米最大の資金調達トレンド、「ECロールアップ」を知っているか?East VenturesとACROVEに聞く、次に来る急成長市場の攻略法

インタビュイー
荒井 俊亮

株式会社ACROVE(アクローブ)代表取締役。日本大学法学部在学中にACROVEの前身となる株式会社アノマを設立。植物性プロテインをはじめとした自社ECブランド事業を展開する傍、完全成果報酬型ECコンサルサービスを提供し、事業者のEC拡大や全体設計についても携わる。現在はEコマースやマーケティングの知見を生かし、EC事業者向けBIツールや周辺サービスを展開している。

福海 道登

2019年にEast Venturesに入社。入社前は福岡でF Venturesのインターン生として学生向けのイベントを数多く開催。シード期の若手起業家を中心に出資を行う。

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スタートアップ業界で、いま最も熱いマーケットはどこか?

SaaSやD2C、そしてDXなど、“成長市場”として注目されている領域がある。しかし、未来を創っていくイノベーターであれば、常に「次に来るもの」への嗅覚も働かせておく必要があるだろう。

日本ではあまり注目されていないが(2021年7月現在)、アメリカを中心に国外では投資が進んでおり、ユニコーンも生まれている領域の一つが「ECロールアップ」だ。

この市場に、日本企業のパイオニアとして挑んでいるのが、荒井俊亮氏が創業したACROVE。独自開発のBIツール『ACROVE FORCE』を用いて、各ECマーケットプレイス内でのマーチャンダイジング、ブランディング、物流、サプライチェーンなどを最適化し、ブランドの成長を促進する事業を展開している。FastGrowは以前、荒井氏に「メンバー全員が経営を担えるスキルを身につけられる」仕組みの構築法を聞いた

本記事では、その強固な組織力を武器にACROVEが戦っているフィールド、ECロールアップ市場の現在地に迫る。荒井氏、そして同社に出資しているEast Venturesアソシエイトの福海道登氏に、「次に来る」急成長マーケットの攻略法を聞いた。

  • TEXT BY RYOTARO WASHIO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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創業2年でユニコーンも。
国外で急成長中の「ECロールアップ」市場

「ECロールアップ」──ACROVEが事業を展開している、この市場に耳馴染みがある読者は、もしかするとあまり多くないかもしれない。たしかに、日本国内では未だ十分に浸透しているとはいえない概念だ。

しかし、国外に目を向けると、ECロールアップマーケットは、アメリカを中心にいま最も注目されている成長市場の一つだ。

ECロールアップモデルは、AmazonをはじめとするECマーケットプレイス上で事業を展開するサードパーティを買収し、経営管理や販売ノウハウを提供することによって、さらに売り上げをあげ、利益を得るというもの。

荒井氏によると、そもそもECマーケットプレイス上で商品を売っているサードパーティは、小売事業者とメーカーに大別される。2010年代前半には、安く仕入れた商品をECマーケットプレイス上で売った差額を利益として得る、いわゆる「せどり」を手がける小売事業者が一気に増えた。しかし、プレイヤー数の増加によりレッドオーシャン化したことで、2015年前後からは自社ブランドを販売するメーカーの数が増えはじめる。小規模なメーカーが一気に増えたが、それらを支援するビジネスとして2018年前後から現れはじめたのが、他ならぬECロールアップモデルである。

たとえば、アメリカを中心にAmazonブランドの買収を続けるセラシオは、2018年の創業からわずか2年でユニコーン企業の仲間入りを果たした。2020年12月以降、13億5,000万ドル(約1,460億円)の資金を調達している。2021年3月には、日本法人の設立も発表した。その他、シンガポールのUna Brands、ドイツのBerlin Brands Group、 アメリカのBranded Groupなど、注目の新興企業が続々と登場。米TechCrunch誌は、ECロールアップを「2020年の最大の資金調達トレンドの1つ」と評している

さらに、ECロールアップにとどまらず、さまざまな形でECブランドを支援するビジネスが勃興している。買収だけでなくさまざまな提携スキームを用意することで利益をあげるタイのaCommerceの他、ソフトウェアのみ提供するビジネスを展開している企業も見られると荒井氏は指摘する。

