連載HACKの瞬間
「フクロウの目を持てたとき、吹っ切れた」No.1スキマバイトアプリ『タイミー』小川氏(連載:HACKの瞬間 第1回)
Sponsored3年前の8月。当時21歳の学生起業家 小川嶺 氏がスキマバイトサービス タイミーをリリースした。2021年現在、株式会社タイミーはコロナ禍でも最高収益達成にこぎつけ、スキマバイトサービスとしては累計求人案件数・累計導入社数・ダウンロード数No.1となっている。
現在24歳の小川こそ、今もっとも熱い若手起業家の一人である。
今年11月、そんな小川氏を始めとした今日本を牽引するZ世代の起業家達から、3日間にわたって直接のフィードバックを得られる機会を提供する事業開発インターンシップが行われる。主催するのは、SHOPLISTを筆頭にEC事業を展開するクルーズ株式会社だ。
今回、3ヶ月後のプログラム開始に向け、メンタリングを務める若手起業家たちを、彼らのことを学生時代から知るというクルーズ執行役員の諸戸友氏が同一のテーマで1人ずつ掘り下げていく全5回対談の第1回目が行われた。
対談のテーマは、今回のインターン名にもなっている“HACK”。「突き抜けた瞬間」との意味だ。
今をときめく若手事業家にも突き抜ける前の挫折や泥臭いチャレンジをしてきた過去があった。彼らの学生時代を知る諸戸氏がいてこそのこのテーマ選定と言えるだろう。
本対談では、アプリのリリースから現在の規模への発展に至るまでの無数のチャレンジや失敗を、小川氏自身がどう感じ、いかに考えて取り組んできたかが語られる。
- TEXT BY RYOYA KUDAKA
- PHOTO BY KENGO HINO
「20、30個はビジネス考えた」
圧倒的な行動量と「先行く人」に会いに行く力
諸戸小川くんと初めて会った時はまだ高校生の時だったよね?
小川そうですね、クルーズが主催するビジコン型インターンで当時の役員陣にケチョンケチョンにされたのを今でも覚えています(笑)
諸戸僕もイベントの後の懇親会でずっと悔しそうにしてたのを覚えているよ(笑)。たしかその頃は伊藤くんの会社でインターンしてたときだよね?
小川はい、いずれ起業したいと思っていたので、高校生のうちにビジネスに触れておきたいと思って、高校生でも受け入れてくれる、かつ自分が興味のあったCtoCビジネスを手掛けている会社を探しました。そこで見つけたのが当時トリマーとペットの飼い主を繋げる事業を行っていたOne Box社の伊藤さんで、直接Twitterで連絡して働かせてもらえるようになったんです。
諸戸直接連絡(笑) 。さすがの行動力だね。
小川いきなり連絡してきた高校生を受け入れる伊藤さんも伊藤さんだと思います(笑)。でも本当に感謝していて。この頃生まれて初めてパソコンを持ったので、操作を覚えるところから始め、地道に会社のTwitterアカウントを運営して集客したり、街中で犬を散歩させている人にひたすらヒアリングを行うなど、このときに事業って泥臭いことの連続なんだなとつくづく気付かされました。
そんな伊藤さんから「クルーズっていう会社でビジコン型のインターンあるから参加してみないか?俺も前に参加したんだけど、事業役員から本気でフィードバックをもらえるのが良い刺激になるよ」と紹介され参加したのが当時のCROOZの『超実践型新規事業立案インターン「XYZ」』でした。結果は残念でしたけど、あそこでもっと頑張らないとと思いましたし、事業を作る難しさ厳しさを感じました。
小川氏はビジコン敗退の悔しさをバネにして、立教大学へ進学後1年間で数々のインターンやビジコンへ参加、学生団体の設立から会社の設立までを行っている。あれもこれもと手を出しているようにも見えるが、そうではないと本人は言う。最初のインターンを選ぶ段階から既に、「これからの世の中はマッチングサービスの時代だ」と考えていたため、ほとんどそれに関する事業に携わってきたのだそうだ。高校生の時から一貫した姿勢を貫き、成長し続けてきた彼は何を意識し、どんな行動を積み重ねてきたのだろうか?
諸戸ところで、起業はいつから意識し始めたの?
