最高の仲間が集結する震源地で、さらなる高みへ──Bet AIを掲げるLayerXに参画した元ラクスル福島氏の覚悟

インタビュイー
福島 広造

ITコンサル会社を経て、ボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。DX領域を担当。2015年、ラクスル株式会社へ入社。全社の取締役COO及びRAKSUL事業CEOを務める。2023年からは、BCGのマネージングディレクター&パートナーとして、AI領域を担当。2025年10月1日付けで株式会社LayerXに参画

石黒 卓弥

NTTドコモに新卒入社後、マーケティングのほか、営業・採用育成・人事制度を担当。また事業会社の立ち上げや新規事業開発なども手掛ける。2015年1月、60名のメルカリに入社し人事部門の立上げ、5年で1800名規模までの組織拡大を牽引。採用広報や国内外の採用をメインとし、人材育成・組織開発・アナリティクスなど幅広い人事機能を歴任。2020年5月LayerXに参画。

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これまでFastGrowに何度も登場してくれた元ラクスルCOOの福島広造氏。2025年10月、LayerXのCOOへの就任が発表された。

そのきっかけは、同社代表福島良典氏との間での「LayerXの倒し方」の議論だったという。一体どういうことだろうか?

2030年にARR1,000億円を達成する──と打ち上げられた、同社の壮大な目標。その実現に向け重要な役職に就くこととなった福島広造氏。CxO人材の採用をさらに加速させ、組織のポテンシャルを解放しながら、北極星へとチームを導いていく。その決断の過程と、これからの挑戦内容について、同社CHRO石黒卓弥氏と共に語ってもらった。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「LayerXの倒し方、やってくれませんか?」──“無邪気”な一言から決まった挑戦

何年も前からご存知だったLayerXに、なぜこのタイミングで転職を具体的に考えるようになったのでしょうか?

福島広造(以下、広造)fukkyyさん(LayerX代表取締役CEO 福島良典氏)との定期的に実施していた壁打ちの場でのことです。「広造さんならどうやってLayerXを倒しますか?」という問いをもらい、熱く語ったら、「それ、LayerXでやってください」と言われたんです。それで、有言実行することになりました。

その後、石黒さんも含めてお食事に行って、その場でもうLayerXへの参画を決めたという感じです。

事業家としては、自分で思考して、語った戦略を、「やってみて」と言われて、そこで「やりません」と断る選択肢はなかったです。

その決断の背景には、昨今の生成AIの波も影響しているのでしょうか?

広造そうですね。2023年に生成AIが本格的にエージェント化してくるというタイミングで、この大きな変化の「震源地」に身を置きたいと強く感じるようにもなっていました。

「震源地」として、なぜLayerXだったのでしょうか?

広造経営陣の強みはもちろん、テックとプロダクト開発チームに日本中からCTOやCPOクラスの人材が集結していることに、AIの震源地になる確信を持ちました。BetAIへの熱量や、テック人材のブラックホールと称される集結度合いは、圧倒的だと思います。

LayerXで楽しみにしているのはどのようなことですか?

広造良いプロダクトがあって、それをさらにAIも含めたテクノロジードリブンで成長・拡大させ、日本を変えていくという、スタートアップのど真ん中、原点みたいなことを実現していけるんだというのが一番楽しみですね。

私がスタートアップに興味を持ち始めたのは高校時代で、AppleやMicrosoftが出てきてテクノロジーで世界を変えるという動きが目立つようになったタイミングだったんです。

特に、ビル・ゲイツの『The Road Ahead』という本を読んで、テクノロジーで世の中を変えていくことにモチベーションを強く感じるようになりました。

今、この原点に戻って、AIの変革に向き合えることに、本当にワクワクしています。

石黒さん、広造さんがジョインされて、すでに嬉しかったり刺激を受けたりしたことがあればお聞きできますか?

石黒卓弥(以下、石黒)難しい課題を解決するための挑戦に対して、チームが自然と向き合っていけるようなコミュニケーションが、非常に上手だなと感じます。みんなが頑張れる場所をうまく創ってくれるんです。

ベンチャー企業におけるわかりやすいリーダーシップの形として、「○○を大事にやっていくぞ!」と勢いで引っ張るコミュニケーション手法が一般的ですよね。広造さんはそうではなく、もっと自然にメンバーの方向を変えていくんです。

広造それは、LayerXのオンボーディングに「お手並み拝見」の雰囲気がなく、Trust Firstで迎え入れてくれて、Day1からワークできるよう環境を用意してくれたおかげです。Trustful Teamの行動規範が体現できているLayerXのすごさだと感じています。

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40代でたどり着いた「自己分析」からのマッチ

他のスタートアップへの転職や、起業などは比較検討されなかったのでしょうか?

