n=1の課題を、しゃぶりつくせ!業界変革プロダクトを創る秘訣は、「顧客層を広げ過ぎない」こと──ロジレスと倉庫事業者の蜜月関係に学ぶ、プロダクトマネジメントの要諦

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インタビュイー
田中 稔之

大阪府出身。立命館大学卒業。大学時代の4年間、Webデザイナーとして働く。新卒で楽天株式会社に入社し、開発部に配属。金融サービスのエンジニアとして3年間勤務する間に、フロントエンド、バックエンド、インフラの一連の知識を得る。楽天退職後の2012年に会社を立ち上げ、自分たちでECサイト運営をするなかで業界課題を実感。2017年に株式会社ロジレスを創業。企業の商流の根幹を担う自動化基盤を提供し、多くのクライアントで業務効率の大幅な向上を達成。その楽しさに取り憑かれる。

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「顧客価値を生み出せ」「業界を変えるんだ」。

こうしたメッセージを掲げ事業を展開するスタートアップは多い。しかし、事業成長が進み、組織規模が大きくなると、徐々に経営陣は現場から遠ざかる。

がゆえに、初心を忘れると「あの会社は上場してから自社の株価ばかり気にするようになった」「プロダクトの方向性がズレてきている」などといったネガティブな批判が生じることも少なくない。

ロジレスさんは、事業が伸びてもずっと現場を大事にしてくれる。だからこそ、一緒に業界を変えるべく本格的な事業連携を打診したんです」。

そう語るのは、EC物流SaaS『LOGILESS』を導入し、自社の出荷作業を自動化、業務の生産性を大幅に改善することに成功したとある倉庫事業者だ。いや、生産性向上だけでなく、大幅な事業成長にまで至ったと書く方が正しい。何とこの倉庫事業者は、ロジレスによって従来の業務の80%の工数を削減し、2年間で40社以上の新規顧客を掴むことに成功したのだ。

そしてこのロジレスとは、生産性向上を通じてEC物流業界に変革をもたらすスタートアップである。プロダクトを導入するEC事業者は約800社、倉庫事業者は約150社と、僅か5年で目覚ましい発展を遂げている。しかし、そこに胡座をかくことなく、現在もなお経営陣含め現場での業務を事業の軸にしたスタイルを貫いている。

その結果、顧客からは紹介が殺到し、中にはより深く共同事業を打診する声も上がってきているのだ。

「自分たちはどこを見て事業を推進しているのか」。フェーズに関係なく、事業経営にたずさわるものであれば今一度心に止めておきたい経営マインド、企業スタンスがここにある。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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無駄無駄無駄。非効率を極める労働環境に、押し寄せる人手不足の波

小椋物流業界は、かつて3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれ、ネガティブなイメージがありました。そこから今に至るまでデジタル化を筆頭に優れた仕組みが生まれ、物流業界は変化してきています。しかし、それでもまだ重く課題がのしかかっているんです…。

物流業界で20年以上の経験をもつ角川流通倉庫の小椋氏は、冒頭にそう語り始めた。デジタル化によって働き方が改善され、3Kのイメージはすでに昔の話だという。だが、物流業界にはいまなお課題が残っているのも事実だ。

その一つが人材不足である。少子高齢化が進む日本では、働き手となる生産年齢人口の減少が社会課題となって久しい。その波は物流業界にも及んでおり、業界従事者たちは現在進行形で若手の人材確保に苦心している。

さらに物流業界が直面しているのが、“2024年問題*”だ。若手の人材が不足する中、トラックドライバーの労働時間が制限されるため、多くの物流会社は売上や利益が減少するリスクを抱えることになる。その他にも、世界情勢の影響により原油や原材料の価格高騰も深刻化しており、決して「先が明るい」とは言い難い現実がこの業界にはある。

*2024年4月1日から「自動車運転業務にうける時間外労働時間の上限規制」が適用されることで生じる諸問題を意味する。具体的には、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に制限される。

角川流通倉庫 小椋氏

小椋EC市場が盛り上がりを見せ、宅配便の取り扱い個数が増える中、その裏で働く業界従事者は圧倒的に不足しています。モノは増えるがそれを捌くヒトが減っていっているので、このままではスムーズな配送ができません。

