連載希望ある未来へ導く社会的価値の創出へ──社名を新たにしたBIPROGYの挑戦

探索と深化の「両利きの経営」を実践。
老舗SIerが実は超変革していた話──真摯×ディスラプティブに暴れてみないか?

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インタビュイー
白井 久美子

大学卒業後、新卒で日本ユニバック(現 日本ユニシス)入社。システムエンジニアやプログラム&プロジェクトマネジャーとして実績を重ねた後、各種ソリューション事業立ち上げの責任者や当時日本ユニシスが注力していた「Microsoft.NET」関連SI事業を推進。その後グループの教育事業子会社社長に。子会社経営改革を進めて本体に復帰すると、働きながら大学院へ進み、企業革新のための戦略的なHRマネジメントや経営・社会工学で工学博士号を取得。現在は、戦略人事改革・組織風土改革およびイノベーティブ人財の獲得と育成を担い、日本ユニシスのディスラプティブな側面を発信する役割にもコミットしている。

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デジタルトランスフォーメーションやオープンイノベーションをあらゆる産業が追求するこの時代、脚光が当たっているのは気鋭のメガベンチャーやスタートアップだ。ICT社会の到来を担ってきたSIerや技術者集団はといえば、あたかも旧時代の象徴のように印象づけられがち。だが本当にそうなのか?

60年以上の歴史を持つ大規模な老舗SI企業であるBIPROGY(旧:日本ユニシス*)。実は数々のディスラプティブな新規事業を通じ、多様な社会課題の解決において続々と結果を出しているのだ。これを知らずして、イノベーションやらを語るのはやめにしたほうがいい。

タフなIT革命をくぐり抜けてきた「真摯・実直」な集団だからこそ、それを実現できるのだという。はたして彼らはどうやってその境地にたどり着いたのだろう。組織変革と人財採用・育成に携わる白井久美子氏に聞いた。

*…日本ユニシスは2022年4月、BIPROGYに商号を変更した

  • TEXT BY NAOKI MORIKAWA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「真摯×ディスラプティブ」を実現、ハーバードでも驚かれたリアル両利きの経営

旧:日本ユニシスと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、BtoBのシステムインテグレーションやビジネス・ソリューションの担い手であり、金融機関を筆頭に並み居る列強企業をクライアントに持つ大企業というイメージ。もちろん、間違いではない。2006年には米国ユニシス社との資本関係も解消しており、日本国内でも特に著名な独立系SIerの1つと表現することもできる。

しかし「BtoBの巨人」につきまといがちな事ではあるが「具体的にどんなビジネスをしていて、どういう集団なのかが見えにくい」部分は間違いなくある。そこで冒頭、白井久美子氏に問いかけた。「BIPROGYを一言でいうならどんな会社なんですか」と。

白井真摯なプロフェッショナル集団。……とにもかくにも(笑)

「日本のSIerらしい」という意味合いなのだろうか。BIPROGYでは「お客様の利用価値向上のためならば、手がけた開発プロジェクトを必ずやり遂げる」「私たちが作るからには、絶対に動かしてみせる」という気質が、全社に浸透し、そのDNAは今も伝承されているという。

だが、ここまで読んだところで「ほらやっぱり、よくある日本型IT企業なんだよ」と早合点しないほうがいい。なぜならここから白井氏は、「とにもかくにも真摯なプロ集団」が「本気で変革に着手したら、こんなにすごい」という話をするからだ。

白井かつては私自身もSEとして手を動かし、やがて技術者集団をとりまとめていくようになりました。それは、マイクロソフトが「.NET(ドットネット)」技術を発信し始め、社を挙げてこれに関わるソリューションを展開していた時期の話です。

実はこの頃、当社はかなり厳しい経営環境にありました。それでも私たち現場の技術者が「逃げない姿勢」を堅持してやりぬいたことで、「.NETといえば日本ユニシス(当時)」と呼ばれるほど、当時は評価をいただけたことを記憶しています。

