これがSIerの底力!
たった数か月で仕上げたプロダクトが、世界を変える──ビジネスを創る元SEに聞く「大企業アセットの活用法」

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インタビュイー
山本 史朗
  • 日本ユニシス株式会社 戦略事業推進第二本部事業推進二部企業共創プロジェク1グループ グループリーダー 

1991年に大学を卒業後、新卒で日本ユニシス株式会社に入社。Java黎明期よりアプリケーションアーキテクトとして、日本ユニシスの開発標準「MIDMOST for Java EE Maia」「MIDMOST for .NET Maris」の開発、適用、教育に従事。金融、流通、公共系の大規模システム開発案件に参画。現在は、データ流通による共創ビジネスを創出すべくパーソナルデータ流通プラットフォーム「Dot to Dot」を企画・開発してスマートシティ案件にて実証中。

石山 扶巳
  • 日本ユニシス株式会社 戦略事業推進第二本部事業推進二部地域共創プロジェクト2グループ グループリーダー 

大学卒業後、大手電力会社の子会社にシステムエンジニアとして入社。電気料金の基幹系システムや原子力の制御系システムの開発に従事。2002年中部ソフトエンジニアリング株式会社(現日本ユニシス株式会社)に入社。電力、スポーツ業界のシステム開発を経て、イノベーションビジネスに参画。熊本県合志市におけるヘルスケア視点の地域活性化事業や長野県長野市における産官学金によるイノベーション事業創出プログラムの運営・プラットフォームビジネスに取り組む。

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日本を代表する老舗SI企業である日本ユニシス。

大企業であることに甘んじず、昨今はベンチャー並の挑戦心を持ち変革を遂げていることについて、これまで2回にわたって現グローバルビジネス担当執行役員の白井久美子氏、グループ会社であるCVCでキャピタリストを務める浜田大輔氏に話を聞いてきた。もちろんこれだけの情報では「会社のトップ層が変革を望んでいるだけでは?」と疑わしく思う人もいるかもしれないが、実はそうではない。社内では着実に変革が進み、イノベーティブな新規ビジネスが次々と生まれているというのだ。

2022年4月には社名を変更する日本ユニシス。今回は、その変革の渦中で実際に新規事業の立ち上げ・運営を行っている2人の社員に迫る。山本史朗氏と石山扶巳氏だ。

元々は上司・部下の関係であったという山本氏と石山氏。今はそれぞれが日本ユニシスの新規事業の中核を担っている。BtoBビジネスのイメージが強い日本ユニシスだが、SI事業以外のビジネスも拡大させるべく、我々生活者に直接インパクトを与える一大プロジェクトを始動させているというのだ。

話を聞き進めていくと、どうやらその土台となっているのは日本ユニシスの“変革マインド”だけではないことがわかる。同社が持つ全国各地への影響範囲の大きさと、長年培ってきた技術力の高さが、他の企業にはそう簡単に実現できないインパクトを生み出すエンジンとなっているようなのだ。時には、ベンチャー企業よりもさらに早いスピード感でのサービス創出も可能だと言える。

山本氏が「残りの人生を捧げようと思っている」とまで語るそのプロジェクトたち。変革の時を迎えた日本ユニシスの現在の姿を、具体事例を元に紐解いていく。

  • TEXT BY SAE OTA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「大企業主体」から「生活者本位」の社会へ

日本ユニシスが変革の時を迎えているのは、前回までに見てきた通りだ。老舗SI企業というプライド、影響力、技術力を保持・強化しつつも、社会全体に大きなインパクトを及ぼすような事業をいくつも生み出す組織へと、変革を遂げている。

そんな変化の中で山本氏・石山氏はそれぞれ一大プロジェクトの立ち上げ・運営を力強く推進してきた。その一つが、山本氏が発起人となった『Dot to Dot』だ。生活者一人ひとりのパーソナルデータに着目し、それらを有機的につなぐことで生活者・事業者それぞれにとってより良い暮らしが実現することを目指している。

山本日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、言葉こそ広まりましたが、今は停滞しているとも言われています。これを推し進めることが、日本経済にとって最も重要なことですから、私たちも本気で立ち向かい、ビジネス創造につなげようとしています。

停滞の原因を考え抜いた結果、着目したのがパーソナルデータでした。パーソナルデータを流通させることに成功すれば、日本のDXそのものの進化に多大なインパクトを与えられると確信したのです。