だからといって、2024年問題のように、これ以上一人当たりの稼働を増やすには限界があります。そのため、全国の物流会社では今、生産性向上が喫緊の課題となっているんです。

それには、マテハン*機器の導入によって現場の作業効率を上げることも一つの手です。しかし、私はもっと根幹にある仕組み、物流チェーンにおける基幹システムの見直しこそが、生産性を向上する上で一番の肝になると思っています。ですので、受注から出荷までの工程を自動化できる『LOGILESS』は、まさにEC物流における基幹システムをアップデートし得る、重要な役割を担っていると思っています。

*マテリアルハンドリングの略語。物流倉庫内で荷物の積み降ろしや運搬、倉庫への格納などの作業を効率化するために使用される機械や設備を指す。

物流業界では、生産年齢人口の減少による人材不足に加えて、複雑化した基幹システムがもたらす弊害も大きな課題となっている。ロジレスCTOの田中氏は、その現状を「日本企業全般におけるITシステムの負の遺産だと言える」と前置きをした上でゆっくりと口を開いた。

田中物流業界に限らず日本企業では、これまで個別の企業毎に最適化されたシステム構築を進めてきました。場合によっては、同じ会社内でも部署毎に使うシステムが異なったり、ある部署だけ機能追加が行われていたりという具合にです。

例えば、顧客情報と注文データを管理するシステムが異なっていたり、社内データの保管もカテゴリによって管理するシステムが分かれていたりするんです。このように、企業のバリューチェーンにおける個々のシステム化をバラバラに行ってきた結果、同じ会社内でもデータが分断されており、正しい情報連携が取れないといった非効率な状態を生み出してしまっているんです。

「このつぎはぎだらけの状態を、ひとつのシステムでシームレスに繋ぐことができたら、きっと生産性は向上するはず…」そんな課題感を持って生み出したのが、この『LOGILESS』なんです。

ロジレスCTO 田中 稔之氏

田中氏が従来の日本企業におけるシステム運用への懸念を示すように、事実、角川流通倉庫でも『LOGILESS』を導入する以前は、システムの分断により無駄なオペレーションが発生していた。

小椋2018年に『LOGILESS』を導入する前までは、我々の倉庫をご活用いただくEC事業者様が個別に作成した受注データを送ってもらい、CSV形式でダウンロードしていました。当然ながら、各EC事業者様によって使っているシステムが異なるため、データの種類や単位もバラバラ。時にはデータを取り込む際にエラーが起きたり、ゼロ落ち*していたりすることもありました。

「この情報をもとに出荷して大丈夫なのか?」「住所や電話番号、商品番号に誤りはないか?」と、その都度、確認するために業務をストップさせていました。これは、倉庫事業者にとってはかなり生産性を下げる要因になっていたんです…。

*管理IDとして“0001”や“0002”などと表示する際に、先頭の“0(ゼロ)”が消えて表示されてしまうこと

このように、ほんの5〜10年前まで、EC物流業界では受注から出荷までを一気通貫で管理する仕組みが存在していなかった。業界の従事者たちは文字通り“つぎはぎ”だらけの状態の中、非効率と知りながら何とか目の前の業務を捌いていたのだ。

そんな状況に対し、生産性向上を使命に立ち上がったのがこのロジレスだ。先に述べたように、このつぎはぎだらけの業務プロセスをひとつのプロダクトによってシームレスに繋げ、倉庫事業者及びEC事業者の生産性を劇的に改善したのだ。

そんなロジレスと角川倉庫との出会いはいつ、どんな形で起きたのだろうか──。

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「倉庫側の機能はおまけ程度だろう…」。
事前の期待値を覆したOMS・WMS一体型システム

今でこそロジレスのプロダクトを絶賛している小椋氏だが、この『LOGILESS』の導入に対しては当初あまり乗り気ではなかった。

小椋『LOGILESS』導入前の我々は、どのEC事業者様に対してもWMS*(倉庫管理システム)として最大手のシステムを用いて業務連携していました。そのため、基本的には新しく契約が決まったEC事業者様に対してもそのシステムを導入するのが習慣となっていました。