IT革命を戦い抜いた頃を懐かしく振り返る。その後、外部環境の変化を新進気鋭の社長が鋭い先見性と洞察力で、会社全体を変革へと向かわせた当時の思い出を語った。

白井業績の復活と急伸とともに痛感したのが、優れた人財を短期間で育成していくことの難しさでした。

お客様からの支持や期待値が上がり、素晴らしい戦略を掲げられたとしても、それを実行・実装できる最適なケイパビリティを持った人財を揃え、ビジネス拡大とともに戦力を維持拡大できる組織能力になっていなければ、持続的な企業の成長発展と価値創出、収益獲得エンジンの動力拡大にはつながらない。

そう考えた中で出会ったのが、企業革新のための戦略的人的資本経営というものでした。

ビジネスモデル革新戦略を支える人的資本を戦略的に獲得し、採用育成、代謝する経営手法である。これを実戦でも使えるように体系的に学びたいと考えた白井氏は働きながら大学院へ進み、ビジネスモデル革新を支えるための組織開発や戦略的人的資本経営について研究。経営・社会工学の博士(工学)号まで取得した。

以来、風土改革の推進責任者となり、戦略的に組織・人財を変革していくコンセプトをベースにした「ディスラプティブな人財の獲得と育成」に取り組んでいる。ではその風土改革を経て目指したい経営スタイル・組織・人財とはいかなるものなのか?それを存分に語ってもらった。

白井単純化して申し上げるなら「両利きの経営に変革する」というのが当社のテーマです。

これまでこの会社を育て、地位と評価を築き上げてきたシステムインテグレーションというサステナブルなビジネスモデルには当然、今後も注力していきます。

ですが同時に、ディスラプティブなビジネスモデルの創発にもリソースをしっかりと投じています。サステナブルとディスラプティブという二つをバラバラに追いかけるのではなく、並行し連携させ、「どちらもBIPROGYです」と言える企業・組織に変わってきています。

すでにその萌芽はあるのです。ハーバードでともに学んだ企業経営者たちから、当時の日本ユニシスが実践している両利きの経営について「本当にそんな器用なことが一つの会社の中で共存してできるのか?難しすぎるチェンジマネジメントで、容易には取り組めない!」と驚きを示されると同時に、賞賛されもしました。

何人もからそう言われたとき、私たちが進めてきたさまざまな変革は、両利きの経営実践の土台を着実に形成してきたのかな、という可能性を感じ、自信を持って続けていこうと思うようになりました。

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「固定観念に縛られない」変革のためならチャレンジするのが今のBIPROGY社員

同社の変化の背景がいろいろと語られる。その中でも、CIO、CPO、CMOなどを歴任してきた平岡昭良氏が2016年に社長となったことの影響が特に大きいようだ。

白井最近は「ビジネスエコシステム®」や「デジタルコモンズ®」といった、旧来の価値観を転換する起業や事業創造のありかたを示す言葉や未来を示唆する社会理念が市民権を得つつあります。私どもも今はこれらの考え方に基づき、SDGsをはじめ社会課題の解決に積極的に寄与していこうとしています。社内で変革に向けたこの動きが加速したのは、先代の黒川茂社長時代に始まる8年も前のことでした。

現社長の平岡は、提供価値よりも利用価値を重視すること、経済的価値創出ばかりでなく社会的価値創出を重視すること、そしてタンジブルアセット(見える資本)とインタンジブルアセット(見えない資本、企業として競争優位の源泉となる知的資本)の両方が重要であり、知の探索と知の深化(ディスラプティブとサステナブル)の両方を追求することが大事である、と繰り返し強く発信してきました。

スタートアップらしい挑戦的な気風も昔から備えています。志と情熱を持った挑戦によって変わり続けなければいけない、という考え方が根底にあり、「成功のKPIは失敗の数である」という言葉を社内外に発信しています。

加えて、経団連のスタートアップ委員会で企画部会長を務めている取締役、多勢のエンジニアを指揮しアジャイルなDXイノベーションを推進する取締役もいます。こうしてトップ経営陣が自ら変革の旗手となって動いてくれているおかげで、私も改革を進めやすい環境を手にしていると思っています。

もちろん、社長がイノベーションやディスラプションを叫ぶだけで、大きな企業が突然変異のように変わるわけではないと白井氏も言う。だが、そこは「真摯な集団」である。「行くぞ」となれば、一気呵成に連動し、その動力が大きな弾み車を回すことにつながるという。

