「新興国のインフラ」に持続可能な選択肢を──Grab公認唯一の日本パートナー、42.6億円調達のmovusが描く新時代の社会インフラ構築とは
重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。
FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。
今回は、2026年5月に42.6億円の資金調達を発表したmovus technologies株式会社について、その「横顔」をまとめる。
FastGrow編集部が注目するポイント
注目ポイント1:新興国の成長に日本の低金利と現場力を
1980年代の日本と同等かそれ以上の熱量で急成長するインドネシア。日本の超低金利なデットでの調達資金(26億円)を用い、ソフトウェアで完結しない泥臭い現場オペレーションまで一気通貫で握る事業を構築。既存のパイの奪い合いではなく、新興国の社会インフラをゼロから生み出すイノベーションに挑む
注目ポイント2:Grab公認、唯一の日本企業パートナー
時価総額2兆円を超える東南アジアNo.1の配車プラットフォーム「Grab」が公式に選んだ、唯一の日本企業。月間1万件を超えるドライバーからの申し込み(リード)を獲得し、車両供給と独自のデータ与信を武器に、現地の深刻な移動インフラのボトルネック解消へ
代表を始めとした、同社のメンバーについて
代表取締役 酒井 丈虎 氏
調達に際してのコメント
AIの台頭、人口減少、円安といった外部環境下だからこそ、私たちは海外×リアルな産業で価値を生み出し、社会インフラの構築を通じて日本と新興国の両方に価値貢献できるように努めてまいります。
AI時代こそ、日本人の強みである「リアルなオペレーション」で勝負する
シリコンバレー発の企業がソフトウェア/デジタル領域で覇権を握ってきましたが、AIの台頭により更にその傾向は強くなるでしょう。ソフトウェア/デジタル領域のように、変数が少ないような事業参入難易度の低い事業領域はファイナンスゲームの毛色が強くなり、勝者総取り、大きな会社がどんどん強くなっていきます。
だからこそ、リアル領域のような日本人の強みである「オペレーション/改善」が活きる領域で勝負することが好ましいですし、新興国にはその余地が多分にあります。
1980年代の熱狂を持つ「インドネシア」という巨大市場で、次のメガ企業を創る
インドネシアのGDPは日本の1980年代と同程度であり、ソフトバンクが1981年、ファーストリテイリングが1984年(柳井氏の社長就任・ユニクロ第1号店出店)、キーエンスが1974年と、名だたる大企業がこの前後で誕生しています。そんな経済ステージのインドネシアで、国そのものを作っていくことや、インフラ・産業の創造に携われるのは非常にエキサイティングです。
また、物流のような大型産業であっても、東南アジアでマーケットシェア34.4%・売上高45億ドルを誇るJ&T Expressは、2015年設立という非常に若い企業です。成長著しく、課題が広くて深い産業のド真ん中にアプローチし、根こそぎその需要を取り込むことができれば、このように爆発的な成長を遂げることができるわけです。
2050年にはインドネシアが日本を超えて世界4位の経済大国になるとも言われています。経済の成長を取り込みながら堅実に事業運営することができれば、次の時代におけるソフトバンクのような企業をつくることも、マーケットのポテンシャル的には十分可能なはずです。
「アジアにおける日本のプレゼンス低下」への強い危機感
日本のプレゼンスは確かに高く、インドネシアでは日本車のシェアが長らく90%以上を誇っていましたが、中国EVメーカーのBYDがシェアを伸ばし、ある車種では年間の車種別販売台数トップ10にランクインするなど、ブランド認知を高めています。
韓国ブランドも好調です。スマホはSamsung、テレビはLGを見かける機会は多く、K-POPや韓国ドラマを楽しむ文化も根付いています。会社の現地出身メンバーと会話していても、日本のアイドルや俳優の名前は出てきませんが、韓国のアイドルや俳優の名前はどんどん出てきます。しかも、韓国は日本の人口の半分ですが、インドネシアにおける駐在員数は日本のそれよりも多いようです。
確かに日本国内でも伸びる産業はありますし、依然として課題はあります。しかし私は日本を思うからこそ、人口減少時代、円安時代において日本を出て、日本のプレゼンスを上げ外貨を稼ぐべく、世界で戦うべきだと考えています。
【今後の方針】
目指すのは“機会の不均衡”の解消。今回の資金をもとに挑戦を加速する
