これが働き方の最前線だ。
キャスターが実践するホラクラシー型組織経営とは?
先日、大きな反響をいただいた働き方革命に挑むベンチャー企業12社。その12社の中でFastGrowが独自取材を行った企業にフォーカスを当てていく。初回は、全社員がリモートワークで、副業OK、給与は自己申告制、という次世代的な働き方を実践する株式会社キャスター。人事担当の勝見氏を直撃した。
- TEXT BY FastGrow Editorial
採用面接も全てオンライン完結
キャスターは、人事総務や経理、WEB運用やデザインなどに関する日々の業務を、自社で雇用する「リモートで働く優秀なオンラインアシスタント」に依頼できる『CasterBiz』を中心としたサービスを提供している会社である。導入実績は現在200社以上だ。

CasterBiz - オンラインアシスタントならキャスタービズ
『リモートワークを当たり前にする』というミッションを掲げている企業として、自社でも率先してリモートワークを徹底。170名以上の全従業員がリモート勤務している。
社員の多くを占めるのは、結婚や出産、介護など個人の事情によってフルタイムで働けなくなった人や、夫の地方転勤のため大都市圏で働くことのできなくなった女性である。 中には、大企業で実績をあげてきた社員や、前職でマネジメント経験が豊富な社員もいる。
「大都市圏以外には、優秀なのにもかかわらず、スキルを活かせる企業が見つからずに困っている方がたくさんいると実感した」(キャスター人事 勝見氏)
実際に、主軸事業である『CasterBiz』の事業を統括しているのは、現在宮崎県に住む女性マネジャーだ。全国に散らばる社員数十名を、オンラインコミュニケーションツールを駆使してリモートで管轄する。
『リモートワークを当たり前にする』ため、面接やコミュニケーションでも工夫を重ねている。一般的には、1次面接であればSkypeやappear.inなどのオンラインビデオツールでも対応するが、2次面接以降は対面に限る、という企業が多い。
無事入社につながったとしても、リモートワークでは監視の目が行き届かない、またはどのような働きぶりかもわからない、といった理由から、数ヶ月は対面で一緒に働き、仕事ぶりで判断してからリモートワークを許可するという企業のほうが多いのが今の社会の現実であろう。
しかし、キャスターでは、最終面接を含め全ての面接がオンライン上で完結する。入社当日からリモートワーク可能なことも言うまでもない。
ただ、これほどにリモートを推進しすぎて、社員間のコミュニケーションが希薄になってしまうということはないのだろうか。
勝見対面によるコミュニケーションが減るのは事実だが、チャットルームで趣味について語り合ったり、Skype飲み会・オンラインアバターを活用した忘年会など、オンラインでのコミュニケーションを意識的に多くしている。社員みんなが、オンラインでの交流を楽しんでいる。
副業OK、給与は自己申告
キャスターで注目すべき働き方はリモートワークだけではない。
副業が認められていることも大きな特徴の一つだ。
勝見キャリアを組織という枠組みで縛ってはならない。
自らの意志でビジネスにチャレンジしたい社員を応援するカルチャーである。副業で得た収入やその働き方に関しても一切関与はしない。
現在持ちあわせるスキルセットを活かした副業をするメンバーが多く、
勝見他社での様々な経験を通して成長しキャスターに還元される例もあれば、副業で人脈が広がっていくこともあり、副業のメリットは感じている。
という。
もう1つの注目すべき特徴は、給与の自己申告制だろう。
半年に1回、給与テーブルと事業部予算・KPIを踏まえて、自分の役割に見合う金額を申告する仕組みだ。
その際、給与相場の参考情報として、会社の財務状況(月に1回) 、社内の全従業員の給与一覧(半期に1回)、社外の職種別・エリア別平均給与(年に1回)が提示される。

