ラクスルはなぜ、「経験重視」のB2Bで若手BizDevを重用するのか?
年間50%成長を支える、20代中心のグロース部隊

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インタビュイー
福島 広造

ITコンサルティング会社を経て、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。企業変革/テクノロジー・アドバンテッジ領域を担当。2015年ラクスル株式会社へ入社。全社の取締役COO及びRaksul事業CEOを経て、現在はストラテジックアドバイザー。

木下 治紀

東京工業大学大学院 電子物理工学専攻 卒業。LSIの高速化・省電力化の研究に従事。2016年にラクスルに新卒1期生として入社。現在は事業開発責任者として主幹事業領域の更なる成長に注力。以前は集客支援事業部にて商品開発・サプライチェーン開拓、オペレーションの業務効率化を担当。

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「BizDev(事業開発)」職を設置している企業は多い。

しかしその内実は、企業によって異なる。既存部署がカバーし切れない範囲を担当する“遊軍”的役割、他社との業務提携を推進する役割、事業の売上に責任を持つ事業責任者的役割…一様に定義されているとは言い難い状況だ。

印刷や広告をはじめとしたBtoBシェアリングプラットフォームを展開し、2018年5月に東証マザーズ上場を果たしたラクスル株式会社は、マジックワード化する「BizDev」のミッションを、ただ「成長」の追求のみに置いている。

代表の松本氏が大局的な展望を語ってくれた別記事で詳述されていたように、ラクスルはプラットフォーマーを目指し、毎年の複利成長に取り組んでいる。非連続的な成長を志向する同社において、「グロースを作ること」をミッションとするBizDevは重要な役割を果たす。彼らにとってのBizDevの流儀はいかなるものだろうか。

「経験豊富」な人材だけではなく若手も積極採用する理由、BizDev人材に求められるオーナーシップまで、メンバーを束ねる取締役COO福島広造氏と、新卒入社4年目で現在はダイレクトマーケティング事業部長を務める木下治紀氏に訊いた。

  • TEXT BY MASAKI KOIKE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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複利成長を目指すラクスルにおける、BizDevの重要性

毎年130%の複利成長を目指しているラクスルで、BizDev人材を束ねる福島広造氏は「日本のスタートアップは上場後の成長率が低く、何のための上場か分からなくなることが多い」と指摘する。

ラクスル株式会社 取締役COO 福島広造氏

福島ラクスルでは、上場を「成長を加速化するための手段」としか捉えていません。1945年の上場後、50年かけて1兆円企業へと成長したトヨタ。1997年の上場後、20年かけて1兆円企業へと変貌したAmazonと、同じ道のりを辿ろうとしているんです。

Amazonが書籍事業から始まってBtoC事業を次々と立ち上げていったように、ラクスルも印刷事業で得たノウハウを次々に横展開し、再現性高く事業を創り出していく。BtoBプラットフォーマーを目指しています。

その複利成長を実現していく際、カギとなるのがBizDevだ。ただ「予算を達成する」のではなく、「事業をグロースさせる」ミッションを課されている。

福島「複利成長」と口にするのは簡単ですが、成長額を毎年伸ばし続けるのは、簡単なことではありません。ラクスルのBizDevは、その難題を解くためのチャレンジに取り組んでいるんです。たとえば、今年の4月に入社した新卒社員も、いきなり「担当する事業の売上を2倍にする」ミッションを課されました。数十億円規模の売上を追っているメンバーにも、30%成長を託しています。

一般的な事業会社における経営企画は、マーケティングや営業の企画を手がけているケースが多いが、ラクスルは違う。プロダクト、テクノロジーからオペレーションまで、プラットフォームの全てのプロセスにコミット。マーケティングやUI / UXはもちろん、サプライチェーンやカスタマーサポートも含めた、広範囲をカバーしなければいけないのだ。

また、複利成長を課されているということは、「単年だけ売上を伸ばせばOK」とはいかない。中長期的かつ非連続的な成長を志向しているため、成長角度を変え、「今年は全く伸びなくても、数年スパンで伸び続ける事業をつくること」が評価される。

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「経験豊富な人材」ではなく、あえて若手を登用する理由

ラクスルでは、複数事業ゆえに裁量権も分散している。福島氏は「極端な話、どれだけ急成長する会社でも、1つの事業体で1つのサービスであれば、社長一人がBizDevをやったほうがいい」と語るが、ラクスルの場合は異なる。

福島ラクスルは、数十人の事業家で、巨大な産業ごとに複数事業を創り、ミルフィーユのように事業を積み重ねて1兆円企業を目指す会社。だからBizDev人材が、各事業カテゴリーに対して全責任を負っているんです。

