M&Aは、「小さく・コンスタントに」が企業価値を高める──ラクスル新代表・永見氏が掲げる“プログラマティックM&A”構想で、経営人材が加速度的に増えるワケ

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永見 世央

2004年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、みずほ証券株式会社でM&Aアドバイザリー業務に従事。2006年から2013年まで米カーライル・グループに所属し、バイアウト投資と投資先の経営及び事業運営に関与。その後株式会社ディー・エヌ・エーを経て2014年4月にラクスル株式会社に参画し、同年10月に取締役CFO就任。2023年8月、代表取締役社長CEOに就任。

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事業家輩出企業として知られるラクスルは、創業から10年を迎えた2023年の7月下旬、社長交代をリリースした。創業者の松本恭攝氏から代表を引き継いだのは、PEファンドのカーライル、ディー・エヌ・エー(DeNA)を経て2014年にラクスルへCFOとしてジョインした永見世央氏だ。

その永見氏は、事業家・経営者を志望する人たちに向けて「経営の打席に、早く多く立つべき」と語る。それは、社長交代の背景となったラクスルの企業フェーズの変化と無関係ではない。

社長交代のニュースを受け、「ラクスルは成長が鈍化するのでは」「スタートアップとしてこれまでのような勢いがなくなるのではないか」という印象を持った人もいるかもしれない。しかし、真相はむしろその「逆」だ。これからのラクスルでは、内製の事業立ち上げと連続的なプログラマティックM&Aによって多数の新たな事業機会が生まれるのだという。それら事業のビジネスデベロップメントを、学生や20代の次世代を担う若手に対しても、これからジョインしてくる経験豊富な30~40代にも思い切って任せたい、多様な経営人材を育てたい、そんな思いが永見氏に「経営の打席に、早く多く立つべき」と叫ばせている。

これまでも多くの事業家を輩出してきたラクスルがどのようにして人を育ててきたのか、企業として今後どのような戦略を描き、そこにジョインすることでどのような挑戦の機会を得られるのか、永見氏に聞いた。

  • TEXT BY YASUHIRO HATABE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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「経営の打席に早く多く立つべき」──実地での経験こそが経営人材への近道

一口に「経営」と言っても、人によってさまざまな解釈があるだろう。ラクスルの新代表、永見氏が「経営の打席」と言うときの「経営」とは何を指しているのだろうか。

永見僕が言う「経営」は、ヒト・モノ・カネのすべてを見ながら短期的には数字をつくり、一方で長期的なビジョン・方向性を掲げて最終的には事業を大きくしていくことです。

経営をしていると、今言った「短期と長期」だけでなく「成長と利益」「事業と人」「BizとTech」のようにいろいろなコンフリクトに直面するわけですが、それらをすべて内包して昇華しながら、次のフェーズに会社を持っていくことが、僕の考える「経営」です。

永見氏は「経営は今すぐやることが大事」だと言う。読者の中には、ビジネススクールに行って知識を身につけてから、あるいは戦略コンサルや投資銀行で数年いろいろな産業や企業を見渡してから、と考えている人も少なくないのではないだろうか。しかし、いずれ起業や経営を担うキャリアを望んでいるなら、その準備に時間を費やすのではなく「さっさと“経営そのもの”をすればいい」というのが永見氏の主張だ。

ただ、それと同じような「経営」を経験ができそうに見えるポジションでも、次のような場合は注意が必要だという。

永見例えば大きな組織の中で新規事業立ち上げの部門に参画するケース。上にマネジャーがいて、その人の仕事ぶりをどれだけ近くで見られるとしても、自分が事業を進めるオーナーシップを持たないポジションでは意味がありません。

誰かに方向性が御膳立てされた仕事をいくら経験しても、経営人材に近づくという意味ではまるで経験値にはなりません。自分でユーザーやサプライヤーと向き合い、自分で意思決定し、自分でサービスをつくる経験こそが大事だからです。

また、伸びていない会社・事業でオーナーシップを持つ立場だと、経験は積めるかもしれないがリスクも大きい。

永見にっちもさっちもいかない会社の経営を任されるのは、想像するだけでつらいですよね。そういう状況の経営を担い、事業を立て直した上で伸ばしていくことはプロ経営者でも至難の業。経営経験の浅い人がいきなりそのような環境で経営を担って、事業を好転させられる可能性もゼロではないがかなり低いし、成長する前に潰れてしまうリスクもある。

