さぶる経験をする機会はインターン以外にも大学生の周りにはあふれていると思います。

とにかく今の自分が利用できるチャンスというものは、貪欲に探してほしい。まず「行動」して、「心揺さぶられる経験」をして、次の「行動」につなげていく。そのサイクルを繰り返せば、心に大きな炎が灯せる仕事が必ず見つかります。そうやって、自分の人生の「志」をもった就活生が少しでも増えることを、1人の社会人、1人の人事担当として、切に願っています。

こちらの記事は2018年08月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

森川 直樹

写真

藤田 慎一郎

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杉山 秀樹
  • パナソニック株式会社 リクルート&キャリアクリエイトセンター 採用ブランディング課 
公開日2019/03/08

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