連載資金調達スタートアップのヨコガオ

アニメ特化の“オタクなAI”で世界へ。20兆円市場のボトルネック「監修」をDXし、日本IPの供給力を解放するAI Mageの“ヨコガオ”

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重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。

FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。

今回は、2025年11月に資金調達を発表したAI Mage株式会社について、その「横顔」をまとめる。

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FastGrow編集部が注目するポイント

注目ポイント1

世界市場で爆発的に伸びる「日本アニメ」のIPビジネス。その成長ボトルネックである「監修業務」を、属人化から解放し産業全体の供給力を底上げするインフラへの挑戦

注目ポイント2

東大松尾研出身の技術力が生み出した、アニメ作品の文脈や設定を深く理解する“オタクなAI”「AGI」。単なる効率化を超え、クリエイターへのリスペクトを実装したプロダクトの思想

注目ポイント3

未踏アドバンスト事業採択の実績に加え、KADOKAWA夏野氏やグリー宿輪氏ら業界の大物も応援。アカデミア発の技術とアニメ愛で、難攻不落のエンタメ業界を変革する経営チーム

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代表を始めとした、同社のメンバーについて

代表取締役CEO 張 鑫(Xin Zhang / ツァン・シン) 氏

調達に際してのコメント

日本の文化を象徴するアニメ業界は、過酷な労働環境や深刻な人材不足といった構造的課題に直面しており、抜本的な改革が強く求められています。一方で、海外では日本アニメへの関心が急速に高まり、需要に対して供給が追いつかない状況が続いています。その結果、海賊版の流通や転売が拡大し、国内のIPホルダーにとって大きな機会損失が生まれています。

こうした状況の中で、素晴らしい作品を生み出す現場に価値が正しく還元される世界を実現することは、私たちが掲げる「物語を通じて人々に希望と勇気を届ける」というミッションを持続的に達成していくために不可欠だと考えています。

もちろん、多くの先人たちが長年取り組んできた難題であり、変革のハードルが高い業界であることは重々承知しています。それでもなお、私たちは、現場の知恵と努力を尊重しつつ、業界の皆さまと伴走する形で、できることから挑戦していきます。そして、AI Mageのソリューションを通じて業界が一歩でも前に進むきっかけを作れたなら、これ以上の喜びはありません。

改めて、現在、私たちを支えてくださっている業界関係者の皆さま、そしてこのチャレンジに共に挑んでくださった投資家の皆さまに、心より感謝申し上げます。

AI Mageは、アニメ作品の理解に特化し、まるで魔術師(Mage)のように必要な情報を自在に見つけ出す“アニメオタクのAI”──「Anime General Intelligence(AGI)」を開発し、アニメ業界の多様な業務を効率化するソリューションを提供しています。現在は、この「AGI」をさらに活用し、アニメ作品の二次利用に伴う監修業務を効率化するSaaSのリリース準備を進めています。

今後も私たちは活動を通じて、日本のアニメ産業が持つポテンシャルを最大限に引き出し、そこから生まれる素晴らしい作品が、より広く世界中のアニメファンへ届く未来を目指してまいります。

プロフィール

2024年3月、東京大学松尾研博士号取得と同時に、東大IPC 1st Round起業支援を受け、法人設立。2023年にアニメスタジオに入り込み、AI技術をアニメ産業に実装する挑戦をリードしている。未踏アドバンスト事業に採択され「アニメ特化検索エンジン」を開発。趣味は将棋。14歳で外国在住者として初の奨励会員となり、プロ棋士を目指して来日。