「お客様のためなら必ずやり遂げる」という生真面目な気質は、ひとたびチャネルが変われば「社会課題解決につながるイノベーションを起こすためならどんな新しいことにだってチャレンジするぞ」という気骨へと変換されるというのだ。

白井「大企業って硬直的でしょ」「SIerって保守的なんでしょ」という疑念というかイメージを、多くの人がまだ潜在的に抱いていることは知っています(笑)。

大所帯であるがために突然変異は難しく、部分変異を全体に伝播していくには時間がかかる、というジレンマを今もなお抱えています。けれども真摯な集団だからこその良さも随所に現れているということを、多くの人に知ってほしいのです。

その「良さ」の1つはすでに明らかだ。「真摯」であるがゆえに、逃げ出したり、放り出したりしない。新しいことにチャレンジすれば困難な局面は連続するが、愚直なほどに真摯な集団は、良くも悪くも撤退せずに「やりぬく」のである。その気力と体力を兼ね備えている。

ピボットが美徳ともされるようなスタートアップにない強みの1つが、この気骨にあるはずだと白井氏も言う。スタートアップやベンチャーは資金や人財の面から、体力面で大きく劣る。その差が生み出す事業創出はすさまじい。

その「わかりやすい具体例」のいくつかを教えてくれた。

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IT技術と真摯さでつくる必勝メソッド、生まれた数々の新規「共創」事業

サステナブル×ディスラプティブの両利き経営へと舵を切ったBIPROGY、実は驚くほど多くの新しい事業に取り組んでいる。しかもほとんどが、社外の知見や組織との「共創」なのだ。

例えば自動運転で一大変革が進行中のモビリティ産業を支えるビジネス。EV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド車)向け充電インフラネットワークの拡充から始まった『smart oasis®(スマートオアシス)』というサービスがある。

技術革新が進み、電気自動車の量産化が確実視される中で、充電スタンドの全国整備が重要になっていくと予見した。その上で大きな課題となってくると考えたのが、スタンドにおける課金・決済の仕組みだ。

そこで、設置場所を提供することになるであろう商業施設や高速道路会社といったさまざまな企業が“充電サービスの提供者”となり、利益を得られるようなシナリオを設計。多様な設置形態が登場することを想定し、充電スタンドそれぞれを共通した通信でつなぐことを可能にしたのだ。

これにより、会員制充電サービス企業と一括提携が可能となり、多くのドライバーがキャッシュレスで支払うことのできる仕組みを備えた“電気自動車の充電インフラネットワーク”の構築につながった。

近年は、コネクテッドカーや自動運転車に関するサービスを増強しているほか、スマートタウン構想などへも広がりを見せている。

白井基幹となる事業を一つ作ると、周縁部でいくつかの方向に大きくなります。業種業界を問わず、さまざまな事業領域や地域に拡大させていくことで、関係する事業者は増えていき、それぞれが連鎖し、さらなる事業拡大につながる。

私たちが創出するビジネスエコシステムは、誰かが一人勝ちするわけではなく、社会課題を解決したいという強い志や情熱をともに抱き、共感する仲間の連鎖でつながっています。

昔取った杵柄と自虐すらしてしまいそうになるIT技術ですが、いまも最先端のサービスを作り続けているのは間違いのない事実です。その上で、“真摯さ・実直さ”を活かして地道にメッシュを広げていきます。これは当社の必勝メソッドです。

もう一つの例が、電子チケット流通サービス『Kimaticke™(キマチケ)』だ。ブロックチェーン技術を用い、飲食物から宿泊体験まで、モノ・コトに関係なくあらゆる商品を前払いで購入できる、いわゆるデジタル権利証事業だ。

白井モノ消費だけでなくコト消費が増えている現代社会では、安全で安心して使える権利証、つまりチケットが不可欠になるという発想から生まれた事業です。コロナショックがきっかけになり、その有用性に改めて気が付きました。

