ラクスル流PMI「Buy&Build」──新卒から執行役員へ就任した木下氏が語る、PMIで得た経営経験とは

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木下 治紀

東京工業大学大学院 電子物理工学専攻 卒業。LSIの高速化・省電力化の研究に従事。2016年にラクスルに新卒1期生として入社。現在は事業開発責任者として主幹事業領域の更なる成長に注力。以前は集客支援事業部にて商品開発・サプライチェーン開拓、オペレーションの業務効率化を担当。

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2009年創業以来、事業家・経営(CxO)人材を数多く輩出してきたラクスル。その経営人材の多くが、同社で「BizDev」を担ってきたと知る読者も多いはず。

今回取材した木下 治紀氏もそのうちの一人だ。同氏は2016年にラクスル新卒入社第一号メンバーとしてジョインし、この度2023年8月、ラクスル新代表・永見 世央氏の就任と共に、執行役員を担う存在となった。

同氏はここに至るまで、入社4年目で印刷事業本部ダイレクトマーケティング事業部長を務め、約20億円(年率成長160%程)の売上を創出。続く5年目には、子会社ダンボールワンにCOOとして参画し、2年間で売上を約50億円から約75億円にまで成長させる。そして7年目の現在、ラクスル事業本部の執行役員就任と、短期間で事業家・経営者としてのキャリアを駆け上がってきた。

読者の中には、彼のような「若手BizDev→CxO」キャリアに魅力を感じる学生〜若手ビジネスパーソンも多くいるのではないだろうか?

そんな諸君たちに朗報がある。先の新代表・永見氏の取材で語られたばかりではあるが、結論、木下氏のようなキャリアを歩む機会が今後のラクスルで「倍増」していくことが明らかとなった。

事業家・経営者キャリアを望む者であれば、このチャンスをみすみす逃す手はない。本記事では、2021年、ダンボールワンの経営に参画した木下氏のその後の挑戦を振り返りながら、学生や若手ビジネスパーソンがラクスルでこそ得られる事業家・経営者キャリアについて紐解いていく。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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ハードシングスから幕を開けたダンボールワンのPMI

木下本来でしたら、私はラクスルからダンボールワンに出向して、最初の3ヶ月でクビになっていてもおかしくなかったと思います。

2021年から2年半、ラクスルからダンボールワンにCOOとして出向し、事業を「Build」(事業や組織を仕組み化し、非連続な成長を目指す)していく過程で、一体何があったのだろうか──。

もともとダンボールワンとは、石川県金沢市に本社を構える梱包材プラットフォーム企業であり、当事業にポテンシャルを見出した事業家の辻 俊宏氏が2017年にMBOを実施。その後も同氏の手腕によって事業は伸び続け、業界トップクラスのシェアを獲得するまでに至った。

しかし、2020年にはコロナ禍の巣篭もり需要とマーケティングへの戦略的フォーカスが相まって、組織のケイパビリティを大きく上回る膨大な数の受注をし、オペレーションが瓦解し始める。

一方のラクスルは、当時から「既存事業の拡大だけでなく、新しい成長領域への拡張」にも目を向けており、オフィス / 産業資材向けの印刷といった観点で、以前より注目していたダンボールワンに出資のオファーを申し出る。

当時のエピソードはこちらの福島氏(当時ラクスルCOO / SVP of Raksul)と辻氏の対談に詳しいが、なんと出資にまつわる合意はたった5分で決まったとのこと。結果、2020年12月に両社は資本業務提携を結ぶ。そしてそこから約1ヶ月後、いよいよ木下氏がダンボールワンの経営に着手する時が来る。

木下提携前からダンボールワン側にいた方々からすると、ラクスルから出向してきた私たちは『ハゲタカ』(企業買収を扱ったドラマ)のように見えていたでしょうね…(笑)。ですので、当初は日常のコミュニケーションにおいても苦労がありました。

そして私はと言うと、それまでラクスルで学んできた事業経験を活かし、取締役会や人事制度の導入、目標設定、事業KPIの管理手法などを取り入れ、ダンボールワンの経営体制を整えていきました。そして、冒頭の発言にも紐づくことですが、辻と共にとりわけ注力していったのが、マーケティングです。

もともとダンボールワンは、辻のマーケティング手腕によって大きく成長してきた企業でして、ラクスルと一緒になったことで、テレビCMや既存のマーケティング施策に更なる成長投資を行うことが可能となりました。

