「業務提携」という名の罠にハマるな──三井物産 × ソルブレインに学ぶ、大企業とベンチャー / スタートアップによる共創の成否を分つ点

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インタビュイー
小日山 功
  • 三井物産株式会社 執行役員 ICT事業本部長 

1989年に三井物産に入社後、SHIBAURA TECHNOLOGY INTERNATIONAL CORPORATION 副社長、芝浦メカトロニクス営業部長、三井物産エレクトロニクス事業部装置事業室長、インド三井物産情報産業部長等、営業・技術両方の現場経験とマネジメントに従事。その後、2013年から三井情報金融営業本部長、執行役員 CTO オフィス技術統括、取締役副社長 執行役員技術管掌を経て、2017年から代表取締役社長を歴任。2021年より現職。

櫻庭 誠司

2008年に仙台で株式会社ソルブレインを創業。当初はマーケティングの一部分に特化したサービスを提供していたが、時代の変化とともに価値提供の形を柔軟に変えながら一貫して企業の課題解決を手がけてきた。2014年よりグロースマーケティング事業を立ち上げ、企業の持続的な成長の実現に取り組む。

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「三井物産の「人」。この点が今回の提携の意思決定にもっとも大きく影響しました。」そう笑うのは、ソルブレイン代表の櫻庭 誠司氏。

大手総合商社の三井物産は、データドリブンで顧客の利益最大化を目的とした事業共創というユニークな事業モデルで成長してきたソルブレインを見初め、データ活用における戦略的パートナーとして2022年初頭より資本業務提携を打診。2023年3月に晴れて出資契約の締結をみた。

近年、三井物産はテクノロジーを駆使したビジネス改善やICT活用により、次世代を担う事業の創造及び付加価値創出に取り組んでいる。その背景から、同社のICT事業本部長である執行役員・小日山 功氏は、今回のソルブレインとの提携について「刺激的な取り組みだ」と目を輝かせる。

両社が手を取り合い目指す先は、テクノロジー・データ活用によって、さまざまな業界における新規顧客の獲得や、新規サービスの創出にあるのだ。

とはいえ、本記事は両社の提携を称賛すること自体が目的ではなく、大企業とベンチャー / スタートアップ企業が提携する上で注視すべき点を読者に伝えることが狙いだ。なぜなら、世には「提携」という名の下に、片方だけが得をするといった提案話が散見されるからである。

では、今回の提携はどうなのか?大企業とベンチャー / スタートアップ企業がWin-Winで共創していくためには何が必要なのか?そんな問いを、両社の対談から紐解いていきたい。

  • TEXT BY TOMOKO MIYAHARA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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行動に裏打ちされた事業への深いコミットが、三井物産からの提携を引き寄せる

両社の提携がスタートして以来、ソルブレインとの取り組みが「刺激になっている」と話す小日山氏。具体的にどのような点にその効果を感じているのだろうか。と、その話に至る前に、そもそも三井物産は何をもって事業提携や資本業務提携をすべき企業の良し悪しを判断しているのだろう。提携することが刺激的に感じられる、自社に良い影響を及ぼすベンチャー企業をどのような基準で選定しているのかを伺った。

小日山 前向きに提携していきたいベンチャー企業かどうかの基準は、その企業が挑む事業領域にどれだけ深くコミットできているかどうかにありますね。その点、ソルブレインのコミット具合には感銘を受けました。

最新技術とデータを用いた、顧客のバリューチェーンの全体最適を担うグロースマーケティング事業、これだけでも非常にユニークな事業です。さらに、そこに加えて成果報酬型でコミットするという攻めの姿勢を持っている。

小日山氏がソルブレインに対し共感を覚える理由は他にもある。三井物産のICT事業本部は、2022年にミッション・ビジョン・バリューを更新。そのうちのバリューが「オープン・アンド・アジャイル」と「ディープ・ダイブ・アンド・コミット」であり、ソルブレインからはこの姿勢が見てとれるという。

出典:三井物産

小日山IT業界は新陳代謝が激しく、私が三井物産に入社した1989年当時に存在したIT企業は今そのほとんどが姿を消しています。

そうした経緯を踏まえると、「アジャイル」思考で物事を考えることや「オープンマインド」は、変化に対応するため、そして新技術を受け入れるために大切な要素です。そしてその移り変わる技術革新を事業に活かすには、日頃から自身が関わる事業領域に「深く潜り込み、コミットしていく」ことが重要だと考えています。

