急成長する3社に学ぶ、「産業課題の解決手法」──“次世代のインフラ”を目指すユーザーライク・レンティオ・タイミーの事業・組織の創り方

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インタビュイー
武井 亮太

宇都宮大学教育学部卒、新卒ベンチャーバンク、その後HRスタートアップの事業グロースを経て、花き産業への可能性を感じ2014年9月に株式会社Crunch Style(現ユーザーライク株式会社)を創業。もともとは教師を目指していたが、より多くの人へ影響を与えたいという想いから起業に至る。ユーザー起点でサステイナブルな産業構造へと花き業界をアップデートし、花を飾る文化を日本中に普及を目指し、2016年6月より花のサブスクリプションサービス「ブルーミー(bloomee)」を開始。

三輪 謙二朗
  • レンティオ株式会社 代表取締役 

2008年楽天株式会社入社。ECベンチャー企業を経て2015年4月に株式会社カンパニーを創業。2016年1月レンティオ株式会社に社名変更。

小川 嶺
  • 株式会社タイミー 代表取締役CEO 

1997年生まれ。東京出身。高校時代に生徒会長を経験し、株式会社oneboxでインターンを始める。立教大学では、学生団体RBSA(起業家育成団体)を立ち上げる。2016年度の慶應ビジネスコンテスト(KBC)で優勝し、創業メンバーと共にシリコンバレーにわたり2017年に株式会社レコレを設立。2018年に株式会社タイミーへ社名変更。

河合 聡一郎
  • 株式会社ReBoost 代表取締役社長 

大学卒業後、印刷機メーカー、リクルートグループを経て、株式会社ビズリーチの創業期を経験。その後、セールスフォース・ドットコム等を経て、ラクスル株式会社の創業メンバーとして参画。人事マネージャーとして、経営幹部/ビジネス職/エンジニア職と多様なポジションにおける採用戦略の策定及び実行、評価制度策定、採用広報と幅広く会社創りに従事。2017年、株式会社ReBoostを創業。スタートアップや上場企業、地方ベンチャーに対して、包括的な人事戦略の策定や実行のハンズオン支援を行う。VCへのLPや、30社を超えるエンジェル出資及び、出資先の組織人事領域を支援。2021年、2022年と経産省のスタートアップ向け経営人材支援事業である、SHIFT(X)の審査委員。2023年9月より、J-Startup KANSAI メンター就任

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花のサブスクサービス『bloomee(ブルーミー)』を運営するユーザーライク。家電のお試しサービス『Rentio』を手がけるレンティオ。スキマバイトサービス『タイミー』を提供するタイミー

いずれも直近で大型の資金調達を実施しており、次代を創るスタートアップとして注目されている3社だ。

今回はそんな3社の代表に集まっていただき、事業を通して解決を図ろうとしている社会課題の詳細や、今後の戦略などを思う存分語り合ってもらった。

ファシリテーターは、自身でもスタートアップの創業メンバーの経験もあり、現在はエンジェル出資や、スタートアップにおいて幅広く人事組織の支援を行う、ReBoostの代表取締役である河合聡一郎氏。各社が見据える社会課題と、その解決のために行っている取り組みについて詳しく聞いてきた。

  • TEXT BY TEPPEI EITO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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業界課題の先頭に立つことが、スタートアップの条件

『ブルーミー』では季節のお花をポストに届けてくれ、忙しく日々に追われる毎日を過ごす人でも手軽に「花のある暮らし」を実現できる。

『Rentio』では、値段が高くて手を出しづらい家電製品を購入前に自宅で試すことができる。あるいは、単発のイベントに合わせて高価なハイスペックカメラなどを低価格でレンタルできる。

『タイミー』は、履歴書不要、面接要らずで、働きたいときに働くことができ、しかもお金をその日のうちに得ることができる。

「なぜ多くのユーザーを獲得できているのか」と問われれば、シンプルな答えはこうした話になるだろう。toCサービスにおいて、「ユーザーニーズ」はプロダクトのベネフィットと表裏一体の関係にあり、容易にイメージされ、スポットライトが当たりやすい。

