連載ベンチャー企業のための採用ブランディングバイブル

独自リサーチで判明!候補者に響く「3つのポイント」とは?ブランドコンセプトの作り方まで解説

「採用ブランディングが重要だと分かった。でも、そもそも何を伝えれば、優秀な候補者の心に響くのだろうか?」

多くの経営層・採用責任者の方がこの問いに直面し、採用ブランディングの手が止まってしまうことがあります。

「採用ブランディングの効果が出るまでには時間がかかるから、まずはとにかくnoteやWantedlyの記事を出していこう」

そのような気概で取り組むことは大事ではあります。しかし、それだけでは自社の採用活動の質を高め、持続的な採用体制を構築することができないばかりか、かえって採用候補者の属性にばらつきを生んでしまい、採用活動の質が下がってしまう恐れもあります。

本記事では、発信を始める前に皆さんに考えてみてほしい「採用ブランディングにおいて伝えるべき3つのポイント」について触れ、皆さん自身が”自社だからこそ伝えられること”を見つけ出し、磨き上げるための具体的な4つのステップを事例を交えながら解説します。

「採用ブランディングの効果があまり出ていない」という方や「これから採用ブランディングに取り組もうとしている」という方はぜひ参考にしてみてください。

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採用ブランディングで伝えるべき「3つのポイント」とは

具体的なHowをお伝えする前に、20〜30代のベンチャーパーソンが転職における企業選びで重視すること、つまり、あなたの会社が採用ブランディングをするときに採用候補者に伝えなければいけないことをお伝えします。これを踏まえて、「私たちの会社では具体的にどのような情報を提供できるか」を考えてみるとよいでしょう。

まず最初に下のグラフを見てください。これは、FastGrowが20代と30代のベンチャーパーソンに「転職を検討する際、働く企業を選ぶうえで重視する点」を調査した結果です。

「給与・経済的リターン」などが上位に含まれるのは想像に難くありません。しかし、それと同じくらい候補者が知りたいと思っているのが、“なぜ、私たちはこの事業をやるのか”といった「ミッション・ビジョン」や”私たちの事業は社会に対してどのような影響を与えていくのか”といった「社会的なインパクト」、そして”どうやって、私たちはこの市場で勝つのか”といった「将来も含めた継続的な成長」などの情報です。

加えて、“私たちはどのような働く環境を提供できるのか”といった「一緒に働きたい優秀な人がいるかどうか」「社内の雰囲気・カルチャー」も20〜30代のベンチャーパーソンが気にしている情報であることがわかります。

FastGrowで実施した20代ベンチャーパーソンへの調査の結果(FastGrowの独自調査より抜粋)

FastGrowで実施した30代ベンチャーパーソンへの調査の結果(FastGrowの独自調査より抜粋)

整理をすると、企業は次の3つのポイントで情報を発信していく必要があるということになります。

「ミッション・ビジョン」─ なぜ、私たちはこの事業をやるのか

企業の存在意義や解決したい社会課題、実現したい社会といった「ミッション・ビジョン」について発信するとともに、経営陣やメンバーがどのくらい本気で向き合っているのかを伝える。また、経営者の創業の背景や思い、人柄も合わせて伝える。

「経営・事業戦略」─ どうやって、私たちはこの市場で勝つのか

自社が持つ独自の強みや、向き合っている市場・事業領域をどのように攻略しようとしているのか、その戦略を語る。

「カルチャー」─ 私たちはどのような働く環境を提供できるのか

「ミッション・ビジョン」や「経営・事業戦略」から下ろして、それらの実現のために必要な組織やカルチャーとしてどのようなものが根付いているのかを伝える。また、メンバーがそれらをどのように受け取り、どのように仕事に向き合い、どのようなキャリアパスを描いているのかといったことも伝える。


この3つのポイントで「採用競合には提供できないが、自社なら提供できること」を考えていくことが候補者の心を動かす採用ブランディングに繋がります。

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自社だからこそ伝えられることを見つけ、磨くための4ステップ

それでは、「ミッション・ビジョン」「経営・事業戦略」「カルチャー」という3つのポイントについて、どのように自社の特徴を自社の言葉で語り、候補者に響くメッセージへと昇華させればよいのでしょうか。そのための具体的な4つのステップを紹介します。


【Step 1】「誰に」届けるのかを定める(採用ペルソナの言語化)

まず「3つのポイント」を語り始める前に、そのメッセージを受け取る「自社にジョインしてほしい理想の人物像(=採用ペルソナ)」を言語化しましょう。伝える相手のことを明確にイメージできなければ、どんなことを発信しても正しく響きません。

