連載HACKの瞬間

「世界平和につながらないプライドなど、捨ててしまえ!」──学生起業などする気がなかった『ラブグラフ』駒下氏(連載:HACKの瞬間 第2回)

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インタビュイー
諸戸 友

1980年生まれ。2003年に新卒でリクルートの代理店に入社、2007年にベンチャー企業に特化した採用コンサルティングを行う株式会社アイ・パッションの創業メンバーとして参画、1,000人以上の起業家との出会いを経て、2012年クルーズ株式会社に入社。執行役員に就任し、社長室、広報、ブランディング、新卒採用などを担当。クルーズが時価総額1兆円企業を目指すため、経営人材100人のグループ入りを狙った「永久進化構想」の実現を牽引している。 現在は「永久進化構想」実現のため、若手の有望起業家、起業家予備軍の発掘・リレーション構築の傍ら、最高広報責任者CBOとしてグループのPR/IRも担当する。

駒下 純兵
  • 株式会社ラブグラフ 代表取締役CEO 

1993年生まれ。「幸せな瞬間を、もっと世界に。」をビジョンに掲げ、恋人・夫婦・家族・友人同士の自然な表情や瞬間を撮影し「想い出」をカタチにする出張撮影サービス「Lovegraph(ラブグラフ)」を運営する株式会社ラブグラフのCEO。日本全国に500名のカメラマンが在籍している。

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なぜ起業したいと考えているのか。何が自分を突き動かすのか。野心を満たしたい、家族を幸せにしたい、どこかの地域の人のために生きたいなど、自分を奮い立たせる理由は様々だろう。

今回の対談のゲストは「世界を平和にしたい」という視座からできることを突き詰めて考え、自身を奮い立たせてきた。その人とは、株式会社ラブグラフ代表の駒下純兵氏だ。2014年、彼が関西大学在学中に始めたサービス「Lovegraph(ラブグラフ)」は現在、全国に500名のカメラマンが在籍する出張撮影サービスに成長している。

物に溢れ、幸せの感度が鈍ってしまった現代。家族や恋人たちに目の前にある幸せを再認識させるような自然な写真を届けることができれば、幸せの感度を上げることになり、世界の平和に繋がっていくのではないか。そう考え事業を展開しているという。

「世界平和」という熱く大きな志を掲げる彼だが、写真の通り、一見物腰柔らかで笑顔の似合う好青年といった見た目をしている。何が彼を強き者としているのか?

今回の対談ではそこに焦点が置かれた。

本編に入る前に、対談企画の趣旨について軽く説明させていただきたい。

今年11月、ショップリストを筆頭にEC事業を展開するクルーズ株式会社が採算度外視、クルーズの紹介・説明会も一切なし、学生に本気で事業開発を学んでもらうための短期インターンシップを開催する。

それに向けて、メンタリングを務める若手起業家・事業家達を、彼らのことを学生時代から知るクルーズ執行役員の諸戸友氏がHACK(突き抜けた瞬間)をテーマに1人ずつ掘り下げていくというのが本対談企画の趣旨となっている。

  • TEXT BY RYOYA KUDAKA
  • PHOTO BY KENGO HINO
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「僕ほど起業を意識していない人はいなかった」

駒下氏は、関西大学在学中に学年が一つ上の“あんみつ”こと村田あつみ氏と共同でラブグラフを創業している。学生起業というと、早い段階で意識を高く持って行動している学生を想像するかもしれないが、そもそもは本人が以下で語るように普通の大学生だった。カメラにハマったのも大学に入ってからのことで、村田氏に出会うまでは起業家ではなく、戦場カメラマンになり世界平和を実現したいと考えていたそうだ。

カメラを始める前まで遡れば「普通になんとなく良い大学へ行って、友達を作って、ぼちぼち良い会社へ行くんだろう」と考えていた彼。起業を志すまでの道のりに一体何があったのだろう。諸戸氏は、かつては世界平和の手段として戦場カメラマンになることを夢見た青年の起業前後の様子に迫った。

諸戸駒下君にラブグラフとして写真撮ってもらったのは長男が1歳のときだからもう4年も前のことだね。その時も本当に優しい写真を撮るというか、愛のこもった写真やその場の雰囲気づくりに僕の奥さんも感動してた。

ラブグラフで撮影した諸戸氏と家族の写真

駒下ありがとうございます。僕は本当に子供や家族の写真撮るの好きなんです。

諸戸でも元々は戦場カメラマンを目指していたんだよね。

駒下はい。でも、それでは本当の意味で世界を変えることはできないと思いました。諦めるのは早いかもしれませんが、いくら戦場の写真を撮っても戦争はなくならないのではと思ったんです。本当に世界を変えたければビジネスという仕組みで、サステイナブルな形で取り組むべきなのではないかと考えるようになったんです。

諸戸それで大学3年生の時に起業してるよね。戦場カメラマンと起業家だと全然違う領域に思えるけど、起業を意識し始めたのはいつ頃からなの?