ところが、ある新規のEC事業者様から「御社とは『LOGILESS』を使って情報連携をしたい」と打診されたんです。最初は「聞いたことないシステムだな」と思いつつ、そのEC事業者様との案件に対しては『LOGILESS』を使って受注管理をすることになったんです。

*Warehouse Management System

一旦ここで前提を押さえよう。EC物流を理解する上で必須の概念、OMS*とWMSだ。OMSは受注管理システムを指し、EC事業者が自社の商品の受注状況を管理するために導入するシステムだ。一方で、WMSは倉庫管理システムを指し、倉庫事業者が自社の倉庫内の商品/荷物の在庫状況を管理するためのシステムだ。

*Order Management System

通常、このOMS(受注管理システム)とWMS(倉庫管理システム)は独立した別々のシステムとして取り扱われてきたのだが、『LOGILESS』ではこの2つのシステムが一体型となっているのだ。言葉にすれば何のことはないが、これがEC物流における生産性を大きく向上させるドライバーとなっているのだ。

では話を戻そう。『LOGILESS』は受注から出荷まで一連のプロセスをほぼ完全に自動化できる仕組みがあるとはいえ、当時の小椋氏は「とは言え、結局EC事業者側に寄った機能ばかりで、倉庫事業者側の機能はおまけみたいなものだろう」ぐらいにしか考えていなかったのだ。

小椋これまでも「OMSとWMSの機能を2つ兼ね備えたシステムです」と謳ったプロダクトをソフトウェア会社から提案されることはありました。しかし、往々にしてOMS側に寄ったつくりになっていることが多く、WMSの機能が軽視されているケースが多かったんです。なので、『LOGILESS』への期待値は低かった(笑)。

ところが、蓋を開けてみれば事前の印象とは全然違ったんです。一般的に、倉庫事業者では数ある商品の中から特定の商品在庫を探し当てるのに時間が掛かるため、在庫の保管場所を示す独自の“住所”を設けています。それをロケーションというのですが、WMSの機能として重要なこのロケーション管理機能が『LOGILESS』にはしっかりと備わっていたんです。これには驚きました。

小椋流石だなと思った点は他にもありますよ。一般的に、EC事業者はサイト上で販売できる在庫数を把握するために、注文が入った時点で実際の在庫から注文分を確保(取り置き)しておくといった作業を行うんです。

例えば、食品や化粧品など鮮度のある商品を扱う場合、倉庫事業者の方では賞味期限が近い商品や製造日の古い商品から先に出すというところまで意識して管理しなければいけません。

これを“在庫引き当て”と呼ぶのですが、システム上で再現するにはなかなかハードルが高い。しかし、『LOGILESS』はそういった複雑な機能にもきちんと対応していました。

「ロケーション管理もできる。複雑な引き当ての機能も備わっている。『LOGILESS』って想像以上にちゃんとしているな…!」と驚いたことを覚えています(笑)。

プロダクトの機能面で事前の期待値を大きく上回るロジレス。しかし、顧客に与えた驚きは何もシステム面だけではない。同社はプロダクト導入時のオンボーディングとして角川倉庫に直接足を運び、オペレーションの進め方や出荷グループの組み方などを丁寧に解説して回ったのだそうだ。

小椋目の前でプロダクトを動かしながら、資料も用いて分かりやすく説明してくれたおかげで、『LOGILESS』の使い勝手はすぐに掴むことができました。

「機能も充分だ」「画面も見やすい」。これだったら従業員たちもすぐに使いこなせるだろうと思いました。なので、これまで長く大手のシステムを使ってきた我々ですが、『LOGILESS』の導入に関しては殆どハードルの高さを感じませんでしたね。

長年、大手の主流なシステムを使ってきた小椋氏も太鼓判を押すプロダクト・クオリティ。その開発を主導した田中氏はどのように捉えているのだろうか。

田中 EC物流において、EC事業者側は販売在庫という“データ上、理論上”の在庫を管理しているのに対し、倉庫事業者側は“リアルな”実在庫を管理するといった構造があります。何が言いたいかというと、それぞれ在庫管理における定義や視点がまったく異なるということです。

