なぜFLUXは、プロダクトを順調にグロース出来たのか──DNX倉林氏が太鼓判押すマチュアな経営者・永井氏が持つ素養“Tenacity”に迫る

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インタビュイー
永井 元治

慶応義塾大学法学部法律学科卒。米系戦略コンサルティング会社にて、大手通信キャリアの戦略立案・投資ファンドのデューデリジェンス・商社のM&A 案件などに従事。その後2018年5月に株式会社FLUXを創業。マーケティング効率化 SaaS「AutoStream」及び「siteflow」を展開している。

倉林 陽

富士通、三井物産にて日米のITテクノロジー分野でのベンチャー投資、事業開発を担当。MBA留学後はGlobespan Capital Partners、Salesforce Venturesで日本代表を歴任。2015年にDNX Venturesに参画し、2020年よりManaging Partner & Head of Japanに就任。これまでの主な投資先はSansan、マネーフォワード、データX、アンドパッド、カケハシ、サイカ、コミューン、FLUX、HERP等。同志社大学博士(学術)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営大学院修了(MBA)、著書「コーポレートベンチャーキャピタルの実務」(中央経済社)

河合 聡一郎
  • 株式会社ReBoost 代表取締役社長 

大学卒業後、印刷機メーカー、リクルートグループを経て、株式会社ビズリーチの創業期を経験。その後、セールスフォース・ドットコム等を経て、ラクスル株式会社の創業メンバーとして参画。人事採用を中心とした会社創りに従事。2017年、株式会社ReBoostを創業。スタートアップや上場企業、地方ベンチャーに対して、人事組織や採用戦略の支援を行う。また、約30社へのエンジェル出資及び、VCとの事業提携を通じて、組織人事領域を支援。2020年4月より、iU専門大学客員教員。

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創業当初から、顧客利益にコミットする姿勢とその結果が評価され、名だたる大手日系企業から選ばれ続けてきた。シリーズAでは10億円もの資金調達を行うなど、投資家からも厚い信頼を寄せられている。それがFLUXだ。

その投資家の一人が、FLUXにシード投資をしつつ、シリーズAでもリード投資を行っているDNX Ventures(以下、DNX)でManaging Partnerを務める倉林陽氏(FLUXの社外取締役も兼務)だ。数々のSaaS企業に投資を行ってきた経験を持つ倉林氏に、これまでの投資先の中でも「ARR10億円達成までのスピードは国内最速になるだろう」と言わしめるFLUX。

一体、その事業と組織の凄さとは、何なのだろうか? 何がそこまで、投資家にとって魅力的に映るのだろうか?

FLUXの魅力、ひいてはSaaS業界の未来に迫る本連載。第一回となる前回は、FLUXの創業者であり代表取締役・永井元治氏の人柄・思想に迫るべくロングインタビューを敢行。永井氏が描くFLUXの事業戦略を深掘りした。今回は、そんな永井氏のポテンシャルに惚れ込み投資を決意した倉林氏と永井氏の対談が実現。モデレーターに、数多くのITスタートアップの組織人事支援等を行うReBoost代表取締役・河合聡一郎氏を迎え、投資家から見たFLUXの魅力に迫った。

  • TEXT BY SAE OTA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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シード投資時に求めるのは「成長戦略」よりも「マネジメントポテンシャル」。DNX倉林氏が惚れ込んだ、FLUX永井氏のマチュアな魅力

倉林こんなに成長するのなら、シードの時からうちがもっとガッツリ投資をしておけばよかったですよ(笑)。

SaaS企業への投資経験の豊富な倉林氏にこう言わしめるのが、FLUXだ。創業から4年、その成長は目覚ましく、国内SaaS企業において最速レベルでARR10億円に到達する見込みだ。

そんなFLUXに当初から可能性を感じ、シード時からリード投資を行っている倉林氏。永井氏との出会いは2017年末に遡る。当時、大手戦略コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニーに所属していた永井氏が、転職を考えていた際に知人を介して知り合ったのが倉林氏だった。「中目黒で一緒にお茶をしたのが初対面だったね」と笑顔で語る倉林氏は、永井氏に対するファーストインプレッションをこう語る。

倉林初めて会った時にすぐ、非常にアナリティカルで優秀な人物だとわかりました。年齢は26歳と若かったけれど、考え方がとてもマチュアで、冷静。少なくとも、投資家としての素質は十分にある人物だと思いました。