小川高校時代に生徒会長を務めたあたりからですかね。生徒会組織って会社組織と似てるんですよ。トップである生徒会長が組織をまとめて、各部活動への予算配分や文化祭のための資金調達を取りまとめたりして、そうやってリーダーとして組織を引っ張っていくのが好きそうだと肌感でわかって、そこから本当にいろいろやりました。
インターンやビジコンへの参加、学生団体を創設してビジネスをしたり、アパレル関連のマッチングサービスの会社を作ったり。数だけで言えば20、30は挑戦したんじゃないですかね(笑)。でも、ビジコンでは何度か敗退していますし、結局ビジネスはどれも長く続かず、今の事業以前は失敗が多かったです。
諸戸ものすごい行動量だよね。それぞれの出来事が積み上がって次につながっているのも感じられるし、なんか小川くんが突き抜けてきた兆しというか、原点がここにある気がする。いつもどんなことを意識して行動していたんだろう。
小川仮説を持って泥臭く行動することと、先を行く人に会いに行くことですね。生徒会長時代にも名門高校の生徒会長も参加する全国生徒会連盟に出席して、自分よりも優秀な生徒会長たちから刺激を受けたり、他校の良い施策を取り入れたりしていたのもそうですが、特に起業してからは常に視座を高めるため先を行く人たちに会い、助言をいただく機会を自ら増やしに行くようにしていました。
若い人たちは「自分なんかが会ってもいいのか」という高いレベルの人に会いに行くことをもっとやっても良いと思います。
諸戸大事なことだね。とはいえ、継続してそういう先を行く人たちに会ってもらうのは簡単ではない。小川くんが目指すところにいる人なんかは特に日本でもトップクラスで多忙だと思う。
小川もちろんただ会いたいと言って何度も会えるものではないですよね。僕は、会う前の徹底した準備と目的・ネクストアクションの宣言を必ずしていました。
まず、準備。会うことが決まったら、その人の記事は全部読むなどして徹底して知っておくこと。相手も人間なので気持ちよい会話がしたいはずです。自分のこと知ってくれてるんだ、質問が面白いな、レスポンスが早いなとなれば、アドバイスもしたくなる。間違っても「調べたら出てくるだろ」と思われるようなことを聞くようじゃダメですね。ここまでが大前提。
お会いできたら、目的を先にズバッと言うこと。会う前に徹底して準備をしていれば決まっているはずです。何を学びたいのか。今どの段階にいて、どこを目指していて、何について聞きたいのか。こちらが目的を話せば、目的に対する解決策を考えてくれます。
それから、ネクストアクション。会話の終盤では、いただいたアドバイスに対してネクストアクションを伝える。相手にとって次会った時の変化が気になるようにすることが大事です。自分がアドバイスした相手に「このPoC(Proof of Concept:概念実証または実証実験)をやって、この結果を出すんでもう1回会ってください」って言われれば、その結果を知りたくなるもの。どうなったかまた聞かせてよという話になる。
相手はこちらのネクストアクションまでのスパンや品質によってこちらのレベルを判断して3回、4回会おうかと検討しますし、人を紹介するかどうかも吟味するのでお会いした後も気が抜けません。
身振りを交え、これまでの活動を点ではなく同一線上のものとして話す小川氏の様子から、常に戦略的に考え、圧倒的に行動する姿勢が伝わってきた。先を行く者に会い、その方々にとって“会いたい人”で在り続けようとした軌跡の先に今があるのだろう。おそらく数十億の資金調達に成功したのも、彼の丁寧な努力の結果として経営者や投資家とのつながりを築けていたからではないか。
「自分なんて必要ないんじゃないか」
──タイミー急成長の裏で悩んだ
会社の成長が至極順調であっても起業家が悩んでいないとは限らない。起業家は組織の拡大や事業の成長などのフェーズごとに自分と企業との関係性を改めて見直すことが多いが、小川氏の場合、事業があまりにも急成長したため逆に戸惑うこともあったようだ。
「常に月次130%の成長で、3か月あれば売上が2倍になる中、メンバーにも余裕がまったくない状態」になった時期、「タイミーに自分は必要ないのではないか」と本気で悩んだ時期もあるという。諸戸氏は当時どんな様子だったのかを尋ねた。
諸戸この前小川くんの記事を読んだら、タイミーが急速に伸びている時期に自分が必要ないんじゃないかと悩んだ時期があったそうだけど、当時の様子を聞きたいな。それを今どう捉えているのかも。