だが、経営者が見据える世界観は、もっと広く深く、そして長い時間軸であると河合氏が言い表す。各サービスは、それぞれの業界における「負」、すなわち、より複雑で難解な「社会課題」にも向き合っているというのだ。

武井日常的に多くの人に使われるサービスをつくりたいという想いから、花を選びました。花き業界は当時スタートアップも少なく、改善の余地が多くあると思いました。

そもそも花の需要は30年間ほど、減り続けているんですね。これを引き起こしている業界課題が「ユーザーさんが花を、身近に感じにくい」という点です。

また、花き業界は既存プレイヤーが培ってきた素晴らしいノウハウがある一方、IT化が進んでいない側面もあります。生産者、市場、仲卸し、花屋というサプライチェーンでの連携に、大きな伸びしろがあると考えています。

三輪レンティオの事業領域も、近い課題があると言えるかもしれません。家電業界って「メーカー」よりも「量販店」のほうが立場が強いと言われることがあります。これが行き過ぎると、「ユーザーにとって良い商品」よりも、「量販店が売りやすい商品」ばかり開発されるようになってしまう恐れがあります。

楽天在籍時に、ECでの家電の取り扱いを見ていて、課題感を強く覚えたんです。

小川社会課題で言うと、私たちは「国力の低下」を危惧しています。高度人材不足が叫ばれ、労働人口が減少していく今、国力を上げていくためにどう人材を確保するのか。『タイミー』を、そういった社会課題を解決するインフラにしていきたいと思っています。

私自身が学生時代に日雇いバイトをしている中で、「もっと気軽に働ける透明性のある社会であるべきでは?」と感じました。これが始まりです。

各社が向き合う社会課題は想像以上に大きく、そして困難だ。しかし、それゆえに大きなインフラになり得る可能性を多分に秘めていると、河合氏は期待を寄せる。伸びるスタートアップが備えている条件と言い換えることもできるかもしれない。

今回の鼎談では、そんな大きな社会課題を解決するために、各社が取り組んでいることや意識していることなどを、様々な観点から、河合氏からの問いかけを通して深掘りしていく。

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コロナ禍でむしろ強化された、社会課題に向いた事業展開

3社の間でまず話題となったのが、新型コロナウイルス感染拡大の影響について、だ。ほぼすべてのWebサービスが、少なからず影響を受けただろう。もちろん今回の3社も例外ではない。

『Rentio』では、売上の約8割を占めていたカメラのレンタル需要が、コロナの影響で激減した。旅行や結婚式などのイベント時に使う「一時利用」のニーズがなくなってしまったからだ。だがこの事態が、社会課題に向き合うために良い影響を与えた面もあるのだという。

三輪コロナが始まる前から、「一時利用」としての用途ではなく、「お試し利用」としてのレンタルを普及したいなと考えていて、大手メーカー各社と話を進めていたんです。それが、コロナ禍で一気に進展しました。

今カメラの売上比率は10%くらいまで下がってきています。一方で、「大型家電のお試し利用」の需要が伸びてきて、全体の取扱高は前年比で2倍くらいに拡大しています。

私たちの事業の安定性というだけでなく、「ユーザーにとって良い商品を、メーカーそれぞれが開発できる環境を構築していく」という観点でいうと、良い方向に進んでいるかなと思います。

あと、コロナという困難に一致団結して立ち向かうことで、社員の結束も強くなった気がしますね。

小川うちもコロナの影響で売上比率が大きく変わりました。コロナ前までは飲食店がメインで売上の約7割を占めてたんですけど、ご存知の通りコロナで店を開けることもままならない状況になってしまって。

ただ、巣ごもり需要が高まって物流業界の人材ニーズが高まっていたので、そちらにリソースを振り向ける決断をしてみました。結果的に売上は前年比4倍くらいで成長できているので、事業としては非常に順調です。新しい領域に手を広げられたのでむしろ良かったかなと。今後も、ホテルや清掃、介護、保育など、業界を広げ、雇用に関する課題をより多く解決できるようにしていきたいと思っています。