定義や視点が違うわけですから、もはやこれは「2つのニーズに応える」というレベルのプロダクト開発ではないのかもしれない。それぞれの課題を、現場レベルで正確に理解する必要があります。そのために、足しげく現場に通う。そうして改善を繰り返して初めて、PMFが見えてきます。それくらいに長く険しい道のりなんです。

『LOGILESS』導入による一番の変化は、OMSとWMSがシームレスに繋がったことで、従来のアナログで非効率的な業務を大幅に削減できたことだ。その効果は、われわれスタートアップパーソンがどんなにイメージを膨らませても、解像度高くつかめるものではない。角川流通倉庫の現場で感じたものを、ここから改めて熱く語ってもらった。

小椋EC事業者様から我々に対して送られてくる、受注した注文データの連携頻度を、例えば10分に1回と設定すれば、その間隔で正しい受注データがWMSに自動反映されます。そのため、EC事業者様からCSVファイルを受け取ってデータを取り込んだり、ゼロ落ちしたデータを修正したりする工程がなくなります。分かりにくいかもしれませんが、本当にすごいことでして、これによって一気に業務効率化が進みました。

他にもバーコードの読み込みの早さには驚きましたね。商品の出荷検品の工程では、お客様の商品が注文通りにピックアップされているかハンディターミナルでバーコードをスキャンして整合性をチェックします。ここで、一般的なハンディターミナルの場合はその都度データ通信を行うため、一つの商品をスキャンする度に2〜3秒のロスが発生するんです。

ところが、ロジレスのハンディターミナルは、事前に必要な検品データをサクッとダウンロードしておけば、その毎回2〜3秒掛かる工程を極めてゼロに抑えることができるんです。これが1日、1ヶ月、1年と積み重なっていけば非常に大きな生産性向上を実現できますよね。

このように、2018年から『LOGILESS』を導入し、大幅な生産性向上に成功した角川流通倉庫。その後は角川倉庫の方から積極的に新規取引先であるEC事業者に『LOGILESS』の活用を勧め、今では『LOGILESS』を通じて月に十数万件にも上る自動出荷を実現しているとのこと。その規模が増えれば増えるほど、EC物流業界全体の生産性が向上していくのだ。

ロジレスが掲げる“生産性向上を通じた社会変革”が、ゆっくりと、確実に実現し始めているのだ。

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「なんだ…このロジレスという会社は…」。
顧客が息を呑むプロダクトフィードバック

なぜハンディの拘りを実現できていたのか、それは、“人”にある。ここからは、プロダクトフィードバックループをどのようにまわしているのか、という切り口で見ていこう。キーワードは“泥臭さ”だ。

先のロジレスとクロスマートの対談記事でも語られたが、現場起点のプロダクトづくりに対する拘りは他の追随を許さない。小椋氏は、「ロジレスはシステムを導入した後の改善においても、素晴らしい対応をしてくれる」と称賛の意を見せる。

小椋以前、うちの倉庫から商品の配送を任せている運送業者さんに、「運ぶ荷物の量が多すぎるから、届け先の郵便番号順に商品を並び変えておいてもらわないと集荷できませんよ…」と言われてしまったことがあります。『LOGILESS』のおかげで出荷数がものすごく伸びた裏返しに、こんな課題が表出したんです。

それまでは配送先の住所に応じた在庫管理の仕組みがなかったので、どうしようかと悩みました。そこで、ここはロジレスさんに相談してみようと電話したところ、田中さんが二つ返事で引き受けてくれたんです。

電話口で田中さんは「このデータをここでこう整理できれば良いんですね。なるほど、できなくはないな。小椋さん、ちょっと二日間だけお時間ください!」とのこと。相談したのは金曜日の夜だったにも関わらず、「週明けにはアップデートしておきますね」とのお返事に対し、僕は「いやいや、そんなに簡単には改修できないでしょう…(笑)!」と思っていました。

ところが、週明けには宣言通り並べ替えの機能ができ上がっており、その週の月曜出荷分に間に合わせることができました。「なんだこの会社は、すごすぎる…!」と衝撃を受けたことを今でもよく覚えています。