ICT事業本部としても、世の中の急速な環境変化に対応できるだけの人材は育てていくつもりですし、将来的にはICT事業本部の内外を問わず、三井物産の中でゼロイチの新事業の立ち上げを任せられるような経営人材を輩出していきたいとも考えています。

その上で、ソルブレインを見ていると、まさにこの会社は「オープン・アンド・アジャイル」ですし、「ディープ・ダイブ」も、「コミット」もしている。三井物産のICT事業本部が目指すべきバリューを体現している企業だと言えますよね。

櫻庭そのように思っていただけているとは、非常に嬉しいです。短期間でそこまで深くご理解いただきありがとうございます。

小日山本当にそう思いますよ。常に変化に対応し、かつ自社の事業領域に深くコミットしているソルブレインのようなベンチャー企業とのお付き合いは、三井物産の人材にとっても好影響をもたらします。ですから、今回のソルブレインとの提携は弊社にとっても刺激的な取り組みだと感じています。

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競合の大企業群に打ち勝つべく、ベンチャーであるソルブレインの力を求めた

小日山氏はさらに言葉を重ね、総合商社の業界で競合他社との競争を勝ち抜くためにも、この提携を重要視していると内情を明かす。

小日山総合商社の業界には、高いプレゼンスを持つ競合他社たちがいます。しかし、ことBPOの領域においては当社に優位性があると捉えています。

我々は2023年9月、三井物産の持分法適用会社である「りらいあコミュニケーションズ」と「KDDIエボルバ」との統合で、「アルティウスリンク」という新会社を設立しました。こちらはコンタクトセンター*やバックオフィスを含むBPO事業を展開する企業になります。

*電話のみの対応を行うコールセンターと異なり、SNSやメール、チャットなど電話以外の手段からの問い合わせも一括でサポートする組織

この統合によって、当社のコンタクトセンターは国内ナンバーワンの規模に、また広義のBPO領域においては、トランスコスモスに次いで国内第2位の規模となりました。かつ、当社はBPOという事業領域を持っていながら、グループ内にシステムインテグレーション / ネットワークインテグレーションや、セキュリティに精通した三井情報三井物産セキュアディレクションがある。

こうした関連会社のリソースも組み合わせてデジタルBPO事業を展開しているわけですが、そこにソルブレインが持つ知見や技術が加わることで、BPO領域においては競合よりも圧倒的に優位に立てると信じています。

櫻庭小日山さんが競合に遅れをとっている感覚を抱いているとは、とても意外でした…。

小日山数字の面でややビハインドしている点は否めませんね。ただ、三井物産は競合と比べて、優れた良いベンチャー企業を見抜くための選定眼を持っていると自負しています。あとはこうした企業との提携をきちんと成功まで導けるかどうかですね。

また、企業だけでなく人の目利きに関しても三井物産は得意です。例えば、SanSanの代表取締役の寺田 親弘氏は当社ICT事業本部出身なんですよ。他にも数を挙げれば無数に存在しますが、三井物産は、実はベンチャー / スタートアップ界隈においても著名な人材を輩出している企業なんです。一つ残念なことを言えば、そうした優秀な方々が社外に出ていってしまうことではありますけどね(笑)。

FastGrow読者であればご存知かもしれないが、三井物産はソルブレインの他にも多くの新時代を創るベンチャー / スタートアップと提携を進めている。例えば、三井物産とLayerXによる三井物産デジタル・アセットマネジメントの設立などもその一つ。

新しい価値観を持った次世代の旗手たちと積極的にコラボレーションし、共に日本の産業や経済の未来を創っていく。単なる企業同士の事業提携以上の意味を持つ、日本の未来社会に希望を持たせるコラボレーションを三井物産は生み出しているのだ。

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世に蔓延るゼロサムの提携話に対し、Win-Winを貫く三井物産

今回ソルブレインと提携することになる三井物産のICT事業本部は、「デジタルソリューション」「消費者プラットフォーム」「CRM(カスタマーリレーションシップ)」「次世代ビジネス」の4つの事業領域を持つ部門だ。

三井物産 ICT事業本部

(1)デジタルソリューション

  • ITサービス
  • サイバーセキュリティ
  • デジタルインフラ

(2)消費者プラットフォーム

  • ビデオコマース
  • デジタルメディア
  • BtoCプラットフォーム

(3)CRM

  • BPO(Business Process Outsourcing)
  • デジタルマーケティング

(4)次世代ビジネス

  • ヘルスケアDX
  • フィンテック
  • デジタルサービス

先ほど小日山氏が紹介した新会社アルティウスリンクは、このICT事業本部のうち、BPO事業とデジタルマーケティング事業の2つをサブドメインとする、CRM事業領域の中で事業を展開していく。