広造他は一切考えていませんでしたね。

今回の転職では、進路を考える娘に、初めて「自分にシンデレラフィットする仕事が見つかった」と伝えました。そう心から思えているんです。

大学生が就職活動の時に、自己分析とかやるじゃないですか?キャリア観と仕事のマッチングをどう考えるか、みたいな。あれが今、完全にフィットしたと感じるんです。就活をやっていた頃からもう20年も経つ話ですが(笑)。

自分のやってきたこと全てが、LayerXという場で大きな挑戦をするためにあったんだなと思える、Connect the Dotsを体感しています。だから、比較検討は必要なく、LayerXしかないと考えたんです。

ジョインにあたっての懸念点や悩みはありませんでしたか?

広造一つだけ、最後に改めて考えたのは、「今のLayerXに入って、本当に自分は価値を出せるのだろうか」ということですね。

「2030年にARR1,000億円」という壮大な目標に向けた非連続な成長を目指し、プロダクトの数も質も、一つひとつの成長のスピードも、さらに大きなチャレンジが必要です。「自分が参画して、加速できるか?素晴らしいチームの成長機会に蓋をしないだろうか……」といった懸念はありましたね。ただ、大きな野望の達成には、成長する時に生まれる三遊間を埋めるCOO的な役割や非連続な取り組みの旗振りをする存在も必要と思え、ダメならクビにしてもらおうと覚悟を決めました。

石黒ご本人はこう謙遜しますけど、広造さんほどの適任者は、現存する経営者・事業家の皆様の中でほかにはいません。fukkyyとも、よくそう話していました(笑)。

だから、私たちはずっと「来ていただけないだろうか」と考えてきましたし、その流れでお誘いしたら「やってみましょう」と言っていただけたので、ぜひとお願いさせていただいたんです。

取締役の手嶋もX(旧Twitter)でポストしていましたが、LayerXはCOOというポジションが創業から7年間ずっと空いていました。そこに広造さんが来ていただけることになった。BtoBで複数事業を展開するLayerXとしては、ラクスルさんでのポートフォリオ経営やBizDevの経験がある点で、間違いなくベストといえるCOOです。

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オファーレターはほぼ見ず、即決

石黒さん、オファーの内容には気を使ったのでは?

石黒はい、金額やポジションなど、かなり細かく考えました。でも、広造さんにオファーレターを手渡したら、中身はほぼ見ずに「はい、行きます」と言われました(笑)。

広造もう、朝に家を出るときに、LayerXにいくと妻に報告して、家を出たので(笑)。

石黒本当にその場ですぐに返事がありました。私も仕事柄、これまでに数百人レベルでオファーレターをお渡ししてきましたけど、たいていの場合、さすがに一度持ち帰られます。やや緊張していたこちらとしては「マジか」となりました(笑)。

広造まあそもそも入社することは完全に心に決めていたので、オファー内容でどうこう変わることはなかったですね。LayerXにいま参画できることが、他に代えがたいキャリアへの報酬という感覚でした。

ちなみに、内容についてはその後、しっかり読み込まれたんですよね?

広造はい、オファーに関して言うと2点、非常に印象に残っていることがあります。

一つは、オファーレターに「期待値」として書かれていた中に、「非連続な高みを目指していくときの“剛”」という言葉がありました。普通、戦略コンサルからの転職の場合“叡智”とかなんでしょうが(笑)。この一文字で自分がやってきたことを基盤に、LayerXにおいて貢献する形がイメージできて、気が引き締まりました。

もう一つは、CTOの松本さんから「テクノロジー、事業、組織、資本全てを揃えて、社会に今までにない価値を届けたい」と書いてあり、このすべての要素で、自分がこれまでのキャリアで得てきた経験や学びをすべて、LayerXに注ぎ込んで、さらにアップデートしていかなければならないとも感じました。

石黒あと、「できなかったらいつでもクビにしてくれていい。邪魔になるようだったら、遠慮なくクビにしてほしい」とその場で言われました。ポーズみたいにこういうことをおっしゃる方もいますが、そういうトーンではなく、本当に「クビにしてくださいね」というトーンでした。非常に強い覚悟を感じ、「絶対に一緒にLayerXを非連続成長させていこう」という想いは一層強くなりました。

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「メーターは時速260キロまである」──LayerXのポテンシャル解放への自信

全社のCOOとバクラク事業CEOの兼務には、どのような意図があるのでしょうか?