永見氏が「経営の打席に、早く多く立つべき」と言えるのは上に述べた2点とは正反対、つまり会社が高い伸び率で成長していて、かつ事業オーナーシップを持って「経営」に当たれる環境がラクスルに揃っているからだ。

永見ラクスルでは、まずコアの事業が伸び続けていて、海外展開が視野に入るほどに成長してきました。また、これまでに「ハコベル」や「ノバセル」、最近では「ジョーシス」など内製で新しい事業をつくってきましたし、ペライチへの資本参加、ダンボールワンのM&Aにより両社の経営にも参画しています。

さらに今後は「プログラマティックM&A」を経営戦略の柱の1つとしており、ラクスルグループ全体で持つ「事業」の数は継続的に増えていき、その増加スピードも加速していきます。

これまでのM&Aや出資の実績|提供:ラクスル株式会社

ラクスルでは過去のM&Aを説明する際に、「Buy & Build」という言葉を使っている。どのような意図が含まれているのかを尋ねた。

永見「Buy」というのはいわずもがな買収のことですが、僕らが重視しているのは「Build」です。これは、買収した会社の事業に対してラクスルの仕組みやユーザー基盤を用いて、例えばクロスセルを増やしたり、決済の仕組みを共通化してコストを下げたりといった、シナジーを生む仕組みを構築(Build)すること。いわゆる「ビジネスデベロップメント」であり、私が言うところの「経営」に極めて近い。

このBuildの部分を、チームの末端としてではなく、エンジニアリング、プロダクト、マーケティングを融合させて非連続な変化を生み出し、大きな利益率向上と売上成長を持続させるサイクルを構築する事業リーダーの機会を提供したい。

それだけでなく、ミッションやビジョンの策定、採用・育成、カルチャー醸成などの組織づくり、それを可能にするための経営インフラづくりなど、経営にまつわるすべての意思決定をどんどん任せていきたい考えです。

この想いが「経営の打席に、早く多く立つべき」というメッセージに集約されたと言っていい。そうは言っても、経験の浅いメンバーに本当にそのような権限を渡せるものだろうかと疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、言及されたような「経営にまつわるすべての意思決定」を委ねてきた実績がラクスルにはすでにある。ダンボールワンとペライチの事例だ。

2020年に資本提携したダンボールワンには、ラクスルへの新卒入社から4年目にして事業部長になった木下治紀氏が出向し、COOの立場で経営に参画している。その奮闘ぶりはインタビュー記事で紹介した通りだ。また、同じく2020年にラクスルが49%の出資を行ったペライチには、リクルートからラクスルへ転じてマーケティング部長を務めたこともある安井一浩氏が出向し、COO(現在はCEO)として事業の再構築を担うだけでなく事業買収も行っていることをFastGrowでは伝えている

こうした過去事例からも明らかなように、「Buy & Build」とは会社を買って自社に統合して終わりではなく、いわゆるPMIの後に、ラクスルのナレッジや仕組みを加えて急成長し続ける仕組みを構築することであり、ここに重きを置くことがラクスルのM&Aの特徴の1つだ。

Buyの対象は、既存事業に隣接する領域のなかで市場ポテンシャルやビジネスモデルなどを吟味して、事業を伸ばすための仕組み化の余地がある会社、別の言い方をすると、仕組み化やオペレーショナルエクセレンスの面に伸びしろがある会社を選定する。それゆえ、未上場ベンチャーのような急成長段階の会社も多い。また、国内に限定しておらず、海外企業をM&Aする可能性もある。

もう1つの特徴は、M&Aを「連続的に」実施していくことだ。

永見この戦略はマッキンゼーのあるリサーチに根ざしています。満を持して数年に1度くらいのペースで大きな買収を単発で行うのではなく、小さな買収を体系的に短いスパンで繰り返して自社の事業に足りないパーツを補完していくようなM&Aを「プログラマティックM&A」と呼び、企業価値に最も良い影響を与えるやり方だと指摘しています。

これからはプログラマティックM&Aの考え方を取り入れ、年に数社のペースで次々とグループインさせていく見通しだ。これにより、事業の「経営」に携わり、仮説検証を回して成長していく機会は大幅に増えていくと考えられる。

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M&Aのデューデリジェンス段階から参画し、事業成長の仮説を考える

そんなラクスルでは、どのように経営人材を輩出しているのだろうか。「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンのもとで、人材育成においても仕組みが構築されているのだろうか。

永見もちろん、人材育成においても属人化してしまっては意味がないと思っています。ラクスルでは、入社して2〜3年で事業領域に対する高い解像度や事業のグロースの仕方を身につけてもらい、その上で経営を担うポジションを任せていきます。