レンティオと同様にタイミーでも、以前から考えていた「日本の雇用問題に対するインパクト」について、順調な拡大を実現させ続けられているというわけだ。

『ブルーミー』を運営するユーザーライクは、巣ごもり需要の高まりを受け、以前から想定していた事業成長が早まって実現した。「おうち時間」をどう過ごすかということに多くの人が関心を持ち始め、花で生活を豊かにするというニーズが高まったのだ。

武井今だいたいアクティブで10万人くらいの方にご利用いただいています。

最近の事業の変化でいうと……これまでは全国のお花屋さんに加盟していただいて、そこでお花をつくってユーザーさんに届けてもらっていたんですが、現在は自社工場も持ち、自分たちでも“つくって、送る”ということを始めています。

これによりユーザーさんにはより良い品質を、加盟生花店には自社ノウハウを共有し、生産者さんには大量の安定的な花の買い取りをすることができます。

この取り組みで、自社内において花をまとめたり、生産管理をしたりとオペレーションがかなり増えました。

なので『タイミー』さんにはかなりお世話になってます(笑)。累計で800マッチくらいはしてるんじゃないかな。

小川ありがとうございます! まさに今そういうニーズが増えているんです(笑)。

武井おかげでタイミーさんと同じように、「物流」というサプライチェーンにおける業界課題へのコミットを増やすことができてきました。

コロナをきっかけに始めた取り組みが、今の会社を支えていたり、あるいは事業領域を広げられたり。各社コロナ禍をうまく乗り越え、順調に前進しているようだ。

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「業界の負」を痛感した、三者三様の原体験

各サービスに「ユーザーニーズ」と「社会課題」とがあることは冒頭で説明した。3人とも、サービスを立ち上げたときから既に「社会課題」を意識していた。河合氏はこの点に特に着目し、問いかける。「創業までの経緯や、その時の原体験において、今も変わらずに強く意識しているものは何か?」と。

小川タイミーの場合は、自分の原体験に基づく起業だったので、実際には「ユーザーニーズ」からスタートしています。

学生時代に別の会社を立ち上げて潰しちゃってるんですね。それでちょっと借金していたこともあったので、大学時代はバイトで稼いで返済していく生活を送っていたんです。それこそ飲食とか物流とか。

でもそういうバイトって透明性が低いんですよね。やってみないとどんな現場かわからないし、お金もすぐにはもらえないし。もっと気軽に働けたらいいのになと。それで「ニーズもあるし、社会に必要だ」と感じてつくったのが『タイミー』です。

ユーザーニーズ、いや、むしろ自分自身のニーズから、サービスを起案した小川氏。しかし、そこから「社会」を意識するなかで、いろいろな課題に気づき、自分たちが担う役割を意識するようになってきたのだと振り返る。

小川最初は自分自身のニーズを満たすようなサービスをつくりたいとの思いからでしたが、社会課題を解決しうるようなサービスであることに気づきました。

あるコンビニに働きに行った時のことです。そこの店主はご高齢の方でしたが、人手不足でなかなか休むことができないとお聞きしました。「短時間でも働きに来てくれると助かるよ」そんなご意見をいただいたんです。事業者だけでなく、働き手にも大きなメリットがあります。

日本は今、超高齢化社会です。それにともなう労働人口の減少、人手不足はあらゆる業界で進んでいます。日本は今、超高齢化社会です。それにともなう労働人口の減少、人手不足はあらゆる業界で進んでいます。

タイミーを通じて様々な種類の仕事を経験し、自分を求めてくれる職場に出会い、結果として仕事が楽しくなっていく。個々人がポジティブな感情を抱きながら働くことで、一人ひとりの時間が豊かなものになる。

結果として日本全体の生産性も向上すると考えています。

ユーザーニーズから事業を開始したのはユーザーライクも同じ。花のある生活を手に入れるための手間を省略したいという思いで『ブルーミー』を立ち上げた。だが、今ではバリューにも掲げる「ユーザー起点」を実現するためには、業界課題に向き合うことが必要だと早い段階で考えていた。

武井花き業界全体を良くしていこうと考えているのも、やはりユーザー起点なんです。ユーザーさんが本当に求めているものを生産して提供するためには、ECやD2Cの事業者だけが頑張ってもだめなんです。商流の中で情報流通が断絶してしまい、顧客からのフィードバックが業界全体に共有されなくなってしまうからです。なので私たちは、市場や生産者という上流まで関わっていこうとしています。

