DXP構想で「経済価値を最大化」させる──国内最速レベルでのARR10億円到達にひた走るFLUX、代表・永井氏の事業・組織戦略

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永井 元治

慶応義塾大学法学部法律学科卒。米系戦略コンサルティング会社にて、大手通信キャリアの戦略立案・投資ファンドのデューデリジェンス・商社のM&A 案件などに従事。その後2018年5月に株式会社FLUXを創業。マーケティング効率化 SaaS「AutoStream」及び「siteflow」を展開している。

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昨今増え続けるSaaS企業。上場社数も40を超え、日本でも公開される事業の数字が増え、知見もさらに多く共有されてきた。そんな中で、特に重視される指標ARR(Annual Recurring Revenue)の増加スピードが最も速いといわれているスタートアップをご存じだろうか?それが、マーケティングSaaS事業を手がけるFLUXだ。

2018年に4名でスタートした同社は、たった4年で約100名の従業員を抱えるまでに成長。大手日系企業を筆頭に約750社の顧客を持ち、300〜400億PVもの膨大なデータを保有・処理している。その成長スピードに、社外取締役を務めるDNX Venturesの倉林陽氏も「国内最速でARR10億円を達成するだろう」と驚きを隠さない。

だが、今回伝えたいのは、これまでの創業ストーリーや、プロダクトの素晴らしいトラクション、ではない。この企業が「とてつもなく大きな社会的インパクトを秘めている」という点だ。

マルチプロダクト体制を確立させようとするなか、再重視するのは「経済価値の最大化」だ。つまり、日本や世界において、FLUXのSaaSが関わることによって新たに創出される経済的な価値を、極めて大きなものにしていく。そのために、単なるMAツールではなく、デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(Digital Experience Platform、略してDXP)を構想している。

創業代表の永井元治氏が描くその戦略とは。約1万字のロングインタビューと今後の連載を通じて、SaaSの最前線やFLUXという企業の存在を、立体的にお伝えしていきたい。

  • TEXT BY SAE OTA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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学生時代からグローバル100人チームでリーダーに。
ベインでは仮説思考力を鍛え、起業の礎をつくる

永井氏がFLUXを創業したのは、2018年5月。慶應義塾大学在学当時から、友人や知人に起業家が多く、起業そのものは身近な存在であったという。

とはいえ、学生時代から起業を目指していたわけでない。本人曰く、その知的好奇心の旺盛さゆえに「ただ単にたくさんの世界を覗き、様々な人と言葉を交わしたかった」と語る。

その言葉通り行動範囲は幅広く、起業サークルでの活動に加え、アジア最大規模の国際学生会議「ハーバード大学アジア国際関係プロジェクト」の運営リーダーとして、世界各国の大学との関係構築や組織づくりを率いた。ハーバード大学・慶應義塾大学の教授陣に加え、楽天・三木谷浩史氏、サントリーホールディングス・新浪剛史氏など錚々たる登壇者を迎え、数百名規模の集客を実現させるホストとなるのは、並大抵のことではないはず。それを好奇心ゆえにやってのけた、というのが永井氏のポテンシャルの高さを物語っている。

その知的好奇心とフットワークの軽さから、多種多様な事業を覗くことができるコンサルティングファームへの就職を決めた永井氏。国際会議運営の経験から、外務省や経済産業省等の官僚への道と迷ったが、ビジネスを広く学ぶことのできる領域の広さやカルチャーに惹かれ、ベイン・アンド・カンパニー(以下、ベイン)への入社を決めた。

永井ベインで得たものはとにかく大きかった。所属していた2年半の間に約10のプロジェクトに携わり、稀有な経験をさせてもらいました。

特に印象深いのは、M&Aに関わる中でのデューデリジェンス(Due Diligence)ですね。よく知らない業界のことを、1~2週間という短期間で調べ上げ、現状分析や将来予想を精度高くまとめる能力が必要とされます。そのノウハウや、考え続けるための脳の筋力みたいなものは、今も活きています。

大きな市場を新たに構築できるような社会課題を、的確に捉え、仮説を立てて新たなプロダクトを開発し続ける。そんなFLUXの事業を進めるための礎が、この経験にある。

永井いまFLUXで事業領域としているデジタルマーケティングは、私にとって未知の領域でした。それでも、挑戦することへの抵抗感をなくしてくれたのは、ベインでの経験があったからと言っても過言ではありません。