DNX内でも文句なしの評価を得て、オファーが出ていたが、転職ではなく起業という道を選んだ永井氏。デジタルマーケティング領域でSaaSを展開するFLUXを立ち上げた。

そうして投資家を探す際、真っ先に打診した先が、数多くのSaaS企業に投資を行ってきたDNXだった、というわけだ。入社を断られた人物からの投資依頼だったが、倉林氏は「喜んで」と二つ返事で受け入れたという。

倉林採用しようとしていたくらい、惚れ込んでいた人物でしたからね。起業という道を選んだ彼を応援したいと思いました。

私が思うに、シード投資の段階において最も重要なのは、マネジメントクオリティ、すなわち「経営者がいかに優秀か」ということ。というのも、日本企業ではCEOが頻繁に交代する文化がありませんからね。

シリーズAでリード投資をとるとなると、それはもう、助手席に座る覚悟を持つことを意味します。

シードはそれに向けた信頼関係をつくる段階ですから、経営者には粘り強さややり切る力があるかどうか、を求めます。その点、永井さんは十分すぎるほどの能力を有していることが明らかで、VCとして大きな期待を抱くことができた。

課題にディープダイブする力と、やり切る力、そして粘り強さ。シリコンバレーで“Tenacity”と表現される素養を永井さんは十分に持っていると感じたんです。

SaaS企業への投資経験が豊富なDNX。だが社内には過去にアドテクの事業領域でうまくいかなかった経験を持つメンバーもいたため、FLUXへの投資について最初から満場一致だったわけではなかったという。

それでも倉林氏は「優秀な経営者であれば、TAMが大きかろうと小さかろうと、しっかりとスペースを見つけ出して成長戦略を描くことができるはず」と、領域云々ではなく永井氏の優秀さに可能性を見出したと振り返る。

結果的にDNX社内でもその読みに強い異論は出ず、投資委員会を通過。シード時のバリュエーションは6億円で即決だった。当時のやりとりを、永井氏はこう振り返る。

永井バリュエーションについてお話をしていた時、電話での一言、二言の相談で即決してくださったことを覚えています。

DNXとしてはシリーズAが本番ですから、シードはお互いのことを知っていく段階。「細かい額よりも、いま一緒にやれるかどうかだ」と言い切り、私を信頼してくださったことが嬉しかったんです。

その後、DNXの紹介により、アーキタイプベンチャーズも投資に参加。現在の急成長ぶりに「もっと投資しておけばよかった」と笑う倉林氏だが、決して永井氏のポテンシャルのみを買って決めたわけではない。すでに、シード投資の段階で初動の伸びが大きかったことや、その状態を短期間でつくり上げる実行力に、大きな可能性を感じていたという。

倉林プロダクトローンチからARR10億円に到達するまでのスピードとしては、日本のSaaS事業で最速になるでしょう。

もちろん、初動はニッチな市場に絞り込んだレーザーフォーカスな事業であったこともあり、今後どうやって事業を拡大していくのか、というのは課題でした。しかし、その点についても永井氏は調べ尽くし、抜け漏れのない分析を行っていた。ここまでの解像度の高さがあるのなら大丈夫だ、という納得感があったので、不安は全くありませんでした。

当初から順調に伸びていた事業。その背景には、事業づくりに対して真摯に向き合いやり切る組織の強さがあるはずだ。と、スタートアップの組織を数多く見てきている河合氏が言う。

河合初期の急成長を支えるために、従業員全員が発生する様々な業務に対してフルコミットしている必要があります。もう少し言えば、それをやり切れる人を確実にアトラクトして採用ができている、ということでもあります。全員が自然と、事業と数字にコミットする組織文化をつくることができている証拠ですから、その構築力と運営力は目を見張るものがあります。

伸び続ける事業と強い組織から、投資家の絶大な信頼を得ている永井氏。「あまりにとんとん拍子に進みすぎているのでは」と倉林氏が突っ込むと、永井氏は「95%は運が良かっただけ」と謙遜するも「実は模索し続けている部分も多い」と語る。

永井表に見せてはいませんが、水面下ではもちろん苦戦・苦労したことも少なくありません。起業は初めてでしたし、何もかもが手探りの状態。とはいえ、型みたいなものがない分、フラットな思考で事業を進めることができたのはよかったと考えています。