そんな中、コンタクトセンターやバックオフィスを含むBPO事業をどう拡大していくか、また、現状は顧客ごとに提供サービスをカスタマイズしているBPO事業を、テクノロジーを用いてどう標準化*していくかといった模索が始まった。そうした背景から、自社の力だけでなく提携による課題解決も視野に入れる中、2022年初頭、三井物産はソルブレインを見つける。

*いつ誰が行っても、同じ手順で無駄なく作業を行えるようにすること

顧客の業務に入り込み、デジタルデータの力で顧客のバリューチェーンを全体最適するといったソルブレインの強みを、ぜひ新会社アルティウスリンクの事業で活かしたいとアプローチをかけたということだ。

FastGrowでも2022年から取り上げている通り、ソルブレインは急成長を遂げているベンチャー企業であり、投資家からも多数の出資話が寄せられている。そんな中、三井物産からの資本業務提携の提案を受け入れる意思決定をした背景には、何があったのか。

櫻庭三井物産は、誰もが認める日本を代表する総合商社です。事業領域は金属資源やエネルギー、鉄鋼、モビリティ、ICTなど多展開をされています。このように、異なる領域で多様な事業を、日本TOPクラスのレベルで展開されている三井物産であれば、同じく事業領域を限定していない弊社と多様なシナジーが発揮できるんじゃないかと感じました。そして、何より三井物産の「人」。この点が今回の提携の意思決定にもっとも大きく影響しました。

三井物産とのディスカッションを重ねる中で、同社の方々は誰もがビジネスパーソンとして素晴らしいな、一流だなと感じたんです。例えば、これまで弊社が他の大企業から提携を持ちかけられたケースでは、両社にシナジーがあると言われても、「それって正直あなたたち企業側にしかメリットがない話なのでは…」と感じるケースが殆どでした。

しかし、三井物産の方々は誰もがソルブレイン側のメリットも考えた上で提案をしてくれる。事業上のシナジーも勿論ですが、こうしたフェアで優秀な人たちとビジネスをすることは、ソルブレイン側のメンバーにとっても刺激的で、自分たちの成長という点でも非常に価値のあることだと感じましたね。

小日山ありがたいことに『人の三井』とも称されている当社としては嬉しいお話ですが、それは当たり前のことだと思っています。なぜなら、片方だけが儲かるような提携は長続きしないからです。お互いに弱い部分を補い合ってフラットな関係を構築していくことで、Win-Winの関係を築けるのではないでしょうか。

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先々の事業拡張まで期待させる、ソルブレインの事業ポテンシャル

事業上のシナジーだけではなく、人や組織の成長の面でも可能性を感じるというソルブレイン。こうした恩恵は三井物産においても起きている。具体的には、本提携によって「自社の事業領域の拡張」まで見据えることができていると小日山氏は述べる。

小日山これはまだ現時点における、三井物産側のいち願望ではありますが、アメリカで広がっている「デジタルエンジニアリング」という事業領域に挑みたいと考えています。デジタルエンジニアリング*とは、デザインとエンジニアリング、データを融合し、製品やサービスの戦略立案から開発まで、一連のプロセスのDXを進める手法を指します。

*参考:HITACHI『「デジタルエンジニアリング」とは 最終形が見えない時代のDX手法

DXと言えば、外部のデジタルソリューションや知見を取り入れながら、基本的には自分たちで自社の業務や事業の仕組みを変えていくものだと私は捉えています。しかし最近のアメリカでは、そうした取り組みを社内だけで行ってしまうとアイディアに限界が出るため、自社の製品やサービスの戦略立案〜開発までをまるっとアウトソースするケースが増えてきているんです。

例えば、M&Aによる合併があって、PMIで新しい業務形態をつくり出そうとする場合、業務形態をデザインするところから、その業務に沿ったシステムを設計、開発するところまで、デジタルエンジニアリングを提供する会社にまるごとアウトソースするといった具合です。アメリカでも比較的新しいビジネスモデルとして、今注目を集めています。

このデジタルエンジニアリングなる手法は、日本でも徐々に注目を集めている。例えば、2021年には日立がグローバルロジックというアメリカのデジタルエンジニアリング企業を買収し、顧客企業のDX推進や新規事業開発の支援強化を図っているのだ。