そして、最初の昇格を勝ち取ったタイミングで退社を決意。現在は株主となっているDNX Venturesなどから内定を得たが、当時26歳の永井氏は「若いうちにリスクを取りたい」と起業を決める。先述の国際会議運営の経験から「自分自身で組織をつくりたい」という強い意欲があったことも、背中を押した。そのモチベーションを表すかのように、現在は約100名の従業員を束ねる立場となっている。

永井組織が強いことは、FLUXの一番の強み。創業以降の4年間、従業員は増え続け、大きな離脱が発生したことはありません。毎月調査している従業員のeNPS*は+40を超え、他の企業とは一線を画すほどの高い水準を維持しています。

*……Employee Net Promoter Scoreの略。「親しい知人や友人にどれくらい勧めたいか」を、「推奨から批判を引いた数」によって表す計測手法

強い組織をつくるために、永井氏がとっている方策とは何なのだろうか。後ほど深掘りするとしよう。

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SMBもエンプラも「実はSaaSを使いこなせてはいない」

FLUXが提供しているメインプロダクトが『FLUX Autostream』。マーケティングや営業を徹底的に効率化するSaaSだ。 Cookieに依存しない形でユーザーの行動をトラッキングできる独自技術で特許を保有しており、ユーザーを細かな行動履歴からセグメンテーションすることで、Webサイトの最適化や効果的な施策実行を図ることができる。

このプロダクトの開発背景には、永井氏が直感的に抱いた仮説がある。

国内大手企業(エンタープライズ、以下エンプラ)の多くが、外資・国内ベンダーが提供するCDP(Customer Data Platform)やDMP(Data Management Platform)といったツールを高額で導入するも、実は最大限活用できていないのかもしれない。そんな課題意識から、プロダクト開発を始めた。目指したのは、一つのサービスを入れるだけで、ほぼ自動的にWebサイト上のコンテンツを最適化し収益アップを実現すること。

それまでマーケティング領域と縁がなかった永井氏がこの事業を始めるきっかけとなったのが、現在FLUXで取締役CBDO(Chief Business Development Officer、最高事業開発責任者)を務める平田慎乃輔氏の存在だ。学生時代からの友人で、以前はカカクコムで『食べログ』『価格.com』『webCG』などのメディア群のマネタイズを担当していた。

永井最新のWebツールを使いこなしていた平田と比較し、周囲の起業家たちはGoogle Analyticsなどの一般的なツールのみで事業を行っている。このことに、大きなギャップを感じました。

そもそも、GoogleやSalesforceといったテックジャイアントが提供しているのは、中小企業向けというよりもエンプラ向けのプロダクトばかり。中小企業でもエンプラと同レベルの効果が得られる、そんなツールを出せれば、大きな経済価値の創出につながるのではないか、と閃いたのです。

その後、平田氏を含めた4名でFLUXを創業。平田氏が広告収益化に明るかったことから、まずはマーケティング領域から攻めることに決めた。

一方で、走りながら見えてきたのは、予想外の事実、いや、嬉しい誤算だった。

永井SMB(Small and Midsize Business)をターゲットと想定してサービスの開発を進めていましたが、蓋を開けてみると、エンプラでもなかなかこうしたツールを使いこなせていないということがわかりました。

例えば、大手新聞社や大手通信会社などのエンプラに対してサービスを提供していますが、こうしたいわゆる日系大手企業では2~3年おきの人事異動が当たり前。入社してからずっと番組制作を担当していた人が、ある日突然なんのバックグラウンドもなくIT領域を任される、ということもザラにあります。

そうした環境で、難解なWebツールを使いこなすのは難しい。いくら高額を費やして精度の高いサービスを導入しても、その操作が煩雑であれば宝の持ち腐れになってしまう。『FLUX Autostream』のようなサービスがあれば、エンプラにもSMBにも、SaaSのペネトレーション(市場への浸透率)を高めていけるはずだと、可能性を感じたのです。

『FLUX Autostream』は、顧客がWebサイト上にタグ導入さえすれば、パーソナライズドマーケティングと呼ばれる施策を打つための情報が得られる。そして、機械学習による精緻なターゲティングとコミュニケーションが、簡単に実現可能となるのだ。その結果、十分すぎるほどの「売上増加」や「コスト低下」という価値提供がすぐに実現される。