ラクスルにグループインすることで得られる事業成長(提供:ラクスル)

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在籍2年半で「経営手法の導入」「組織構築」「事業変革」を実施

木下氏をはじめとするダンボールワンに出向した経営チームは、当初、マーケティングの次の事業をグロースさせる上で核となるポイントを見出せず、「出向して半年〜1年ほどは先行きが見通せず、つらい時期だった」と述懐する。そこから木下氏らは、どのようにダンボールワンの事業をグロースさせていったのだろうか。

木下大きく3つあります。1つめは「経営の統合化」です。当時ダンボールワンは急成長を遂げていましたが、辻がほぼ一人で事業も組織も管掌していた状況で、次の事業フェーズに必要な経営チームの組成、経営手法の導入の必要がありました。

まずはここにメスを入れようと、ラクスルの印刷事業を100億円規模の売上高までグロースさせた実績を持つ渡邊らと共に、経営統合における陣頭指揮を取っていきました。

そして2つめは、「組織融和と新規採用を通した組織構築」です。ダンボールワンとラクスルはもともと近い文化を持っていたと思いますが、組織としては異なる存在ですので、ビジョン、ミッション、バリューなどのハード面、人間関係含めたソフト面を合わせ1つのチームになることを目指しました。まずは人事責任者として参画した前田がリードし、組織の再構築から次の成長戦略に必要な新規採用を進めていきました。事業、プロダクト、エンジニアから業界専門家まで様々なメンバーに参画して貰うことができ、非常に強い組織をつくることができたと思っています。

そして3つめは、「事業変革」です。初期はマーケティングによる事業成長をつくっていきましたが、そこから更なる成長を目指していくには事業の進化が必要でした。もともとはダンボール専業のECだったところから、商品開発、プロダクト開発を通して市場、顧客の拡張に挑戦していきました。その結果、2020年の出向時は約50億円の売上高だったダンボールワンの事業を、2023年には約75億円にまで成長させることができました。

約2年半にわたるダンボールワンでの経営経験。自社の内製事業ならいざ知らず、M&Aしたばかりでカルチャーも何も共有し合えていない環境下で、手探りで事業をグロースさせていく。もちろんそこにはラクスルから共に出向した強力なメンバーたちもいたのだが、COOという役割や、ラクスル経営陣からの大きな期待を背負っての挑戦は相当なプレッシャーだったに違いない。

ベンチャー / スタートアップ界隈で用いられる「カオス」とは、まさに木下氏が味わったような経験を指すのだろう。

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「Build」はまだまだ道半ば。
更なる成長に向けてより強力な事業家へバトンを渡していく

2021年、ダンボールワンへの出向が決まった木下氏を取材した当時、彼は「新たなスキルを得るよりも、『ダンボールワンをどれだけ成長させることができたか』というトラックレコード(実績)をつくりたい」「生み出した事業価値に対して報酬が得られるようなプロ経営者を目指したい」と語っていたことが印象的だった。

その答え合わせをすべく、「今、ダンボールワンでの実績を振り返ると、自身に何点を付けるか?」と問うと、木下氏は少しの間を置いた後、「自己採点で30点ぐらいでしょうか…」と予想よりも厳しい答えを返す。

木下ラクスルとの経営統合や、持続的な事業変革に取り組む土台づくりには貢献できたかと思っています。しかし、この2年半の期間でダンボールワンの事業を非連続成長させることができたかというと、やり遂げられなかった、というのが個人としての反省です。

新代表の永見が「ラクスルのM&Aは『Buy&Build』である」とお伝えしているように、ダンボールワンのような、M&Aによって得た新たな事業を伸ばす際には、以下のようなステップがあると考えています。(ここで言う「Build」とは、一般的にPMIやバリューアップと呼ばれるものに加え、ラクスル流の「非連続成長の仕組み」を実装することを指す)

■ラクスルが掲げるM&A戦略『Buy&Build』の「Build」とは

  1. 異なる企業カルチャーや業務プロセスの統合
  2. 業務プロセスの合理化や非効率の改善(コストカット)
  3. アップサイド(収益増加)の創出

*一般的に、これらのプロセスは段階が進むにつれて実行難度が高まる

木下出向当初、私はダンボールワンに在籍している間に、「この事業を非連続成長させよう。売上高100億円まで伸ばそう」と考え、2年目には「Build」の3つめにあたる「アップサイド(収益増加)の創出」にまでトライしました。