コロナショックによる自粛環境下、さまざまな取り組みを検討し、実施してきた。その中で、とりわけ効力を発揮したのだという。

たとえば熊本県には以前より復興支援を行っており、さまざまなサービスを提供してきた。新型コロナウィルスの影響を受けた飲食店の事業継続といった社会課題に対し、2020年5月、キマチケを活用する形で、社内の金融・製造部門のメンバーが一丸となったチームが中心となり「さしより応援プロジェクト」を実施した。地元の企業と協業・協力し、クラウド・ファンディングで支援者から資金を調達し、平時に使える飲食店の食事券を電子チケットとして提供する共同プロジェクトだ。

すでに存在する『キマチケ』の機能を活用して、地域経済の停滞ストップに一役買ったのだという。

白井厳しい時期を乗り切るための資金。これが地元飲食店には不可欠だったのです。その点、キマチケならば即時に信用性のある電子チケットを発行できます。

前払いのお食事券として提供することにより、その売上は飲食店が苦境を乗り切るための資金になります。購入した市民の側も地元産業を応援する活動として取り組みやすく、自粛期間が明けた後には美味しいお食事をいただくこともできるわけです。

また、多忙を極める保育士を支援するクラウドサービス『ChiReaff Space®(チャイリーフスペース)』も、BIPROGYらしさを象徴する事業と言える。

白井日々のお子さんの状態をクラウド上でデータ共有・管理します。本来の強みであるIT技術力がしっかりモノを言った事業です。子どものことを一番に考えた保育の質の向上や、人手不足に悩む状況下での働き方の改善、さらには親御さんの安心や社会の成熟にも貢献できている自負があります。

これは目的意識がとても良かった。重要視したのは「保育士たちが、働いている親の代わりに、子どもたちにより多くの愛を注ぎ、楽しく心豊かな時を増やせるようにしたい」ということ。この想いを実現するために、技術を活用できた良い事業例だと思っています。

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映画にもなった「トガった若き起業家」の思想が浸透してきた社内

白井氏が挙げてくれた数々の例は、BIPROGYが取り組む新規事業モデルの一部でしかないというが、いずれも社会課題解決や未来への可能性を膨らませる内容ばかり。その幅の広さに驚いていると、白井氏は前段で語っていた「真摯な集団」ならではのエピソードも披露してくれた。

白井いずれの事業でも先進技術を活用していますから、技術面での試行錯誤は常につきまといます。実証実験段階からなかなか実用へと発展できず、ビジネスとして確立させるという面での悪戦苦闘は多くあります。

チャイリーフスペースは各地の保育園さんに結構早い時期から提案させていただいたのですが、もともと業務でICTを駆使してこなかった領域なだけに、サービスを導入した場合の効果をなかなかイメージしてもらえない苦労が当初はありました。

ここで、逃げずに、辛抱強く、視点をいろいろ変えながらご提案を続け、導入まで進むことができました。SIer魂じゃないですけれども、社員の真摯な気質が実を結んだものだと考えています。そうして成功事例を一つ、また一つと増やしていき、信頼をいただけるようになっていったと思います。

実はこのチャイリーフ事業確立のストーリー、2019年秋に映画化されている。上白石萌音さんが「トガった若き起業家」を演じ、そのアイデアを地に足の着いたサービス事業にするべく担当した「マジメだが安定思考な大企業社員」を山崎紘菜さんが演じた『スタートアップ・ガールズ』だ。

同社の社員をモデルにした山崎さん演じるマジメ社員が、上白石さん演じるスタートアップ的思考を持つ大学生に振り回され続けるのだが、最後には2人の強みが補完関係で実を結び……というストーリー。

白井もちろん映画ではエンターテインメントとして脚色がなされ、とても楽しく見ることができるようになっていますが、おおかたのエピソードは実話なんですよ(笑)。

当社社員の多くは、当初は山崎さんが演じてくださった通り、新しいチャレンジに対して戸惑いを感じたり、足を止めそうになったりもします。ですが先ほども申し上げたように、今この会社にはトップだけでなくミドル層にも、チャレンジを恐れない人間が揃っていますし、スタートアップとどう向き合えば互いの良さを引き出せるかについて、志と熱意を持って考えている現場社員は大勢いるんです。

もちろん、すべてのチャレンジが映画のように感動的なサクセスストーリーになるわけではない、と白井氏は言うが、そういう失敗経験を社員一人ひとりが少しずつ体感しつつあるからこそ、平岡社長の「成功のKPIは失敗の数である」の言葉が染みてくるのだとも言う。