初めこそ簡易的な設定のオペレーションが入るものの、その後はCSすらほとんどなく、FLUXが特許を保持するAI技術によって自動的に最適化されるのだ。

顧客自身が手を動かす必要はなく、言わば“放置”すれば良いだけ、というシンプルな構造にすることで、UXやCSなどの細かい部分へのリソース偏重を防ぎ、高い利益率とビジネス効率を実現している。

永井FLUXが目指しているのは、「テクノロジーの普及を促進し、経済価値を最大化すること」です。

これまで世の中のエンプラ、SMBに対して提供されてきたツールは、使いこなすにはハードルの高すぎるものばかりでした。これからは、iPhoneを使うように、簡単かつシンプルにSaaSを使いこなせるようにするべきだと思うのです。そうでなければ、本当に価値のある事業にはならない。

導入企業の事業を、定量的に前進させていることが明確であれば、間違いなく評価される。その先に「経済価値の最大化」があり、そのことによってこそ私たちの企業価値も高まっていくと考えています。

だから、目指すのは、SaaSプロダクト群による、経済価値最大化プラットフォーム、言い換えるならデジタルエクスペリエンスプラットフォーム(Digital Experience Platform、DXP)の構想です。顧客企業の事業における、売り上げ向上とコスト削減をあらゆる面から実現するために、一気通貫でサービス提供をしていきます。

MicrosoftやAdobeがやっているようなこと、と言えばイメージしやすいでしょうか。グローバルで見ればすでに存在しています。

この構想は、いま詳細に描いているところなので、近々別の記事で、CTOの李然らとともにまた語らせていただきますね。これはぜひ楽しみにしておいていただければと思います。

『FLUX Autostream』のリリースから約3年。今となっては顧客のほとんどがエンプラと呼ばれる日系大手企業だ。現在は約750社からWebサイトの最適化を任されている。

ARR10億円到達までのスピードは、「国内SaaS企業で最速になるのではないか」(DNX倉林氏)との声がある。チャーンレート(解約率)は0.2%以下と、日本でトップレベルの結果を出し続けている。これが、多額の資金調達をスピーディーに実現できている大きな要因なのだ。

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他領域にも連続・非連続に染み出し、目指すはDXP構想での企業価値急速向上

マーケティングをSaaS事業『FLUX Autostream』で勝ち筋を見出したFLUXだが、「テクノロジーの普及を促進し、経済価値を最大化すること」の実現も見据え、決してマーケティング関連領域のみに留まるつもりはない。

既に300〜400億PVものデータを扱い、国内でもトップクラスとみられる情報処理能力を見せる。そんな中でも、今後さらに顧客基盤を大きく増やすことにより、ビジネス規模を拡大していくというのだから驚きだ。

創業4年のスタートアップにも関わらず、どうしてここまで膨大なデータを取り扱うことができるのだろうか。

永井創業当初は「広告収益の最大化」がメインプロダクトだったため、当然のようにビッグデータを取り扱ってきました。というのも、アドテクは、フィンテックのようにリアルタイムで何十億ものインプレッションを一瞬にして捌くことが求められます。他の領域と比べて、扱うデータの量が比べ物にならないほど膨大なのです。

その点、平田が機械学習などの知見やノウハウを十分過ぎるほど有していましたし、CTOの李はそれを実現する高い技術力を持っていました。このような経緯から、今後展開する他領域でどれだけデータ量が増えようとも、処理できる基盤・技術がありますし、自信があるんです。

たしかに、少し前であればこうした大きなデータ量を扱うのは難しかっただろう。サーバーやCPUといった観点で、そもそも大きなアセットを持つ大企業にしかなしえない事業領域だったはず。それが、技術の進歩により、スタートアップでもその気になれば可能になったわけだ。

とはいえ、誰もができるわけでもない。だがFLUXはアドテクノロジーに創業当初触れていたからこそ、次々と実現させている。ビジネスモデルは思いついたとしても、その知見と高い技術力の2本柱は、そう簡単にまねのできないものとなっている。

そして、特筆すべきもう一つの強みが、その顧客基盤だ。

永井実は、日本で一番のPV数を取り扱っていると言っても過言ではありません。というのも、現在サービスを提供している顧客に、メディア系企業が多いから。

ある民放キー局の番組に関するさまざまな露出や、大手通信キャリアがスマホ向けに展開するさまざまなWebサービスなど、日本を代表する規模のメディアを持つ企業さんのWebマーケティングを担当し、数でいえば300〜400億PVにのぼるデータを日々処理してきました。その蓄積こそが、我々の持つアセットなのです。