駒下起業なんて選択肢が自分にあるとは全く思っていなかったのですが、当時同じく学生でありながらスタートアップ界隈にいた共同創業者の村田と出会って変わりました。

最初は戦場の悲しい写真ではなく、幸せな写真で人を幸せにしたいという想いでサービスを開始。1年くらいカップルをターゲットに写真を撮り続けていました。サービスを継続するうちに幸いなことにメディアに取り上げられ、いわゆる大企業の方ともお仕事させていただく機会ができたんです。

サービスが有名になっていく中で会社化するという選択肢を知り、そのまま起業しました。それまでは副業可能な企業で働きながら趣味程度に自分のサービスを継続できる会社で働く予定でした。

諸戸人生何が起こるかわからないね。とはいえ、普通の学生なら起業はだいぶリスクの高い選択だと考えると思うな。

駒下当時まだ21歳だったので、起業して3年間続けてもまだ24歳。そこから仮に就活をすると考えてみた時に、24歳で会社を3年経営した人と新卒2年目の人、どちらの人材を取りたいと思われるか考えたんです。僕は前者じゃないかと思って起業を選びました。

今思えばちょっと楽観的過ぎたかもしれませんけど「僕以上にラブグラフをよくできるやつが世の中にいる気がしない」という謎の自信もありました(笑)。

諸戸そういう確固たるものがあると強いよね。これは僕が作るんだ、僕にしかできないんだという信念が力になる。

メディアに注目され、意図せず起業する流れになるなど順調な滑り出しだったラブグラフ。しかし、3年目には駒下氏が「一番辛かった」と振り返る時期が訪れる。

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辞めたくなる瞬間も辞める理由も何度だってある。
その時踏みとどまれるか。

起業から3年目のラブグラフは、どん底とも言える状況だった。3年目を乗り越えられる企業は少ないと言うが、それは資金面の問題だけではなく、人事制度の整備や細やかなコミュニケーションを怠ってきた弊害が次々噴出するのがその辺りだからではないか。このようなことを駒下氏はnoteで述べている。自身が感じたことなのだろう。だが、駒下氏は辞めるという選択肢は取らなかった。

諸戸起業して嬉しいことがたくさんあったと思うけど、起業せず就職の道を選んでいたら絶対味わえなかったことってなにか思い浮かぶ?

駒下一つに絞るのであれば、やっぱり自分の作ったサービスを全然知らない人が使ってくれている状況があること。これってすごく幸せなことです。

僕の友達が地元の知り合いの結婚式に呼ばれた時、そこで使われていた写真がラブグラフだったとか、そういう話が伝わってきた時は飛び上がるくらい嬉しいですね。何もないところから全部自分で作ったサービスが誰かを幸せにできている状況って起業ならではの感覚ではないでしょうか。それがあったから、3年目の1番辛い時期も耐えられたと思います。

諸戸一方で、資金ショートがあったり、マネジメントが上手くいかなくて組織づくりに悩んだりした時期もあったんだよね。

駒下あの時人生で初めて人前で泣きました。創業以来一緒にやってきた人たちが次々辞め、お金もなければ事業も上手く行っていない、辛いことが何重苦にもなって一気に押し寄せて来たような時期でした。

当時の朝会の雰囲気は最悪で、直接の会話はほぼなく、slackなどネットでの連絡ツールでなければ会話が憚られるほど沈鬱な空気感。なんとか鼓舞しないとと思って何かを言うものの、誰にも刺さっていないのがはっきりとわかりました。その時にポロポロ泣けてきて。死のうかと思うくらい辛かった。

あれを経験していると大半の辛いことは大したことなく思えますね。

諸戸駒下君にとってのHACKのタイミングはそこだったんだね。僕は1,000人近い起業家を見てきたけど、起業ってむしろ始めてからが大変で、思いも寄らない壁が乗り越えても乗り越えても立ち塞がっている。それこそ今駒下君が言ったように、大きな問題が重なって来たりもする。それでもやり抜けるかが問われるよね。