例えば、あるM&A先の企業の経営を任せる予定のメンバーがいれば、M&A前のデューデリジェンスの段階から参画してもらいます。そのメンバー自身に、M&Aが成立したあかつきにはどのような事業計画をつくり、どのような施策に筋がありそうか、事業成長の仮説を用意してもらいます。そしてそれを、PMI後のフェーズで仮説に沿って実践していくだけ。本人としても納得感のある形だろうと思います。

さらに、将来的に事業リーダーが別の人に代わることがあってもスムーズに引き継ぎができ、事業が将来にわたって拡大し続けられる仕組みづくりを担っていくことになります。

2019年9月に出資したネットスクウェアへ出向し、現在はそこから切り出した子会社・ラクスルファクトリーで執行役員を務める上村太介氏も、以前のインタビューの中で「ネットスクウェアがラクスルと組む上でどんなシナジーが生まれるか、どんな価値を出せるか。デューデリジェンスをしていた時から一生懸命に考えていた構想だったので、その構想に愛着すら感じていました」と明かしている。また直近のM&A先であるAmidAホールディングスには、ラクスルのメンバーが同様のプロセスを経て同社のBuildを担う予定だという。

ラクスルでは、なぜこうした経営人材の輩出を連続的に行っていけるのだろうか。「仕組みがあるから」と言ってしまえばそれまでなのだが、M&A対象の事業領域やビジネスモデルなども勘案すると変数が多く、再現性高く経営人材を輩出し続けるのは容易ではないと思われる。

永見まず言えるのは、全く新しい事業をゼロから立ち上げるのではないということ。ラクスルが既存事業で培ってきたユーザー基盤・サプライヤー基盤や、決済・カスタマーサポートの仕組みがベースにあり、それらを用いてシナジーをいかに創出していくかに注力できるということですね。

また、事業をグロースするノウハウがグループ内で惜しみなくシェアされる、ラクスル特有のカルチャーも寄与していると思います。加えて、経営陣を筆頭に、社内にプロ経営人材が多くサポートやバックアップを受けやすいことも大きいでしょう。

何もないところから手探りで事業を伸ばせというわけでなく、一定のセーフティネットを用意した中で、成功確率を高めるための無数のアセットを用いながら挑戦していくことができるインフラが整っているということです。

これが、ラクスルだからこそ経営人材を次々に輩出できる理由だ。次々とメンバーに経営ポジションを渡していくラクスルだが、先述のように今後は連続的なM&Aが加速し、経営人材がより多く求められていくことになる。新たなポジションが次々に生まれていくとしても、ラクスルにはすでにそうしたポジションを任せていく候補が多くいて、新たにジョインする人に「経営する」機会は与えられないのではないだろうか。

永見結論から言うと、そんなことはまったくありません。

創業から現在までのラクスルの成長は、大きく3つのフェーズに分けられます。第1フェーズは、印刷のEコマース事業をひたすら伸ばしたフェーズでした。ただ、5〜6兆円規模といわれる印刷業のマーケットのうちデジタルで印刷を発注しているのはまだ千数百億円程度なので、シェアを獲り切ったわけではなく、これ自体もまだまだポテンシャルがある事業です。

国内の印刷市場規模|提供:ラクスル株式会社

国内の印刷通販の市場規模|提供:ラクスル株式会社

永見第2フェーズは、内製で新しい事業をつくり始めたフェーズ。最初に物流サービスの「ハコベル」をつくり、今はJV化しています。さらに広告の「ノバセル」、それからこれは最近ではありますが、コーポレートITの「ジョーシス」など、複数事業を新たに始めました。

そして第3のフェーズが直近1年、もしくは“今”だと思っています。このフェーズでは、内製の事業は引き続きつくっていきますし、伸び続けるのですが、それを補完する形でM&Aを連続的に実施していく考えです。つまり、加速度的に経営ポジションが増えていくのに対して、それを任せられる人が圧倒的に不足しているというのが正直なところです。

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複数事業のポートフォリオをマネジメントするフェーズへ

これまでのラクスルを知る人にとって、2023年7月に報じられた社長交代のニュースはどのように映っただろうか。創業者の松本氏が代表の座を退いたことから、「情熱が失われたのではないか」「成長が頭打ちして勢いがなくなるのではないか」と感じた人もいるかもしれない。率直にそのことを永見氏に尋ねると、「それはないですね」と一笑に付されてしまった。