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実直に歩んだ“イバラの道”を抜け「前のめりな組織」に

白井DXやオープンイノベーションに取り組む大企業の中には、新規事業開拓のための特別な部署や子会社を作って、そこに外部からイノベーティブな人財を登用していくスタイルをとるところが多いですよね。いわゆる「出島」という存在。

経営トップは、それをあえて避けたのだと、白井氏は言う。この心意気に、BIPROGYらしさが詰まっている。

白井「餅は餅屋。イノベーションとかディスラプションは出島にいる専門家たちに任せればいい」という会社もありますよね。それも一つの考え方だと思います。ですが、当社の経営陣はそうは考えませんでした。時間はかかれど、プロパー社員への波及効果が最も大きくなるしかけは何か?という近未来を、先見性と洞察力を持って追求してきた姿だったのだと思います。

イノベーションや新規事業を、中からは生み出せないのだろうか?という問いに立ち向かい続けました。本質を見極めて逃げない、というBIPROGYらしさが存分に発揮されています。

あるべきイノベーションとは、本体の内なるところで生み出し、外部ステークホルダーとも共創しながら育てるべきものなのではないか、という姿勢を貫いてきたんです。そういう変革なら、社内で誰も潰そうなんて考えませんよね?逃げませんよね?

それがいつでも最良の施策というわけではない、とは白井氏も認めるところだが、「この会社ではそれが相応しい」と信じてそのような選択をしてきたのだという。

実際には苦労も多かった。『スタートアップ・ガールズ』の映画さながら、外部からディスラプティブな人財を招いても、スタートアップとの共創関係をスタートしても、カルチャーの違いや価値観、スピード感といった点でBIPROGYのメンバーとの間に温度差が生じ、すれ違いが起きた過去は数知れずだという。

白井私が直接携わる組織改革の部分も大きく変える必要がありました。これまでの業績蓄積型を前提にした人事制度のままでは、イノベーティブな働きを評価に結びつけることは難しかったのです。

事業現場で問題が発生したり、制度や風土上の課題が見つかったりする中、白井氏は地道に改善を繰り返してきた。採用においても逃げることなく、ディスラプティブ寄りの価値観やケイパビリティの持ち主の獲得を推進しているという。それがここ数年のBIPROGYだ。

白井氏をはじめとした現場における格闘に加え、平岡社長によるスタートアップ的な気風の発信も続いた。それが、この2~3年でようやく当たり前になってきたとのこと。

白井サステナブル×ディスラプティブと言う中で、サステナブル側にいるマネージャーやSEの中にも、平岡社長の「社会課題解決のためのデジタルコモンズを提供する会社に我々はなるんだ」といったメッセージに強く熱く共感する人間が増えてきました。だからこそ、先ほどご紹介したような新しい事業モデルも次々に形になっていったんです。

目に見える変化やイノベーションが社内でも増えてきた今、次なるチャレンジとしてホラクラシー型組織という上下関係のないフラットな形態の部署を置き、社会課題解決の潮流を起こすような心を揺さぶるビジネスを世の中に生み出そう、ともしています。公募制で集まったメンバーが正解のないテーマに立ち向かい、当社ならではの大きなソーシャルインパクトにつなげるべく、試行錯誤して進んでいるのです。

新たなビジネスを作る際に、年齢だって関係ありません。年齢がいっているから偏屈だとか、頭が固いとか、それって本当なの?と問い続けています。実際に「若い社員より元気でセンスの良い風変わりなおじさん」もいますよ。(笑)

内なる格闘をあえて選択したがゆえに苦労も伴ったが、そこから逃げ出さずにいたからこそ、組織全体が良い形での「前のめり感」を備えるようになった。その段階を迎えられたからこそ、以前は考えられなかった「出島」の設置や、ティール組織導入へ向かう変革への取り組みといった、大きなチャレンジに踏み出すことができるようになってきている。

内なる変化に次ぐ新フェーズは、本質的な多様化への進展ということだろう。スタートアップや起業家など事業創出力の高い存在との付き合い方も、社内で広く浸透し始めている。社員一人ひとりの心持ちが、どんどん変わっていくのだ。