言語化するうえで大切なことは、スキルや経歴だけではなく、その人物が持つ価値観や志向性までもイメージすることです。社内で共通認識を持てるレベルまで解像度高く言語化するようにしましょう。

すぐに始められるアプローチの1つとしては、自社で高いパフォーマンスを上げているメンバーへのヒアリングがあります。「人生や仕事における価値観」や「これまでの人生のこと」、「キャリアとして何を目指しているのか」、「なぜ自社への入社を決めたのか」などを聞いてみると、自社のカルチャーにフィットしてパフォーマンスする人物とはどのような人物なのかが少しずつ見えてきます。

もし、「いきなり“たった一人”に絞るのが難しい」と感じるなら、チームごと・職種ごとに理想像をラフに書き出してみるのがおすすめです。実際に書き出し、並べて見てみると、共通点や核となる要素が浮かんでくるということも多くあります。

以下のnoteでは、これら以外にも採用ペルソナを決めるうえで陥りがちな”落とし穴”について触れられています。高いパフォーマンスを上げているメンバーだけではなく、退職してしまった人などにヒアリングしてみるといったことも多面的で実体に近いペルソナを定めるうえで、有効な方法となりそうです。

▶参考:採用せんぱい|スタートアップ/HRtechのnote『採用の「理想」と「現実」のギャップは、採用ペルソナが「実在の人物」に基づいていないから生まれる


【Step2】自社の強み・ポジショニングを知る

採用ペルソナが定まってきたら、次に採用市場における自社の客観的な強み・ポジショニングを把握します。思い込みを排除し、ファクトに基づいて戦略を組み立てていくうえで、重要なプロセスとなります。

自社の強み・ポジショニングの調査方法例

  • 社内での調査
    • メンバーへのヒアリング
    • 直近ジョインしたメンバーへのヒアリング
    • 内定者へのヒアリング
  • 社外での調査
    • ステークホルダー(社外取締役や人材紹介会社など)へのヒアリング
    • 退職者へのヒアリング

  • 具体的な事例として、FinTechスタートアップのファンズ株式会社では、シリーズDの資金調達を迎える頃、「事業成長を支える専門性・即戦力性のある人材を計画通りに採用し続けるには、採用市場で優位なポジションを取れるようにならないとまずい」という危機感が社内全体で生まれたことで、採用ブランディングへ大きく投資を始めました。

    その中で最初に取り組んだのが、現場社員や経営陣、人材紹介エージェントといった社内外の多くの関係者から、自社の魅力や課題について客観的な意見を収集し、自社の強みや特徴を多面的に捉えていくことでした。

    ファンズ株式会社が自社の強みやポジショニングを把握する上で実施した調査の対象(FastGrowで実施したウェビナーのスライドより抜粋)

    ファンズ株式会社の採用ブランディング事例資料はこちら


    なお、FastGrowでも、FastGrowのメインユーザー層である20~30代の若手経営人材(CxO・執行役員・事業責任者・BizDev・PdM・セールスマネージャーなど)を含めたユーザーへの認知調査も定期的に行っています。

    自社の採用市場でのポジショニングや認知上の課題を知りたい方はご相談を承っていますので、ぜひお問い合わせください。

    FastGrowによる認知調査レポートのイメージ(FastGrowの認知調査レポートより加工して抜粋)

    自社の採用市場でのポジショニングや認知上の課題を無料相談したい方はこちら


    【Step3】3C分析を通して、自社だけの強み・魅力を見つける

    次に、「自社(Company)」「採用候補者(Candidate)」「競合(Competitor)」の3つの観点から、採用市場における自社独自の提供価値を定義していきます。

    • Company(自社)
      先に言語化した自社の「ミッション・ビジョン」「経営・事業戦略」「カルチャー」が、この分析のインプットとなります。
    • Candidate(採用候補者)
      採用ペルソナがキャリア選択において何を重視し、何を求めているのかなどを深掘りします。
    • Competitor(競合)
      採用競合が候補者に対して提供できていない、あるいは訴求が弱い価値領域はどこかを探ります。競合分析をするうえでも、外部のステークホルダーや退職者へのヒアリングが有効な手段の一つとなる他、採用競合が採用広報・採用ブランディングとして発信しているコンテンツを読んで、「採用競合は何を強みとして発信しているのか」ということを観察してみることも良い手段となります。

    このような調査・分析を通して見つけた「競合と比較した自社の強み」と「候補者の価値観」が重なる部分が、採用ブランディングにおいて候補者に伝えるべき内容であり、ファンズ株式会社では“バリュープロポジション”として、採用ブランディングにおいて自社が訴求すべきメッセージであると定めました。