永見社長交代の背景にあったのは、すでにM&Aをいくつかし始めていて複数事業化していることから、ラクスルのCEOに求められる役割が変わってきたのではないかという議論でした。1つの事業の立ち上げではなく、複数事業のポートフォリオマネジメントをするフェーズに来たという経営陣の共通認識があったのです。

CEO交代の背景|提供:ラクスル株式会社

つまり、PEファンドの経験がある永見氏が適任な次の成長フェーズを迎えたからこそ、今回の体制変更に至ったのだ。松本氏は会長に就任し、これまで数々の事業立ち上げを経験してきた強みを生かしてジョーシス事業に注力しつつ、引き続き全社の経営・ガバナンスに積極的に関与していくことがアナウンスされている。

決して、スタートアップとしての勢いが衰えた、企業として成長し切ったということではなく、これまで以上に成長を加速する次のフェーズに挑むための身支度をしたに過ぎないのである。

永見氏は代表のバトンを受け取った今を、「自身のキャリアを最も生かせるフェーズ。今こそ最高にエキサイティング」だと胸を躍らせる。

新たな成長フェーズを迎えたラクスルは間違いなく「変わる」。ただ、「変わらない」部分もあると永見氏は強調した。

永見「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンはそのままです。

そしてBtoBの産業にテクノロジーやインターネットを持ち込んで、業界の構造や仕組みを変え、より良くしていくことは私たちの基本的なコンセプトであり、拠って立つところですから、今後も変わることはありません。

また、内製で事業を立ち上げることや、そのスケールにおいてオーガニックな事業成長を重視していること、これも全く変わりません。

永見氏に、自身が社長を務める間にラクスルで成し遂げたいことは何かを質問した。

永見やりたいこと、やるべきことはたくさんあるのですが、3つに的を絞りました。

1つは、印刷業界を「変え切る」こと。さらに、印刷以外にも1つか2つくらいは大きな産業を自分たちが変えたといえる状態にしたい。

2つ目は、ソフトウェア事業の強化。僕たちが業界の仕組みを変える時、実際にはテクノロジーによって実現しているんですよね。その意味で、より多くの産業に我々の受発注の仕組みが組み込まれていって、SaaS事業の規模拡大を目指します。

3つ目は、海外での事業拡大。売上総利益の10〜20%は、海外での事業で稼げるようにしたいと思っています。

今後のラクスルの3つの方向性|提供:ラクスル株式会社

永見正直、この3つが実現できたらいつでも辞めていいとさえ思っています。それくらい難度が高く、しかしこれらをやり切れれば、直近のマイルストーンとして目される売上1,000億円は当たり前の通過点となり、時価総額を含めラクスルは完全に次のフェーズに進むことになると思います。

経営に関しても属人化させず、仕組みを作った上で次にバトンを渡したいですね。私はマイクロソフトという会社をとても尊敬しているんです。理由は、複数の経営者で世代が移り変わる中でも、業績・時価総額を継続的に伸ばしているから。ラクスルの2代目の社長として、次の世代にバトンを渡しながらも成長し続けられる環境や仕組みづくりや機会提供をしていきたい。そう考えています。

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起業したい人、経営者を志望する人がラクスルで「経営する」べき理由

ここまでの話で、ラクスルが今どれだけ経営人材を欲していて、同時に経営の機会を提供できるかが分かったのではないだろうか。しかし経営人材を募る企業は他にいくらでもある。そこで最後に、おさらいの意味も含めて、ラクスルで経験できること、どのような点がキャリアにプラスになるのかを明確にしておきたい。

まず、コア事業である印刷・集客プラットフォーム『ラクスル』の会員数が2022年11月の時点で200万人を超えており、膨大なユーザーがいること。このユーザー基盤は、他の事業を「経営」する上でもアプローチが可能だ。

内製の事業立ち上げと連続的なM&Aにより事業機会が継続的に、数多く生まれることはこれまで触れた通り。そして内製およびM&Aいずれの場合も、海外事業の可能性もある。

「ラクスル」の事業を通じて培った知見や仕組み、ビジネスモデルを、印刷以外のさまざまな産業へ水平展開しやすく事業を伸ばしやすいことも「ハコベル」や「ノバセル」で実証済みであり、ラクスルで経営することの利点だと言えるだろう。

永見面接をしていると「ラクスルは印刷会社だ」というイメージを持つ人がたまにいます。そういう人には、ラクスルは印刷会社ではなく、複数の産業の仕組みを変える会社だということはあらためて伝えています。すでに印刷以外もやっていますし、今後さらにさまざまな産業に展開していきます。

