INTERVIEW
木下 洋平
18-02-22-Thu

きっかけは“物乞い親子の死”。
アッション木下が
“貧困撲滅”を目指す理由

TEXT BY MISA HARADA@HEW
PHOTO BY YUTA KOMA
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アッションの代表取締役である木下洋平は、
大学時代に行ったインドで、貧困の厳しさを目の当たりにした。

ABテスト・LPO対策・Web解析などに精通し、Webマーケティング支援事業を主軸とする同社のミッションは、
「世界で活躍する人・企業・サービスを創造する」こと。

木下は、アジアで雇用を生み出すことで、貧困を撲滅しようと走り続けている。

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就活全滅。単身インドに飛んだ学生時代

大学時代は授業に出ず、飲んで、麻雀を打っての日々。バイトすらまともにできなかった木下は、「あのまま生きていたらダメ人間だった」と笑う。なぜ彼は変わったのか? それは就活で“全滅”したことがきっかけだった。

それまで将来について「できれば有名企業に行きたい」程度の漠然としたイメージしか持っていなかったというが、自分の薄っぺらさを痛感し、広い世界を見ようと決断。日本のように安全が保障されていない国がいいという考えのもと、「行けば考えが変わる」と聞いたことがあったインドを選択。

貯金もなかった彼は、当時まだ拙かった英語で「cheapest and longest way to stay in india」と検索し、NGO活動に参加すれば1ヶ月1万円程度で渡航できることを知る。

その翌日にはインド大使館でビザを取得。大学を休学してインド、東南アジアでNGO活動を行った。

2000年当時のインドは、発展途上国の中でも後発開発途上国に認定されており、しかも木下が訪れた東部のオリッサ州はとくに貧しい地域だった。今でこそ天然資源の産出地として注目を集めているオリッサ州だが、そのころは「電気・ガス・水道もなく、人々は左手でお尻を拭いていた」。

そんな木下にとって、今も頭に残る出来事がある。駅に切符を買いに行く途中、物乞いの母子を見かけた。インドでは当たり前の光景だったため、とくに気にも留めず通り過ぎたが、数日後に2人の遺体にゴザがかけられているのを目撃したのだった。

「自分が少しでも水や食べ物を渡していたら、母子は助かったんじゃないか?」という思いが、木下の脳裏に焼き付いた。

そういったインドでの経験が“貧困の撲滅”というキーワードに繋がった。なぜボランティアではなく、ビジネスの切り口から、そのテーマに取り組もうと考えたのか?

木下NGOよりビジネスの方が、自分の力量次第で世界中の人々にいち早くインパクトを与えられると考えました。帰国後改めて始めた就活では、メーカーか商社か迷ったのですが、様々な事業を展開していることと、途上国を含め多くの国を訪ねるチャンスが見込めることを考慮し、商社を志望することに決めました。

そんな木下は2002年、伊藤忠商事に入社。30歳までに起業すると決めていた彼は、「ベンチャーを起こしてもお客様になるはず」の大企業の意思決定・ビジネスロジックを短期間で吸収しようと、「一番厳しい部署に行きたい」と自ら人事に希望。石油のトレードを担当する部署に配属された。

文字通り「寝る間も惜しんで働いた」2年間を経て、より起業に近しい0→1フェーズを学ぶため、縁あって当時10人程度のモバイルファクトリーに転職。

2005年6月には取締役として最高執行責任者に就任。当時は着メロサイトのディレクションからインターネット広告の営業、企画を担当していたという。

そして、2009年2月、満を持してアッションを創業。リーマン・ショックの直後といえるタイミングだが、なぜそのときだったのか。

木下色んな人から今は辞めたほうがいいと言われましたが、逆に今しかないと思いました。株も世の中も落ち込んで、あとは上がっていくだけ。そういう厳しいときこそ動いた方が面白いじゃないですか。

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ビジネスは信頼の積み重ね。薄利でノウハウを蓄積し急成長

小資本の会社でも大企業と対等に渡り合える領域ということで、ITで事業を始めることを決めた。しかし、起業するまで木下は、現在のメイン事業であるWebマーケティングに本格的に取り組んだ経験がなかった。

同じIT分野の企業といっても、モバイルファクトリーで手掛けていたのは主にコンテンツや広告サービス。Webマーケティングの知見は不足しており、セミナーに通ったり書籍を読んだり、イチから必死に勉強を重ねた。知見や人脈のある領域から離れ、なぜそれほど苦労が必要な領域で事業を始めたのだろうか?