私たちが目指しているのは、社会の中に存在する“機会の不均衡”を少しでも減らしていくことです。もともと私自身、「社会構造の歪み」や「取り残されてしまう人がいること」への問題意識が原点にありました。だからこそ、movusでは、リソースやアセットを最適に配置し、本当に必要としている人に届けていくことで、社会課題の解決に取り組みたいと考えています。
今回の資金調達を通じて、既存事業の拡大、新規の仕込み(周辺領域の新規事業や海外展開含む)と採用の強化を行いながら、より大きなインパクトを追求していきます。
プロフィール
大学在学中に、GoodfindやFastGrowを運営するスローガン株式会社で長期インターンシップ事業の立ち上げを経験。大学卒業後は、GMSに入社し、金融機関や、自動車メーカー・ディーラー、モビリティプラットフォームとの提携を実現。2020年からはソフトバンク株式会社の事業戦略統括部にて、PL予実管理及び経営層向け戦略の立案に従事。2021年にmovus technologiesを創業。
調達の概要
| プレスリリース |
|---|
| 東南アジアのモビリティインフラを構築するmovus、シリーズBで総額42.6億円の資金調達を完了 |
| 調達額 |
|---|
| 42.6億円 |
| ラウンド |
|---|
| シリーズB |
| 主な使途 |
|---|
| サービス・プロダクトのプロモーション強化 |
| 人材採用 |
| 投資家からの評価(抜粋) |
|---|
| スパークス・アセット・マネジメント株式会社 次世代成長投資本部長 出路 貴規氏 / ヴァイスプレジデント 田中 裕也氏 当ファンドはトヨタ自動車・三井住友銀行とともに設立され、モビリティの未来を変革する技術やビジネスモデルへの投資を続けてきました。movus社は環境性能の高い日本車を中心としたサービスラインナップにより、経済成長と環境配慮の両立を実現しようとしています。今回の投資を手始めに、車両提供や融資をはじめとしたLP企業との事業上のシナジーを構築しながら、共に新興国の持続可能なモビリティの未来を切り拓いてまいります。 |
| スズキ株式会社 投資・共創推進部長 岡本 太智氏 スズキは1970年の進出以来、インドネシアをASEAN市場の中核拠点と位置づけ事業を拡大してまいりました。現在はフロンクス、キャリイ、eビターラなど多彩なモデルをラインナップし、お客様にお使い頂いております。movusのサービスにより、さらに多くのお客様とつながる機会が得られることを期待しています。 |
| 三菱UFJキャピタル株式会社 執行役員 投資第二部長 田口 順一氏 / 次長 小西 健人氏 三菱UFJキャピタルは、三菱UFJフィナンシャル・グループの一員として、国内外の成長企業の発展を支援してまいりました。movus社は、IoTやデータを活用してモビリティへのアクセスを広げ、地域の課題に根ざしたソリューションを提供することで、グローバルに通用する事業モデルの構築に取り組んでいます。今回の資金調達を契機に、同社がインドネシアを起点としてさらなる事業拡大を進められるよう、MUFGグループの知見とネットワークを活かしながら成長を後押ししてまいります。 |
| みずほ銀行 渋谷法人部部長 堀 康彦氏 当行はイノベーション企業支援プログラム「M's Salon」等を通じ、長年にわたり社会課題の解決に挑むスタートアップを金融・非金融の両面から支援してまいりました。インドネシアのGDPは1980年代の日本と同規模で2050年には日本を超え世界4位の経済大国になることが予測されています。弊社が強くご支援してきたソフトバンク社が1980年代に設立され今や世界的企業に成長されておられるように、movus社が新興国におけるソフトバンク社のような会社になるご支援を進めていければと思っております。 |
主なサービス・プロダクト
ライドシェアドライバー向けエコカーサブスクリプションサービス
インドネシアでは、公共交通が未整備で、配車アプリが事実上の公共交通として機能。需要拡大の一方、ドライバーの供給は追いついていません。根本原因は、車両取得に必要な金融アクセスが整っていないこと。この構造に対し、独自のデータ与信モデルとIoTを活用し、現地金融機関のローン審査通過率0.1%以下という高い壁を突破して、ドライバーに初期費用なしで車両を提供するサービス。低金利で調達できる日本でのデットファイナンスによる資金力と、メンバーが日本で培ってきたバリューチェーンの長いリアル産業での泥臭いオペレーション力などを統合。東南アジアのインフラである配車サービスの担い手不足を解決し、新たな社会を構築する。
FastGrow編集部の注目ポイント
- 新興国での産業創出 / モビリティのインフラ構築