対して、日本はどうだろうか。

株式会社ACROVE 代表取締役 荒井俊亮氏

荒井ECコンサルティングを手がける企業で進出したところがあるくらいで、国内ではほとんどECロールアップモデルが普及していません。

しかし、国外の動向と同様、今後は国内でもECロールアップが台頭していくでしょう。Amazonに限らず、国内ではD2Cビジネスも流行していますが、複数ブランドをまとめたほうが事業規模が大きくなり、管理やグロースのコストも抑えられるからです。ますます拡大しつつあるEC市場の中で、必然的にECロールアップも成長市場になるはずなので、ACROVEはその先頭を走り続けたい。

福海パンデミックの影響で、Eコマース市場全体が伸びていることは明らかです。このタイミングで、EC事業を手がける小規模プレイヤーを後押しするECロールアップモデルは社会全体にとってプラスの存在ですし、VCとしても注目の投資対象の一つとなっています。

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注目市場を勝ち抜く秘訣は、ツールと仕組み化による
「再現性の高さ」

今後、国内でも急成長が見込まれるECロールアップ市場。成長市場であるということは、競合プレイヤーも増えていくことも必至だ。ACROVEは、そんな激戦市場で、果たして先頭を走り続けることができるのだろうか?

荒井ACROVEは、大きく2つの強みを持っていると考えています。まず、独自開発のBIツールを持っていること。自社ブランドのプロテインEC事業を成長させる中で蓄積した知見をもとに、EC売上の最大化と業務の自動化・効率化を支援するBIツール『ACROVE FORCE』を開発しました。

そして、以前のインタビューでも詳細にお話ししたように、徹底的な社内業務の仕組み化・マニュアル化ができていること。徹底的な仕組み化により、ECブランドを成長させるための総合的なビジネス力を、あらゆるメンバーが身につけています。

これら2つの強みのおかげで、再現性を持ってブランドの成長を支援することがができているんですす。実際、提携ブランドの平均売上成長率は、前年同月比で300%を超えています。

ツールと仕組み化という2本柱を最大限に活用すべく、採用にも細心の注意を払っている。数々の企業を見てきた福海氏は「採用も注力ポイントであり、最も気をつけなければならない点だ」とする。

East Ventures アソシエイト 福海道登氏

福海シード期のスタートアップは、往々にしてピボットするもの。事業が大きく展開したときに、メンバーの多くがやめてしまう会社も少なくありません。その原因は、「プロダクトやサービスが好きで入社を志望した」という人たちを採用しているから。

ACROVEはプロテイン事業を創業事業とし、現在はSaaSビジネスにも力を入れていますが、メンバーは離脱していません。荒井さんがリーダーシップを発揮して、「なぜこの事業をやるのか」「ACROVEはどこに向かうのか」をしっかり示しているからこそ、メンバーが離れず、高い組織力を保てているのだと思いますし、採用の時点でも工夫があるのではないでしょうか?

荒井そうですね。「プロダクトが好きだから」という人と「この職種しかやりたくない」という人は採用しないようにしているんです。プロダクトや特定の職種を極めたいという人ではなく、成長意欲高く、僕らのビジョンに共感してくれる人、そして、ゴールに辿り着くことではなく、その過程を楽しめる人を採るようにしていますね。

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自らのポテンシャルを“本気で”信じている起業家

市場の成長性と企業としての競合優位性を兼ね備えているとはいえ、ACROVEが挑戦する市場は、2021年7月現在では、国内にほぼ存在すらしていない。そんなACROVEに、真っ先に投資を決めたのが福海氏だ。

弱冠23歳にして5年のキャリアを持つ注目の若手ベンチャーキャピタリストである。九州大学在学時からF Venturesにインターンとしてジョインし、以来シードフェーズのスタートアップに特化した投資活動を続けてきた。2019年にEast Venturesにジョインしたのちも、20社近くのスタートアップへの投資を実行している。

荒井氏に出会ったのは、2019年6月。共通の知人の紹介が2人を結びつけた。福海氏は、初対面時の荒井氏の印象をこう振り返る。

福海荒井さんの一つひとつの言葉から、視座の高さや経営に対する想いの強さを感じました。あとは、本当に良い目をしている人だなと思いましたね。また、お会いするまでは「なぜプロテインなんだろう?」と思っていたのですが、プロテイン事業はあくまでもきっかけにすぎず、これからさらに大きなことを成し遂げようとしていることが分かりました。