    ファンズ株式会社では「競合と比較した自社の強み」と「候補者の価値観」が重なる部分を「候補者のニーズが高く、かつ競合他社が十分に提供できていない独自の価値」であるバリュープロポジションと設定し、採用ブランディングの軸とした(FastGrowで実施したウェビナーのスライドより抜粋)


    【Step4】バリュープロポジションのコンセプト化とコンテンツへの落とし込み

    3C分析を通して見出した「競合と比較した自社の強み」と「候補者の価値観」が重なる部分である「バリュープロポジション」。これをコンセプトとして言語化し、候補者の記憶に深く刻み、心を動かすための「採用ブランディングコンテンツ」へと落とし込んでいきます。バリュープロポジションは、その後の採用活動におけるコミュニケーションについての一貫した指針となります。

    • バリュープロポジションのコンセプト化
      バリュープロポジションをシンプルで訴求力の高い表現として言語化し、採用ペルソナに刺さるコンセプトへとブラッシュアップします。
      コンセプト化においては一定活用できるフレームワークは存在しますが、知見やノウハウを持つ識者にアドバイスをもらいながら進めていくとコンセプトが作りやすくなります。
    • コンテンツ企画
      バリュープロポジションを認知・訴求させるために、代表インタビュー記事やメンバーインタビュー記事、他社対談記事、イベントといった具体的な切り口でコンテンツに落とし込み、オウンドメディア・アーンドメディア・ペイドメディアで展開していきます。

    ファンズ株式会社でも、自社のバリュープロポジションを「事業テーマ」「カルチャー」「働く環境」「組織体制」という観点でコンセプト化し、コンテンツに落とし込んで発信することで、候補者における認知・理解を促進していきました。(FastGrowで実施したウェビナーのスライドより抜粋)


    ファンズ株式会社の制作コンテンツ例:『なぜ、上場ベンチャーの成長は止まるのか?その理由は、成長資金の不足だ──「新たな金融」で日本経済を再興へ、ファンズ藤田・若松の想い・狙いとは

    ファンズ株式会社の制作コンテンツ例:『「新たな投資の潮流」を生み出し、スタートアップから金融業界を変える──大手証券会社・メガバンク経験者が語るファンズでしかできない挑戦とは

    また、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンのもと、印刷・物流・広告などの産業DXを推進しているラクスル株式会社でも、事業が多角的に成長し始めた2019年頃から優秀なBizDev人材を採用し、育成することが課題となっていきました。そこで、「BizDevと言えば、ラクスル」というコンセプトを作り、様々な切り口でラクスルのBizDevの魅力を発信してブランドを築いていきました。

    その過程でFastGrowでもFastGrow読者のインサイトをもとにコンテンツの制作・発信を行い、ブランド構築をご支援してきました。

    今では、優秀なBizDev人材が継続的に応募してくれる状態を作れています。

    ラクスル株式会社の制作コンテンツ例:『ラクスルはなぜ、「経験重視」のB2Bで若手BizDevを重用するのか?年間50%成長を支える、20代中心のグロース部隊

    ラクスル株式会社の制作コンテンツ例:『PdMとBizDev、領域侵犯してこそ“事業家”だ──ラクスル初のエンタープライズ向けビジネスを立ち上げた平光氏に、N=1顧客を起点にした事業創造の秘訣を聞く

    2024年に実施した調査では他社と大きな差をつけて「BizDevといえばラクスル」という認知を獲得していた(FastGrowの独自調査より抜粋)


    FastGrowではこの他にも、これまで多くのベンチャー・スタートアップの採用ブランディングのコンセプト作り・コンテンツ企画をご支援してきた実績がありますので、「一度相談してみたい」ということでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。


    コンセプト作りやコンテンツ企画についてご相談したい方はこちら

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まとめ

この記事では、採用ブランディングの発信を始める前に、候補者に伝えるべき3つのポイントを踏まえて、「うちの会社は何を伝えるべきなのか」を見つける方法をお伝えしてきました。このようなプロセスを経ることで、「どんなコンテンツを作ったらいいかがわからない」「たくさん記事を出しているのに採用候補者に刺さらない」といった状況はきっと改善されます。

もし、最初自社で取り組むのが難しいと感じた場合は、ぜひFastGrowにお気軽にご相談ください。採用ブランディングの戦略立案からコンテンツ企画・制作・発信、認知度調査を通した効果測定まで、これまで一気通貫で数多くのベンチャー・スタートアップをご支援してきたノウハウ・経験をもとに、貴社の採用ブランディングをご支援させていただきます。

こちらの記事は2025年11月05日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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