“タレントサクセス”をAI×プロダクト×仕組みで実現──1.5億円調達のBoost Healthが提案する、「新たな組織開発」とは
重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。
FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。
今回は、2026年3月に1.5億円の資金調達を発表したBoost Health株式会社について、その「横顔」をまとめる。
FastGrow編集部が注目するポイント
注目ポイント1:人的資本投資から属人性を排すサービス
AIの普及に伴い、定型業務から自律的な意思決定へと人の役割が変化する中、現場の活躍支援を管理職個人の資質に依存させないアプローチが求められている。Boost Healthは、組織的に自律人材の育成を支援する、再現性を重視した仕組みを提案する。
注目ポイント2:AIと専門家の協働、大企業で効果実証済み
認知行動療法(CBT)を取り入れたAIエージェントと、公認心理師やキャリアコンサルタントによる伴走型サービス「BOOST」を開発。電通(*1)やDeNA(*2)等の大企業での実証を進め、学術的尺度や統計的有意差(p値)を用いて効果の可視化を試みる。
*1…プレスリリースはこちら
*2…プレスリリースはこちら
代表を始めとした、同社のメンバーについて
(1)Founder & CEO 芳賀 彩花 氏
調達に際してのコメント
FastGrow読者のみなさんへ。
私は起業前、マッキンゼーで約8年、戦略を描く側と実行する側の両方に伴走してきました。そこで痛感したのは、「優れた戦略を描いても、現場の社員が前向きでやる気を持ってそれを実行しなければ意味がない」というシビアな現実です。そして同時に気づいたのが、活躍する人とそうでない人の差は「地頭の良さ」だけではない、ということ。「ストレスやチャレンジにどう効果的に対処できるか」が、命運を大きく分けていました。自分ではコントロールできない課題、キャパを超えるプレッシャー、それらにうまく対処する力は、賢さとは別物です。そしてこれは、適切なサポートがあれば、誰でも伸ばせる。
CxOやPdM、事業責任者として組織を動かそうとされているみなさんなら、きっと似た景色を見てきたのではないでしょうか。採用した人材が定着・活躍しない。研修してもサーベイしても、行動が変わらない。1on1の質は上司次第。やる気も能力もある人が、構造のミスマッチで力を発揮できないまま組織を去っていく。一部のスーパー人材の「頑張り」と「察し」でなんとか回している。これはAI時代において、もはや致命的な構造課題です。
私たちBoost Healthが取り組んでいるのは、人の活躍を「偶然」ではなく「構造」として再現する仕組みづくりです。認知行動療法(CBT)を型化したAIエージェントと、公認心理師・キャリアコンサルタント等のプロコーチを統合した、タレントサクセスサービス「BOOST」を、エンタープライズ企業向けに開発・提供しています。
【今回の調達の背景・思い】
人的資本経営は、ここ数年で経営アジェンダになりました。一方で現場には今も、「人材活躍は管理職の人柄頼み」「研修・サーベイは受けただけで終わる」「優秀な人ほど環境のミスマッチで離れていく」という構造課題が残っています。とくにAIが定型業務を担う2026年以降、企業の競争力は「どれだけ自律的に動ける人材がいるか(=自律人材比率)」で決定的に分かれていく。私たちはそう考え、「企業価値(人材寄与分)=経営構造の強さ × 自律人材比率」という独自の式で事業を設計してきました。BOOSTはその自律人材比率を向上するために、採用後の社員の活躍を再現性高く実現するためのエンジンです。今回の1.5億円の調達は、電通様・日立製作所様・DeNA様といった大手企業で実績を出し、再現性のあるデータが揃ったいま、「実証フェーズ」から「制度化フェーズ」へ踏み込むための投資です。
【今後の方針】
資金は2点に集中投下します。1点目は、AIプロダクトの高度化およびデータ基盤の強化です。認知・行動データの解析精度向上、レポーティングの自動化、組織ダッシュボードの拡張を進め、「人材施策が企業価値に与える影響」を統合的に可視化できる基盤へと進化させます。2点目は、エンタープライズ向け導入支援体制の強化です。PoCから部門展開、全社制度化までを伴走できる営業/カスタマーサクセス体制を整備し、大手企業での導入の質と速度を引き上げます。
【自社の魅力】
Boost Healthは、「タレントサクセス」という新カテゴリを自社で定義し、市場をゼロからつくっているスタートアップです。EAP・1on1・サーベイの延長ではなく、人材活躍支援の鍵となる「質(Q)」「個別最適(P)」「再現性(R)」を同時に満たす新しい設計思想を実装しています。心理科学とAIと経営戦略の三領域を統合し、マッキンゼー出身CEOと、心療内科医(臨床40年以上)のClinical Advisorと、アカデミア連携(専修大学心理学研究員ほか)が、一つのチームとして意思決定できる体制を持っています。おそらく国内唯一の組み合わせだと考えています。
【採用ターゲットへのPR】
「タレントサクセス」という新市場をゼロから立ち上げる、今のフェーズだからこそ得られる経験があります。プロダクト/エンジニアリング職としてジョインいただける方には、認知行動療法を実装したAIエージェントと行動ログ分析基盤を共につくる、心理科学とプロダクトを橋渡しできる稀有な開発経験があります。セールス/カスタマーサクセス職には、大手企業の人事責任者・経営層に「人的資本投資のROI」を売り、PoCから全社制度化まで伴走する、エンタープライズSaaSとHRテックの両方の知見を積み上げる経験があります。コーチング職には、公認心理師・キャリアコンサルタント・ビジネスコーチとして、AIと協働する未来型の支援を実践し、臨床・コーチング業界に新しいキャリアパスを開く仕事があります。
ご一緒したいのは、「人が本来の力を発揮できる組織を増やしたい」と本気で思える方、「市場を定義する側」に立ちたい方、心理学・経営・AIの交差点に知的好奇心がある方、そして自分自身も含めて、まわりの誰もが前向きに働ける社会を本気でつくりたい方です。ぜひ一度、お話ししましょう。