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調達の概要

プレスリリース
AI Mage株式会社、アニメIPの監修業務をAIで効率化する「AI Mage - 監修システム」のβ版をリリース。併せてシードラウンドをクローズし、計1.7億円を調達
調達額
1.7億円
ラウンド
シード
主な使途
アニメ特化型AI「AGI」の研究開発
プロダクト開発体制の強化
採用の加速
パートナー企業・投資家からのコメント
KADOKAWA株式会社CEO 夏野剛氏
未踏アドバンスト事業の統括PMとして、代表の張さんとはAI Mage社の設立前から関わって来ました。東大松尾研究室の卒業生としての技術力はさることながら、張さんのアニメ業界への情熱と現場に入り込む姿勢には感銘を受けています。
今回同社がアプローチする「監修業務」は、日本のアニメ産業の成長にとって長年ボトルネックになってきた領域です。AI Mage社の構築する「アニメ作品を深く理解するAI」には、監修業務の効率化にとどまらず、日本が誇るIPを世界にライセンス展開していく上でのエンジンになることを大いに期待しています。
グリーエンターテインメント株式会社 執行役員 アニメ事業部長 宿輪浩介氏
代表の張さんとはAIMage設立間もない時期にお会いしました。東京大学の松尾研究室を経て、未踏アドバンスト事業での採択など、AI分野において大きな実績に裏付けされた技術力はもちろんのこと、何よりもアニメに対する強い想いや業界への課題感に共感し、「監修業務」のAI活用の検証を進めてまいりました。
「監修業務」は非常に属人性が高い業務で、どうしても対応できる量に限界があります。AI Mage社のシステムは、この属人性が高い「監修業務」を一般化し、その限界を高めてくれるものになっています。
Globalで大きな成長過程にあるアニメビジネスは、今後、世界中から様々な展開を求められていくと考えています。AI Mage社のシステムは、こうしたトレンドに合わせて、日本のアニメを世界に広げるために必要なツールになるものと期待しております。
株式会社ジェネシア・ベンチャーズ Principal 河野 優人氏
『鬼滅の刃 無限城編』や『チェンソーマン レゼ篇』の劇場版が世界的な大ヒットを記録しているように、日本の漫画やアニメはいまやグローバル市場で最も勢いのあるカルチャーの一つです。世界中の配信プラットフォームで視聴者が増え、グッズ・ゲーム・イベント・二次創作を通じた経済圏は年々拡大しています。同時に、OpenAIのSora2をはじめとする動画生成AIの登場により、誰もがクリエイターとしてコンテンツを生み出せる時代が訪れようとしています。AI生成コンテンツが溢れる未来において、本当に価値を持つものは何でしょうか。
私は、AIによって誰もがコンテンツを生成できる時代だからこそ、ストーリーやキャラクターを共有できる「二次創作の源泉」であるIPの価値は、大きく高まっていくと確信しています。そして、生成AIの登場によりIP権利侵害のリスクも急速に増大していますが、同時に、正規のライセンス利活用による収益最大化の機会もかつてないほど巨大化していくと考えています。
AI Mageは、この大きな構造変化の真っ只中で、独自AIプラットフォーム「AGI(Anime General Intelligence)」を基盤に、監修・許諾・ライセンスマッチングを一体化するという、最も重要な課題に挑戦しています。IPホルダーが資産価値を最大化し、クリエイターに正当に収益を還元できる構造を実現することは、日本の経済力とソフトパワーの中核であるアニメ・漫画産業を支える、次世代の「インフラ」を構築する挑戦です。
張さん、吉澤さん率いるAI Mageチームなら、グローバルな視座でトップタレントを巻き込み、国境を越えたライセンス流通の新たなスタンダードを築くことができると確信しています。
私たちジェネシアも全力で伴走してまいります!
Plug and Play Japan株式会社 相馬 由健氏
張CEOと初めてお会いした2024年7月から、お会いする度に想像以上のご進捗と成長スピードに感銘を受けておりました。日本の成長戦略上も重要とされ、ポテンシャルが大きいアニメ産業は、徐々に技術によるデジタル化が進みつつあるとの見方もされている一方で、変革のハードルが高い業界の一つでもあると我々は認識しています。
そのような環境におけるAI Mage社の着実な進捗は、深い業務理解に基づいた高い品質のプロダクト開発のみならず、パッション溢れる張CEO率いるチームとしての総合力が高く評価されている何よりの表れです。
非常に大きなチャレンジではありますが、AI Mage社とともに心を燃やし、当社の世界各国にまたがる拠点を活用したグローバルな事業展開をはじめ、あらゆるサポートをさせていただきます。
株式会社Headline Japan Investor 川田 祐嘉氏
この度はAI Mage社のシードラウンドに参加させていただき、大変嬉しく思います。日本のアニメは世界中で愛されていますが、その制作現場はいまだ分断的で、DX化の遅れなど多くの課題を抱えています。そうした中で、業界の本質的な変革を進めていくには、アニメ制作者やローカルパートナーを真に巻き込む力が不可欠です。
AI Mage社は、まさにその点において際立っています。張さんの誠実な姿勢と圧倒的な知識量に裏打ちされたアニメへの敬意が、業界のトップクリエイターたちとの確かなパートナーシップを築き上げています。「AIで日本のアニメ業界を脅かすのではなく、支え、還元したい」という信念に、私たちは深く共感し、全力でご一緒させていただきます。
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主なサービス・プロダクト

AI Mage - 監修システム

「AI Mage - 監修システム」は、アニメIPのライセンス展開に伴う監修業務の課題を解決するために開発された。従来、多様なツールに跨って行われてきたコメントや修正指示をプロダクト上で完結させることが可能だ。独自開発のアニメオタクなAI「AGI」が、参考資料の検索やパターン化された監修作業をアシストすることで、担当者の負荷を大幅に軽減し、ライセンス事業の拡大を支援する。

サービスサイト

FastGrow編集部の注目ポイント

  • 独自開発の“オタクなAI”「AGI」が、膨大な作中シーンや設定資料から情報を自動検索し、監修の一次チェックを代行
  • 複雑な監修タスクや修正指示をプロダクト上で一元管理。アナログで属人化していた業務フローを劇的に集約・効率化
  • 日本アニメのグローバル展開における「供給の壁」を突破し、ライセンス収益の最大化に貢献する高い事業ポテンシャル
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採用関連情報

主な募集ポジション
Developer Lead
AI Lead
カスタマーサクセス

採用ページ

こちらの記事は2025年12月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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