例えば花の鮮度ひとつとってもそうです。収穫した時点から鮮度は落ちていくので、花のクオリティを保つためには生産の最上流から入り込む必要があります。

そうやって、サプライチェーンの川上から川下まで見ていると、花き業界が抱える課題が次々と見えてきたんです。

例えばロス問題。実は、市場で流通前に破棄される規格外品も多いですし、花屋での売れ残りの破棄も非常に多い。合計すると、だいたい30〜40%が破棄されると言われています。データや情報が一気通貫で整備されるようになれば、この破棄をもっと減らせるはず。

こういった数々の課題を、花き業界にこれまでなかったポジションから解決していきたい。新たな需要を創出することができ、それが生産構造にも影響を与え、結果として業界構造をより良いものに変えていけると考えています。

レンティオの三輪氏は、プライベートで感じた「ユーザーニーズ」と、業界で働く中で感じた「社会課題」の両方を、自身の中で明確に捉えてサービスを構想していたと振り返った。

三輪「ユーザーニーズ」の部分はちょっとネタみたいな話ですけど……昔、友人の結婚式の出し物で、お笑い芸人のたむらけんじさんのモノマネをすることになりまして、「獅子舞」を買おうとしたんです。

で、Amazonで調べてみると3万円もしたんですよ! 1回しか使わないものにしては高いな、と思ってレンタルを調べてみたらあったんです、2万円で。結局レンタルにしたんですけど、よく考えてみると、3万円のものを2万円でレンタルしても需要があるってすごいなと思って。

「社会課題」の部分でいうと、楽天など、家電も扱うEC運営企業で働く中で感じたことが大きかったですね。それが冒頭でもお話しした「メーカーと量販店の関係性」です。

量販店が間に入っていることで、メーカーはユーザーが本当に求めているものをつくりにくくなるという、いびつな状態になっているんです。だからそこを改善したいなって。

自らの経験を通して、あるいは事業運営を通して気づかされた社会課題。それは、顕在化している「ユーザーニーズ」と比べても、遥かに複雑で難しそうに思える。しかし彼らはその大きな問題に立ち向かうことを決めたのだ。

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決して「ディスラプト」しない。
業界全体にメリット提供する“絶妙なポジション”を狙う

ここまで、各社が対峙する社会課題の大きさと、その難しさについて述べてきた。課題解決のためには、ユーザーのためにサービスを良くしていくという意識だけではなく、業界全体を変えていく戦略と意識がなくてはならない。

彼らは具体的にどのような取り組みによってそれを実現させようとしているのだろうか。

三輪最初の頃は、メーカー側も私たちのような新興企業との連携はなかなか考えにくかったみたいです。量販店の存在もやはり大きいわけですから。だから最初は泥臭く、自分たちで購入してからレンタルしていたんです。

転換点となったのは、「データの提供」です。先程もお伝えしたとおり、メーカーはユーザーの情報を収集しにくい。そこで、「レンタルした人がその後購入に至ったかどうか」「購入しなかった場合その理由は何なのか」といったデータをメーカーに無償で提供しているんです。なので、メーカーからはマーケティングカンパニーとして捉えてもらえているのかもしれません。

業界内で、従来は存在しなかった新たな立ち位置を確立することで、ほかの企業が持ちえないデータを保有することができた。これがレンティオの、社会課題解決に向けた戦略の一歩目となった。

そして次の展開がD2Cビジネスだ、と三輪氏は力を込める。

三輪D2Cの流れを加速させる取り組みも始めました。2019年くらいから『ルンバ』をつくっているiRobotさんと協業して、レンタル期間がある一定の日数に達したらその所有権が移動するという仕組みをつくっています。

量販店を挟まずに商品が販売される形を生み出して、新たな業界構造をつくっていきたいんですよね。いつかは、メーカーのほとんどがユーザーに直接ものを届ける時代が来るかもしれないと個人的には感じるところもあります。私たちはそういった世界でも大きな価値を提供できるようになりたいと考えています。