しかし、2年半という期間でラクスルが目指す持続的な「年率30%成長」を実現するまでには至らず、その点は伸び代があったなと思っています。このアップサイドの創出に関しては、2023年8月から前川というダンボールワン統括Directorが担っており、事業家という観点では私よりも力や経験のある優秀な方に引っ張っていただいており、非常に頼もしく思っています。

個人としては反省が残る結果だったと謙遜するものの、2年半の間で新たにM&Aした企業を経営統合し、業務プロセスを改善。さらにアップサイドの創出までを完遂し切るのは並大抵のことではないだろう。

当然、その中で事業家・経営者として大きな学びや成長があったに違いない。その点について問うと、木下氏は「事業・経営というものが立体的に見えるようになった」と応える。

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「経営というものが立体的に見えてきた」。
これぞ早期に経営経験を積むメリット

木下経営のオーナーシップを持つことで、事業や組織、ファイナンス面を含めて、何がどのように繫がっているのかが立体的に見えるようになりました。

もちろん、これらがどのように紐づいて会社経営が成り立っているのかは、本を読めばわかることではあります。しかし、ダンボールワンではその概念をリアルに体感することができたんです。

木下また、幅だけではなく、経営の“時間軸”をより長く持つことの重要性を強く感じています。なぜなら、時間軸の設定で経営としての最適解が変わるからです。

例えば、ダンボールワンでの任務は2年半でしたが、これを例えば2倍の5年間で事業インパクトを最大化させようとすると、これまでの時間軸では最適解として上がらない「若手の育成」や「技術負債の解消」といった選択肢が挙がってきます。逆に1年であれば基本的には短期的なPLの話に終始することとなり、腰を据えた価値創造やチャレンジなどは発想できません。

考え方はビジネスドメインや人により様々だと思いますが、私自身はより長期の時間軸を持って経営できるようにすることで、世の中へのインパクトを最大化できると考えるようになりました。

経営において持てる時間軸とドライバーの幅が経営者としての奥行きを決めていくと思っているので、事業成果にコミットする過程で継続的に能力拡張にチャレンジしていきたいと思っています。

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印刷事業を300億円から1,000億円事業へ。
木下氏の次なる挑戦

こうしてダンボールワンでの経営統合、組織構築、事業成長といった実績が指名・報酬委員会*で高く評価され、入社8年目の2023年8月、ラクスル事業本部の執行役員に就任することとなった。現在は同本部にて、印刷・集客支援事業およびエンタープライズ事業を管掌する。

*企業のガバナンス体制を強化し、独立性を担保するために設置される組織。社外取締役が中心となって構成される。

木下ラクスル事業本部は「印刷・集客支援事業」「ノベルティ事業・アパレルユニフォーム事業」「ダンボールワン事業」の3つの事業部に分かれており、それぞれ事業の規模やフェーズが異なります。

私はラクスルの祖業である売上高300億円規模の「印刷・集客支援事業」を管掌しており、毎年100億円以上の成長を実現しながら1,000億円のステージにのせていくために、どのような事業体となっていくべきかを考え実現していくことをミッションとしています。

ノベルティ事業・アパレルユニフォーム事業」に関しては、現在は1→10の事業フェーズで、提供する商品の価格や品揃え・納期といった「基本価値」の向上・差別化に力を入れながら、売上高100億円規模を目指しマーケットの拡大に努めています。

そして「ダンボールワン事業」は、売上高100億円が視野に入ってきているため、次の目標である300億円を目指し10→100のフェーズに取り組んでいる最中です。

ラクスル事業本部とは主にこの3つの事業体から成っており、これら全体の事業を統括しているのが、上級執行役員 SVP of Raksulの渡邊 建氏という構図になっている。

もちろん、事業家が求められているのは上記の3事業だけではなく、ペライチやネットスクウェア、AmidAホールディングスなどのグループ会社・子会社においても同じで、その機会は多岐にわたる。