具体的にどのようなビジネスなのか、それは後ほど詳細に聞くこととして、まずは山本氏と日本ユニシスが抱いている課題意識を明らかにしていきたい。それは、大企業に属しながらも違和感を覚えつつあった、大企業が最も力を持つこれまでの経済構造について、だ。

山本これまで、企業が主体となってサービスを生み出し、生活者に対して「こんな良い商品やサービスがありますよ」とアプローチをかけて注目や関心を集めるというマーケティングが一般的でした。こうした経済を「アテンションエコノミー」と呼ぶ向きがありますよね。しかし、これではヒット率が低い。

当たるか外れるかわからないマーケティングが当たり前の世界では、組織規模や資金力が大きい企業しか参入できません。そうではなくて、今後は「インテンションエコノミー」、つまり買い手である生活者の「こういうサービスが欲しい」という意思が先にあって、それに対して企業側がサービスを提供する、という形に変化していくべきだと思っています。

その方が、大企業以外にも参入のチャンスがあり、さまざまな商品やサービスが生まれるので、生活者の暮らしも豊かになる。そうした新しい経済圏を、私たちのアセットを活用して成立させたいのです。

例えば山本氏が過去に考案していたアイデアの一つが、生活者のライフプランに対してパーソナルデータをもとにレコメンドを提供する、というものだ。個人の資産情報などをもとにライフプランに沿ったアクションの提案を行うことで、事業者の商機を提供するだけでなく生活者個人の生活レベルの改善、ひいては少子高齢化を解決する可能性まであると考えている。

山本ちょっと前だったら、銀行口座の利用明細を見たら、その家族のお金の流れがある程度見えましたよね?でも今はクレジットカードや電子マネーなど多岐に渡るサービスがあり、お金の動きが見えにくい。不安を感じる人は多いはずです。これらのサービスを一覧で確認できる家計簿アプリの利用が増えている背景には、こうした変化があると感じています。

“老後2000万円問題”や昨今の長引く不況などもあり、このままでは自分の老後はおろか、子どもを産み、育てていこうと安心して思える状況ではありませんよね。

そこで、ライフプランと、それに合わせて今とるべきアクションがわかれば、心理的な将来への不安は大きく軽減されると考えました。パーソナルデータを使えば、生活者にダイレクトな影響を与えることができる。それは、想像するよりもはるかに大きな社会変化をもたらすはずなのです。

数年間、このアイデアを温めてきた山本氏は、その土台を日本ユニシス社内で実現するという想像もしていなかった挑戦に乗り出すことになったのだ。

一方、石山氏が中心となって推進しているプロジェクトが『地域共創ラボ』だ。『Dot to Dot』と同じく、目指すところは自社における目の前の利益向上ではなく、生活者の暮らしをいかに豊かにするか、社会課題の解決にいかに貢献するか、だ。

石山地域・生活者に根ざしたサービスを作ることで、社会課題を解決したい。ただそのためには、日本ユニシスだけが一方的に頑張っても地域の共感を得ることは難しいでしょう。加えて、他社と“競争”しても、本当に生活者のためになるサービスは生まれにくい。となれば“共創”するしかありません。

現在は、長野県を舞台とし、地域の人々と一緒になって知恵を寄せ合いながら、いくつもの新規ビジネスの立ち上げを始めている。

地域共創ラボで生まれ、実現に向けて動いている事業案(発表会のレポートはこちら

  • Webとリアルの場を活用した寄付プラットフォームの実現
  • オープンデータを活用した地域共創型の防災マップづくり
  • 持続可能な地域コミュニティ(=村2.0)アプリの開発
  • オープンデータ活用による共創マップの開発
  • AIによる暗黙知の定量化ツール開発
  • Webを駆使した地域発信型ハブ事業
  • 2021年の『地域共創ラボ』は、2020年のプログラムに参加した企業からの声により、プログラムの運営を地域の複数企業が日本ユニシスと一緒に担うことになり、持続可能な活動になりつつある。ラボで生まれた事業が確立され、なおかつ全国に広まれば生活者へのインパクトは計り知れないものとなるのだ。

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    色あせることのない“技術の蓄積”とそれを司る人財が、
    日本ユニシスの原点であり、強み

    現在は新規事業に積極的に取り組む2人だが、その経歴はまさに“老舗SI企業”という感じだ。山本氏は30年以上、石山氏は20年以上もの間、SEとしてシステムを設計し、組み上げててきた。