小川それってAmazonとかはどうなんですか? レンタルボタンの設置とか、可能性ありそうな気がするんですが……。

三輪十分ありえると思います。ただ、レンタルの事業をやろうとするとオペレーションがめちゃくちゃ複雑になるので、別で組織をつくらなきゃいけないと思うんです。なので、むしろAmazonとメーカーとレンティオの3者で組んで、ボタンを押したらレンティオに依頼が来るみたいな仕組みのほうが実現性はあるかもしれません。そういうような入り込み方を、これからしっかり練りこんでいかなければ、ですね(笑)。

小川氏も気になる、家電業界の今後の動向。レンティオがその業界自体をより良くしていくキープレイヤーとなる日もそう遠くなさそうだと、期待が高まる。

同様に、産業が長い歴史を持つからこその難しさをユーザーライクの武井氏も感じているところ。花き業界には職人肌の人も多く、市場にITスタートアップが入っていくのは簡単ではなかったと振り返る。

それでも同社がうまく業界に入り込めた要因は、レンティオと同じく、その絶妙な“ポジション”にあった。

武井実は、既存プレイヤーとそこまで競合していないんです。完全にD2Cでサービスを運営していくのではなく、全国の花屋と協力体制を築きながらハイブリッドで運営しているので。

それに、加盟店の花を、うちが一括して安くたくさん仕入れることもあります。新たな経済価値を創出していると捉えてもらえるように意識しています。

でも、最も意識しているのは、生産者側にメリットが生まれることです。先程お話しした「花の規格」についてですが、新しくブルーミー用の規格をつくって、生産者さんが新たな販路を獲得できるようにしたんです。従来の規格にそぐわずに破棄されてしまっていた花の一部を商品にすることが可能になったのでサステナブルで、生産者や市場からも喜んでいただいています。

「業界のディスラプターになりたいわけではない」という点を強調する武井氏。これまではなかった視点を持ち込むことで、既存プレイヤーのビジネスにも良い影響を与えつつ、新たな市場の創出も実現してきた。

武井ユーザーライクでは工場を建て、生産から届けるところまで一気通貫でやっています。それでも、量と質を高めていくためには、全て内製でというわけにはいかないんです。業界で団結してユーザーさんの方を向き、ともに価値を提供していく体制を届けていくというのが、理想の姿ですね。

小川うちも最初にフォーカスした飲食業界では、ITに興味を持つ事業者さんが少なくて、ほとんど検討せずに「そういうの使えないから」とか言われることも多かったです。でも「じゃあどうすれば導入してくれますか」って食い下がって、お店の店長さんとかと話し合いを繰り返すなかで少しずつ機能を拡充していきました。本当にクライアントさんと一緒につくり上げてきた感じですから、似ている部分があるかもしれませんね。

だからこそ、模倣するサービスが出てきても負ける気がしません。機能ひとつとっても微妙にニュアンスが全然違いますし、オペレーションも洗練されていくので簡単には真似できないと思います。でもその違いがクライアントからしたら大きな差になっていたりするんですよね。

武井私たちも、新興企業の競合からは簡単にまねのできない優位性を持っているという自信があります。それは、小川さんが言ってくれたような、「既存プレイヤーと一緒につくり上げてきた部分」にあると思いますね。

古くからある業界に、スタートアップが入り込むのは簡単なことではない。意識すべきことは、各ステークホルダーに対して明確にメリットを提供しつつ、自分たちのポジションを確立し、サービスを大きくしていくことで市場を拡大すること、だろうか。

その難しさを痛感しながら、乗り越えてきた3人だからか、河合氏の質問に対して、次第に熱量が加わり、また互いに共感し合い、大いに盛り上がった。

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成長拡大には、ユーザーに紐づくカルチャーが必須

大きな社会課題の解決に向けてさまざまな取組を実施している3社。事業も成長してきて、組織としても拡大を実現させている。そしてさらなる拡大が重要になっていくフェーズでもある。