個々のBizDev人材は、担当するカテゴリー(たとえばチラシ、ハガキ、名刺など)とラクスルが持つ強みを鑑み、事業戦略を策定。サプライチェーン、システムなど、ドメインによって戦略上重視するポイントはさまざまだ。そして定まった戦略に則り、必要な人材を社内で巻き込みチームを組成し、動かしていく。以上がラクスルのBizDevの基本的な動き方だ。

こうした体制下で、BizDev人材の一人である木下治紀氏は、3つのセクションに責任を負っている。

ラクスル株式会社 ラクスル事業本部 ダイレクトマーケティング事業部長・木下治紀氏

木下印刷物の製本段階で加わる「折り加工」、年賀状やダイレクトメールに代表される「ハガキ」の2カテゴリーで売上成長率アップをミッションにしています。その傍ら、部署を横断したCRM活用推進プロジェクトも率いているので、全部で3つのプロジェクトに責任を負っていることになりますね。

特筆すべきは、ラクスルのBizDevには、新卒入社して4年目の木下氏をはじめ、20代の若手メンバーが多い点だ。新卒入社のメンバーも、木下氏のほかに数名いる。一般にBizDevは、一定の事業経験を積んだ人材がアサインされるイメージが強い。しかしラクスルでは、カテゴリーを細かく分類しているからこそ、事業経験が比較的浅い若手にも、積極的にBizDevを任せていける。

福島年間の売上規模が数千万円のものから、60億円のものまで、小さなグロースの弾がたくさんある。事業の数が多いからこそ、ポテンシャルのある新卒の方にも、1つの事業全体を任せざるを得なくなるんです。一方で、大きな産業をカテゴリーに選定しているので、どれも100億円規模の売上に伸びるポテンシャルを秘めています。若手でもBizDevのロールを一気通貫で担えて、大きなインパクトを出せる可能性のある、正直かなり恵まれた環境だと思いますね。

当初は中途採用を中心に検討したこともあったが、そもそもラクスルが求めるB2Bプラットフォーム事業で、「マーケティング」「テクノロジー」「オペレーション」を考慮し、事業グロースを実現できる人材は、ほとんど市場に存在しなかった。そこで、若手にゼロから機会を提供し、成長してもらう戦略を採ることにしたのだ。

そして、若手に成長してもらう方針とはいえ、マイクロマネジメントは一切行わない。ミッションだけを与え、達成に向けた方法は、各々に一任する。基礎的なビジネススキルやコミュニケーション技術といった実務的なノウハウを身につけるサポートは行うが、「どこを目指し、何を行うのか」には一切関与しない。

マネジメントロールを担う福島氏であっても、果たす役割は「機会提供」と「サポート」に限定されている。「上位者に従わなければいけない」という圧力は、一切ない。

福島上司の言う通りに動くことを強要すると、他責思考かつ承認欲求を満たすことが第一になってしまい、事業は伸びません。試行錯誤を繰り返す中で、BizDevに没頭して、事業に魂を込めてもらうことが、最も事業グロースに寄与すると気づいたんです。

実際、トップダウンの意思決定で商品数を増やしてみた結果、全然売れずに施策をストップしたこともありました。事業のことを最も解像度高く理解しているのは、経営陣ではなくBizDev人材です。口を出しすぎると、うまくいかないと分かりました。

「事業」と「BizDev能力」の成長。シンプルにこの2点だけに注力してもらっているんです。運にも左右される短期的な成果ではなく、再現性の高いグローススキルを身につけてもらうために、「中長期的に見て、事業の成長角度を変えた」ことを評価しています。

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事業と人は二人三脚で成長する。BizDevを通して身につく、再現性の高いBtoB事業ノウハウ

新卒入社から4年間、ラクスルのBizDevに従事してきた中で、木下氏は自身の成長面で大きく2つのブレークスルーを経験したという。

まず、事業に対して、高い解像度でインサイトを持てるようになったこと。入社後、最初に任されたダイレクトメール事業において、売上を300%近くまで伸ばすことに成功。周囲からは「価格を下げるべきなのではないか」といった声も挙がっていたが、自分なりに商品追加や配信方法における施策を打ち、結果につなげた。「自分が社内で一番高い解像度で事業を理解できていた」実感を得られたという。

そして、バリューチェーンの長い事業で、数多くのスペシャリストの力を借りながら、中長期的に成果を出せたこと。年賀状事業には多くのステークホルダーが関与する中で、課題設定を明確化し、バリューを出すことができた。

福島BizDevにおいては人と事業が二人三脚で、事業が伸びているときは、事業家も伸びているんです。逆に事業が伸び悩んでるときは、事業家も悩んでいる。背負う事業のグロース度合いが、その人のいまのBizDevとしての器なので、事業と共に成長し、苦悩していく形になるわけです。