広造事業の垣根を気にすることなく動けるように、と理解しています。

まず全社のCOOとしては、北極星としての高い目標(たとえば2030年にARR1,000億円)のために、ビジネスモデルも事業領域も、ポートフォリオを大きく広げていくという挑戦で、非連続的な成長を実現するということになります。ラクスルでもやってきたような、BizDev(事業開発)やM&Aの経験は活かしていきたい。

ただし、事業の創り方・広げ方は、共同代表の二人が見据えるビジョンを叶えるLayerXらしい形をゼロから新しく考えていかなければならないと思っています。

石黒全社を見ていただきたいということでCOOというポジションになっています。その中で、COOのOはOther(その他)のOとも言われるわけですが、Day0から営業も採用もリファラルの獲得に動き、背中で貢献を示してくれています。

広造LayerXには、非常にポテンシャルが高いプロダクトと仲間がいます。そのポテンシャルをいかにアンロック(解放)していくか、という挑戦をバクラク事業CEOとして担いたい。

これら全てを担って価値を出すために、どこにでも顔や手を出して動けるポジションにいる必要があり、この兼務になったという形かなと。

その「アンロック」とは、具体的にどういうことでしょう?

広造自分たちの本当の限界(=最高速度)に“気付く”ことだと思います。

ドイツに、速度無制限のアウトバーンという高速道路があります。そこを走る経験をして初めて、「車のメーターって、時速260キロまであったのか。自分の車は200キロ以上も出せる。限界までアクセルを踏み込んでみよう」と思えるんですよね。

日本の制限速度100キロで、道路状況をみながら走ることに慣れると、無意識に限界を決めてしまうんです。

LayerXが目指す成長は「Shooting Star(流星)」と呼ばれるグローバルの急成長スタートアップに求められる水準です。

だから自分たちのポテンシャルをアンロックしてほしくて、「もっとスピード出せますよ!メーターは時速260キロまでありますよ!」と伝え続け、限界速度まで成長を加速させたいと考えています。

貢献を早くできるよう、Day1からフィットするために、意識されたことはありますか?

広造まずは「新しい文化に浸って、やってみる」というのは意識しました。

LayerXの「賞賛し合うカルチャー」は、私はこれまであまり経験のない文化でした。それでも、アンラーニングして、とにかくやってみる。やってみると、賞賛し合うことで、向かうべき方向にさらにドライブがかかっていくという新しい成長の型を得ることができました。

自分のマネジメントスタイルも変えていく、新たなひとつのきっかけになっています。

そもそも、私が積み上げてきた経験や知見は、会社のカルチャーや組織との接続ができた後で発揮できるものです。なので、まずはフィットすることを、第一に考えています。

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ポラリス──「2030年にARR1,000億円」に、誰よりもコミットする

広造さんがCOOになって、「これで経営陣が完成、盤石だ」と見る人もいそうですが、お二人はどのように考えていますか?

石黒もちろん、まだまだ未完成です。経営陣というのは、当然変わり続けるわけです。個人もチームも、アップデートし続ける必要があります。その文脈で、広造さんが入社して最初の1on1で「CxOをあと数倍採用・抜擢していこう」と話していたところです。

広造私の入社前から、LayerXの経営チームは最高の経営チームだと思います。その一方で、「どの高みを目指しているのか」ということを基準に考えれば、最高を超えていくリーダーシップが必要です。

私が入ることで、完成とは真逆で、更なる高みを目指していることが伝わり、これからより多くのCXOやリーダーシップがLayerXに集結して、リーダーシップチームも、事業も、組織も、すべてが飛躍的にアップグレードされていくんだというメッセージが伝わるといいなと思います。

最後に、広造さんはいつまでLayerXで挑戦を続けるのか、考えていることがあれば教えてください。

広造次の10年を賭けたいと思っていますが、何を背負うかは明確にしています。

経営ポジションであるからには、時間軸や範囲として、自分がファウンダーやCEOよりも、オーナーシップを持つことを決めるべきです。今の私で言えば、「2030年に、ARR1,000億円を達成」というポラリス(北極星、大きな目標)を実現していくという一点においては、LayerXの中で誰よりもコミットして、考え抜いて、やり切る存在であろうと思っています。

なので、この「2030年」まで、というのが、今は区切りになります。その先に、次の山や価値貢献があるかは、山頂で観える景色を眺めて考えます。

こちらの記事は2025年11月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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