    それだけを聞くと学生にとってはもしかしたら「想像通りの前時代的キャリアだ」と退屈に思うかもしれない。しかし現在2人が新規事業に取り組み、革新的なプロダクトをスピーディーに、かつクオリティ高く生み出すことができるのは、企業として蓄積された技術力があってこそなのだ。ベンチャー企業にはない強みが、ここにある。

    山本SIというビジネスモデルでこの先もずっと利益を創出できるかといえば、正直わかりません。全社でこの危機意識を共有しています。しかし、これまでの蓄積をもとに、新たなビジネスを生み出すことができるのだ、という事実にも気付き始めているのが今なのです。

    むしろ、DXを進める上で、時代に合った大きな強みになっている。SIerでは請負のシステム開発を行なってきたわけですが、いかにミスなく、効率的に高品質なものを作るか、ということが勝負の世界でした。それをとことん追求してきた技術力・ノウハウが、現在の新規事業においても生かされているわけです。

    SIというビジネスモデルに対する期待の変化、事業者・生活者をめぐる環境変化に伴い、変革の時を迎えた日本ユニシス。その中で新規事業を生み出す機運が高まり、山本氏は『Dot to Dot』のプロダクトオーナーとして、石山氏は『地域共創ラボ』のプロジェクトリーダーとして、事業を推進する立場になったわけだ。

    石山長年積み重ねてきた技術力があるからこそ、ベンチャーにはできないスピード感・規模感で物事を進めることができています。企業として利益を生み出すだけでなく、社会的価値を創出する、という大きな目的を果たすには、こうした土台が必ず必要になる。

    実際に私たちが今長野県で行なっているような社会実装を伴う検証をスピーディーに進めることができるのは、日本ユニシスのノウハウやアセットがあるからなのです。

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    イノベーション人財の育成にコミットする日本ユニシス

    変革の時流に乗って活躍の場を広げてきたのが、“地域共創ラボ”を率いる石山氏だ。

    元々SEとして活躍していたが、産休・育休中に実感した地域の人とのつながりや友人の不幸などをきっかけに「単なるビジネス上の利益だけでなく、社会貢献につながる仕事がしたい」と一念発起。社内外で行われた多数の研修に自ら手を挙げ、繰り返し参加し続けた。イノベーション人財育成を目的とした「NextPrincipal研修」、アジャイル開発に関する研修など、寝る間を惜しんでインプットとアウトプットに勤しんだという。

    石山通常の業務にプラスアルファで取り組みました。仕事も育児もある中での参加は大変厳しいものでしたが、寝る間を惜しんで勉強したことは確実に身になっています。

    これらの研修への参加は、どれも当時の上司が「挑戦してみてはどうか?」と背中を押してくれて実現したものばかり。良い意味で現状に満足させてくれず(笑)、上に上にと引き上げてくれる人間が周囲にいたことが、今の私のポジションにもつながっているのです。

    新しいスキル習得を促す上司の存在や、新規事業立ち上げに関する研修・プログラムへの参加機会があることなどからも、日本ユニシス内で変革が明らかに進んできていることがわかる。

    山本私は管理職時代に多くの部下を抱えてきましたが、私自身も上司という立場としてスタンスを変えてきました。以前は、決められた仕事を教える、という”ティーチング”の傾向が強かったように思いますが、今は部下に何かを教えるとしても、“ティーチング”ではなく“コーチング”の姿勢を重視しています。

    自律的に物事を考え抜く力がなければ、「失敗を恐れずに自分で新たなチャレンジに進もうとする」ようなイノベーティブな思考と行動は身につきません。一方的に知識やノウハウを植え付けるのではなく、自ら考えて行動するよう育成を心がけています。これは全社的に共有して実践されている価値観でもあります。

    もちろん、こうした新たな価値観の浸透は人財育成の領域だけでなく、プロジェクト推進の内部にまで影響を及ぼしている。『地域共創ラボ』を担う、石山氏を含めた3名のプロジェクトメンバーを見ると驚く。

    一人は、元々金融系のSEだったが石山氏と同じくイノベーション人財育成の研修に参加して新規事業立ち上げに目覚めると、組織の壁を越え、所属部署の上長や地域共創ラボを所管する部長を1年間にわたって説得し、プロジェクトに加入したという志高き人物。もう一人は前職で広告代理店に勤務しており、町興しや企業プロデュース、イベント企画、さらには起業の経験まであるという変わり種だ。

    石山個性豊かなメンバーと試行錯誤しながら、社内外を巻き込むプロジェクトを進めるのは本当にやりがいがあるもの。私は役職上チームリーダーとして働いてはいますが、実態としてはホラクラシー型の非常にフラットな関係。それぞれが強みを引き出しあって、イノベーションを生み出しやすいチームづくりに成功しています。