それもそのはずである。一般的にシステムの仕組みを変えたり、機能を追加したりする場合は少なくとも要件定義から実装まで2ヶ月は掛かる。まずは仕様を確認し、社内でミーティングを開き、工数を算出し見積りを出す。そこからクライアントの社内稟議が下りてようやく実装となるのだ。

また、基本的に全てのユーザーが同じシステムを使用するSaaSプロダクトにおいては、いち企業が「機能を追加してほしい」という要望を出してもそう簡単には実現できないようにも思う。なぜ、ロジレスではスピーディな対応が可能なのだろうか。

田中大前提、ロジレスのメンバーは皆、顧客が困っていればすぐに解決したいという気持ちが強いからだと思います。しかしながら、我々もすべてのニーズには応えられません。そのため、現場の状況を鑑みて、緊急度の高い課題から優先的に対処するようにしています。

これは弊社代表の足立もインタビュー記事で述べていますが、ロジレスは顧客の中でも本当に困っている方々と向き合ってサービスを作り上げてきましたので、ある倉庫事業者様から上がってくる課題は、基本的に他の倉庫事業者様も同様に悩んでいるケースが多いんです。

今回の課題は、出荷数の増加に伴って生まれてくるものですよね。私たちは生産性向上に貢献して、事業成長まで支援したい。なのに、出荷数が増えたら新たな課題にぶつかり、成長が止まってしまうなんてことがあったら、意味がない。だから、明らかに開発優先度の高い課題になります。そんな意思決定を、スピーディに進めているんです。

現場で困っている人がいればすぐに対応する。それは、ロジレスが2017年にプロダクトを立ち上げた当初から大事にしてきたことだと田中氏は言う。

その言葉を受け、小椋氏は「ロジレスは組織が拡大して事業が伸びている今でも、昔と変わらず現場を大事にしてくれる。そこが、ロジレスのサービスを使い続けたいと感じる要因でもありますね」と返した。

小椋最近でも、こちらのご依頼から1週間ほどで機能を追加実装してもらったことがありましたね。結果、ここでも何十時間もの工数削減に繋げることができました。

簡単に説明すると、これまで4万点にも及ぶ商品を1つずつピッキング(ピックアップ)して、ハンディターミナルで商品のバーコードをスキャンしていたんです。そこに新たな機能を実装してもらったところ、作業工数を従来の80%も削減することができました。もはや『LOGILESS』なくしてうちの業務は成り立たないと言えるほど、大きく事業貢献してくれています。

もちろん不具合が致命傷になりかねない機能刷新の場合は、プロダクトに反映させる前に実証実験を行ってからリリースさせる。それは当然だ。しかし、現場では実際にプロダクトを使いながら検証していく方が、顧客にとって最善の場合もある。ロジレスではスピーディに、かつ臨機応変な対応でプロダクトの開発をしていることが分かるだろう。

そんな顧客の声を反映させてきたロジレスだが、何もその恩恵を受けているのは顧客だけではない。

プロダクト提供側であるロジレスも、角川流通倉庫との密な連携のお蔭で、大規模な出荷に対応するノウハウを学び、プロダクトレベルを一段も二段も引き上げることに成功したのだ。

田中小椋さんからのインプットで生まれた新機能は、2つや3つどころではありません。実際に現場に訪れて課題を肌で感じた上で開発を進めたり、出荷業務に関する重要なデータを提供いただいて機能改善に役立てたりと、“パートナー”として一緒に事業を伸ばしてきたという事実があります。なので、僕らロジレスがここまで来れたのは、角川倉庫さんのお陰でもあると強く感じているんです。

今でもロジレスの経営陣は、都心から離れた角川流通倉庫を足繁く訪問しているという。実際に倉庫の現場に立って、どうすれば生産性が上がるのかを試行錯誤しながら、共に改善プロジェクトに取り組んでいるのだ。

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「顧客の人生や、会社の運命を変えたい」。
とある絵本屋と出会い、ハートに火が灯る