そんな今、各社の代表に自社のカルチャーや、組織づくりで意識していることについて聞いてみた。

武井私たちのカルチャーは、「グロース主義」「ユーザー起点」「共創」という3つのバリューに紐付いています。

この中で、まず「ユーザー起点」が第一にあります。ユーザーライクでは全てのチームでユーザーヒアリングを行っているんです。エンジニアも経理もやっています。それを月に一度の報告会で発表し合うんです。この場には、業務委託やアルバイトの方にも参加していただくようにしています。全員が同じ粒度でユーザーさんを理解している必要があると思っているからです。

三輪うちでもユーザーヒアリングは重要視しているんですが、マーケが行ってそれを社内に共有するという形でした。いま武井さんの話を聞いて勉強になりました。絶対そっちのほうがいいですもんね。

武井ありがとうございます。ここは特にこだわっています。

それと「グロース主義」は、この「ユーザー起点」をフォローするような感じです。いくらユーザーさんのためと言ってもグロースに寄与してないと意味ないよねっていう。

そして、最後の「共創」。これはチームで進めていこうという考え方です。3カ月に1度、社員全員で合宿に行ってるんです。その段取りは、全て経営陣が考案します。かなり大変ですけど、全員の方向性を揃えるためにはとても良い取り組みだと思っています。

三輪レンティオのカルチャーは行動指針に紐付いています。「カスタマーファースト」「仲間への敬意」「本質的価値の追求」と3つあるんですが、特に最後の「本質的価値の追求」は意識しています。

なぜ行動指針にこれを入れたかというと、サービスを始める前にいくつかレンタルサービスを見て真逆のことを感じたからなんです。例えば返却しづらいUXになっていたり、問い合わせがしづらかったり……。

多分、返しづらくしたほうが短期的には儲かるんですよ。問い合わせも、受ける数が少ないほうがコストが削減できますし。でも長期的に見ると絶対に逆効果なんです。社内でもこの「本質的価値」については口を酸っぱくして話しているので、みんなもこの考えを大事にしてくれています。

3つのバリューによってつくり上げられるユーザーライクのカルチャー。行動指針の徹底によって生み出されるレンティオのカルチャー。それぞれ代表が持つ意思を、強く会社のカルチャーににじませているようだ。

小川うちもそのあたりの意識は似ていますね。ユーザーファーストとクライアントファーストの意識が強まってきたので、良い価値提供の事例共有が、積極的に行われています。「こういううれしいストーリーがありました」っていうのを社内チャットのお知らせチャンネルで流したりして。それが社員のモチベーションにもつながって、良い循環が生まれています。

「タイミーラボ」というオウンドメディアも、クライアント企業さんやワーカーさんへの情報発信だけでなく社内への発信という意味でもよくワークしている感覚があります。

タイミーのカルチャーについては、メンバー一人ひとりの活動がイメージされ、印象的だ。3社とも、ユーザーへの価値提供と社会課題解決のために必要な取り組みを、カルチャーとして強く根付かせることに腐心している様子がうかがえる。

そして話題は組織構造へと移る。ユーザーライクの例に三輪氏が反応した。

武井「リード」というポジションを置き、社内の情報流通を担ってもらっています。「テックリード」とかで使われる「リード」とは異なるイメージです。各チームに一人ずつ置いて、ナレッジ共有を起点とした横の連携を進められるようにしています。

三輪それ面白いですね!海外の企業とかで事例があるんですか?

武井いや、自分たちで考えました(笑)。やっぱり、人が多くなると情報流通が難しくなってくるじゃないですか。だからこうした仕組みを考えてみたんです。

三輪組織内での仕組み化という観点で、うちはまだまだ課題も多いですね。例えば、当社はまだアルバイトさんをあまり活用していなくて。タイミーさんのサービスもまだ使えてないんですよね……すいません(笑)。

なぜかというと、業務を徹底的に仕組み化することがまだできていないからなんです。扱う商品が数千種類にのぼるので、業務も職人芸みたいになってきていて。入社1年目の人と数日の人とでは業務スピードがかなり変わってしまうんです。

武井私たちも、アルバイトさんには活躍していただけていますが、仕組み化の伸びしろはまだまだ大きいですね。自社工場を持つことでオペレーションに対する解像度は上がったんですが、スケールさせていく難しさを痛感しているところです。