勝見社員自身が自己を客観的に見つめ直さなければ給料申告できないため、自分の役割に対しての責任感が強くなる仕組みになっている。
それでも急成長する秘訣はホラクラシー型組織
リモートワークや副業OKのカルチャー、給与を自分で申告する仕組みなど、悪用しようと思えば悪用できるこのような制度が、なぜうまく機能し、急成長につながっているのか?その答えは、『ホラクラシー型組織』にある。
『ホラクラシー型組織』とは、マネジャー以外の役職を無くしたフラットな組織のことだ。
ヒエラルキーを作らないことによって、意思決定権がメンバー全体、個人個人に広がる組織形態である。
個人の裁量が大きくなることは避けられないため、採用時には候補者が自律的な人材かどうかを入念にチェックする。『セルフマネジメントができるか』、『当事者意識を持つ人か』といった点に留意して一緒に働くメンバーを選ぶことで、強力な意思決定権をもつ役職者がいなくとも、明確な役割に責任をもつ各自が意思決定できるチームが出来上がるというわけだ。

もちろん、各自が迅速な意思決定を実現するには、あらゆる情報にアクセス可能な必要がある。企業側にもマネジャーや特定メンバーに限定した閉ざされた情報は持たず、全てオープンにする姿勢が必要とされる。キャスターでも、経営数値や経営陣を含む全従業員の給与などは全て開示し、閉ざされた情報を徹底的に排除している。
ホラクラシー型組織は階層や役職を持たないため、社内政治がなくなる、上司が部下を管理する必要がなく業務スピードを上げられるといったメリットが有る一方、裁量が大きい分、社員の成長スピードが個人に依存しやすいというデメリットもある。
そこでキャスターでは、半年に1回マネジャーからのフィードバック面談を設け、個人の成長をサポートする仕組みを導入した。マネジャーと共に期初に定量・定性両面から目標を設定し、次の期初に振り返りを行うことで、1人だけでは気がまわりづらい目標設定をサポートする。
フラット・オープンなカルチャーを維持しつつ拡大することはできる
いまはまだ小規模だから成立しているだけではないか、大企業ではホラクラシー型組織など機能しないのではないか
このような疑問を持つ方も少なくないであろう。
確かに、階層組織で長らく運営されている大企業にいきなりホラクラシー型組織を導入しようとすれば、社内の混乱や反発は避けられないだろう。約800億円でAmazonに買収されたことで世間を賑わせた米国発のアパレルEC企業Zapposでも、ホラクラシー型の体制に移行した直後、1,500人在籍していた従業員のうち200名超が退職したという。
しかし、キャスターをはじめとして、近年『ホラクラシー型組織』として注目を浴びる企業の多くは、創業当社からホラクラシー型で運営することを目指し、制度設計されている。
勝見ホラクラシーにフィットする人材を採用時に見極め、自律しているメンバーだけで組織を拡大していくことができれば、人数が何名になろうと今の体制は維持できると思っています。そして、我々が模範的な一企業として業績を拡大しつつもホラクラシー型組織を維持することが、キャスターのミッション実現にもつながります。
新しい働き方を万人が享受できる世の中へ
「個人がそれぞれの事情を考慮した形で自由に働ける。企業側も優秀な人材を雇用でき人材不足を解消できる。もっとこのような働き方が認められる社会であるべき。なぜ既存のレールに乗れないという理由だけで働き先がなくなってしまうのか?」という代表取締役 中川氏の現代の労働環境に対する疑問から生まれた企業、キャスター。
皆さんの周りにも、夫の転勤や親の介護などの事情で定職に就いていないが、今すぐにでも社会で活躍したいと願ってやまない友人・知人がいるのではないだろうか。
“働き方の次なるデファクトスタンダード”の普及に務め、自らも実践しているキャスターが成長し、ロールモデルとなることで、働く意欲を持つ人がプロフェッショナルとして自由に働くことができる“労働革命”が起こることを期待したい。
こちらの記事は2017年06月15日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
FastGrow編集部
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