他にも、組織面の特徴はさまざまある。報酬水準を年々引き上げているほか、少し変わった点として、永見氏はいわゆる「社内政治」がないことを挙げた。

永見政治的な動きをしても、誰も褒めないです。上司に媚びるとか、事前の根回しとか、大嫌いなんです。社内の人の顔色をうかがうのではなく、ユーザーとかサプライヤー、ステークホルダーに提供した「価値」や「成果」と向き合おうと社内ではずっと言っています。

実は、ラクスルで新卒採用を最初に始めたのは、永見氏の強い想いがあったからこそだった。

永見僕がラクスルに入った翌年の2015年、まだ社員20人の時に、新卒採用を始めました。新卒入社のメンバーが長くコミットし、活躍することで将来的にラクスルの幹になっていくはずだという仮説があったからです。

その仮説を持つに至った背景には、彼の前職、DeNAにいた時の経験がある。ことごとく優秀な新卒メンバーたちを組織一丸となって育成し、瞬く間に主要メンバーとして活躍する成長の様を目の当たりにしたのだった。

永見氏が新卒採用をやろうと言い始めた当時、経営陣から「効率が悪い」という理由で反発があったにもかかわらず、信念を貫いて新卒採用を始めたのだという。

永見氏が社長になったラクスルは新卒を軸とした若手の採用にも積極的だ。永見氏は、新卒採用では全員に必ず面接で会うことにしているそうだ。そして、「数字合わせの採用はしない」とも言い切る。

永見中途メンバーにも言えることではありますが、特に新卒メンバーには組織文化への貢献を期待しています。そのため、カルチャー的にフィットしない人を採用することはないし、年によっては入社ゼロでもいいと社内では言っています。

一方で、そういった厳しい目線での選考を経て入社してくれた人たちに対しては、僕たちは必ずコミットしてその人の長期的な成長をサポートします。

永見氏がそう話すように、経営人材になるために必要なリソースやバックアップ体制は万全だ。ただ、いわゆる「研修」のようなものは、基本的なマネジャー研修や組織マネジメント系の研修があるくらいで、型通りの教育制度は必要以上に用意しているわけではない。

永見ビジネスデベロップメントに関しては、どちらかというとOJTで実際のユーザー課題に向き合うことが何よりの学びの材料であり、しっかり機会提供して経験してもらうことが重要だと考えています。それをメンタリング、コーチングしながらサポートしていく体制です。

もちろん、「経営の“打席”にできるだけ早く、かつ、多く立つべき」と誰にでも言うわけではありません。ただ、事業を牽引したいとか、ゆくゆくは起業して経営者になりたいのであれば、それを“小さな単位で”経験することには大きな意味があります。ビジネススクールで取り組むようなケーススタディを毎日、実地で経験するようなものですから。

小さな単位でも経営全般を見渡す経験をしておくと、規模が大きくなってもだいたい相似形なので、きっとその経験が生かせます。もちろんフェーズが違ったりビジネスモデルが違ったりして、アンラーンしなければいけないことも部分的にはありますが、それを差し引いても、実地で経営を経験することが最も重要であることは間違いありません。

特に、学生起業や20代での起業はもちろん、30代以降での起業に向けても申し分のない経験の場になるはずです。それに、まわりにいる経営陣やBizDevからも多くの学びを得ることができる。特にこれからのフェーズではエキサイティングな経験ができることを約束します。

どうだろう?永見氏の取材を通じて、ラクスルがいかに経営人材の輩出に本気であるかが伝わったのではないだろうか。最後に同氏から、経営者キャリアを志望する学生、20代、30代の読者に向けてメッセージをもらった。経営人材を目指している人はもちろん、そうでない人に対しても伝わってほしい内容だ。

永見「経営者になりたい」という想いの根底には、社会や産業に新しい仕組みを提供したい、そのことをもってして自身もやりがいを感じながら社会に貢献したいというパッションがあるのだと思います。それは、ラクスルのメンバーを見ていても感じますし、私自身もそうです。

だから現時点で「経営者になりたい」とは思っていなくても、仕組みを変えたい、それを通じて社会を、世界をもっと良くしたいと考えている人には、それを実現できる機会がここラクスルにあると伝えたいですね。

そして「経営者になりたい」という想いをすでに自覚している人には、「だったら今すぐにでもラクスルへ来て経営すべき!」とあらためて言いたいですね。その席はいくらでも用意して待っています!

こちらの記事は2023年12月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

畑邊 康浩

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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