初動が大きく伸びたのはニッチな領域だったから、というのは間違いなくあります。その中で、「どうやってこれからTAMを広げていくか」は重要な課題と捉え、プロダクトや組織体制は先回りするように進化させていきました。その際のチーミングがうまくいったことは、今の業績にもかなり大きな影響を与えています。

永井氏の組織へのこだわりは、並々ならぬものらしい。が、組織については後ほど触れるとして、まずはシード期を終え、シリーズAの現在に至るまで伸び続けているFLUXの事業について、倉林氏の力も借りて、その戦略を思い切り深掘りしていこう。

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Horizontal SaaSを組み合わせ、
経済価値最大化を目指す“DXP構想”

機械学習やAIを使った自動最適化マーケティングツール『FLUX Autostream』で初期の急成長を遂げたFLUX。次なるプロダクトとして開発したのがウェブサイト作成サービス『FLUX CMS』だ。『FLUX Autostream』のみでマーケットを広げるという戦略も描けたはずだが、なぜ早々に2つ目のプロダクトを開発・ローンチするに至ったのだろうか。

永井日本のSaaS事業において、単一のファンクション及び単一のプロダクトのみでARR100億円を達成するのは極めて難しいと考えています。領域的にもマーケットは限られていますし、グローバル化もそう簡単ではありません。

なので、同じ領域の中で、シナジーが生じるであろう複数のプロダクトを扱うことは、FLUXにとってマストな戦略なのです。

とはいえ、創業間もない時期からマルチプロダクトをマネジメントするのは、容易なことではない。それでも将来的な狙いを定め、早々に組織体制を強化し、そのケイパビリティを得ようとする動きをとっていることこそが、永井氏、ひいてはFLUXの強さの所以だ。

永井事業を生み出し続ける、ということは創業当時から意識してきました。仮に新たな事業が、想定した利益を生み出すことができなかったとしても、そのチャレンジによって少なくともマルチプロダクトを運営するケイパビリティを獲得することはできます。その方が、会社にとってはよほど価値のあることだと思ったのです。

この永井氏の戦略に、倉林氏も大きく頷く。

倉林投資家として、次々と打ち手が出てくるFLUXのプロダクト戦略には期待しかありません。『FLUX Autostream』の中でも継続的に新規機能が増え続けているし、さらなる企業成長を見据えて『FLUX CMS』のような別モジュールの開発もスピーディーです。

特に、『FLUX CMS』をDNXの取締役会で決議した際の永井さんのプレゼン力、深く掘り下げて調べる力には圧倒されました。新しい領域の事業にも関わらず、市場や顧客に対する解像度が非常に高かった。こうして綿密に成長を描き、実現していくのなら大丈夫だ、と安心しました。

『FLUX Autostream』のようなMAツール、『FLUX CMS』のようなWeb制作サービス、と各々の機能を持ったプロダクトを提供していくだけではなく、カスタマージャーニーを統合し、顧客の経済価値を最大化できるようなプロダクトを提供できるようにしたい、という。

DXP構想の図解(株式会社FLUX提供)

永井現時点では2つのサービスを提供していますが、最終的にはデジタル上のタッチポイントを全て統合したいと考えています。そうしたサービスを提供できているプレーヤーは、海外ではAdobeやOptimizelyなどがいますが、日本にはまだ存在していません。

DXP構想を実現するためには、企業が持つ情報をまとめて取り扱うインフラとなるようなサービスも必要です。なので、たとえば来年ガイドラインが変更される個人情報保護同意に関する領域でも、新しいサービスをローンチする予定です。

インフラとアプリケーションを整備し、どんな規模のどんな顧客企業に対しても一気通貫で価値を提供できるプレーヤーになりたいんです。

「まさに求めていたもの」のプレゼンに、倉林氏も唸る。こうした先を見る能力こそが、永井氏が投資家から評価を得ている所以だ。河合氏も「大きなあるべき未来図を描き、ビジョンを言語化し、実際に動かすことができるのが、永井氏のすごいところだ」と語る。

河合シンプルにあるべき姿からの逆算思考がすごい。彼らは常に、来月や1年後ではなく、3年後や5年後のあるべきグロースについて議論している。

たくさんの起業家を見てきましたが、素晴らしい起業家の共通点として、時間軸を伸ばした思考ができる、大きな課題設定とその解決のための巻き込み力、そして学習能力の高さという点が挙げられます。永井さんはまさにその特長を持っていると感じます。