そんな事業家組織で新卒から揉まれてきた木下氏にとって、事業家というキャリアを歩む魅力とは何なのか。その心中を探ってみる。

木下事業家とは、対峙する領域の課題に対して高い解像度と当事者意識を持ち、事業の成長自体に責任を負う存在だと捉えています。そしてこの事業家としてのキャリアには、「面白さ」と「怖さ」といった魅力が共存していると思っています。

例えば、戦略がうまくハマれば社会に対して大きなインパクトを生み出すことができ、事業成長を通じて自分だけでなく関わるメンバーに対しても大きなキャリアアップの機会を提供することができます。

反対に、この戦略が的外れなものであった際は、事業は一切伸びません。時には何億円もの損失を出してしまうリスクすらある。つまり、事業家とはその一挙手一投足が社会やステークホルダーにもたらす影響が大きいということですね。

私自身はこうした「怖さ」も理解しつつ、それを上回るほどの「面白さ」「楽しさ」を事業家キャリアに見出すことが出来ているので、刺激的な日々を送ることができています。中でもラクスルには、上場企業という盤石な資本力や、既存事業で培ってきた事業ノウハウ、また、松本、永見、福島、渡邊を始めとする多くのプロ経営者の存在があり、事業家として成功しやすい環境があると思っています。

ラクスルでは、木下氏をはじめ、BizDevから経営人材となって活躍しているタレントが多く、彼のようなキャリアを目指してラクスルに入社する若手も後を絶たない。現に、直近では大手総合商社出身やスタートアップCxO経験者などが続々と参画を決めているとのこと。

しかし、側から見るとラクスルには既に多くの優秀なメンバーが要職についており、これから新たに参画したとしても彼らのような事業家キャリアを歩む余地が残されているのかといった疑問が残る。果たして、今のラクスルにその機会はあるのか──。

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“連続的なM&A”により、木下氏と同等のキャリアを「より早く、より多く」積めるのがこれからのラクスル

木下外からはよく「ラクスルは仕上がった組織だ」「タレント揃いでポジションがなさそう」と見られるのですが、全くもってそんなことはありませんよ(笑)。むしろ、今の2倍〜3倍の人数は欲しいと思っています。

その根拠を説明しますね。まずラクスルは2023年8月に、代表のポジションを松本からCFOの永見へと移し、新たなステージへと移行しました。

提供:ラクスル株式会社

木下具体的には、次の10年に向けて事業ポートフォリオを多角化し、事業規模の拡大を狙っていきます。そのためには、内製の新規事業創出だけでなく、M&Aによる事業拡大を今まで以上に積極的に行っていく予定です。だからこそ、ファンド出身の永見にバトンが渡されたという格好ですね。

そしてこの戦略が意味するところとしては、私がダンボールワンのCOOとして出向し、経営を担ってきたように、連続的なM&Aによって生み出された経営の機会が今まで以上に増えていくということです。

こうした事業フェーズの変化によって、ラクスルという一つの集合体の中で多様な規模、領域の事業が加速度的に生まれていき、その経営を担う次代の人材が求められていくのだ。

ここまで読めばもはや説明不要かと思うが、最後に木下氏から、これからのラクスルで事業家キャリアを歩む醍醐味や、そこで得られる刺激について、メッセージをもらった。

木下福島が「マーケット・シェイパー」と名付けているんですが、これからのラクスルはこのマーケット・シェイパーとして、競合他社に追随するフォロワーから、市場のナンバーワンリーダーとなり、いよいよ産業のあり方自体を変えていくフェーズにあると認識しています。

木下言い換えるならば、今後10年で時価総額1兆円規模のプラットフォームを目指すフェーズにあるということです。日本では、時価総額1,000億円規模までは成長するスタートアップこそあれど、その後、伸び悩むケースが珍しくありません。

国内のスタートアップは時価総額1兆円企業への道がほとんど開かれていない中、ラクスルはその切符を手にしている数少ない企業の1つです。そして、そのドライバーとなるのが祖業である印刷事業のグロースと、事業ポートフォリオの多角化になります。

私が入社した当時のラクスルよりも、これからのラクスルの方が事業部長やCxOのポジションが多く用意されていきますし、その増加率も加速していきます。つまり、ラクスル史上、最短最速で事業家・経営者キャリアを歩めるフェーズに入ったと言っても過言ではないでしょう。

是非、学生や若手でプロの事業家・経営者を目指す人の挑戦をお待ちしています。

こちらの記事は2023年12月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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