スタートアップが国の産業を作り得る新興国。東南アジア最大のメガプラットフォームと共に、モビリティインフラ構築に挑む。 - 独自のデータ与信による金融・キャリアの民主化
従来の銀行がアプローチできなかった層に対し、独自のデータを評価軸とすることで、ドライバーとしての就業機会と車両の供給を一気に実現。 - 複雑なバリューチェーンを支える「現場オペレーション」
単純な車両レンタルではなく、メンテナンス、保険、税金などの一連のリアルな面倒ごとすべてを、現地100名体制でオペレーショナルに実行・管理。 - 日本の金融環境(低金利)のグローバル転用
メガバンク2行を含む国内5行から26億円の融資枠を確保し、日本の調達コストの低さを新興国での高成長事業を生み出す力へと変換。 - 希少な日本発グローバルで勝算ありのスタートアップ
Day1グローバルなスタートアップは数が少ないことはもちろん、海外での成功ハードルが高い中、シリーズも進み、メガバンクが認める運営体制に。
採用関連情報
採用について代表酒井氏のコメント
1. 本気で世界を変えにいく「真のグローバル」への挑戦
日本で成果を出された方は、より大きなインパクトの創出を求められているのではないでしょうか。その場合、必然的にグローバルに目を向けることになると思いますが、その領域で戦っていて、かつ勝ち筋が見えつつある日本のスタートアップは数少ないはずです。そんな方には、まさにmovusが最高のチャレンジの機会を提供できると確信しています。
また、元々グローバルや新興国に関心はあったものの、まずは日本でキャリアを築いてきた方も多いはずです。弊社のBiz職は100%現地駐在確約ポジションですし、それ以外のポジションも現地駐在は大歓迎ですので、海外で勤務する貴重な機会にトライしてみませんか。
2. リアル×金融の複雑性をマネジメントし、ビジネスパーソンとしての次元を引き上げる
PLだけではなくBS、Biz→プロダクト & エンジニア→Bizのように領域を超えて複雑な変数/タスクをハンドルすることがビジネスパーソンとしてのスキルや経験を引き上げることになると思います。
movusの領域の場合、バリューチェーンも長く、オペレーション上デジタル/ソフトウェアで完結しない領域も多いため、非常に複雑性が高いです。また、BSを使う事業領域でもあり更にその難易度を引き上げます。このような領域に身を置くことで今まで経験したことがない経験値を獲得できます。
また、日本人のみのチームではない、特に新興国の人員のマネジメントという経験もスキルセットのアップに繋がります。日本本社の採用においては基本的にマネジメントへの期待をしており、事業責任者やカントリーヘッド、新規領域(事業や拠点)の立ち上げなど、幅広いオプションを用意しています。
3. 産業の再構築(リビルド)ではなく、創造(ビルド)を。50年・100年後の未来を作る
日本では特定領域において伸びている産業があるのも事実ですが、人口減少という構造的な制約がある以上、どこかで成長が頭打ちになる難しさもあります。人口減少がさらに加速する5年、10年後には、海外展開の重要性は今以上に高まっているはずです。
しかし、気づいたときにはすでに手遅れになっている可能性もあります。確かに、インドネシアでは日本のアニメも人気で、日本のプレゼンスは高いです。一方で、中国や韓国の存在感は急速に高まっています。今、このタイミングでの意思決定が、今後の日本や新興国の未来を決定づけると言っても過言ではありません。産業創出人材が不足する新興国に挑みながら、海外で価値創出することで両国の架け橋になりませんか。
また、産業をゼロから創ること自体も大きな醍醐味です。一般的に日本では、新しい事業を開始する場合に「既存産業のパイをどう取り合うか」や「巨大産業をソフトウェアで効率化・最適化するか」がメインのアプローチになりがちです。一方で新興国では、市場そのものが拡大していく中で、巨大産業のド真ん中を攻める戦いになります。産業構造や業界の標準オペレーションそのものがまだ確立していないからこそ、ゲームメーカーになる──リビルドではなく、新しく「ビルド」していく瞬間に立ち会えます。
| 募集ポジション |
|---|
| VP of Finance |
| 事業開発・グロース責任者 |
| 管理部長 / マネージャー |
| テックリード/バックエンドエンジニア |
| アーキテクト |
| 自動車メカニック責任者 |
採用ページ
こちらの記事は2026年07月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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