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    『Dot to Dot』が、生活者一人ひとりの不安を大きく減らす

    そんな自由闊達な風土の中で生まれた事業の一つが、山本氏が「残りの会社人生を捧げるつもりで取り組んでいる」とまで話す『Dot to Dot』だ。電子国家として有名なエストニアの『X-Road』というプラットフォームに着想を得て、山本氏自ら発起人となってプロジェクトを立ち上げた。

    山本『X-Road』とは、公共分野においてさまざまなシステムデータを有機的につなぐプラットフォーム。それまで縦割りで煩雑だった行政システムが、このプラットフォームによって、ワンスオンリーを実現し、効率的で便利な社会を生み出しました。『Dot to Dot』は、公共分野や民間分野に関係なく、生活者それぞれのカタチでパーソナルデータをつなぐことで、より暮らしやすく便利な社会を目指しているのです。

    パーソナルデータをつなぐ、と聞いても、イメージはしづらいかもしれない。しかし、私たち生活者がその凄さを実感する日は実は目前まで来ている。現在、千葉県柏市・柏の葉スマートシティにて、様々な新プロダクトの実証実験を行なっているというのだ。例えば、今まさにホットな領域であるウェルネス分野についてのサービスだ。

    山本柏の葉スマートシティでは、住民の方がポータルサイトに会員登録することで、本来有料で提供される健康アプリや医療相談アプリを無料で利用することができます。それぞれのアプリを利用することで、健康状態を確認したり、心配な時はすぐに医療相談することができます。

    でも、それだけではありません。このアプリに入った個人の健診データを、個人の意思のもと、データ分析を得意とするサービス事業者を介してデータ連携することで、将来の疾病罹患リスクを予測して生活者に提供する。そのためにパーソナルデータを事業者(サービス)間でつなぐ検証を始めています。

    生活者からみれば、健康リスクの予見ができ、かつ専門家からのアドバイスを受けることができますし、分析サービス事業者にとってはデータ件数が増えることで分析精度を向上させることができる。さらに、健康アプリを開発・運営する事業者にとっては、利用者数の増加を期待できます。

    このように、顧客を取り合うのではなくパーソナルデータをつなぐことで、互いのビジネスが伸びるWin-Winの関係が築くことができる。まさに“競争”ではなく“共創”です。

    このような仕組みが最も効果を発揮するのは、行政の分野だ。現在の行政は、あらゆる手続きが縦割りになっており、分野間の横連携がないことからその煩雑さ・非効率性が課題視されている。例えば『Dot to Dot』を活用して、住民の意思のもと分野を跨ってデータをつないだり、民間サービスとつなぐことで、効率的な手続きや、行政が持っていない質の高い民間サービスを住民に提供できる、というわけだ。

    特に災害大国・日本にとっては防災の観点からのアプローチは必須だ。自身も東日本大震災の被災者であるという山本氏は、防災分野の行政手続きの変革必要性について熱く語る。

    山本自治体が補助金は出してくれますが、防災対策そのものは各自主防災組織(自治会)に任せるケースが多いのです。しかし、要援護者リストひとつ取っても、個人情報の管理を自主防災組織で責任持って管理するのは難しい。せっかく支援に必要な情報が集まっていても、それを十分に活用できているとは言い難い状況なのです。

    例えば「誰がどこに避難している、誰が支援を求めている」などという情報を即座に連携することができる仕組みを作っておけば、防災機能は格段にパワーアップします。防災は「起きてからでは遅い」という世界です。事前にそうした仕組みを平時の生活の中に取り入れておくことが肝なのです。

    我々生活者にとって密接に関わるサービスを多数実現できる可能性を秘めたプロダクトが『Dot to Dot』というわけだ。一方で、だからこそ反発の声もある。その多くが「パーソナルデータをそう簡単に提供してもらえるわけがない」というものだ。

    山本実際に社内でも「そんなの無理に決まっている、俺は同意なんかしないよ」と言われることもあります。でも、だからこそやりがいがあるんです。便利さ・有益さを実感すれば、きっとその態度はガラッと変わるはず。「今に見てろよ!」という気持ちです(笑)。

    もちろん個人情報を取り扱うわけですから、セキュリティ面には最大限配慮しています。最新のクラウド技術や仮想コンテナ技術を駆使して外部からのハッキングや内部不正を抑止する仕組みも持っています。