こうした技術力と顧客基盤をもって、もう一つの事業として動き出したのが『FLUX CMS』。発注を受け、事業の目的に向かって最短経路を進むことのできるWebサイトをゼロから制作するサービスだ。ここでも、永井氏の仮説構築が力を発揮する。

永井『FLUX CMS』を企画するにあたり、仮説を2つ立てました。一つは、世の中の人はWebサイトを自分で制作するのではなく誰かに制作してほしいと思っている、ということ。我々のようなスタートアップにいる人間にとっては、notionやWordpressを使って自社でWebサイトを制作することは一般的な行為ですが、実はそうでないケース、つまり「自分自身でWebサイトを制作するなんて面倒だ」と考えている人がほとんどなのでは、と考えたんです。

そして2つ目の仮説が、日本では「Webサイトをつくるならここだ!」という制作会社の第一想起が存在しない、ということです。制作会社自体は多数存在していますが、誰もが思い浮かべるような企業というのは、実はまだ存在していないと考えました。

これらの2つの仮説は、まさに当たっていました。地方を含めた中小企業を中心に調査をした結果、Webサイトを社内で制作することに負担を感じており、かつどこに発注すれば良いのかがはっきりしていなかった。これは、『FLUX Autostream』では手の届かなかった地方企業を含めたSMBに対して、新たな顧客層を獲得できる大きなビジネスになるはずだ、と確信しました。

また、『FLUX Autostream』の既存顧客でも、新規のLPやメディアの作成の需要があり、クロスセルの機会も豊富にあります。

『FLUX CMS』で新たな顧客基盤を獲得し、いずれは『FLUX Autostream』の導入へとつなげていく戦略を掲げている永井氏。すでに強い手ごたえがあり、顧客拡大へ投資を加速していくフェーズに入っている。マルチプロダクトでの経営体制を、早くも確立しつつあるのだ。

このように今後さらに増えていくであろう顧客基盤と、ビッグデータを扱うその技術力とにより、連続的な隣接領域への横展開を進める。だがそれだけではない。領域を超えた非連続的なビジネスにもどんどん進出していくと強調する。戦略的なプロダクト開発を次々と進めていくことを、永井氏はひたすらに描き続けている。

2019年11月にシードラウンドで2億円、2021年3月にはシリーズAラウンドで10億円の資金調達を行い、すでに上場準備を進める。もちろん投資家に対しても、マーケティング領域でのさらなる成長のみならず、多領域でのビジネス展開を伝えている。

永井これほどまで投資家の皆さんに信頼していただけているのは、結果として数字が出ているからだと認識しています。

むしろ、数字こそが信頼の証だ、とも。

とにかくTAMが大きいマーケットを狙い続けている、という点は、投資家の皆さんにアピールできる最大の強みにもなる。エンプラ向けにCSを張り付けるような難解なSaaSではなく、エンプラであろうがSMBであろうが誰でも簡単に使える一気通貫のサービスをつくりたい。すでにその形はできつつありますが、さらに拡大・拡張していきます。

そのためにも、プロダクトは今後、クオーターに一つくらいは出していきたいですね。そうすることで、先ほど触れたDXP構想が、これから加速度的にその効果を発揮して、日本や世界の経済価値を最大化し続けていきます。

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組織の強さの秘訣は、ベインからも学んだ徹底した「数字とFactに基づくアプローチ」

あくまでも「経済価値」にこだわる永井氏。事業やプロダクトそのものに対する思いももちろん強いのだが、それ以上に、事業と企業の価値を高めるための考え方を常に強くしているようだ。そのために、顧客(ユーザー)に対しても投資家に対しても、数字を基にした対話を続けることに一切妥協しない。

これは、セールスに力を入れて数字をつくっていく、という意味では決してない。「数字も含め、バイアスのかかりにくい客観的事実=Factをベースに、コミュニケーションをとっている」ということだ。この点が、繰り返し強調される。

その秘訣をもう少し深く聞いてみたい。そう問うと、組織全体における数字へのコミットについてさらに明かしてくれた。

永井顧客価値においても、投資家に対するリターンという意味においても、数字で表せること以外は全て欺瞞だと、全メンバーが考えています。『FLUX Autostream』があえてUIの綺麗さや使いやすさにこだわり過ぎずに展開しているのも、そのため。導入さえすれば、クライアントはツールの管理画面など開く必要はなく、放っておけば収益アップを実現できる、ということの方が、使いやすさよりもずっと顧客にとって価値のあることだと考えたからです。