「顧客の人生や会社の運命を変えるようなプロダクトをつくりたい」──。

それがロジレスの目指すところである。

実際、角川流通倉庫もロジレスと出会い、運命が変わった1社だ。2018年に『LOGILESS』を導入した同社は、2020年12月に本格的にロジレスと組み、以降2年間でクライアントとなるEC事業者の数を41社増やすことに成功している。

小椋我々は、これまでアイドルやアーティストのグッズに特化した梱包発送を行ってきました。しかしコロナ禍で、ライブやイベントが中止になるケースも多く、このままでは従業員の雇用を維持するのが難しいと感じていました。

一方、需要がある時は人手が足りないほど忙しい。なので、事業を安定させるためには、時期による影響を受けず安定的に販売できるEC事業様と多く取引したいと考えたのです。

「社内体制を整えたい。事業を本格的に大きくしていきたい。それを一緒に実現できるのは、今まで密に連携をしてきてくれたロジレスしかいない」。そう意思決定を下した角川流通倉庫。そこから小椋氏は同社代表も引き連れて、ロジレスに本格的な事業提携を打診。2020年12月のことである。そしてそこから2年も経たないうちに、角川流通倉庫は『LOGILESS』の導入にメリットを感じたEC事業者と次々に契約を結んでいくのであった。

田中氏は、「角川倉庫さんの事業成長に貢献できているのであれば、これほど嬉しいことはない」と和やかな笑顔を向ける。なぜ、ロジレスはここまで顧客に寄り添えるのだろうか。

田中顧客に伴走して、一緒にプロダクトをつくりたいという想いがロジレスのカルチャーとして根付いているからだと思います。

ロジレスを本格的にスタートさせる前、僕と足立はとある絵本屋さんの物流改善に携わっていたことがありました。そこで僕らがつくったシステムを導入したところ、アナログで非効率だった現場が劇的に改善されたのです。

システムを導入するまで、従来のアナログな業務フローがベストプラクティスだと捉えていらっしゃった従業員の方からすれば、「よそ者が自分たちの仕事を奪いにきた」と思われてしまうケースもあります。

田中実際、その絵本屋さんの中にもシステムの導入に反対していた従業員の方がいらっしゃいました。しかし、業務改善によって従業員の時間にゆとりが生まれた結果、「お客様とじっくり向き合えるようになった」と嬉しい言葉を頂くことができました。

この経験から、「ITプロダクトは単にデジタル化によって効率を上げるものだけではなく、人間的な営みを支えることもできるんだ」と気付かされましたね。その時の想いが、『LOGILESS』を立ち上げる原体験になっているんです。

ロジレスの顧客に寄り添う姿勢に触れた小椋氏は、「ロジレスさんは、過度にお金儲けに走っていかないところがまた良いんですよ」と取材陣にそっと打ち明ける。

小椋ビジネスパートナーに新たなお客様を紹介した際は、場合によっては紹介手数料を取るケースも少なくないと思います。しかし、ロジレスさんはそういうことを一切やらないんですね。

「紹介料なんて要りませんよ。その分、倉庫で働く従業員の方々に還元してください」と代表の足立さんに言われたことが印象に残っています。そして、その想いはロジレス全体に浸透しているように思います。何ていうか、本当にピュアな心を持った方々の集まりですよね。

真摯に業界や僕ら顧客のことを想ってくれている。じゃないと、あんな週末のうちにシステムの改修を済ませてくれるなんてできませんよ(笑)。

ロジレスの面々は、角川流通倉庫と今でも頻繁に食事の席を共にしており、プロダクトや業界の未来について熱く語り合っているという。

田中「倉庫で働く人たちの給与を上げたい」「この業界は、まだまだ変えられる」。それがロジレスの大きなモチベーションになっていることは間違いありません。そしてそれは僕も同じです。その実現に向けて、これからもロジレス一丸となって、付加価値の高いプロダクトを開発していきたいと思います。

EC物流業界が今後未来に向かって持続的に成長していくためには、若手の人材確保が重要である。つまり、若手にとって「この業界で働きたい」と思われるような魅力ある業界へと変革していかなければならない。

しかし、その道はなかなかに険しい。ほんの数年で解決できる課題ではないだろう。だが、ロジレスはその課題に本気で向き合っており、本気で変えられると確信を持って事業に挑んでいる。そうした姿勢がステークホルダーの共感を生み、厚い信頼を寄せられる存在へとなっていくのだろう。