小川社員数が30人規模から現在の120人規模の一気に拡大した時は、正直全体を把握する余裕すらありませんでした。以前は全社員と自分が1on1していましたし、ある程度自分が把握して動かしていた自信があるのですが、100人規模になると1人1人の表情まで把握しきれない。にもかかわらずサービス成長は止まない。タイミーが自分の経営者としての能力を置いて先へ先へと進んでしまったのです。
幸せなことですし、仕組みづくりや権限移譲が上手く行った形かもしれませんが、自分が必要とされていないように感じました。今思えば、僕の手を超えて大きくなったタイミーに経営者としての自分を育ててもらったのだと思います。
諸戸普通はサービスを育てるのが大変で、死ぬ気でやってもなかなか育たず諦めたりするのに、逆にサービスが先に成長して、それに引っ張られるように自分が育てられていったと。ある意味幸せなことだね。
高校時代から圧倒的な行動量を誇ってきた小川氏は急成長の影で、ある種の虚無感に襲われていた。そこから一体どのようにして立ち直ったのだろうか。
自分を大きく見せるな。
サイバーエージェント藤田氏の助言
今回の対談で小川氏が度々言及する相手がいた。サイバーエージェントの藤田 晋社長だ。小川氏は、2019年に5年もの間凍結していた「藤田ファンド」から復活後第一号として出資を受けている。経営者としても藤田氏から学ぶことは多かったようだ。タイミーの創業から2年、自分はタイミーに必要ないのではと悩んだ時にも藤田氏の言葉は彼の道標となったという。小川氏が悟ったのは、自分を誇張し過ぎるデメリットは大きいということだった。
小川藤田さんに相談した時「いま君はどこにいて、これからどうなりたいんだ?」と聞いてくれました。自分のレベルはどれくらいで、会社はどんなフェーズにいて、今後どうしていきたいのか。当時の僕は背伸びしすぎていました。身の丈よりかなり上の自分を演じていて苦しかった。誇張した自分からは仲間が離れ、投資家の期待も下がっていった。
本当は、少し先、3段上じゃなく1段上くらいの意思決定をし続けようとするのがよかったんです。別に、等身大の自分が未熟だとしても構わない。空振りに終わることがあっても打席に立ち続けることで勝率が上がっていく。
それに気付かされ、身の丈に合うことをやろうと思った瞬間、ようやく吹っ切れました。
諸戸まさに“HACK”の瞬間だね(笑)。でも、それくらい今の自分の立ち位置を把握するということは難しいとも言えそうだ。小川くんはどうやって自己認識力を身につけていったんだろう。
小川肩に乗っているフクロウの目で見ることですね。これも藤田さんからの受け売りですが、常に360度見えているフクロウの視点から考えよと。どういうことかというと、自分の主観だけでなく、この場で、あるいは社会的には何が求められているだろうかと常に考えるようにしろということです。例えば、こうして取材に呼ばれたら、インタビュアーは何を求めているのか、どんなことを話すと良い取材になるのかと考えながら話します。
自分の社員にも「肩にフクロウを持て」とは伝えています。ただ、一朝一夕でその視点を持つのは難しいもの。これは日々日常のトレーニングで伸びるものだと思っていて、意識をし続けることでだんだんレベルを上げていくしかありませんね。
時折見せる苦笑から、一般よりはるかに行動してきたであろう小川氏さえ、いまのフェーズのタイミーに至るまでは「肩にフクロウを飼う」ことが難しかったということが読み取れた。無数の試行と先輩経営者のアドバイスがあって今に至るのである。
リーダーの人間力や認識能力は、組織の成長にダイレクトに影響する。どれだけ正しく自分を知っているか、周囲の人々や社会、市場をどれくらい理解しているか。これらが身の丈に合っていなければ、適切な権限委譲も盤石な組織を作るのも困難になるだろう。
起業なんて、いつでもできる。
グローバルな志を持ち、会社を背負う覚悟ある学生を求む
最後に諸戸氏は「今回のインターンで昔の自分のような子が相談に来たらどう助言するだろう」と尋ねた。自分の身の丈を把握せず、高すぎる目標を目指している相手からの相談に、今の小川氏ならなんと答えるのだろうか。
小川まず、彼が今どこにいるのかを共に探ります。それは、どういう経験をしてきたかを聞いていけばわかってくる。リーダーシップ、エンジニアスキル、やりぬく力、ヒアリング能力、巻き込み力、大人に好かれる力、いろんな要素がある中で起業家としての偏差値がどれくらいなのか。それを自分で理解しているのか。誇張しすぎていないか。