    パーソナルデータを有機的につなぎ、暮らしの便利さを大幅に向上させる。その取り組みがもたらす影響は計り知れないが、そこには山本氏の「大企業優位な構造を変えたい」という想いがある。大企業だけが情報を独り占めし世の中を動かしている、という状況が不健康である、と考えているという。

    山本我々が目指しているのは、GAFAのような大規模な情報保有者ではありません。それぞれの事業者が持つパーソナルデータを生活者の意思のもとに有機的につなぎ、あらたな価値や質の高いサービスを生み出すために、我々が中立的な立場を取ることで、本当に生活者のためになるサービスを生み出せると思うのです。

    生活者・地域のため、という社会的責任を負ったこのプロジェクト。もちろんそのプロダクトは相当難易度の高いものであったが、山本氏が率いるチームはなんと7ヶ月で制作し提供にこぎつけたという。まさに日本ユニシスの技術力の高さと“チーム山本”の本気度がうかがえるエピソードだ。

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    地域発の新事業も、日本ユニシスならではの「つなげる力」で創発し続ける

    そんな山本氏と同じ方向を向き、地域・生活者のためのサービス創出を目指しているのが石山氏の率いる『地域共創ラボ』だ。

    石山氏は先述の研修への参加をきっかけに2019年から当プロジェクトに参画。2020年からは本格的にジョインし、チームリーダーとして率いる立場となった。

    石山氏が目指すのは「持続可能なまちづくり」だ。ただ単に経済的な価値を生み出すだけでなく、そのまち・地域が持つ社会課題を解決し、社会的な価値を創ることを目的としている。

    そのフィールドの第一弾として選んだのが、長野県だ。長野県は、北信地域をIT人材育成やIT産業の集積地にすべく2019年に「信州ITバレー構想」が発足するなど、イノベーションに積極的な地域。その姿勢と日本ユニシスの想いが合致し、長野県・長野県立大学・日本ユニシスの3者間でソーシャル・イノベーションに関する連携協定を締結するに至った。現在は、長野県内外の経営者や県の職員、金融機関などを巻き込んで新事業創出を目指し定期的にワークショップを開催している。

    石山日本ユニシスは「長野ITコラボレーションプラットフォーム(NICOLLAP)」という団体の理事企業となっています。その活動の一環として2019年から『地域共創ラボ』を主催し、地域内外の企業、大学、自治体、金融機関など様々な参加者と共にワークショップ形式で事業創出に取り組んでいます。

    ワークショップと聞くと地道な活動に聞こえるかもしれないが、それこそがまさに地域での共創に必要なことだと石山氏は語る。

    石山突然東京から日本ユニシスが単独で入り込んでいっても、地域の方々は誰も信用してくれません。Face-to-Faceで丁寧にコミュニケーションをとり、コミットしている姿勢をみせることが大事。

    とはいっても初年度は手探りで進めていたこともあり、アイデアが生まれてもそれを参加者の方々と一緒にコミットして形にしていく、というところまで推進するのに時間がかかるという課題がありました。参加者同士で信頼関係を出来上がっても、自身が所属する組織で事業化についてのオーソライズを得るのに時間がかかるからです。

    そこで、2年目からはご参加いただく企業には、活動の方向性を共有して進めてきました。結果として、参加者が自ら共創によるビジネスプランを経営層に提案し、活動を後押ししてもらうといった動きが出始めています。

    とはいえ『Dot to Dot』と比べれば、世の中への価値提供はまだ先の話なのだろう……と思って聞いてみると、そんなことはないと語る。

    石山これからスピードを上げて、新事業の実現とその運用が始まっていきます。確かにまだ価値は見えにくく、大企業のスローな動きに見えるかもしれません。しかし一つのビジネスとして価値を出していくのではなく、「社会を持続可能なものに変える」という大きな価値に向かっての動きなので、共創が重要。初めが肝心なのです。

    私たちはこれまで積み上げてきた技術やノウハウ、サービスといったアセットを持つ企業ですが、それを単に提供したいというわけではありません。“共に”価値を“創って”いきたい。その土台となる信頼関係は、すでに築きつつあると手応えを感じています。

    両氏のビジネス創造の挑戦について、学生の立場からすれば「とはいえ大企業だから、10~20年の下積みがなければできないのでは?」という疑問も浮かぶだろう。しかし日本ユニシスが進める変革は、そんな懸念も打ち破るほどの熱量を持つ。

    山本氏のチームには入社2~3年目の若手も属し、アイデアの提案や実行において積極的に活動している。先に述べた社内外の研修に参加するチャンスは、入社から間もない若手に対しても開かれている。そんな現場を知ると、イメージもだいぶ変わってくるのではないだろうか?