顧客のチャーンレートが0.2%以下と低いことも、10億円規模の資金調達が可能なのも、顧客に対しては収益で、投資家に対してはリターンの期待で、明確に結果を出してきたから。もちろん定性的な戦略も緻密に練りますが、その前提として数字こそが信頼の証だという共通理解を持つことができているんです。

SMBから大企業まで幅広いターゲットを対象に、大きな市場規模にアプローチできるビジネス展開を行う。ビジネスが大きくなるにつれて、もちろん組織も急速に成長を遂げているわけだから、カルチャーの浸透も簡単ではないはず。

永井最近、ほかのマーケSaaS企業からジョインしてくれたメンバーがこう言っていました。「企業としての意思決定がぶれない。新たな意思決定や施策の実行を多く経験していけばいくほど、どのようにすればFLUXとしての進め方として良い形になるのか、わかってくる」と。

バリューやカルチャーは、言葉で伝えることももちろん大事ですが、実際に動く中でも染み付いてくるという仕組みになっていることも大事だと思うんです。そのためには、合わせて、既存のメンバーが背中を見せていくことも必要不可欠ですよね。

このように、組織づくりもうまくワークさせているのが、同社のまた違った強みでもある。その秘訣は、事業において数字にコミットするカルチャーを、組織設計にも生かしている点にある。

永井HRのような、一歩間違えればフワッとした施策に陥りがちな領域こそ、数値化して設計するようにしています。

例えば各ポジションに求めることは徹底して数値化・言語化し、マネジャーにおいては部下のエンゲージメントスコアが基準をクリアしていなければ昇格できない仕組みになっています。目標管理手法としてOKR(Objectives and Key Results)ももちろん導入していますが、その前提として「数字を基に客観的に評価しあう文化」が根付いていることのほうが重要だと考えています。

だから、例えば社員が辞めそうだからサウナに行って説得する、というようなただ“エモい”だけのコミュニケーションでは、本質的な課題解決にはつながらないと思っています。

その徹底した数字主義には、永井氏自身の経験も存分に活かされている。前職であるベインは、アメリカにおいて「働きやすい企業」ランキングトップクラス入りを続けているほど、強固な組織カルチャーを持つ企業として有名だ。

永井多国籍企業なので、様々な国籍やバックグラウンドを持つ多様な人が働いていました。細やかな配慮がなされた職場でもあったからこそ、属人的なコミュニケーションはあまり好まれていませんでした。

常に意識されていたのが、何が求められており、何が評価されるのか、どんな施策が効くのか、ということ。個々人の関係値で物事が決められていくのではなく、全ての意思決定や施策実行が、客観的にわかるようにしていたんですね。

そういう設計が、誰もが最大限パフォーマンスを発揮するために最も重要であるということを、企業として理解しているんです。

その他にも、カルチャーとして浸透していることはたくさんある──Amazon流の方法を採用し、会議は15分以内、資料は事前連携を徹底。マイクロマネジメントはせず、従業員の自主性に任せる。社内政治は一切なし。

まるでプロのスポーツチームのような集団である。とはいえ、それが決して「冷たい」組織文化であることとイコールとなるわけではない。

永井ベインには、尊敬できる人が本当にたくさんいました。一歩仕事を離れれば、友人のように仲が良かった。その経験を踏まえて言えるのは、しっかりとルールや基準を定め徹底することと、人間関係が良好であることは、反比例する要素ではないということ。むしろ、設計が担保されているからこそ、個人的な関係を築くことができると思うんです。

「自分の組織をつくりたいと思った」と先ほど言いました。まさに、こういう観点で理想の組織をしっかりつくっていきたいと考えています。

「コト」に向かいやすい環境にあるからこそ、仕事に集中しやすい、すなわち成果の出しやすい強い組織へとつながっているわけだ。それを、永井氏は意図的につくり上げていこうと、自ら推進してもいるのだ。

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「2~3年で辞めてもいい」と言い切る。
その理由は、「成長」を第一に考えているから

ここまでの話を聞くと、そのプロフェッショナルな組織カルチャーでは、よほど結果を出せる人間でなければ働けないのではないか、という不安も生まれるかもしれない。だが、意外にも永井氏はポテンシャル採用を重視しているという。その背景にあるのは、評価において最重要視している、FLUXが掲げる「5つのバリュー」の存在だ。