小日山ソルブレインはこれまで、主にデータをあまり活用してこなかった領域や企業に対し、データを起点にマーケティングとテクノロジーを掛け合わせ、顧客のバリューチェーンを全体最適して事業を成長させてきました。この手法はまさにデジタルエンジニアリングの考え方だと思っています。

櫻庭顧客の事業成長を目的に据え、データドリブンで顧客事業の全体最適を図るといった意味では、おっしゃる通りデジタルエンジニアリングとグロースマーケティングは近しい取り組みなのかもしれないですね。

小日山そう思います。ソルブレインのグロースマーケティング事業と、ICT事業本部はもちろん、三井情報や三井物産セキュアディレクションを始めとする三井物産グループの情報通信系の企業の強みを掛け合わすことで、日本でもデジタルエンジニアリングという概念を浸透させることができるのではないかと。日本企業のDX推進が叫ばれる中、三井物産としても、日本のDX推進に少しでも貢献していきたいですよね。

ソルブレインが持つ顧客の利益最大化を目的とした事業共創というユニークな事業モデルと最先端技術。そして、顧客のニーズに応じて成果報酬型も受け入れるというコミットメントの高さ。また、顧客への提案スタイルから感じとれる事業成長への飽くなき探究心や貪欲さ。そんなソルブレインとの提携は、三井物産にとって、BPO事業そのものに対してだけでなく、ICT事業本部、いや三井物産グループ全体の未来にも好影響を及ぼそうとしているのだ。

こうした革新的な事業や技術を持った新興ベンチャー企業との提携こそ、三井物産が求めているものなのだろう。そんな三井物産は、ソルブレインに限らず幅広くベンチャー企業とのコラボレーションを模索しているとのこと。具体的には、今後どんな出会いを求めているのだろうか。

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「ガバナンス」なきベンチャーに、大企業との関係構築は望めない

小日山ある領域に対して明確に差別化できる技術力があったり、ソルブレインの、グロースマーケティングに成果報酬を掛け合わせるといった他に類を見ないビジネスモデルを展開するようなユニークネスがあれば、いろんな企業とご一緒してみたいと思っています。

ICT事業本部のデジタルマーケティング事業部ではデジタルマーケティング、デジタルBPOを推進しているので、その領域にキラリと光る知見のある企業とはぜひお話してみたいと思っています。

また、デジタルBPOに関して言えば、これからますます人口が減少し、労働人材が不足していきますので、各企業は限りある人材リソースを本業に集中させるべくBPOに予算を投じます。その際に我々のサービスが選ばれるためには、コスト競争力をつける必要性があります。

そのコスト競争力を高める手段の1つとして、デジタルツールを活用したBPOサービスの自動化、効率化が挙げられる。したがって、デジタルの力を持ってBPOを成し遂げられるようなソリューションを持った会社は、これからの三井物産にとって、パートナーとして非常に魅力的な存在だと考えています。

そうした魅力ある会社と出会った時、最終的に提携の決め手となるポイントは何か。良いマッチングになりそうだと判断できる要素は、どこにあるのだろうか。

小日山最終的には、当社にとっての定性的・定量的なリスク・リターンを考慮したうえで投資する・しないの判断をしていますが、残念ながら投資の決定を行ったにもかかわらず、提携がスムーズに進まない、ないし、進んだとしても思ったような利益が得られないといったケースなど様々あります。

契約上、コンセプトだけはWin-Winになっていても、価値を出せるまでに時間がかかったりするケースは一定あります。しかし、今回アルティウスリンクが保有するお客様に対してソルブレインとの共同案件をスタートさせてみて、ソルブレインの企業としてのスタンスも含めて、同社の提供価値に確かなものを感じたため、「ソルブレインとならやはり良い関係を築いていける」と感じました。

次はソルブレインに、ベンチャー企業側の視点で、大企業と提携し価値を発揮できる企業の特徴について聞いた。櫻庭氏によると、ベンチャー企業側がどれだけ大企業にアジャストできるかがカギだと言う。

櫻庭例えば、ビジネスにおけるお作法的なことですね。ベンチャー企業同士の取引の場合、相手の意思決定者とやり取りするときのお作法はあってないようなもの。例えば、口頭ベースで合意したものに対して、後から契約書の作成に着手するといったことがあるでしょう。