単一のプロダクトを売るためにD2Cビジネスを展開しているわけではなくて、プロテイン事業を足がかりに本気で令和を代表するメガベンチャーになろうとしている。その本気を感じたのが印象に残っています。

福海氏は主に25歳以下の起業家が立ち上げたスタートアップに対し投資を実施しているため、必然的に大きな実績を持たない起業家たちと面談する機会が多くなる。起業家の実績ではなく、ポテンシャルを見て投資可否を判断しているそうだが、福海氏は若手起業家たちのポテンシャルをいかに見抜いているのだろうか。

福海その起業家が「自分の可能性を本気で信じているかどうか」を重視していますね。自分の経営者としてのポテンシャルを過小評価せず、自らが「大きなことを成し遂げるのだ」と、本気で考えていることが大事だと思っています。

初めてお会いした時点で、荒井さんは自分の経営者としての可能性を心から信じている人なのだなと理解できたんです。自らのビジネスによって、社会を豊かにしたいと思い、「自分であれば、必ずその目標を達成できるのだ」と本気で信じているように見えました。

それに「起業するからには、最低でもサイバーエージェントくらいの会社にしなければならない。それくらいの規模のことをやらなければ、生きた実感を持てないと思っている」と言っていた。こういったモチベーションを持った人が、プロテインのD2C事業だけで終わるはずがないと思い、その可能性に投資しようと思ったんです。

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「いずれは孫さん、三木谷さん、藤田さんを超えたい」

「令和を代表するメガベンチャー」を、“本気”で目指す起業家と投資家。二人が目指すのは、「次の時代を作る」という壮大な道だ。

福海創業前から、あるいは創業直後のまだプロダクトすらない状態から経営者の想いや苦悩、葛藤を知り、一緒に成長していくことに、何よりもやりがいを感じてます。それこそが自分のミッションだと思っているんです。だからこそ、僕は一生シード投資家であり続けたいです。

僕はもともと地元福岡で、「行政がコミュニティバスを1本走らせるよりも、『Uber 』のような全世界で利用されるようなサービスを生み出した方が、地域社会にもインパクトをもたらせるのではないか?」と考えたことがきっかけでベンチャーキャピタリストになりました。社会を変えるサービスを生み出す企業を、支援し続けたい。これからも同世代の経営者たちと共に成長し、次の時代を作っていきたいと思います。

荒井まずは「日本版セラシオ」を目指したい。競合がひしめくマーケットの中で差別化となるのは、ビジネスモデルでも、経歴でもなくエグゼキューション(実行力)の部分だと思います。「仕組みを言語化」したり、毎日経営と向き合う時間をとり、全ての行動を実行に落とすスピード感が大事です。そうしてスピード感を持って、でも着々と実行していった先に、いずれは孫正義さん、三木谷浩史さん、藤田晋さんを超えるような事業家になりたいですね。

大きな未来に向かって、スピード感を持って向かっていく二人と一緒に戦える仲間も、もちろん募集中だ。

荒井セラシオ級の評価を得る、あるいは令和を代表するメガベンチャーとなるために、現在埋めなければならないのは、エンジニアとマーケティング責任者のポジション。これまではインターンや新卒などのメンバーが中心となって事業を成長させてきましたが、基盤は整ったと思っているので、これからは経験豊富な方々にもぜひ入ってきてほしいですね。

ECブランドごとの責任者や、いずれは子会社の社長も積極的にお任せしていきたいので、ビジネス全体を見ていきたいという人こそ大歓迎です。

福海大きな目標を掲げる会社で、成長の過程を体験することは何にも代えがたい経験になるはず。急成長市場で戦いながら、会社と自分が一緒に成長していくことは、スタートアップで働くことの何よりの醍醐味ですからね。ACROVEは強固な育成スキームを持っていますし、ニッチな技術や豊富な経験を持ち合わせていなくても、活躍できるチャンスは大いにあると思っています。もちろん、経験豊富な方が存分にその経験を活かす環境も整っている。

自分の可能性を信じてやまないビジネスパーソンたちに、ぜひACROVEに来てもらいたいですね。

こちらの記事は2021年07月29日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

鷲尾 諒太郎

1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。

写真

藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

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