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「経済価値を、わかりやすく」が、明らかな優位性

順調に業績を伸ばすFLUX。その理由の一つとして倉林氏が言及するのが、FLUXのプロダクトが顧客に提供する経済的価値がわかりやすい、という点だ。

永井氏の「どんな規模のどんな顧客に対しても価値を提供したい」という言葉通り、『FLUX Autostream』は月々30,000円から、『FLUX CMS』は月々9,000円からと、安価な設計にしている。かつ、顧客側が手を動かす必要はほとんどなく実装が簡単であるなど、どんな企業でも導入しやすい、敷居の低いサービスを開発している。

その背景にあるのが、FLUXの掲げる「テクノロジーの普及を促進し、経済価値を最大化する」という思想だ。簡単に導入・使用でき、なおかつ売上・PV数など、結果が目に見えてわかりやすい。それが、チャーンレート0.2%以下という超低水準を維持し、顧客を増やし続けている理由だと言えよう。

倉林顧客に提供する経済的価値が一見するとわかりにくいSaaS事業も多数存在します。そういったSaaSも強い営業力を用いて、顧客のDX予算を刈り取ることで一旦成長することもあるでしょう。

しかし、最終的にはどんなSaaSも「顧客にどんな経済的価値をもたらすのか」という肝心の部分を説明できる必要がある。それができなければ、顧客にとってMust Haveになりきれず、解約のリスクは高まると思います。

倉林その点、FLUXのサービスは、導入することによるトップライン、ボトムラインへの影響がわかりやすいため、企業は導入しやすい。

それに、「結果がわかりやすいサービスである」という点は、セールスやマーケティングを担当する組織やメンバーにとっても大きな価値を持ちます。お客様に価値を伝えやすいので、価格交渉力を持つことができ、値下げ要求に対してもしっかり自社製品の価格の妥当性をデータで説明できる。新たな売り方や施策の検討が活性化し、組織も大きくなり、採用できるポジションも増えていく。事業と組織の間で良いスパイラルが続くんです。

顧客企業にもたらす経済的価値に、とことんこだわる。それは、永井氏自身が最もコミットしている部分でもある。

永井企業にサービスを提供する以上、ROI(Return on Investment、投資対効果)が明確でなければ、私自身が「そのプロダクトに意味はあるのか?」と疑いを持ってしまいます。

だからこそ、「企業の経済価値を最大化する」という考え方には、これからも徹底的にこだわりを持っていきたい。

今後は、IPOも含めた国内における成長はもちろんのこと、当然のことながら海外への進出も視野に入れているという。

永井海外進出の際には、日本人の経営陣を送り込むのではなく、一定程度のマーケットシェアをもつ現地企業をM&Aする方向で考えています。言語やネットワーク、商習慣の違いを踏まえると、やはり現地企業を活かすことのメリットが大きいはずだからです。

地域としては、マーケット規模や地政学的リスク等の観点から、アジアではなく北米や欧州への進出を考えているという永井氏。その方針には、倉林氏も同意する。

倉林私もSaaS企業は、可能なら北米・欧州を狙うべきだと思います。東南アジアは、市場の伸びも大きく魅力的な市場ですが、絶対的な市場規模については北米や欧州と比較してしまうと、まだ大きな差があると思います。なぜなら、SaaSの経済価値の比較対象になる人件費が安いため、SaaSの価格も高くできないからです。

国内におけるDXP構想の実現に加え、IPOやグローバル進出までの絵も当たり前のように描いているのが永井氏だ。今後の事業の広がりに大きな期待を抱かずにはいられない。近い将来のユニコーン候補と噂される所以が、こうした細かな点からも読み取れる。

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結果は確率論でしかない。
“バリュー”第一主義の理由

さて、倉林氏、河合氏が語るFLUXのもう一つの魅力が、その「組織の強さ」だ。倉林氏が永井氏のマネジメントクオリティに惹かれて投資を決めたのは先述の通りだが、特筆すべきはその「掘る力」の強さだ。

倉林初めての起業となると、普通は“なあなあ”になってしまう部分や、つい準備不足になる部分もあるはず。しかし、永井さんの場合、何かを調べるとなると、ものすごく深いところまで調べてくる。狂気の沙汰だ、と思ったくらいでしたよ。

この発言には、河合氏も大きく頷く。

河合永井さんに、顧客の声について話を聞いた時、ものすごくディープダイブされた回答が返ってくることに驚きました。どういうお客様が、どういう意図で、どんなふうにプロダクトを使っているのか、解像度高く理解している。2回目の起業や、業界の出身だったり、または一度大きな失敗経験があったりするならまだしも、そうではないのだから驚きです。素直に「すごいな」と思いました。

