連載FastGrow Conference 2022

目には目を、グロースにはグロースを──。フェーズ経験者をアサインせよ!急成長するスタートアップ2社が語る成長の秘訣

登壇者
手塚 健介

楽天株式会社、富士フイルム株式会社にて、国内外における事業企画・事業開発業務等に従事。WealthParkではSaaS事業責任者及び人事管掌役員を務める。

福島 広造

1979年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、ITコンサルティング会社を経て、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。プリンシパルとして、トランスフォーメーション(企業変革)/テクノロジー・アドバンテッジ領域を担当。2015年7月、ラクスル株式会社へ入社。経営企画部長、SCM部長を経て、現在は取締役COOを務める。

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ビジネス環境や市場が目まぐるしく変化する中、一つの事業に固執せず、新しい事業を生み出し続けることが重要なのは周知の事実。しかし、既存事業と並行して新しい事業に挑戦し、さらには連続的に成長し続けることは、簡単ではないはずだ。

そんな考えのもと、FastGrowは2022年2月、FastGrow Conference2022を実施。『SaaSやプラットフォームを活かした、連続的な事業創造戦略』と題したセッションを開催。登壇したのは、複数の事業を持ちながらも、圧倒的な成果を出し続ける2社、WealthPark取締役CBO手塚 健介氏と、ラクスル取締役 COO福島 広造氏だ。

彼らは一体どのような観点で新規事業を生み出しているのだろうか、また、どのように新規事業を成長させているのだろうか。セッションではそんな疑問を両者にぶつけてみた。

  • TEXT BY HARUKA FUJIKAWA
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「歪み」を発見し、事業を創造し続けるWealthPark

手塚氏が所属するWealthParkは、急成長事業を生み出す会社だ。

2021年3月、同社の累計調達額は約44億円に。主軸である不動産管理会社向けに提供するDX支援ツール『WealthPark Business(以下、WealthPark ビジネス)』の利用社数は、約130社に到達した。

他にも、香港や台湾、シンガポールなどの海外投資家に向けた資産管理プラットフォーム『WealthPark Aseet Management(以下、WealthPark アセットマネジメント)』、2021年に発表した不動産小口商品のDXプラットフォーム『WealthPark Alternative(以下、WealthPark オルタナティブ)』と全部で3つの事業を展開する。

なぜ、WealthParkは新規事業を開発し続けられるのだろうか。

手塚事業開発の決断ができるのは、我々が「オルタナティブ資産への投資機会をすべての人へ届ける」というミッションに基づく意思決定を重視しているからです。デジタルプラットフォームを作り、誰しもが平等に投資機会を得て、オルタナティブ投資の民主化を実現する。これが私たちの目指す社会です。

ではミッションドリブンで開拓するなかで、どのように新規事業の種を見つけてきたのだろうか。手塚氏が続ける。

手塚私たちが目指す「誰しもが平等に投資機会を得る社会」の中のキーワードは「平等」。我々はその反対を「歪み」だと考えています。これまで歪みを見つけながら、顧客の痛みが生じるポイントを解像度高く把握して新規事業に参入してきました。

たとえば、『WealthPark アセットマネジメント』と『WealthPark ビジネス』のサービスは、隣接領域でありながらビジネスモデルとしては全く異なります。そのため、立ち上げ期に必要となるスキルセットも全く違うところがあったなと思います。

しかし、経験のない事業でもミッションに基づいて「こういう領域に踏み込んだ方がいいのではないか」と意思決定し、事業開発を行っています。

登壇時の手塚氏

約150名の役職員の半数が外国籍の同社。出身国も約10カ国にわたり、非常に多様性がある組織だ。

手塚私が入社した時から社員の半分が外国籍です。国際性豊かなDNAがあり、クロスボーダーでのビジネスも展開してきました。たとえば、『WealthParkアセットマネジメント』はアジアを中心に6か国・地域でサービス提供をおこない、日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)に対応しています。

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ラクスルの新規事業の見つけ方は、既存事業との「距離」

続いてマイクを握ったのは、ラクスルの福島氏。

同社はこれまで、印刷・広告のシェアリングプラットフォーム『ラクスル』から始まり、荷物を送りたい人とドライバー・運送会社をつなげる車両手配サービス、配車管理システムの『ハコベル』で物流事業に参入した。その後、テレビCMのサービス『ノバセル』を開始。2021年には4つ目の事業となる、コーポレートITの業務を自動化するサービス『ジョーシス』もスタートした。

連続的に事業を創造するラクスルは、どのように新規事業を立ち上げるのだろうか。

福島当社では短期の成長にとらわれずに本質的な価値を出すことを目的とした取り組みを推進していくためにプロジェクトという制度をつくっています。日常の業務と切り離し、大きな改革に対して一定の時間軸を許容し、優先的にリソースを割く体制を構築しています。

ラクスルは印刷と物流、広告、コーポレートITと主に4つの領域それぞれに事業開発チームが3つずつあり、全部で10〜15の事業開発が同時に動いている会社です。

ラクスルでは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をミッションとして掲げて、非効率であろうとチャレンジする覚悟でやってきました。そのため、印刷業界だけではなく、より多くの産業の仕組みを変えるため、新規事業を作り続けています。

また同社では「新規事業」は一つの括りにせず、3つに分けて考えるという。

福島既存にない全ての事業は新規事業。全てを「新規事業」と表現するには領域が広すぎます。だからこそ私は「事業拡張」「ビジネスモデルチェンジ」「産業領域拡張」の3つに分けて考えています。