次に、理想とのギャップをどう埋めようとしているのかを聞く。どういう事業を展開しようとしているのか。現在地と目指すところとそこへ行く手段を一緒に整理して、等身大の自分に気づいてもらいます。あとは、覚悟ができているかを確認する。
今起業して資金調達してもいいけど、調達するんだったらその事業にコミットしないといけないし、やめられなくなる。その覚悟はあるのかと。
それがないなら、まずはこの能力を上げるためにインターンで経験を積んだり、勉強したりするのはどうか、と提案します。起業はいつでもできるので焦る必要はありません。ここまで伝えて、それでも「起業したいです」と言えるのであれば、一緒にギャップを埋める方法を考えていきます。
今回のインターンシップでは驚くことに、小川氏をはじめとしたメンターを務める若手起業家たちによるドラフト形式でチームが選抜される。プログラム期間は毎日参加者の事業アイデアに対しフィードバックをくれるという。小川氏はどんな学生チームをメンタリングしたいと考えているのだろうか。
小川グローバルな志を持った人がいいですね、英語は喋れなくていいけど(笑)。グローバルな視点がありつつも、日本が好きで、日本のこういう課題を解決するためにがんばりたいとピュアに言えるか。それから向上心があるか。チャレンジ以外は時間の無駄!くらいの勢いがあるとめちゃくちゃいいですね(笑)。
ただ反対に、「絶対起業します!」みたいなタイプは好きじゃないんです。最善策であれば起業するけど、就職する方が良い可能性もあるので、その選択肢を残しておくっていう方が好き。端的に言えば、リスクヘッジができているかどうか。学生の皆さんのキャリアを変えてしまうかもしれないほどの重要なインターンだということは理解していますし、僕も全力でお話します。面白い方に出会えるのを楽しみにしています。
諸戸今回久しぶりにこうしてじっくり話せたけど、小川くんの人並み外れた行動力や、その中にあるしたたかさというか、戦略性というかが垣間見れてとても面白かった。それに、最近妙に表情が丸くなったというか柔らかくなったように思っていたんだけど、その理由が少しわかった気がする。今は等身大の小川くんなんだね!11月のイベントにはめっちゃ熱い学生を集めるから楽しみにしてて!
今回の対談で、今もっとも活躍する若手起業家の一人である小川氏にも数々の失敗をした過去があり、世間的に見れば順調な時期にも悩むことがあったとわかった。そしてそんな時、彼に現在地を気付かせ、再び前進させてくれたのは、彼が地道に築いてきた「視座高く活躍する先輩やメンター」とのつながりだった。そう言えるのではないだろうか。
11月に行われるクルーズのガチンコ事業開発インターン。参加者たちにとっては、そのような繋がりを築く絶好のチャンスとなると思われる。向上心に溢れ、グローバルな視野で日本の課題を解決したい学生は11月のクルーズのインターンに参加して小川氏へ挑戦してみてはいかがだろうか。
今回の対談記事で撮影協力をしてくださった企業紹介
「持ち物:3日後に事業化させる気概。以上」──事業立案系インターンブームが消える中、なぜクルーズは今学生に本気の事業化投資を行うのか
【2023年卒】CROOZ INTERNSHIP 2021 ”HACK”
こちらの記事は2021年08月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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沖縄出身の大学生。21歳。個人・法人の専属ライターとして中期的に発信をサポートするパーソナルライター個人のnoteはこれまでに約7.5万ビュー。趣味は読書。
1992年 広島県出身、東京都在住フォトグラファー。大学卒業後大手住宅設備メーカーに勤務。4年ほど営業として勤務しつつパラレルキャリアとして建築や広報広告事業のフォトグラファーとして活動。
2018年、結婚を機に上京しフリーのフォトグラファーとして独立。現在はWEBや広告等でポートレートを中心に撮影。またライフワークとして一般のご家族や恋人を撮影し、人々の繋がりをテーマに写真を残している。
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