駒下そうですね。このサービスを辞めたら悲しむ人がいると思ってなんとか踏みとどまれました。ラブグラフは人を幸せにして世界をちょっとずつ良い方向に持っていこうとしているんだと、改めて【世界平和実現】という原点を見つめ直して、必死で仲間を集めました。辞めないというのも経営者の大事な仕事なんじゃないかな。

諸戸なるほどね。自分たちの使命というか、そういうビジョンの部分に立ち返ることで踏ん張れたわけだ。逆に言えば、そういう使命感を感じる部分がない人だったり、もしくは何かやりたいけどまだこれというものを持っていない人の場合は起業しない方がいいのかな。

駒下人それぞれだと思います。起業をしたら死ぬほど苦しい時も何度かはあります。そんな時、辞める理由は無限にある。ただ、それでもやめない選択をできるっていう気合いと覚悟があれば別にいいと思います。僕の場合はその気合いがビジョンに立脚していましたけど、絶対成功してやるという野心だとか、体育会系で培ってきたへこたれない強靭な体と精神だとか、そういう方もいらっしゃいます。

終始弾けるような笑顔だった駒下が一瞬伏し目がちになって語った3年目の時の経験。会社を経営していく難しさと共に彼の掲げる世界平和にかける並々ならぬ想いが伝わってきた。

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駒下氏のこれから。
80億人を撮るつもりの視座で考えているか?

創業以前から世界平和を最終目標に掲げる駒下氏。彼は学生時代に60代までの10年ずつの目標を立てている。その中で、20代は国内で通用する経営者になり、30代はグローバルで通用する経営者になることを目指すとしている。今年28歳になる彼は具体的にどう今後の10年を思い描いているのか。

諸戸3年目のピンチを乗り越えて既に5年くらい経っているはずだけど、今は何を最重視して経営をしているの?

駒下社長としてどんな目線感で事業を考えるのかということです。「80億人全員の写真を撮るつもりで事業をやっているのか」「世界一の経営者・サービス・企業になる意思決定をできているのか」とすごく意識しています。

諸戸今駒下君は27歳だから、そろそろ30代の目標だと言っていた「世界で通用する経営者になる」フェーズに入ってくるわけで、そこを意識しているのかな。となると、そもそも世界で通用するサービスになっているのか?を考えている、と。

駒下そうですね。強い想いで始めた会社なので、つい変化を拒む守りの姿勢に入りそうになるんですけど、それでは世界一にはなれない。世界中の人の幸せには繋がっていかないと考えています。変えることで将来的に人々の幸せに繋がるのであれば、大事にしてきたことでも恐れず変える。そんな柔軟な意思決定ができるようでありたいですね。

諸戸とはいえ、サービスを大きく変えようみたいなことにはならなかったんだね。

駒下ターゲットをカップルから家族に変えたことはありますが、目的はぶれていないので誤差みたいなものです。ラブグラフは自分にしかできないサービスで、大きく出来るのも自分しかいないとも信じているので今のところは全く違うジャンルには手を出そうとはしていませんね。

諸戸世界で活躍する経営者となると、何か今の枠を越えなくてはいけないのでは。

駒下今まさに次の事業アイデアを模索しているところです。これまでは出産や結婚や誕生日など既存のイベントに合わせて撮影していましたが、これからは何かこちらからイベントを生み出せないか考えています。

例えば、中国だとカメラマンがパンダの着ぐるみを着てイベントに行くサービスがあって、それによってパンダを呼ぶこと自体がイベントになっています。パンダを呼んでもらって、ついでに撮る。それで資金調達にも成功しています。

今後は、この事例のように価値の抽象化を通じて展開して行くのかなと思います。写真はあくまで手段であって、目的は世界平和に変わりないので、今のやり方にこだわり過ぎず進めていくつもりです。

諸戸ラブグラフで世界に羽ばたくとなってもいいし、別にそうでなくてもいいわけだ。あくまで世界平和のため、30代は経営者駒下としてグローバルに通用するようになればいいわけだからね。

駒下氏は決して目的と手段を取り違えない。あくまで目的は世界平和なのである。ラブグラフの今後の展開について尋ねたことでそれがより浮き彫りになったのではないか。次の話題で、駒下氏は学生時代に会いたい人に会いに行った方法について語るのだが、そこにも同じ姿勢が表れていた。

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「僕のプライドひとつで世界が平和にならないなら」

前回の小川氏にせよ、彼らはまだ無名だった時代に活躍するビジネスパーソンや投資家などに会う機会を自ら作りに行っていた。駒下氏も同じなのだが、彼は何者でもない人間が具体的にどのようにして“すごい人”に会いに行くかを語ってくれた。ここまでは駒下氏のビジョナリーな一面が掘り下げられてきたが、彼の戦略的な側面に焦点が当てられる。