ですが、取引先が大企業の場合は、そうはいきません。きちんと商談開始時からドキュメントベースで話を進め、複数の社内会議を経て、各関係者に承認を取ってようやくプロジェクトがスタートする。そもそもの手順が異なります。ベンチャー企業側がそうしたやり方に適応していかなければ、大企業との仕事は成り立ちません。

小日山当社のような企業は良い意味でも、悪い意味でもプロセスがしっかり確立されていますからね。

櫻庭プロセスという意味では、今回の提携で大企業のガバナンスのあり方が非常に学びになりました。

三井物産は、コーポレートガバナンスが極めて精緻に整っているからこそ、日本を代表する大企業になれたのだとも感じています。一方で、ベンチャー企業は、事業のスピードや勢いに関しては時に大企業を凌ぐこともあるかと思います。しかし、ガバナンスに関しては、事業成長を優先するあまりどうしても後回しになってしまいがちです。

ただ、ベンチャー企業においてもしっかりとガバナンスを整えていくことで、大企業との提携や取引がよりスムーズに進められると感じています。それこそ、先々は三井物産と共に多くの大企業と取引していく機会が増えていくかもしれず、そうなった際の契約〜業務推進においても、今のうちからガバナンスを整えておくことでスピーディに進めていくことができますよね。今後ソルブレインが更なる高みを目指す上でも必要な要素だと捉えて、勉強させていただいています。

小日山ICT事業本部としても、関係会社含め事業をマネジメントしていく中で、徹底してガバナンスを効かせるようにしています。ただその反面、過剰にガバナンスを効かせるとベンチャー企業側を萎縮させるリスクも孕んでいます。

当然ながら、大企業と急成長の過程にあるベンチャー企業とでは内部統制の効かせ方が異なります。当社にはいろんな事業フェーズの関係会社があるので、各フェーズに応じたガバナンス連携も模索していく必要があると感じていますね。

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共創による価値創出の秘訣は、「互いに認め合うこと」

今回の取材を通じて、大企業・三井物産と、ベンチャー企業・ソルブレインの提携によって生み出される価値について、その片鱗が明らかとなった。三井物産のICT事業本部とソルブレインは相互に良い刺激を与え合い、事業成長のみならず組織としても急成長を遂げていくことだろう。

しかし、大企業とベンチャー企業の提携が常にうまくいくとは限らない。今回なぜ、互いにシナジーを生み出し合いながら価値を創出することに成功しているのか、最後にあらためて問いかけた。

小日山お互いに認め合っているからですね。三井物産は、確かにガバナンスもビジネスプロセスもしっかりしています。反面、それがもとでプロジェクト着手までに時間がかかったり、必要以上に保守的になってしまいがちです。

その点、ソルブレイン含めベンチャー企業の方々は、我々に比べて圧倒的に仮説検証を回すサイクルが速く、スピーディに本質的な課題をキャッチできる。その点は我々のような企業にはない良さだと感じています。大企業とベンチャー企業、規模が異なる者同士の組み合わせだからこそ、共にできることがあると思っています。

櫻庭その通りだと思います。お互いのリスペクトがあってこそ、事業の提携はうまくいくのだと感じています。ソルブレインとしては、これから本格化する三井物産との提携にも全力でコミットし、世の中に価値を生み出していきます。

資本力やネームバリューあるのかないのか。最先端技術や革新的なビジネスモデルを持っているのかいないのか。その如何に関わらず、事業提携とは相互のリスペクトの上に成り立つものである。

大企業側は、決して社会的な立場や資本力を用いてベンチャー企業に不利な条件を提示すべきではないし、ベンチャー企業側も、永きにわたって成長を続ける大企業のカルチャーやガバナンスを無下にすべきではない。互いの強み弱みを理解し、フラットな関係で価値創出に臨むことが重要なのだろう。

今回、三井物産とソルブレインは、これらの点をきちんと理解し、リスペクトをしあいながら提携を推進してきた。まさに、大企業とベンチャー企業による提携の成功事例と呼べるのではないだろうか。

これから、自社の企業成長・事業成長において様々な提携の形を模索している起業家・経営者こそ、本記事を基にパートナーとWin-Winの関係を構築していってもらいたい。

こちらの記事は2023年10月17日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

宮原 智子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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兼久 隆行
  • TFHD digital株式会社 取締役執行役員 
  • 東急不動産ホールディングス株式会社 グループDX推進部統括部長 
  • 東急不動産株式会社 DX推進部統括部長 
公開日2024/03/29

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