社会課題の解決に挑む“チェンジメーカー”こそが、世界を変える──国内ソーシャル・エンタープライズの代表格、LIFULL創業者・井上高志が語る

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インタビュイー
井上 高志

1968年、横浜市生まれ。青山学院大学卒業後、株式会社リクルートコスモス(現:株式会社コスモスイニシア)入社。株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)を経て、26歳で独立し、1997年に株式会社ネクスト(現:株式会社LIFULL)設立。2010年に東証一部上場。また、新経済連盟理事、一般財団法人「NEXT WISDOM FOUNDATION」代表理事、一般社団法人「21世紀学び研究所」理事、一般社団法人「Living Anywhere」理事も務めている。

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これから世界を変えていくプレイヤーは誰だろうか。GAFAは言うに及ばず、コンサルや投資銀行などの外資系企業だろうか?たしかに、その可能性はあるが、彼らが変える「世界」とは、いったいなんだろうか。真に向き合うべき世界とは、利便性や短期的な利益の追求ではなく、私たちが直面する社会課題の解決の先にあるともいえるはずだ。

そして、社会課題の解決を目的として活動する人々は「社会起業家」と呼ばれるが、現状の「社会起業家」に対する認識は間違っている。社会起業家とNPOは決してニアリーイコールではない。テクノロジーの後ろ支えもあり、社会課題を解決しながら利益を上げることも可能なのだ。

テクノロジーを駆使して社会課題解決に挑戦しながら、利益も出し続ける企業、すなわち「ソーシャル・エンタープライズ」をまさに体現しているのがLIFULLだ。不動産業界の情報格差を解決してきた「LIFULL HOME'S」をはじめ、様々な社会課題解決型の事業を手がけており、現在世界63ヶ国までサービスエリアを拡大している。

本記事では、同社の創業社長である井上高志氏にインタビュー。「利他主義」を社是に掲げ、20年以上前から社会課題の解決に挑んできた井上氏は、「利益を追い求めるだけの企業活動はサステナブルではない」と語る。

短期的な利益を追い求めるのではなく、数百年先を見据え、さまざまな領域の事業と人に投資するソーシャル・エンタープライズ、LIFULL。社会を変革する100人の“チェンジメーカー”を創出するための仕組み、組織体を明らかにする。

  • TEXT BY TAKUMI OKAJIMA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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社会課題の解決を目的とした事業は自己犠牲ではなく、「サステナブルな営利活動」

「社会課題の解決」を掲げる事業は、大企業が潤沢な資金力のもとで利益を度外視して行っているイメージもある。

しかし井上氏は、「そもそもあらゆる事業が『社会課題の解決』のために行われるべきものであり、企業はそのために存在している」と持論を述べる。

株式会社LIFULL 代表取締役社長 井上高志氏

井上「社会課題の解決を目的とした事業は儲からない」というイメージは、事実と乖離しています。ソーシャル・アントレプレナーのなかにも、大きな収益を生み出せている人はいるんです。

もともと、民間企業も公共機関も手を出しにくく、解決が困難な領域に挑む人たちが「社会起業家」と呼ばれていました。しかし、テクノロジーの発達により、これまで解決と収益化の両立が難しかったジャンルの課題にも光明が差し、民間企業でも社会性の高い事業を成立させられる余地が生まれたんです。

こうした新しいタイプの社会課題の解決を目的とした事業を手がける企業を、私は「ソーシャル・エンタープライズ」と呼んでいます。もちろんLIFULLも、そのひとつです。

井上氏は、日清食品やコカコーラ、ユニリーバといった大企業も、BOPビジネス(低所得層を対象とする国際的な事業活動)を手がけていると例を挙げた。

井上近江商人の経営哲学「三方よし」が有名ですが、売り手と買い手が満足するのは当たり前で、社会に貢献できてこそ良い事業です。企業は社会貢献への投資を惜しむべきではありません。むしろ、利益だけを追求している企業は、サステナブルではないと思っています。

LIFULLの2019年第3四半期の決算に目を向けると、地方創生事業をはじめとした複数の新規事業へ積極的に投資を行っている。

井上新規事業への投資をやめれば、短期的には数億円の利益が得られるでしょう。しかし私は、企業は数百年単位で続くべきものと考えています。だからこそ、目の前の株主や社員の幸福度を高めるだけに限らず、よりよい社会を目指した次の事業の種を探し続けることで、中長期的な成長を果たせるのです。

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“社会性”の高い事業に、世界中の投資家が注目している

ソーシャル・エンタープライズの注目は今に始まったものではなく、「数十年に渡って培われてきた」と井上氏は指摘する。

井上第二次世界対戦が終結して以降、局地的に紛争やテロが起こっているとはいえ、世界全体が平和へ向かいつつあります。結果、人々の生活に余裕が生まれ、より広い視野と長い時間軸で、世界の行く末について考えられるようになったんです。

すると「このままじゃ地球が駄目になるから、『宇宙船地球号』の乗組員としての自覚を持とう」といった風潮が生まれた。インターネットの発達にも後押しされ、誰もがグローバルな社会課題を認識できる世の中になったんです。

近年はESG投資の注目度も急上昇している。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。キャッシュフローや利益率といった財務情報のみならず、これら3要素への貢献を考慮して企業価値を測定するのがESG投資だ。

井上約160兆円にも及ぶ年金積立金を運用しているGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)は、2017年10月に投資原則を改め、株式にとどまらず、債券を含めたすべての資産でESG要素を考慮した投資を進めることを定めました。すると、発表してすぐに、国内500社ほどの企業や金融機関がヒアリングに集まってきたそうです。

環境負荷の削減をはじめ、社会性の高い取り組みを行っている企業でなければ、株を買ってもらいにくくなっています。これから、ESG投資はますます普及していくでしょう。すると、ビジネスパーソンの社会性への意識も高まります。

もし、トヨタがESG投資の対象になるために舵を切ったとしたら、トヨタの系列企業3,000社すべてが社会性の高い取り組みを行わなければならない。関連取引先企業も含めると、数万社の人たちが、ESG投資を受けるために活動するようになるんです。

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「八方よし」の達成を目指す、公益“志”本主義とは?