もちろん、「印刷業界」に馴染みが深い読者はそう多くないだろう。木下氏もラクスルに入社するまでは、ほとんど触れたことがない領域だった。

木下もともと印刷事業に関する知見は、ほぼありませんでした。しかしマクロな市場環境と、ミクロなラクスルの状況を何度も行き来しながら事業を手がけていくうちに、徐々に解像度が高まっていったんです。そうした試行錯誤を繰り返すうちに、「ラクスルはここを攻めれば勝てるな」と戦略が見えてきました。

冒頭でも触れたように、ラクスルはBtoBプラットフォーマー目指している。「『印刷会社』だけで終わっていい」とは、思っていない。よってBizDevを通して身につくノウハウも、印刷に限らず、あらゆるドメインのBtoBプラットフォーム事業に応用できる。

福島もちろん印刷事業を手がければ、結果的に使命感が湧き、印刷業界のことが大好きになります。だけど、特定の産業に所属している感覚はあまりない。BtoBの事業化集団づくりを目指しているので、他のカテゴリーにも応用が効く、非常に再現性の高いBizDev手法を取っています。木下なら、もし全く違う産業のBtoBプラットフォーム事業を手がけるとしても、他の人よりも圧倒的に早く成功に導けると思います。

BizDevのノウハウは「広告運用スキル」のような分かりやすいノウハウに落とし込むのは難しいですが、ナレッジを蓄積しているので同じ失敗が二度起きることはありません。1回目より2回目、2回目よりも3回目の方が手早く、確実に事業を立ち上げられるようになります。

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BizDevに必要なのは「圧倒的なオーナーシップ」と「変化を楽しむマインドセット」

成果を挙げるラクスルのBizDevに求められる素養とは、一体何か。

前提として、「ラクスルスタイル」と呼ばれる3つの価値観に共感し、実践していく必要があるという。事業解像度を高く持つ「Reality」、自分がいなくても成果が出るようにテクノロジーにレバレッジをかけていく「System」、そして互助連携して周囲のメンバーを巻き込んでいく「Cooperation」。事業家としてグロースを作っていくためには、この3つの視点が必要となる。

その上で、木下氏は「スタンスを取れること」の重要性を力説する。

木下BizDevは、事業ドメインに対して、誰よりも「こうしていくんだ」と強くスタンスを取らなければいけません。時には社内でコンフリクトが生じることもある。実際僕も、他の部署のメンバーのミッションの範囲ではないことであっても、事業成長のために欠かせない施策への協力をお願いすることもあります。その際、ブレずに自分が目指す方角へ向かっていけないと、事業は伸びません。

福島手段を選ばず、時には頭を下げてでも、自分のスタンスを突き通すことは大事ですよね。最近、新卒で入社してくれたメンバーも、良い意味で「生意気」で媚びないところが、ラクスルらしいと思ったので採用しました。就活生として多方面から情報をインプットされても、一歩引いて「自分のスタンス」を考え、自らの意思を持つことが重要です。

もちろん、ただ「頭を下げて」いれば良いわけではない。BizDevは決して「調整役」ではないからだ。社内のプロフェッショナルたちに「あの人が顧客や事業のことを一番分かっているから、サポートしよう」と思ってもらうために、強いリーダーシップを持ち、事業にコミットし続けなければいけない。並々ならぬ主体性、オーナーシップが求められる。

逆に言えば、事業へのリーダーシップを持ち、「ラクスルスタイル」に則って行動さえできれば、スキルセットはあまり重視されない。実際、現在のメンバーの出自も、新卒入社から大手通信企業出身者、スタートアップ出身者まで多様だ。

福島とにかく事業が好きで、四六時中「どうしたらもっと事業が伸ばせるか」を考えていられるような人が向いていると思います。BizDev人材で飲みに行くと、事業の話ばかりしていますしね(笑)。逆に、比べられる分かりやすいスキルを極めたいエキスパート志向の方は、BizDevには向かないかもしれません。

福島こうした価値観にフィットすると思ったら、スキルは問わないので、とにかく事業を伸ばしに来てほしいです。「有能な事業家をたくさん輩出する企業となる」ことを目指しているのがラクスル。機会提供と支援は目一杯します。事業グロースに100%コミットするオーナーシップは、自分で持ってきてください。

木下やれることは山積みになっています。その状況を楽しめる方は、こちらとしては大歓迎なので、ぜひ一緒に戦ってくれると嬉しいですね。

若くして成長したいのであれば、売上や人数といった規模の大きさではなく、成長率や成長額が高く、事業と共に成長できる環境を選ぶべきだと思います。

こちらの記事は2019年05月24日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

写真

藤田 慎一郎

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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