株式会社FLUX会社紹介資料より

永井評価の半分は「バリューを満たした行動をとっているか」をベースにつけていますし、バリュー勉強会を頻繁に行うほど、社内における全ての意思決定と評価をバリューを軸に行っています。

だから、バリューに従って行動したゆえに出た結果に、成功も失敗もありません。そういう意味で、FLUXには「失敗」という概念がありませんし、逆に言えばこれまでも「成功した」とは一度も思ったことがありません。「失敗だ」「成功だ」という会話すらなされないんです。

例えMRRが年間100%成長していたとしても、「どうして150%に至らなかったのか」と新たな仮説を立て、また前向きに検証していくだけ。逆に、何かの数字が思うように伸びなかったとしても、どこの判断が違ったのか、どの部分のアクションがとれていなかったのか、を一つひとつ分析していきます。

従業員に対しても同じで、バリューに沿って行動した結果思うような成果が出なかったとしても、それはむしろ賞賛されるべきこと。次の一手を共に考えていけばいいだけです。

求める人材の要件も、永井氏の求めるものは明確で、シンプルだ。「成長したい人」と即答する。

永井スタートアップに転職する人には、社会課題を解決したいとか、金銭的リターンを欲しいなど様々な理由なありますが、FLUXが求めている人材、そしてFLUXにハマるであろう人材は「成長したい」というモチベーションが第一にある人。なぜなら、「成長したい」と願う人に対して提供できる機会が豊富で、かつ、活躍に応じた昇進や金銭といったリターンの設計がしっかりとされているからです。

実際に、そういうモチベーションでメンバーが集まり、成果を上げ続けてくれています。良い雰囲気で切磋琢磨していますね。

今後は、四半期に一つという急速なペースで、新プロダクトのローンチを進めるという野心を見せる。膨大なデータと幅広い顧客基盤という2つの武器をもって、新たなターゲットや市場に向けて次々に攻めていく。

永井FLUXにはどんな人が多いのか、とよく聞かれますが、正直、偏りがないんです。幅広い業界・バックグラウンドの人がジョインしていますし、帰国子女や外国籍の人材も多く働いていますから、属性という意味でも経験という意味でも、ダイバーシティを実現できていると自負しています。英語のみでも問題なく業務が行われていますし、グローバル志向の人にもぴったりでしょう。

逆に言えば、どのようなバックグラウンドであろうとも、成長意欲があり、バリューにフィットする方には、成長機会はいくらでもあります。むしろ、FLUXで学べるだけ学んでもらい、次の環境でチャレンジしたいと思うようだったら、2~3年で辞めてもらっても構わない、といつも従業員に話しています。企業と従業員が対等であることが一番大事。互いの成長速度が合わなくなったら、そういうタイミングなんだ、と思うだけですから。

今後マーケティング領域に限らず事業拡大を続けつつ、IPOの準備も進める中で、「ジョインするには、間違いなく今が一番面白いフェーズ」だと語る永井氏。これまで培ってきた基盤を生かして、どんどん新しいプロダクトを生み出すことのできるこのタイミングは、たしかに、「成長したい」と願うビジネスパーソンにとって貴重な機会となりそうだ。

FLUXも永井氏も、若いといえば若い。そういう指摘もきっとある。だが、事業の急成長と、組織へのこだわり、そして採用文脈での「成長環境の提供」というある種の振り切った、フラットな考え方。こうした明確な強みが、顧客企業からの信頼や、社内メンバーのエンゲージメント、そして投資家からの期待を集める要因となっている。

加えて印象的なのが、取材時の永井氏。未来の戦略やプロダクトへのこだわりを何とも楽しそうに語りつつ、「どう思います?わかりづらいところないですか?」と取材陣にも何度も尋ねるほど、好奇心旺盛で柔軟に思想を変化させていく姿勢も見せる。そのお陰様で、話を聞きに行ったこちら側までワクワクしてくるのだから、相対する顧客や投資家も、同じ気持ちを抱いているのだろう。

増え続けるSaaSスタートアップの中でも、特にユニークな企業・起業家として、今後のFLUXの拡大にFastGrowも注目していきたい。

こちらの記事は2022年03月15日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

太田 冴

写真

藤田 慎一郎

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