早い段階からマルチプロダクトを展開することができるのも、顧客利益の最大化にこだわり続けることができるのも、こうしたリアリティを解像度高く持っているからこそ、なのでしょう。

二人が口を揃えて言う、永井氏の解像度の高さ。そこまで深く考え切る「掘る力」の源を聞くと、「もともとの性格が大きい」と謙虚な答えが返ってきた。

永井昔から「他人がどんなことを考えているのか」を想像するのが好きでした。事業についても同じように、「顧客企業のあの人はどんなことを考えるだろうか」と想像しています。ただ、事業については、考えるのが「好き」というより「気になる」という感じでしょうね。

解像度が高まっていない状態は私自身がもやもやしてしまうので、その中で意思決定をしたくありません。解像度は、限りなく100%に近い状態まで高めておきたい、という欲求があるんです。

とはいえ、スタートアップたるもの、手探りの場面も多いはず。解像度を高め切ることを待たずに意思決定しなければならないケースもあるはずだが、その際の指標となるのがFLUXが掲げるバリューの一つ「Quick and Small」だ。

永井走り出しが早い、というのはFLUXの大きな特徴の一つです。いきなりゼロイチで何かを生み出す、というよりは「ちょっとやってみよう」という感じで、とりあえず小さく始めてみる。

そのフィードバックが予想より良くなかったら、また考えよう、というのをぐるぐる回していきます。急に何か素晴らしいものをつくり出そう、とするより、そのトライアンドエラーを繰り返すことのできる仕組みをつくることに注力しています。

採用においても、永井氏が最も重要視するのは、FLUXが掲げる5つのバリューとフィットする人物かどうか、だ。常に結果を出し続けてきた永井氏、ひいてはFLUXのこれまでを振り返ると意外にも思えるが、「結果や経験よりも、プロセスが大切」なのだという。

永井基本的には、問題解決能力が高く、バリューにフィットしている人物を採用するようにしています。経験や実績があるかどうかは、大した問題ではありません。というのも、組織の環境さえあればケイパビリティは後からいくらでも獲得できると考えているから。

組織内で評価をつける際にも、結果よりもアクションの内容を重視しています。そもそも、結果というのは確率論でしかありません。アクションが最適化されていたら、自ずと成功確率は高まり、良いアウトプットが出るはず。FLUXが掲げるバリューは、それらを全て実践したら正しい結果に近づくはずだ、という確信を持ってつくったものです。

もちろんOKRやKPIといった指標はきちんと見ますが、それだけで評価するのは危険です。結果は、アンコントローラブルな外部要因の影響も少なからず受けますから。逆に言えば、我々でコントロールできるのは、アクションだけ。アクションの最適化に注力するのは、理にかなっていると言えます。

5つのバリュー(株式会社FLUX提供)

バリューを基に採用・評価を行うという原則は、成功へ導く確率論を基に考え尽くされたもの、というわけだ。

ちなみに、FLUXにとっての骨格とも言えるこの「バリュー」は、組織フェーズによってアップデートされる。

永井「残すべきもの」は、現場起点・ボトムアップで探し、更新する。一方で「新たにインストールしたいもの」は、未来起点・トップダウンであるべきを考え、逆算して経営の意思を示す。

こう整理して進めることで、メンバー一人ひとりが納得感を持って業務に向き合えるようになっています。

企業や事業のフェーズが変われば、そのたびごとに合ったバリューを構築する。この柔軟さも、永井氏が強く意識している経営論なのだ。

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いち社員からCEOへの指摘も当たり前。
議論による意思決定で、徹底した平準化・再現性を

だが、「バリュー」を基にした採用と言われても、それが難しくて苦労するわけである。多くの起業家が、組織づくりにおいて頭を悩ませている。

そこで、「どうやってバリューとフィットする人物か否かを見極めるのか?」という疑問をぶつけた。永井氏が答えることには、その組織づくりに対する「徹底的なコミットぶり」がやはり重要になるようだ。

永井バリューごとに、その達成度を3つのレベルに分解し、それぞれ定義を定めています。そして、その定義はマネジャーレベルまで全員が漏れなく一言一句違わず言えるくらいまで、共有を図っています。