プロフィール
経営コンサルファームMcKinseyで何千人ものビジネスパーソンと働く中で、「企業の持続的成長には、社員の再現性の高い活躍が鍵」という課題意識から2022年にBoost Healthを創業。認知行動療法のアプローチをデジタル化したAI×コーチングサービス『BOOST』を開発。心理カウンセラー、メンタルトレーナー資格。東京大学文学部社会心理学専修課程卒業、IESE Business School(MBA)卒業、McKinsey & Company 元アソシエイトパートナー
(2)Co-founder & CTO 平賀 養 氏
プロフィール
サイバーエージェントグループ会社にて広告効果計測SDKの開発、楽天グループ株式会社にて広告配信SDKの開発に携わる。「日本のGDP向上につながるビジネスを創りたい」という思いからBoost Healthの創業に合流。プライベートでは社会人バスケットボールプレーヤーとしても活躍。
(3)VP of Operations & CS 石田 麻美 氏
プロフィール
サイバーエージェントグループ内の複数事業にてカスタマーサクセス、新規事業立ち上げ、オペレーション改善、人事として9年間従事。オンライン診療サービスの立ち上げや、EC/物流オペレーションなど幅広い現場経験を持つ。2023年にBoost HealthへVP of Operations & CSとして入社。自身もコーチとしての現場支援と、サービス品質管理・改善を担当。心理カウンセラー・メンタルトレーナー資格保有。
調達の概要
| プレスリリース |
|---|
| 社員の活躍を、管理職だけに背負わせない。人的資本経営の“属人化”を解消するBoost Health、1.5億円を調達 |
| 調達額 |
|---|
| 1.5億円 |
| ラウンド |
|---|
| プレシリーズA |
| 主な使途 |
|---|
| サービス・プロダクトの機能強化 |
| 採用強化 |
| 投資家からの評価(抜粋) |
|---|
| 株式会社ジェネシア・ベンチャーズ General Partner 田島 聡一氏 / Investment Manager 黒崎 直樹氏 生成AIの指数関数的な進化により、ホワイトカラーを中心に、人間の仕事はますます複雑化しています。そのような中、社員はより大きなストレスやプレッシャーにさらされると同時に、労働人口の減少に伴い、人材の採用は困難になり、退職コストも高まっています。 このような経営環境の中、すでに数多くの大企業に導入されているソリューションがBoost Healthです。Boost Healthは、認知行動療法(CBT)をベースにした体系的なプログラムにより、単なる手段ではなく、具体的な成果までを可視化する唯一無二のソリューションです。 芳賀さん率いるBoost Healthとともに、本ソリューションの社会実装を通じて、生成AIの時代においても、人間が豊かに生き生きと働ける社会の実現を目指します。 |
| WPower Fund ゼネラル・パートナー 関美和氏 長期的な事業の成長と企業価値の拡大には、そこに働く従業員がその潜在能力を100%発揮することが欠かせません。 資源のない日本において、人材は唯一最大の資源です。その最も大切な資源を最大限に生かすための、これまでにないマネジメントツールを提供するのがBoost Healthです。 Boost Healthを導入することで、自走できるレジリエントな人材を育て、離職率を減らし、エンゲージメントを高める企業が増えれば、日本の経済はますます強くなっていくでしょう。Boost Healthと共に、そんな未来を目指していけることを光栄に思います。 |
| インキュベイトファンド 代表パートナー Paul Mclnerney氏 世界のトップアスリートは、技術的な指導からメンタルレジリエンスの強化に至るまで、あらゆる領域でコーチの支援を受けています。Boost Healthのコアの発想は、企業における従業員の継続的なハイパフォーマンスも、同様に包括的なアプローチ無しには実現できないということにあります。 最新のパフォーマンス科学および行動変容の知見に基づいた、強力かつ再現性の高いアプローチを活用し、Boost Healthのチームは従業員満足度と生産性の双方を高い水準に押し上げたいと考える経営者に向けてこれまでにない新しいプラットフォームを提供しています。 |
主なサービス・プロダクト
「BOOST」
認知行動療法(CBT)を実装したAIエージェントによる日常的な伴走と、プロコーチによる月次の深層介入を組み合わせた、エンタープライズ向け人材活躍支援プラットフォームです。
AIと専門家が補完し合うハイブリッドモデル「Human-in-the-loop」により、人材活躍に必要な「介入の質(Q)」「個別最適(P)」「再現性(R)」の3要素の統合を目指した設計となっています。
主観評価に留まりがちだった組織開発領域において、生産性指標(平均+8pt改善など)や認知変容の定量特定など、学術的尺度と統計データに基づき「行動が変わる仕組み」を可視化して提供します。
FastGrow編集部の注目ポイント
- AIとプロの役割分担
日常のコンディションチェックを行うAIと、月次で深層介入を行うプロコーチが互いに補完し合うことで、支援の質と効率性の双方を考慮した設計をとる。 - 客観的な指標を用いた可視化
主観や体感ベースの評価に留まりがちだった人材投資の領域において、学術的尺度や統計学的指標(p値・効果量)を用いて、生産性向上やストレス改善の定量的評価に取り組む。 - 1on1や研修のシステム化
個人の相性やスキルに左右されがちな現場の1on1や、一時的な研修による効果を、システムと共通データ基盤を用いて再現可能にすることを目指す。
Boost Health株式会社の採用情報
こちらの記事は2026年06月18日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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