クリエイティブの定量化、経費精査プラットフォーム。注目のAIスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社ガラパゴス、Miletos株式会社の2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY YUI TSUJINO
ガラパゴス
AI×デザインで、クリエイティブ製作の定量化を実現
最初に登壇したのは、WEBマーケティング領域のクリエイティブ製作に特化した『AIR Design』を開発・運営している、ガラパゴス代表取締役社長の中平健太氏。
冒頭で、中平氏は「デザイン業界におけるクリエイティブ製作の現状」を共有した。
中平『Facebook』などで見かけるバナーは、世界で年間約2億2000万枚作られています。つまり1秒間に7枚も作られている。これらのバナーは人の手によって制作されています。その結果、デザイン業界には多重下請け構造が生まれ、厳しい労働環境を作り出してしまっています。
アナログなデザイン制作を変える人がいないのであれば自分でやるしかないと思い、2015年12月からAIによってデザインを最適化するサービスの研究開発に乗り出しました。
もともと株式会社インクス(現:SOLIZE株式会社)で、プロセス改善コンサルティングに従事していた中平氏は、「職人の思考プロセスを可視化し、標準化したうえでソフトウェアによる自動化」をデザイン業界でも行えないかと考えたそうだ。そして、同社は2016年にロゴの自動生成AI『AIR Design for Logo』を開発。その後、LPやバナー、動画などのクリエイティブを制作する『AIR Design』をローンチした。
『AIR Design』は、AIによってデザインの「質」を定量化し、効果的なデザインを予測してクリエイティブを製作するサービスだ。
30万件以上にも及ぶLPやバナーのデータを、特許取得済みの画像解析技術「Reverse Design」によって解析。それぞれのLPやバナーをレイアウトやトンマナ、訴求軸やコピー表現に分解し、分析することによってデータベースを構築している。そして、そのデータベースを参考に、AIを活用して高速でLPやバナーを制作。最終的には人の手によって調整を加え、クリエイティブを完成させる。
テクノロジーの力で効率化できる部分は効率化し、その力で代替できない繊細な調整を人が担うことによって、高い速度と質を両立するクリエイティブ制作を実現するのだ。
デザインの定量化は、広告主やマーケターなど買い手側のメリットにもなる。「選択のものさし」を提供するのだという。
中平アナログな手法で作られたデザインでは、作り手にとっても買い手にとっても「正解」が分かりくい。クリエイティブを定量化することは、選択の基準を明確にすることに繋がります。
『AIR Design』は半自動生成したバナーをスコアリングすることで、定量的なものさしを提供します。個人の感覚ではなく、客観的な数値によるクリエイティブの選択を可能にし、再現性の高い「効果的なクリエイティブ制作」を実現します。
2021年10月時点で、約350社が『AIR Design』を導入。また、2021年9月には約11億円のシリーズAの資金調達を実施し、『AIR Design』の拡大を目指すとともに、2023年以降には世界進出も掲げている。
「私たちは『デザイン業界の産業革命』という大きな目標を掲げて事業を推進しています。一緒に成し遂げたい方はぜひご連絡ください」と参加者に呼びかけた。
採用情報
Miletos
ビジネスプロセスをAIで変革する、経費精査プラットフォーム
続いて登壇したのは、Miletos代表取締役社長兼CEOの朝賀拓視氏。同社は、AI経費精査プラットフォーム『SAPPHIRE』、AI入金消込プラットフォーム『STREAM AI ARM』を提供している。
『SAPPHIRE』は、経費データや勤怠データ、入館データなどを元に、AIが経費申請に関する不備・不正チェックを行うサービスだ。経理担当者は高リスクと評価された申請だけを確認すればよいので、経費チェックにかかる時間を大幅に削減できる。また、人手によるチェックに比べて多数の観点から分析するため、統制の高度化が実現できる。
朝賀氏は、プロダクトの特徴として「割れ窓理論を採用している」ことを挙げる。
朝賀割れ窓理論はアメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した、「軽犯罪を徹底的に取り締まることで、大きな犯罪を抑止することができる」という考え方です。
経費申請における小さな不正を防止することが、コンプライアンス意識を高めることにつながり、大きな不正を抑止します。誠実な人が気持ちよく働ける環境を構築するためのプロダクトです。
一方、経理担当者が属人的に行っていた入金消込作業、すなわち入出金情報と照らし合わせて、売掛金などの債権、買掛金などの債務の残高を消していく作業をAIによって代替するのが『STREAM AI ARM』だ。作業の効率化・高速化を図り、コスト削減も実現する。
同社は「ビジネスプロセスをAIで変革する」こと目標に掲げている。具体的には、ヒトと紙から成り立つビジネスプロセスを、AIとデータの力でモダンで効率的なプロセスに変えることを目指しているのだ。
そういった目標を実現するための武器となるが、同社の組織だという。
朝賀経理領域において経験を積んだコンサルタントチームと、AIに精通したエンジニアチームがいます。
AIベンチャーの場合、テクノロジー活用に強みを持つ一方で、大企業のビジネスプロセスには精通していない場合もあります。対して、エンタープライズのビジネスプロセスを深く理解しているコンサルティング会社は、テクノロジーではなく人の手によって課題を解決していることが少なくありません。
弊社にはテクノロジー活用に長けたエンジニアチームと、ビジネスプロセスの最適化に関する豊富な知見を持ったコンサルタントチームがいるからこそ、企業のビジネスプロセスを効率よく変革するプロダクトが提供できるんです。
最後に、朝賀氏は社名の由来についてこう述べた。
朝賀「Miletos」という社名は、古代ギリシャ時代に哲学者であるタレスを中心としたミレトス学派が集まった島の名前に由来しています。古代ギリシャでは自然現象は神々が起こすものだと考えられてきましたが、ミレトス学派は「すべての自然現象には根源となる物質がある」とする、自然哲学という新しい考え方を提示し、人類に科学の扉を開きました。
賢人たちがミレトス島に集まり、人類を新しいステージに導いたように、Miletos株式会社も様々な優秀な人材が集まり、新しいものが生まれる場であり続けたいと考えています。
急速な事業成長を遂げている同社。「今後の成長に向けて、一緒に駆け抜けてくれる仲間を募集しています。Miletosの理念に共感した方やSaaS企業での勤務経験がある方、エンタープライズ向けのプロダクトに携わった経験がある方はぜひご連絡ください」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年11月11日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
辻野 結衣
1997年生まれ、東京都在住。関西大学政策創造学部卒業し、2020年4月からinquireに所属。関心はビジネス全般、生きづらさ、サステナビレイティ、政治哲学など。
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