まず社内で徹底的に浸透させることにより、面談・面接に誰が出ても、同じクオリティを担保できるよう、仕組み化しているんです。

こうした徹底ぶりや、仕組み化へのこだわりは、永井氏の「人間は、基本的に異なるものだ」という根本的な認識から生まれている。組織をスケールさせるために必要不可欠と言われるダイバーシティ(多様性)の確保を、自然と行ってきているのだ。

このことは、外部から見た仕事の進め方にも垣間見えているようだ。

河合FLUXの会議に出ると、事前準備から当日の中身まで、その生産性の高さに驚きます。感情を極力排除して、全員でコトに向かう環境がある。

会議の前日くらいにはアジェンダが送られてきて、参加者は全員目を通した上で出席するのが当たり前。会議が始まったと同時に、濃い議論がスタートするんです。その後のアクションプランの作成から実行まで、全て決まります。

「議論が好きじゃない人は、FLUXには向かないかもしれない」と河合氏が真顔で指摘するほど、議論を中心としたカルチャーがある。永井氏が独断で物事を決定することはほとんどなく、経営陣のみならずマネジャークラスの人物からであっても、指摘を受け、方針を修正することも珍しくないという。

永井指摘してもらえるのは、むしろありがたいくらいです。COOの布施は、よく議論内容の妥当性を試すためにわざと反対意見を呈する“デビルズアドボケイト*”のような役割も果たしてくれています。

*……「悪魔の代弁者」を意味するdevil's advocateという言葉で、「議論を盛り上げ活発にするための反対意見や疑義を呈する役回りのことを指す

CEOの提案、特に永井氏のように明らかに優秀で、事業や経営の経験も申し分ない人物がいうことであれば、メンバーも敢えて反対することなく、議論があまりなされないことも容易に想像される。しかし、永井氏自身がそれを許さない。常に躊躇なくフラットに議論を行うことができる場を整えるため、経営陣とマネジャークラスが一丸となって取り組んでいるのだ。

「先日も、ある事業アイデアを思いつき、得意げにマネージャーに話したら『既に似たようなものがありますよ。やらない方がいいです 』って一蹴されましたよ」と永井氏は嬉しそうに話す。

永井自分の意見が否定されたからといって、マイナスな感情が生まれることはありません。議論の中で理解してもらえないということは、提案そのものが間違っているか、私の伝え方の解像度が低く伝わらなかったか、のどちらかですから。

議論をベースに意思決定をすれば、その過程で全員の意見が消化されるわけですから、より良いものが生まれるはず。議論の結果、誰かの意見に合わせるとか、誰かの意見に落ち着ける、ということにはならないんです。これは、メンバー全員が目的達成のためだけに動いているからこそ生じる結果であると言えます。

誰が面接をしてもバリューフィットを確認できるようにするほどの社内共有や、議論をベースに意思決定を行うなどのこだわりからは、永井氏が平準化と再現性をいかに大切にしているかが見受けられる。誰がCEOになろうとも、どんなに組織が大きくなろうとも揺らがない、強固な組織づくりへのこだわりがあるのだ。

永井氏の発言に「取材の場で改めて聞くことで、永井さんのマチュアさや、FLUXという組織の強さを再確認できた」とうれしそうな表情を見せる倉林氏。「なぜそこまでこだわることができるのか?」と問うと、永井氏の冷静な性格が垣間見える答えが返ってきた。

永井私に、例えば飲み会で社員を感動させられるようなスピーチをできるほどのカリスマ性があれば、違ったかもしれません。でも、実際の私は、そういったカリスマ性で社員を引っ張っていくタイプではありません。

ただ、社員自身も、エンゲージメントはとても高い。ワークライフバランスを含め、正当な金銭的リターンや成長環境などについて納得感を持って働いてくれていると強く感じますね。

「組織づくりにコミットするCEOがいる会社は強い」と倉林氏は語る。事業と組織という大きな2本柱により、FLUXの強さは確固たるものになっているのだ。

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高難度なマルチプロダクト戦略がうまくいっているからこそ、ココにしかない成長環境がある

永井氏らのこだわりから、精鋭約100名の規模にまで成長してきた。だが、まだまだ理想には程遠い。先述のDXP構想の実現やIPOに向けてこれまで以上の規模拡大が見込まれるが、今こそスタートアップでの成長機会を望むビジネスパーソンにとっては魅力的なタイミングだと言えよう。