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登るべき山は高いが、上り方はとことんロジレス流でいく

EC物流業界に画期的な変化をもたらしたロジレス。事業が大きく成長してもなお、現場へコミットする姿勢は一貫して変わらない。それはなぜか。

田中ロジレスでは、“事業の成長=人が増えること”だという考えではないんですね。それよりも、「自分たちは何を成し遂げたいのか」「顧客に対してどんな価値を生み出していくのか」、それを自身の哲学として持ち、常に探求していくことが事業の成長においても重要だと捉えています。

その純度を高く維持しながら事業を進めていくことが大事だと考えています。そのためには、現場から離れていてはいけません。どれだけ事業や組織が大きくなっても、現場を大事にする。この姿勢はずっと貫いていきたいです。

どんなに組織が大きくなろうとも、顧客解像度を高めるために現場にコミットする姿勢は変わらない。なぜなら、顧客の課題を真に捉えたベストプラクティスを見出し、生産性を向上させていくことがロジレスの強みだからだ。

そんなロジレスが今後、EC物流業界を良くするために取り組んでいきたいことは何か尋ねてみた。

田中今後、優先的に取り組みたいのが、“倉庫事業者側の生産性の可視化”です。一般的に、生産性の高い倉庫というと、ロボットが自動で荷物の仕分けを行う様な、AIやIoTを用いた仕組みを想像される方が多いと思います。

しかし、商品カテゴリが多岐にわたる、複数のEC事業者から荷物を預かり出荷する倉庫事業者の場合、どんな注文を受けるか事前に決まっているわけではないんですね。そのため、すべての物流工程を完全自動化することは、現時点のテクノロジーでは難しい状況にあります。

田中では、「どこにテクノロジーを導入すれば生産性が上がるだろうか」「もっと効率化させるためには何ができるだろうか」と、そういった視点でPDCAを回しながら仕組みを整えていくことが重要です。先々は、現場の生産性を高く維持しながら、経営に対してもインパクトを与えられるような、そんなプロダクトをつくっていきたいですね。

対し、小椋氏はロジレスが保有しているデータに大きな可能性を感じている。例えば、受注データや在庫データ、配送先データなど、それらを利活用できれば倉庫の生産性向上に加え、倉庫事業者側からEC事業者側へ新たな提案ができるチャンスもある。例えば、「今は他のジャンルのEC事業者でこんな商品がよく売れているので、御社も商品を開発してみてはどうか?」といった具合にだ。

小椋最近では、業界内で「ウチは『LOGILESS』を使っている」と言うと、「あぁ『LOGILESS』さんね、よく耳にするよね。今すごいらしいじゃん?」という声を頻繁に聞くようになりました。つい数年前までは殆ど知られていなかったことを考えると、とても感慨深いものがあります。

今、ロジレスさんは事業が急成長して組織的にも大きくなってきました。しかし、今回の対談で、現場を起点としたプロダクトづくりという根本的な思想が相変わらず変わっていないことを再確認でき、とても嬉しく思っています。今後もロジレスさんと共に、物流業界の明るい未来を築いていきたいと思います。

読者は今回、倉庫事業者との対談を経てロジレスに対しどんな印象を抱いただろうか。その徹底した顧客主義を見るに、場合によっては「もっと上手くやれば、スタートアップとして最速で急成長できるのに勿体ない」と感じた者もいるかもしれない。

しかし、これが等身大のロジレスなのだ。決して上場をゴールとした儲けのためや、周囲からの賞賛を集めるために事業を展開しているのではない。純度100%で、EC物流業界を良い方向に変えるべく、そしてその先にある日本社会の変革のために、泥臭い挑戦をしているのだ。

先のインタビュー記事で代表の足立氏が語った様に、見据える先は高い山である。しかし、そこに向けた登り方は、何が何でも売上や成長速度を追及するスタイルではない。しっかりとステークホルダーたちと手を取り合い、一歩一歩、着実に未来を変えていくスタイルを志向しているのだ。

こちらの記事は2023年01月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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