難しい社会課題と向き合う3社にとって、顧客に対してしっかりと価値を届けるためにも、オペレーションを磨き込むことの重要性は大きいと河合氏は言う。組織的な強みを生かしつつ、仕組み化をどこまで進められるかというのが、これから大きなスケールに向けての課題になってくるのだろう。

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経験豊富で成熟したメンバーが3社に集まる理由は、難題に向き合っていること

大きな社会課題を見据え、事業推進だけでなくカルチャー浸透を重視した組織づくりにも注力する3社。これからの課題を最後に改めて聞くと、口をそろえて「採用」と答えた。その課題感について、最後に語り合ってもらった。

三輪先ほどから説明しているように家電業界はもちろん変えたいんですが、それ以外の業界も変えていきたいと思っているんです。D2Cの流れが明確に加速しているのは、ファッション領域くらいのものではないでしょうか。ほかの領域にも、この流れを波及させたいんです。ユーザーもメーカーも損をしているという、よくわからない構造が残っていると私が強く感じているからです。

先日ジョインしてくれたあるメンバーさんが、もともとご自身で起業された方だったんです。「自分の会社だと数億円の会社しかつくれないけど、レンティオなら数百億円以上の会社をつくれるかもしれない」って言ってきてくれたんです。そういう高い目線で挑戦しようと思う人を社内に増やしていきたいですね。

武井私たちもレンティオさんと同じように、ユーザー起点で業界全体をアップデートしてゆくことが重要になってきますので、サプライチェーンの上流まで考え切ることを意識しています。

また、日常的に使われるサービスを自分達がつくり、育てていく醍醐味を感じられます。これが「ユーザーさんの、うれしいを創る」というミッションに繋がります。

3社とも、経験豊富なマチュアなベンチャーパーソンがメンバーに名を連ねる。その理由が、「業界課題」との向き合い方という意識におそらくあるのだろう。

たとえば、より多くのステークホルダーとの折衝、自社内にとどまらない範囲でのオペレーション構築、そしてメンバー一人ひとりの視野拡大。こうした難易度の高い業務への対応が、今後も常に求められていく環境なのだ。

小川氏が改めて強調するのは、市場の新規創造という側面だ。これまでもこれからも「革命的な事業」を推し進める。

小川話してきたとおり、これからは「スキマバイトはタイミー」という謳い方だけではない事業展開を進めていきます。わかりやすく言えば、もっとHR領域のど真ん中を攻めていく想定です。そうして「革命的な事業」をわくわくしながらやっていけるような人を、これからも集めていきたいです。

特にこれからも重要になると思っているのが、カスタマーサクセスの仕事です。クライアント企業の潜在的なニーズを解決していくことが求められるので、「人間関係構築能力」と「コンサルティング能力」が活きる機会がものすごく増えていきそうですね。

教育体制も整えているところです。経験者だけでなく、こうした能力を新たに身に着けたいという人にとっても、当社は良い環境になるのではないかと自負しています。

武井環境という面で当社は、「もっと壮大なビジョンのある挑戦的な環境で切磋琢磨したい!」と感じている人にとって最高の環境だという自信があります。ほかの著名なベンチャー企業で一定の成果を残してきたメンバーが多く、ミーティングでは厳しいフィードバックをし合うことでより大きな価値創出を目指しています。

3社の現状と未来を聞いて、河合氏が締めた言葉は、こうだ。

「難しい社会課題に対して、業界も巻き込みながら、新しい在り方にチャレンジしつつ、ユーザーファーストなサービス設計の実現にこだわり続けている。だからこそ、短期的にも中長期的にも成長していく期待と可能性に溢れている。そういう場所に、メンバー一人ひとりの強みが活きる環境や、更なる成長環境があるはず」。

事業成長や組織成長だけではない。この3社に期待したいのは、これまでの日本社会でなかなか実現することのなかった大きなインパクトだ。

「ユーザーライクという会社があったおかげで、○○ができた」

「タイミーという会社がなかったら、○○はあり得なかった」

「レンティオという会社は、○○という点でなくてはならないインフラだ」。

そんな風に、多くの人が口にする未来が、きっと遠くない将来に訪れるのではないだろうか。

こちらの記事は2022年04月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

栄藤 徹平

写真

藤田 慎一郎

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