永井スタートアップであればどこでも成長機会はあると思いますが、いろいろな段階のプロダクトに関わる機会があるのは、FLUXならでは。

マルチプロダクト戦略ゆえに、例えばマチュアなプロダクトに関わりたければ『FLUX Autostream』、アーリーな段階に関心があれば『FLUX CMS』、事業の立ち上げに携わりたければ今後ローンチする予定のプロダクト、といまでも3段階の機会があります。

同程度の規模のスタートアップで、ここまで細かく異なる段階のプロダクトに関わることができるのは、珍しいでしょう。

倉林これだけ事業が急成長していて、プロダクトも増えている。マルチプロダクトを運営する体制がある、というのを今後の投資先の条件にしてもいいくらい、優秀な事例ですね(笑)。

FLUXのおかげで、今後のDD(デューデリジェンス)はさらに厳しくなるかもしれません。

社外取締役という立場もありながら、FLUXをベタ褒めする倉林氏。一方で「投資家視点で見た、FLUXの今後の課題は?」と聞くと、採用面について指摘した。

倉林マネジメントレイヤーでは、今後は優秀なCFOが必要になってくるでしょう。マネーフォワードやビザスク、ラクスルなどの事例でわかるように、これからは日本の良いスタートアップに海外投資家の資金が入ってきますし、経営者も海外投資家の資金を積極的に取りに行ったほうがいい。また、持続的な急成長の達成のために、M&Aを駆使することも必須になります。

最近では日本の大手企業がCVCを続々と設立していますが、実は投資先を見つけるのに困っている現状があります。有望な事業への投資枠が、海外勢にとられてしまっているんです。だからFLUXも、海外勢から当たり前に注目され、強気な交渉を行えるくらいになれるといいですよね。

ここまでは永井さんの力でファイナンスも推し進めてこれたけれど、今後はもう少し事業拡大や組織強化に専念したいところなので、うまく投資家との関係性ををマネジメントし、企業価値向上に繋げられる優秀なCFOが必要になるでしょう。

そこはまさに、永井氏も納得のポイントだ。これまで事業開発にフルコミットしてきたことから、今後は採用・広報を含めたバックオフィス人材を積極的に採用し、より自身のリソースを事業づくり・組織づくりに振りたい考えだ。

一方、マネジメント層に対しては、これまでもそれぞれと月3回以上の1on1ミーティングを実施しているという永井氏。そのコミット具合を知る倉林氏は、今後のFLUXの組織づくりについて「全く心配していない」と語る。

倉林非常にアナリティカルで、人物としても魅力的。しかも、かなりの粘り強さも兼ね備えている。冒頭でも指摘したように、シリコンバレーで求められる起業家としての素養「課題にディープダイブする力と、やり切る力、粘り強さ」を、永井氏は全て持っていると言ってもいいでしょう。

人に対して向き合う力もある、というのは、今回の対談で改めて知ることができた。ここまでマチュアな経営者は、日本のスタートアップ界隈にもそうはいませんよ。

河合氏も、今後のFLUXの組織成長を支えていくつもりだ。

河合これからシリーズB、さらにIPOと事業も会社もどんどん次のステージに進んでいくと思いますが、こうした急成長と言われるイベントが起きた時にどう事業と組織をマネジメントするのか、が次のポイントになります。

企業として大きくなるにつれて、社内メンバーそれぞれが認識しているコンテクストにも差が生じるもの。また社歴によって、事業や組織に対する理解にギャップが生まれることもありますよね。

それらをうまくマネジメントできるように我々がサポートしていきたい。永井さん、ひいては今のFLUXの強い組織づくりと運用を見ていると、さらなる規模拡大にもしっかり立ち向かっていく素地は十分にあると感じるので、とても楽しみです。

スタートアップをよく知る2人から太鼓判を押されたFLUX。

マルチプロダクト戦略をはじめとしたDXP構想や、バリューを重視し数字にこだわる強い組織カルチャーには、ビジネスパーソンの成長環境として申し分のない魅力を感じる。

また、スタートアップ界隈ではベテランともいえる倉林氏・河合氏に引けを取ることなど一切なく、あくまで対等に議論していた永井氏。「深く掘り下げ、本質を理解し、分析し、わかりやすいソリューションや理想像を描く力」が、終始発揮されていたのが印象的だ。起業家・経営者としての底の深さも強く感じられた取材だった。

こちらの記事は2022年04月05日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

太田 冴

写真

藤田 慎一郎

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