白井アイデアを練って新しいビジネスに仕立てていく、という取り組みができる社員がようやく増えてきました。ですがイノベーティブな組織というには発展途上です。私自身も、イノベーションが継続的に起こせる組織にする方法を常に模索しています。

最近では適性検査で“創発力”を測り、数値の高かった社員たちをそれに適した部署に固めて配置するという試みをやっています。キャリアデザインの希望も聞き取り、社員の“個”の多様性が活かせる最適な配置への転換につなげています。良い効果が現れるのを心待ちにしているところです。

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「暴れたい」と「真摯」を両取りしたい欲張りビジネスパーソンには、ここしかない

ところが「とにもかくにも真摯」という言葉でBIPROGYを表現した白井氏の目に今、まったく変わった姿のBIPROGYが映っているのかというと、そうではないらしい。

白井新型コロナウイルスがもたらした影響は非常に大きかったのですが、もともと技術ドリブンの私たちは、大きな混乱もないまますぐにテレワークの体制に移行できました。

ただし、会社組織としてみれば「業務が回っていればそれで良い」というわけにもいきません。社員相互の状態を目視できないテレワーク環境下では、業務進捗から安否確認に至るまで、社員一人ひとりの状況をいかに的確に把握できるかが重要ですよね。

以前から導入している安否確認システムを使用し、毎日約8000人のグループ社員に本人やご家族の健康状態をはじめ、テレワークか出勤かなどを問う状況確認の質問メールが毎朝届くようにしました。すると当社全社員のレスポンス状況をご覧になったシステム運営会社の方が非常に驚いていました。理由を聞くと「メール送信の1時間後には約99%の社員のかたが返信してくれています、こんな会社初めて見ました」とおっしゃるわけです。

マジメさとスピード。当社独特の真摯さを示すDNAの一端が、ひょんなことから「バッチリ今も継続中」であることが分かった瞬間でした(笑)。

進化し続けるDNAのエピソードを嬉しそうに語り、ひとこと。「やっぱりこれがウチの強みなんです」。

白井平岡社長のリーダーシップのもと、BIPROGYは数々のスタートアップ系のビジネスコンテストでスポンサーにもなっています。新規事業でも当たり前のようにスタートアップとの共創を進めています。すでにいくつもの共創ビジネスがスタートしています。ベンチャーへの出資にも力を入れています。

100%すべてのチャレンジが実を結ぶわけではありません。でもそういう認識自体がすでに全社的に浸透しつつあります。ここまで風土と組織が変わったからこそ、出島を設けたり、さまざまな新制度を検討したり、イノベーティブな人財の採用をどんどん加速したりできているわけですが、そんな当社の根幹にはやっぱり「真摯さ」がしっかりとある。

今後、ソーシャルインパクトをもたらす社会課題解決型のビジネスをどんどん充実させていく上で、この真摯さは宝物になると自負しています。地域の皆さん、異業種の皆さん、ディスラプティブな価値観の皆さんから、「あのマジメさが特徴のBIPROGYならば、安心して新しい共創チャレンジが一緒にできる」と思っていただける“信用力”につながっていると思います。

このインタビューを通じて何を伝えたかったのか。それを改めて最後に白井氏に確認すると「そういう私たちなのだから、自立自走を望む人たちに『安心して入ってきてほしい』と伝えたい」という返答。「どうかグイグイ入ってきて、ご自分で発想したものを主張して、まわりの経験豊かなメンバーをも巻き込んでいってほしい」とのことだった。

白井若い人たちにはとにかく「多様な個性で戦い抜ける人財を目指してほしい!」と伝えています。会社組織のいいなりだと、これからの時代は生き残れないですよ、というメッセージです。

ちゃんと面白がりながら、ちゃんと「成功のKPIは失敗の数である」と理解しながら、その指にとまる社員はBIPROGYにいくらでもいる。しかも、少々のことではあきらめず、逃げ出さず、やり切る真摯な強さをDNAに持っている。

「暴れたい、でも真摯でありたい」そんなあなたには、理想の環境ではないだろうか。

こちらの記事は2020年07月15日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

森川 直樹

写真

藤田 慎一郎

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