木下前職でも少しだけBtoB、成果報酬型のSEOの事業の立ち上げを担当していたんですが、結局立ち上がらなかったんですが、もう少しできたんじゃないかという後悔がありました。

起業の単純な成功率だけ考えると、前職と同じような事業をやればいいんでしょうが、それなら元いた会社でやればいいし、起業した意味がない。前職とは異なる領域でチャレンジしようと決めたとき、前職で上手くいかなかった事業にもう一度チャレンジしたいという気持ちが湧いてきたんです。

それほど知見のない状態からWebマーケティング事業を軌道に乗せることができた理由を、木下は、「運ですよ。優秀なメンバーにも恵まれましたし」と謙遜して語る。

だが、創業時からの流れを聞いていくと、彼が実に手堅い計算のもと、事業を進めてきたかが理解できるだろう。

「モバイルファクトリーで学んだこと」だというが、木下は事業立ち上げにあたり、まず世の中に見せられる実績を作ることがなによりも大切だと考えた。参入したばかり、しかも実績も経験もない企業となると、値段の安さで差別化を図るしかない。

まずは安さで案件を獲得し、クライアントに値段以上の価値を感じてもらえる成果を提供する。その繰り返しによって自社ではノウハウを蓄積していき、業務のクオリティを高め、少しずつ業務単価をアップさせていくことに成功したのだ。

しかし、今も慢心はしていない。海外の動きには常に目を配り、米国や欧州のマーケティングカンファレンスには、自ら足を運ぶ。

「日本のマーケティングの潮流は米国から数ヶ月遅れてやってくる」ことを認識している木下は、カンファレンスで仕入れた情報をいち早く日本のクライアントにも提供。国内には届いていない最新のマーケティングシステムも取り入れるなど、グローバルに情報収集して事業のブラッシュアップを続けている。

現在は集英社やベネッセコーポレーション、SBIホールディングス、U-NEXTといった名だたる企業がアッションのサービスを導入しており、日本唯一のVWO公式プレミアムパートナーにも認定されている。

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アッションでは、日本最大級のプリスクール検索ポータル・幼児英語教育メディア「プリスクールナビ」も運営。「教育事業も今後注力していきたい領域だ」という。Webマーケティングも教育事業も、“アジアにおける雇用促進”というキーワードで繋がっているのだ。

プリスクール・インターナショナルスクールの比較サイト|プリスクールナビ

木下貧困は、人々の夢や希望を奪います。貧困を解決するためには、仕事があって、しっかり給料が支払われて、衣食住が満たされた状態を作らなければならない。

人々の三大欲求を満たすことができたら、今度は子供たちに最低限の教育を与えたい。その仕組み作りというのが、我々の長期的なビジョンです。

現在は、マレーシアやシンガポールといった社会インフラが整っている国に向けて、我々の持つWebマーケティングのノウハウを展開していく動きをとっています。

アッションの支社や関連会社をアジア諸国に作り、ローカルの会社とも提携することで、事業を展開していき、現地に雇用を生み出していく。1人でも多くの人間にお給料を支払うことで、貧困を解決していきたいと思っています。

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目標達成のため、まず退路を断つ

アッションのメンバーらの話によると、ビジネスマンとしての木下の個性は、目標達成意欲の高さにあるという。たとえば2011年7月に香港支社を設立したとき、実は何をやるのかすら決まっていなかった。

それでも「この日までに香港支社を作る」と決めた日が近づいたため、延期せずにとにかく作った。2013年、2015年にオフィスを移転したときもそうだった。「とりあえずオフィスを大きくすれば、人も増えるし事業も伸びる」と言い張り、メンバーの数からすると3倍か4倍ものスペースがあるオフィスに引っ越しを敢行した。

しかし、その後まもなく本当に事業が伸びて、2度もスカスカだったオフィスを社員でいっぱいにしたのだから驚くべき話だ。1歩をなかなか踏み出せないタイプの人間にとって、木下は学ぶべきところをたくさん持った起業家だろう。

木下自分の弱さを自覚しているから、できることなんです。だからこそ、迷ったら難しい方を選ぶことを意識しています。決断とは、“決めて、断つ”ことなので、退路を断つ。2018年の夏に、マレーシアに移住したのも、そういうことです。

日本を離れるからには、絶対結果を残さないといけない。やはり定住するとなると、出張とは違う覚悟が生まれますよね。

アッションでは、会社全体としての問題や課題を自分事として捉えられるという意味で、“自責の念を持てる人”を求めている。同社の魅力は、社員10名前後のスタートアップでありながら、外国を飛び回る商社的な働き方をすることができるところだ。

社員の海外出張ならまだしも、学生インターンながら1年間、世界的に有名な提携先企業でプログラミングを学んだメンバーもいる。外国籍のメンバーも2名在籍し、日本という枠にとらわれず、アジア諸国、海外で力を発揮したいビジネスマンにとってはうってつけの環境だ。

海外といえば、軸足は当面アジアに置くつもりなのだが、それには理由がある。木下は学生時代にインドで、人にだまされ、身ぐるみはがされてしまったことがあった。とにかく日本に帰らなくてはと、はるばるオリッサからデリーまで向かったのだが、トイレもあふれてくるような3等車の中、見ず知らずの木下を助けてくれた人がいた。

相手は僧侶だったか、教師だったか、今となっては覚えていない。しかし、「だまされた」と嘆く木下に、その人は、「このお金は私からではなく、インドという国から渡すものです」となけなしの200ルピーを与えてくれたのだった。

木下インドってすごい国なんですよ。日本人の中には現地の人に対してあまり良い印象を持っていない人もいるかもしれませんが、彼ら自身が国中で大変な問題を抱えていても、そういう優しさを持った人もいる。そういう国の人たちに恩返しをしたいという想いが今でもあるんです。

アッションとは、“アジアのパッション”を意味する造語。事業を通した木下の“恩返し”は続いていく。

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