登壇時の福島氏

続けて、福島氏は3つに分けている事実について、同社の事業を例に補足する。

福島例えば「事業拡張」は、印刷業界の中で名刺からチラシ、ノベルティなど商品を拡張するもの。「ビジネスモデルチェンジ」は、特定分野のマーケットプレイスからVertical SaaSにビジネスモデルを拡張すること。最後に「産業領域拡張」は印刷事業から物流事業へ業界をまたいで、事業を起こすものです。

私の肌感では、事業拡張の事業を始めるのが難しさ1だとすると、ビジネスモデルチェンジは10倍、産業領域の拡張が100倍ほど難しくなると思っています。なので、「産業領域の拡張」をすると決めたら、3〜5年を投資する覚悟で取り掛かります。

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「停滞しているかどうか」は事業撤退の分かれ道

両社の紹介が終わり、視聴者からは「新規事業を立ち上げる際はどれくらいのアイデアを検討するのか?」という疑問が投げかけられた。

手塚弊社では30個アイデアを出して、その中から3つに絞り、「この中でどれをやりましょう」というアプローチはしません。

新規事業を立ち上げる際は、誰かが立候補し、そこからプロジェクトが走り出します。中心となってコミットする人や、アントレプレナーシップを持っている人がいないと事業が立ち上がらないと考えています。

ラクスルは常に10〜15と多くの事業開発を走らせる。どんな事業でも、成功するまで挑戦し続けるかというと「そうではない」という。これまで約半分の事業開発は撤退してきたそうだ。

福島不確実の高い世界に飛び込んでいるので、将来どうなるのか分からないものを、無理矢理「どこまでいかなかったらやめる」など定義するのは、それが分からないから探索していることと矛盾があります。一方で撤退したことがないのかといえば、そうではないです。

事業開発をストップさせるのは、上手くいっていないからではなく、「停滞」を感じる時です。例えば、担当者の仮説やチャレンジが進化していなければ、それは撤退すべきとなります。

逆に失敗しても、仮説の進化が早いものやPDCAが回っているものについては、フェーズごとに金額を決めて投資し続けることを目指します。

さらに事業を伸ばすためには、「いくら投資すべきか」を考える前に、「投資ポイントを見つけることが重要だ」と語る。

福島産業によって投資ポイントが違うので、何に投資すればこの事業が伸びるのかが分からない時があります。例えば、広告、設備投資、マーケティング、など、事業を伸ばすための要素はいくつもありますが、何が最も事業成長にインパクトを与えるのかを見極めるということです。ただ、これは実際に投資して効果測定しなければ分かりません。だから私たちは、投資ポイントを見つけるための投資を実施しています。

振り切って投資してみないと間違っているのかも分からない。勇気をもってチャレンジして、投資ポイントがどこにあるのかを見極めることは大事です。

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事業成長のために、フェーズに沿ったアサインをせよ

両社が各新規事業の「立ち上げ方」や「推進し続ける事業」について語り合った。ここから話題は事業を「成長させ続ける方法」に発展させ、見解が述べられた。 

福島新規事業の中には「探索」「グロース」「収益」と3つのフェーズがあると考えています。そのフェーズによって誰を配置するのかが重要です。

例えば、ダンボール・梱包資材の製造販売を行うダンボールワンにグループに加入頂いた際は売上50億〜100億円を目指すタイミングで、ラクスル本体から100億~150億円への成長達成を経験した経営チーム8人が参画しました。売グロースのフェーズを経験したチームが次のフェーズを見据えて経営できている状態です。

同じフェーズの経験がある人は、領域の異なる事業にアサインされてもかなり再現性が高い。またフェーズによって使うケイパビリティは違います。0→1が得意な人にグロースができるとは限らないですからね。

個々人の成長機会も踏まえ、フェーズに合ったアサインを決め、フェーズが変わればローテーションする。事業フェーズに応じたアサインをしていくことが、ポートフォリオ経営の醍醐味であり、事業成長につながるのではないでしょうか。

また、手塚氏も新規事業における大事な素質について述べる。

手塚「新規事業のKey success factorは人とチーム」という考え方に基づいて運営を行っています。新しいものを立ち上げることは基本的に非合理です。そのなかでロジックの通った綺麗な説明よりも、直感や自信、確信を大事にしています。

特に柔軟性やタフさは必要です。日々変化する環境に対して、上手く適応するスキルが必須になってくると思います。

ポイントは「誰」が新規事業を行うのか。同時に、誰と一緒に事業を行うのかも大事なポイント。最後に手塚氏は「チーミング(team-ing、チームづくり)」について触れる。

手塚チーミングについては人事と共同して進めておりますが、もちろん組み合わせたときに期待したようにならないこともあります。そういった土壌づくりには苦労しつつ、取り組んでいます。

世の中には能力の種類や専門性、短距離型や中長期型、攻め側と守り型など、さまざまなタイプがいて、それぞれが違う強みを持っています。単一の価値観ではなくて、いかに違う強みを持っている人を集められるのか。新規事業を行うにあたって、相手をリスペクトしあえる環境づくりはポイントのひとつになるでしょう。

いかがだっただろうか。これまでも、そしてこれからもきっと連続的な成長を生み出し続ける2社。ぜひ彼らの経験や戦略から、成長し続ける事業作りのヒントを見つけてほしい。

こちらの記事は2022年04月18日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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1998年生まれ、広島県出身。早稲田大学文化構想学部在学中。HRのスタートアップで働きながら、inquireに所属している。興味分野は甘いものと雑誌と旅行。

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