諸戸起業前までは普通の大学生だったと言っていたけど、やっぱり行動力は全然普通じゃなかったと思う。起業も普通は怖いだろうし、それ以前に経営者の人たちに自らアポイントを取って会いに行くのも簡単なことではないと思うな。

駒下もちろん「この人に連絡するの怖いな」「恥ずかしいな」と思うことはありました。ですが、そんな恥ずかしさや連絡する怖さが理由で僕が辞めてしまって、それで世界が平和にならない可能性があるのなら、そんなプライドなど捨ててしまえ!となりましたね。

諸戸なるほど、それくらい視座が高ければ迷う余地がなくなるんだ。

駒下とはいえ、情熱だけがあっても忙しい人は会ってくれません。学生だと特にすでにSNSで話題になっている人に会いに行こうとしがちですけど、彼らと会うのは至難です。無限にそういう打診が来ている。そうなった時に、誰なら会ってくれるのかと打算的に考えることも大事です。

僕のおすすめは、本の著者に会いに行くこと。先鋭的な研究をしていたり、活躍していたりする方でも、まだそんなに表に出ていないみたいなことが実はたくさんあります。そういう方は意外と会ってもらいやすい。

諸戸「あなたの本読んで感動しました。会ってほしいです」なんて学生に言われることはなかなかないからね。

駒下学生に「会いたい」と言われたらかなり嬉しいはずです。珍しいので覚えていてくれますし、何かやるとなれば応援してもらえたりもします。すごく打算的な考えですけどね。

諸戸確かに打算的だね。でも、若いときの自分を覚えていてもらえると強いよ。この歳になって感じるけど、特に自分は何にもしていなくても、学生だった頃を知っている駒下君がどんどん成長してる、メディアにも出ているとなるとやっぱり見ているだけで嬉しいもんね。そういう自分の活躍を喜んでくれる大人が増えるのは心強い。

SNSのフォロワー数が世の中への貢献度合いや会社での優秀さとピッタリ重なるわけではない。ある界隈では有名だが若い世代には知られていないという人もたくさんいるのだ。当たり前のことのようだが、新鮮に感じた人もかなりいるのではないか。

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「こういう社会を作りたい!」
という世界観のあるアツい人と出会いたい

今回のインターンシップ、駒下氏をはじめメンターを務める5人の若手起業家たちによるドラフト形式でチームが選抜される。そして、彼らがプログラム期間中毎日参加者の事業アイディアに対しフィードバックをくれる。

最後に諸戸氏は、駒下氏がどのような学生チームをメンタリングしたいと考えているのか尋ねた。

駒下熱い人がすごく好きです。バチバチ意見を交わしても良いので、斜に構えているよりは真っ直ぐな人が良い。あとは、こういう社会を作りたいという世界観のある人。学生の段階で経営の知識や経験がないのは全然問題ないです。とにかく、僕と違っていても良いので自分の世界観を信じている人と意見を交わしたいです。

諸戸うちのインターンに来る人は漏れなく熱い子達ばかりだからそこは大丈夫!彼らの想いやビジョンを事業としてカタチにするのを駒下君たちには手伝ってほしい。

今回の対談中、絶えずにこやかに柔らかな口調で、世界平和という大きな夢を軸に自身の想いを伝えてくれた駒下氏。愛のこもったラブグラフというサービスの裏には、彼がいる。駒下氏のぶれない姿勢が周りの視座をも引き上げているのかもしれない。インターンで彼と直に議論できる機会を得た学生にどんな変化がもたらされるかが期待される。

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今回の対談記事で撮影協力をしてくださった企業紹介

株式会社ラブグラフ

写真右:カメラマン 日野拳吾氏

ビジョン

幸せな瞬間を、もっと世界に。

サービス

こちらの記事は2021年09月10日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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沖縄出身の大学生。21歳。個人・法人の専属ライターとして中期的に発信をサポートするパーソナルライター個人のnoteはこれまでに約7.5万ビュー。趣味は読書。

1992年 広島県出身、東京都在住フォトグラファー。大学卒業後大手住宅設備メーカーに勤務。4年ほど営業として勤務しつつパラレルキャリアとして建築や広報広告事業のフォトグラファーとして活動。
2018年、結婚を機に上京しフリーのフォトグラファーとして独立。現在はWEBや広告等でポートレートを中心に撮影。またライフワークとして一般のご家族や恋人を撮影し、人々の繋がりをテーマに写真を残している。

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