LIFULLの経営は、独自に定義する「公益“志”本主義」によって成り立つ。社是に「利他主義」を掲げるLIFULLが手がける事業は、短期的な企業価値の向上を重視せず、中長期的に社会へ付加価値を生み出すことを目的としている。

たとえば、企業のオフィスに置き売り形式でスムージーを提供するサービス「Clean Smoothie」は、見た目や形が悪いゆえに廃棄されてしまう規格外野菜や余剰野菜を活用するためにスタートしており、サステナブルに「食料廃棄問題」を解決するための事業である。

LIFULLが達成を目指すのは「八方よし」だ。コンシューマー、クライアント、従業員、パートナー、株主、社会、地球環境を「事業活動の成果を還元するステークホルダー」とみなし、自社を含めた「八方」に配慮をした利益創出を目指す。

その取り組みの一環として、「LIFULL Group Vision Achievement Score(LVAS)」という指標を設け、グループ会社の代表取締役および取締役の評価が行われる。

井上LVASをつくったのは、役員に自らの利益のみを追求するのではなく、公益“志”本主義に沿った経営をしてほしいからです。「ステークホルダーの満足度や未来に対する投資を実行できているか」など、30以上の項目のアンケート調査によって評価され、役員報酬の金額もLVASのスコア次第で決まるシステムなんです。

また、事業の他にも社会貢献活動支援プログラム「One P’s(ワンピース)」を実施。社員の年間総労働時間の1%と、LIFULLの純利益の1%を社会貢献活動にあて、社会の変革にコミットしている。2019年は、熊本地震および九州北部豪雨の復興ボランティアや、中国ゴビ砂漠での植林などの活動を実施した。

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100人の「本物の経営者」を生み出すために

「2025年までに100ヶ国に進出、100子会社を設立、100人の経営者を生み出す」ことを目指すLIFULL。経営理念「常に革進することで、より多くの人々が心からの『安心』と『喜び』を得られる社会の仕組みを創る。」に合致していれば、あらゆる領域で事業の創出を支援する。

「100カ国を押さえれば、地球人口の95%をカバーできる」という考えに加え、100人100通りの事業によって、さまざまな領域の社会課題を解決していくグループを目指すと、井上氏は語る。

井上中央集権型の組織体系よりも、分散型で“連邦国家”のようなスタイルの会社が良い。私のような創業経営者が最も苦労するのは、後継者を育てること。ならば、在籍しているうちから経営者を数多く育成し、その中から任せていこうと。

優秀な経営人材を輩出するためには、副社長や事業部長ではなく、社長として意思決定できる環境を用意する必要があります。部長でも、事業責任者でもダメなんです。圧倒的な当事者意識を持って「社長の仕事」をしなければ、経営者としての本物の実力は身につきません。

ただ、「100経営者」はとりあえず決めた数字で、あくまで通過点です。100を超えたあとは、200、300とさらなる拡大を目指したいと思っています。一緒に世界を変革するチェンジメーカーを増やしたいんです。

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内定前の学生にも!チェンジメーカーへの挑戦機会を

LIFULLには、社会を変革するチェンジメーカーを輩出するため、内定者を含めたすべての社員が新規事業を提案できる制度「SWITCH」がある。余剰スペースの活用・シェアで暮らしを豊かにすることを目指す「LIFULL SPACE」や、高齢者の人生を豊かにすることを目指して幅広い事業を展開する「LIFULL senior」、そして待機児童問題の解決を目指しキッズスペース付きオフィスを展開する「LIFULL FaM」は、すべてこの「SWITCH」から生まれた会社だ。

井上たとえ内定前の学生であっても、肝いりの事業プランがあるなら、面接時にぜひ持ち込んでほしい。面白ければ出資するので、入社と同時に社長になってください。

既に起業している人でも、社会課題を解決するための事業を成長させられずに苦しんでいるなら、ぜひ一度は私たちのもとに来てほしい。出資やM&Aをする場合は、「ビジョンに共感できるか」を何より重視しています。

LIFULLは、資金面での支援だけでなく、同じ理念を持った経営者仲間がたくさんいる組織。事業を通じて社会にインパクトを与えることを目指す人にとって、これ以上ない環境なはずです。

今後のキャリアプランを考える上で、「スキルを身に付けること」ばかりが目的化しすぎているきらいがないだろうか。目的なしに身につけたスキルは、振り返ってみると無駄も多いものだ。実現したい世界を目指す過程で獲得したスキルや経験こそが、独自の強みを生み、本当の意味での「武器」になっていくはずだ。

最後に求める人物像を問うと、井上氏は「パッションと実行力を備えた人物と働きたい」と答えてくれた。

井上「どうしてもこの社会課題を解決したい」というパッションを持った人と一緒に働きたい。そして机上のプランを描くだけでなく、やり切る実行力も兼ね備えていてほしいですね。ソーシャル・エンタープライズとしてより多くの社会課題を解決し、本気で「あらゆるLIFEを、FULLに。」することを目指すLIFULLには、もっともっと、チェンジメーカーが必要なんです。

こちらの記事は2019年09月12日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

岡島 たくみ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター・編集者。1995年生まれ、福井県出身。神戸大学経済学部経済学科→新卒で現職。スタートアップを中心としたビジネス・テクノロジー全般に関心があります。

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藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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