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    常に問われる“なぜ?”を超え、
    日本ユニシスが目指す未来は「変革の連鎖」

    2人が取り組んでいるような新規ビジネスのプロジェクトは、一朝一夕には目に見える成果が出ないものだ。だからこそ2人は地道な取り組みを大切にしながらも、日本ユニシスの強みを生かして大きなインパクトを生み出そうとしている。

    山本有象無象のサービスを世に送り出しても、生活者にとっては混乱のもと。目先のサービス・事業・利益に執着するのではなく「俯瞰して眺める」ことで、生活者ファーストの価値チェーンを生み出すことができると確信しているのです。

    その言葉の通り、常に生活者の方を向いた取り組みを続け、具体的なユースケース作りを続けている。『Dot to Dot』は2021年度内に柏の葉以外の2フィールドでも展開予定だ。

    山本今までなかった取組みですから、否定的な声もあります。それを覆して推し進めていくには、とにかくインパクトのあるユースケースを増やすこと。来年度に向けてどんどん生活者に向けたサービスを生み出せるよう、事例を作れるよう注力していきます。

    その気合いは石山氏も同じだ。

    石山本当の意味での社会的価値を生み出すには、ある程度のインパクトを持ったサービスを生み出すことが必要です。だからこそ私たちは、地元の方々と一体となって物事を動かしていくことを大切にしているのです。目先の結果・利益を出すことだけに拙速になることなく、大きなインパクトのある動きを目指して、進めていきます。

    「生活者に根ざしたサービスを」という社会的責任を率先して背負う。一方で、「大きなインパクトを残したい」と目線は常に高い。しかも独自に進めるのではなく、とにかく他社/他者を巻き込み変革の連鎖を起こしていく。その姿勢こそが、日本ユニシスを表している。

    日本ユニシスは、その事業の幅の広さや適応力の高さから「Why ユニシス?(どうして日本ユニシスがそれをやるのか?)」と意義を問われることが多いという。その答えを、2人はすでに持っていた。日本ユニシスには、これまで培ってきた「技術力」「ノウハウ」、そしてこれまで幅広い事業者とビジネスに取り組んできた「関係性」があるから、と教えてくれた。

    これからも山本氏・石山氏は日本ユニシスの強みを生かしながら社会課題の解決に邁進していくだろう。しかし、こうした豊富なアセットを扱い、この2人のように新規ビジネスを推進していくメンバーが、まだそこまで多いわけではないという。そこには若手が活躍するチャンスも大いに存在する。

    2022年に商号(社名)変更という大きな節目を迎える日本ユニシス。これから入社する若手が、まさに変革の担い手となるよう、徹底した準備が進められている。経営方針(2021-2023)においても、投資戦略の一環として、「新たなケイパビリティ獲得のための人財改革」を推進すると宣言している。そして、わかりやすいところで言えば“採用”である。

    石山氏のチームに起業経験もある転職者がいることは既に紹介した。新卒でも、「アントレプレナーコース」と「ビジネスプロデュースコース」という特別採用枠を新設。新卒入社の頃から、研修への積極参加や、キャリア構築の支援、そして新たな事業へのチャレンジする機会を多く得られる、そんな仕組みを整えているのだ。

    「働く場所」を考える上で、軸はいくつもある。ベンチャー企業であれば、裁量の大きさや踏む場数の多さが、その魅力だろう。大企業であれば、組織の大きさや多様な先輩の存在、そして育成システムといった点が挙げられる。ここまで、日本ユニシスにはこれらの魅力がいずれも備わっているということを紹介してきた。

    しかし敢えて、誤解を恐れずに言うのなら、これらの軸はいずれも「打算的なもの」に過ぎないとも言える。せっかく自分の生きる時間を大きく投資するのなら、本当に社会を変えていると実感できるような大きな価値を生み出したいと思わないだろうか?そうした前提を、働きやすさや職場環境の魅力を見るよりも、ぜひ大切にしてほしい。「環境」は、価値を生む仕事をするための手段でしかないはずだ。

    そして、そうしたインパクトの大きな事業を創出したい若者にとって、日本ユニシスは魅力的な舞台なのかもしれない。二人のインタビュイーが事業を語るその熱い姿を見て、そう感じた。

    こちらの記事は2021年07月21日に公開しており、
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    執筆

    太田 冴

    写真

    藤田 慎一郎

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